防災セットの一括導入|数百人規模の発注から納品まで6工程

防災セットの一括導入|数百人規模の発注から納品まで6工程
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
「従業員全員分の防災セットを配ることは決まった。でも、数百人分をどう発注して、どう届ければいいのか分からない」。総務や防災の担当になった方から、こうしたご相談をよくいただきます。何を配るかより、発注から納品までの段取りで手が止まってしまうんですね。
防災セットの一括導入とは、企業や団体が従業員の人数分の防災セットを、見積・数量確定・納品・配布記録までの工程を管理しながらまとめて調達することです。
数百人規模でも、見積依頼の6項目と配送先リストを先に整えておけば、在庫品なら1〜2週間程度が納品の目安です。
この記事でわかること
・見積依頼の前に整理しておきたい6項目と、人数が確定しないときの進め方
・サンプル確認で見るべき「重さと重心」の考え方
・数百個の納品にかかるリードタイムの目安と、拠点分納・個別配送の組み方
・配送先リストの作り方と、受領・検品・配布記録の残し方
防災士として300社以上の法人・団体の備えをお手伝いしてきた経験から、実際の発注でつまずきやすいところを中心に、工程順にお伝えしますね。

防災セットの一括導入を発注する前の準備
発注の段取りで大切なのは、見積を取る前に社内で決めることと、見積を取りながら決めることを分けておくことです。全部が固まるまで待っていると、配りたい時期に間に合わなくなることもあります。
配り方と品目は先に社内で決めておく

2011年3月11日、私は福島で東日本大震災を経験しました。あの日は首都圏でも鉄道の多くが止まり、内閣府の推計では約515万人の帰宅困難者が発生したとされています。職場から帰れない人が一度に大量に出る。だからこそ、備えを「誰の手元に、どう置くか」は発注の前に決めておく必要があります。
2026年1月に改定された内閣府のガイドラインでも、備蓄品の保管場所の分散や従業員への事前配布を検討するよう示されています(出典:内閣府『災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン』)。一括導入の発注に入る前に、社内で次の2点は決めておきましょう。ここが曖昧なままだと、見積の比較ができません。
- 配り方:1人1個を配るのか、部署や拠点でまとめて置くのか、その組み合わせか
- 品目と量:持ち出し用のリュックだけか、水・食料・トイレなど3日分の備蓄も含めるか
配るか置くかの判断は会社の防災グッズを「配る・置く」で分ける考え方で詳しく整理しています。この記事では、そこが決まった後の「発注から納品まで」に絞ってお話しします。
見積依頼書に書いておきたい6項目

見積を依頼するとき、次の6項目がそろっていると、提案と見積がぐっと早く出せます。すべて確定していなくても大丈夫です。分かる範囲で、「未定」と書いてもらえれば十分ですよ。
| 項目 | 書いておくこと | 未定の場合の書き方例 |
|---|---|---|
| 人数 | 対象者の人数と予備分 | 「約300名(確定は来月)」 |
| 用途 | 社内待機用/従業員の自宅用/両方 | 「自宅配布を想定」 |
| 予算枠 | 総額、または1人あたりの上限 | 「1人1万円前後で検討」 |
| 納品先 | 1か所/複数拠点/従業員宅への個別配送 | 「本社+支店5か所」 |
| 名入れ・カスタマイズ | 社名・ロゴ入れ、中身の追加・削減の有無 | 「名入れは費用次第」 |
| 希望納期 | いつまでに配り終えたいか | 「防災の日までに配布」 |
予算枠については、当社でご相談いただく法人案件では、防災セット(リュック型)で1人あたり6,000円台〜20,000円程度、ポーチ型で3,000円台が多い価格帯です。これは持ち出し用セットの金額で、水・食料など3日分の備蓄費用とは別枠で考えてください。予算の組み立て方や稟議の通し方は企業の防災備蓄の費用相場と稟議の通し方でまとめています。
HIHでは、ご希望の商品・人数・ご予算をお知らせいただければ、商品リーフレット・御見積書・会社概要をPDFでお届けしています。社内での比較や稟議にそのまま使っていただけます。
人数が確定しないときの進め方

実は、担当者の方がいちばん悩まれるのが人数の確定です。入退社や部署ごとの集計、パート・アルバイトの方を含めるかどうかで、最終人数がなかなか決まらないことはよくあります。
ちなみに内閣府のガイドラインでは、備蓄の対象を「雇用の形態(正規、非正規)を問わず、事業所内で勤務する全従業員」としています。社内で人数を数えるときの基準にしやすいですね。
人数が確定するまで相談を待つ必要はありません。まずは概数でお見積りを取り、確定後に数量を調整する進め方で大丈夫です。HIHでは、最終的な少量の数量変更には柔軟に対応しています。
もう一つ決めておきたいのが予備数です。ガイドラインでは、来客など外部の帰宅困難者のために10%程度を余分に備蓄する考え方が示されています。新入社員や中途入社の方に配る分も考えると、最初から予備を含めて発注しておくと、あとで少量を追加注文する手間が省けます。水・食料・簡易トイレなども一緒にそろえる場合、人数別の必要数はオフィスの防災備蓄リスト(1人3日分の内訳と数量)で一覧にしています。
サンプル確認で見る重さと重心

数百個をまとめて発注する前に、できれば一度サンプルの防災リュックで中身と背負い心地を確かめてください。ここで少し「防災理科」のお話をさせてくださいね。
リュックの負担は、中身の合計の重さだけで決まるものではありません。重心が体からどれだけ離れているかで大きく変わります。腰を支点にした「てこ」を思い浮かべてみてください。同じ重さの荷物でも、体から遠い位置にあるほど、腰を中心に回そうとする力(モーメント)が大きくなります。労働安全衛生総合研究所の解析でも、荷物の位置が体から離れると、腰への負担が腰痛リスクの目安を超えやすくなる結果が示されています。
参考になる数字として、厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」では、人力だけで扱う重量の目安を、18歳以上の男性で体重のおおむね40%、女性はその60%程度(体重の約24%)としています。ただしこれは荷物を持ち上げる作業の目安で、防災リュックの基準ではありません。何キロも歩いて帰ることを考えると、背負い続けられる重さはこれよりずっと軽くなると考えてください。
一括導入では全員に同じ防災リュックが届くので、体格の小さい方ほど相対的に重くなる点に注意が必要です。サンプルが届いたら、次の3点を確かめるのがおすすめです。
- 社内で一番小柄な方に背負ってもらい、階段の上り下りや早歩きができるか
- 背中に密着するか(肩ベルトやチェストベルトで調整できるか)
- 重いもの(水・食料)が背中側に入る作りになっているか
名入れとカスタマイズの入稿と校正

社名やロゴを入れると、従業員の方に「会社が用意してくれた備え」として覚えてもらいやすくなります。一方で、工程と費用が増えるので、発注前に仕組みを知っておくと安心です。
HIHのバッグへの名入れはプリントで対応していて、最低20個程度から承っています。名入れには版代のような初期費用がかかるため、少量だと1個あたりの金額がかなり上がります。50個以上になると、1個あたりのコストが薄まって現実的な金額になってきます。
名入れありの場合の流れは、おおむね次のとおりです。
- ロゴデータの入稿(できればベクターデータ。社内の広報部門が持っていることが多いです)
- レイアウト案と色の確認
- 校正(位置・サイズ・色の最終確認)
- 本生産・納品
名入れありの場合、納期は通常より2〜3週間ほど延びます。特に校正の確認に社内の決裁が必要な会社では、ここで日数がかかることがあります。校正を誰が承認するかを先に決めておくと、スケジュールが読みやすくなりますよ。
中身のカスタマイズ(追加・削減・入れ替え)も、予算や対象者に合わせてご相談いただけます。
防災セットの一括導入を納品まで進める

ここからは、実際に発注してから、従業員の手元に届くまでの工程です。当社で数百個規模のご依頼をお受けするときの実際の流れをもとにお話しします。
数百個の納品に必要なリードタイム

ご相談で最初によく聞かれるのが「在庫はありますか?」「納期はどれくらいですか?」の2つです。HIHでは、大規模な災害の直後でなければ、まとまった在庫と対応する人員を平時から確保しているので、数百個規模でも基本的には問題なく対応できます。数百個規模での目安(HIHの場合)は次のとおりです。
| 内容 | 納品までの目安(HIHの場合) | 備考 |
|---|---|---|
| 在庫品をそのまま納品 | 1〜2週間程度 | 数量・配送先の数で前後します |
| 名入れあり | 3〜4週間程度 | 校正の確定が早いほど短くなります |
| 3月・9月 | 大きな影響なし | 年度末・防災の日で少し混みますが、体制を整えています |
| 大規模災害の直後 | 通常より延びる可能性 | 全国から注文が集中するため |
気をつけたいのは、大きな災害が起きた直後です。震災のとき、福島ではガソリンを入れるのに何時間も並び、物も人も足りない状態がしばらく続きました。災害の直後は、防災用品の注文も物流も一気に集中します。「何か起きてから」ではなく、平時のうちに進めておくのがいちばん確実です。
30拠点分納と200件個別配送の実例

数百人規模になると、「全部を本社に届けて、そこから配る」とは限りません。これまでに当社でお受けしたご依頼には、次のようなものがあります。
- 30拠点への分納:本社・支店・営業所ごとに数量を分け、それぞれの拠点へ直接納品
- 従業員のご自宅200件への個別発送:会社を経由せず、従業員一人ひとりのご自宅へ直接お届け
拠点分納は、本社で仕分けて転送する手間と送料がかからないのが利点です。個別配送は、在宅勤務の方が多い会社や、「家族と一緒に備えてほしい」という福利厚生の目的に向いています。従業員の自宅備蓄として防災セットを一括導入された株式会社ボスコ・テクノロジーズ様の事例も、導入事例のページでご紹介しています。
自治会や町内会で数百世帯分をそろえる場合も、分納の考え方は同じです。総会での予算取りや補助金の確認など、団体ならではの段取りは自治会の防災セット一括購入ガイドでまとめています。
配送先リストの作り方と注意点

分納や個別配送で、納期を左右するのは実は配送先リストです。リストに不備があると、確認のやり取りで数日単位の遅れが出ます。納品方法ごとの違いを整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | 一括納品(1か所) | 拠点分納 | 従業員宅への個別配送 |
|---|---|---|---|
| リストの手間 | ほぼなし | 拠点ごとの住所・数量・担当者 | 全員分の住所・氏名・電話番号 |
| 社内の配布作業 | 全員分の仕分けと配布が必要 | 拠点内の配布のみ | ほぼなし |
| 受け取りの注意点 | 保管場所の確保 | 拠点ごとの受取時間 | 不在・転居による持ち戻り |
| 向いている会社 | 1拠点に集まって働く | 支店・営業所が多い | 在宅勤務が多い、自宅用として配る |
配送先リストでよくある不備と、その防ぎ方をまとめておきます。
- ビル名・部署名の抜け:テナントビルでは、ビル名と階数、部署名まで入れないと届かないことがあります
- 受取時間の制限:ビルの荷受け時間が決まっている拠点は、備考欄に書いておきましょう
- 受取担当者の不在:拠点ごとに担当者と電話番号を入れておくと、配送時の確認がスムーズです
- 個人宅の住所の古さ:個別配送では、人事データの住所が最新か、発送前に確認しておくと安心です
従業員の住所や電話番号を配送業者に渡す場合は、個人情報の取り扱いについて社内ルールを確認してください。必要に応じて、本人への事前告知も行いましょう。
受領・検品と配布記録の残し方

届いたら終わり、ではありません。納品後に次の3つをしておくと、数年後の担当者が困らずに済みます。
- 受領・検品:届いた箱の数と数量、外箱の破損がないかを確認します。拠点分納なら、各拠点の担当者に受領の報告をもらいましょう
- 配布記録:誰に・いつ・どの保存期限の防災リュックを渡したかを一覧にします。拠点ごとの在庫(予備分)も一緒に記録しておきます
- 入れ替えと引き継ぎのルール:退職・異動のときに回収するのか本人に渡すのか、新入社員には予備から配るのか、を決めておきます
配布記録に保存期限を入れておけば、そのまま点検表として使えます。点検は年1回、日付を決めて行うのをおすすめしています。ガイドラインでも、賞味期限切れの備蓄食料の提供は慎重に検討すべきとされています。期限管理は「あとでまとめて」ではなく、配った日から仕組みとして回すのが大切です。
見積から名入れ、拠点分納、従業員宅への個別配送、稟議用資料の作成までまとめて相談したい場合は、法人向け防災セットのサービス内容(名入れ・拠点分納・稟議用資料)もあわせてご覧ください。
防災セットの一括導入は6工程で進める
ここまでの流れを、防災セットの一括導入の6工程として整理します。
| 工程 | やること | 担当者のポイント |
|---|---|---|
| 1. 見積依頼 | 6項目を整理して依頼する | 未定の項目は「未定」で出してよい |
| 2. 数量確定 | 人数と予備分を決める | 概数で進め、最後に少量を調整 |
| 3. サンプル確認 | 中身・重さ・背負い心地を確かめる | 一番小柄な方にも背負ってもらう |
| 4. 入稿・校正 | 名入れ・カスタマイズを確定する | 校正の承認者を先に決める |
| 5. 納品 | 一括・拠点分納・個別配送で届ける | 配送先リストの不備をなくす |
| 6. 受領・配布記録 | 検品して、誰に何を渡したか記録する | 保存期限を入れて点検表にする |
6工程のうち、担当者の方が準備しておくのは「見積の6項目」と「配送先リスト」の2つだけです。あとは相談しながら決めていけば大丈夫です。
あの日を経験したからこそ思うのは、備えは「完璧にそろってから」ではなく「動き出した人から」守られるということです。従業員の方とそのご家族を守る備えを、ぜひ平時のうちに進めてください。
配備人数と納品希望時期をお知らせいただければ、構成と概算のお見積りをお出しします。数百人規模のご相談にも対応しています。
防災セットのお見積り依頼(無料)はこちら
よくある質問
Q. 数百人分の防災セットを一括導入しても、在庫は足りますか?
A. HIHでは、大規模な災害の直後でなければ、まとまった在庫と対応する人員を平時から確保しているため、数百個規模でも基本的に対応できます。災害の直後は注文が集中するため、平時のうちのご相談をおすすめします。
Q. 防災セットの一括導入で名入れをすると、納期はどれくらい延びますか?
A. 名入れありの場合、通常の納期より2〜3週間ほど延び、数百個規模では3〜4週間程度が目安です。ロゴデータの入稿と校正の承認が早いほど、納期は短くなります。
Q. 一括導入の発注後に人数が変わった場合、数量は変更できますか?
A. 最終的な少量の数量変更には柔軟に対応しています。人数の確定が遅れるのはよくあることなので、まずは概数で見積を取り、確定後に調整する進め方で問題ありません。
Q. 防災セットを従業員の自宅へ個別に配送できますか?
A. はい、対応しています。これまでに従業員のご自宅200件への個別発送や、30拠点への分納をお受けしています。住所・氏名・電話番号をまとめた配送先リストをご用意いただくとスムーズです。
数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。また文中にある画像は全てイメージ画像です。実在の人物や施設とは異なりますのでご了承ください。
🛡️ 防災士監修記事
後藤 秀和(ごとう ひでかず)
防災士/株式会社ヒカリネット 代表取締役
2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得しHIH(Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。



