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企業の防災備蓄の費用相場|1人3日分の目安と稟議の通し方

稟議書と電卓の奥に保存水と保存食が並ぶ、企業の防災備蓄費用を表すイメージ

企業の防災備蓄の費用相場|1人3日分の目安と稟議の通し方

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。

「備蓄が必要なのはわかった。で、うちの会社だといくらかかるんだろう」
「上に出す資料に、何をどう書けばいいのか」

総務や管理部門のご担当者から、こうしたご相談を本当によくいただきます。備蓄品のリストは調べれば出てくるのに、金額と、社内をどう通すかだけは誰も教えてくれない。ここが企業防災の最後の壁になっているなと感じています。

この記事でわかること

  • 従業員1人あたり・人数別の費用の目安
  • 「3日分」という数字の公的な根拠(稟議書にそのまま書けます)
  • 防災備蓄品の勘定科目と、購入年度に全額経費化できる理由
  • 稟議書に書くべき5項目と、差し戻される3つの原因
目次

企業の防災備蓄にかかる費用の目安

オフィスのラックに保存水と保存食が積まれた企業備蓄のイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

企業の防災備蓄とは、災害時に従業員が社内にとどまるために必要な水・食料・衛生用品などを、あらかじめ備えておく取り組みのことです。

そして最初に結論をお伝えします。企業の防災備蓄の費用は、従業員1人あたり3日分でおおむね4,000〜9,000円程度が一つの目安です。

防災備蓄で必要になる費用の内訳

水・保存食・簡易トイレ・毛布を分類して並べた備蓄費用の内訳イメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

費用は大きく4つに分かれます。

費目内容性質
備蓄品本体水・食料・簡易トイレ・衛生用品・毛布人数に比例して増える
保管・什器保管棚、収納ボックス、備蓄倉庫規模により発生
入替・更新賞味期限到来時の買い替え5年前後で再発生
管理工数期限管理、棚卸し、配置の周知人件費として発生

稟議書で見落とされがちなのが3つめの「入替」です。初回費用だけで申請すると、5年後にまた同じ稟議を一から起こすことになります。最初から「5年ごとに更新が必要」と書いておくほうが、結果的に社内の理解を得やすいです。

なお、どの品目をどれだけ揃えるべきかという具体的な内容は、企業の災害備蓄完全ガイドで法的義務と必要量を詳しく解説しています。まずはこの記事で金額の全体像をつかんでいただき、品目の詳細は実際に選定する段階でご覧いただくのがスムーズかなと思います。

従業員1人あたりの単価相場

1人3日分の備蓄品を前に電卓で単価を計算する手元のイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

公的な単価表というものは存在しないため、市場で流通している価格帯からの目安になります。

品目1人3日分の目安
保存水 9リットル1,000〜2,000円程度
保存食 9食1,500〜3,500円程度
簡易トイレ 15回分1,000〜2,500円程度
毛布・衛生用品ほか500〜1,500円程度
合計おおむね4,000〜9,000円程度

合計するとおおむね4,000〜9,000円程度に収まります。行政が3日分の妥当な水準として置いている上限は、1人あたり9,000円です。

この「9,000円」という上限には、実は行政側の裏付けがあります。東京都の民間一時滞在施設備蓄品購入費用補助事業では、補助対象経費が帰宅困難者1人につき累計3日分・9,000円が上限と定められています。つまり行政も「3日分の妥当な金額はおよそ9,000円まで」と置いているわけですね。稟議書の金額根拠として、この数字は非常に使えます。

従業員数別の総額の考え方

大量に積み上げられた保存水の前に立つ人物、人数規模と備蓄量を表すイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

人数が増えると、単純な掛け算では済まなくなります。

従業員数3日分の概算目安金額以外に検討すべきこと
10名規模数万円台一括購入で完結。既存の什器の一部で保管可能
50名規模十数万〜数十万円保管スペースの確保が最初の課題になる
100名以上数十万円〜期限管理の仕組み化と、フロア分散保管の設計が必要

自社の人数で正確な数量と概算を出したい場合は、防災備蓄計算ツールで人数と日数から必要量を自動計算できます。ここで出た数字を、そのまま稟議書の別紙に使っていただけます。

なぜ3日分が基準とされるのか

夕暮れのオフィスの窓辺に置かれた備蓄品と時計、72時間を象徴するイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

「なぜ3日なのか」を説明できないまま稟議に出すと、ほぼ確実に質問が返ってきます。根拠は明確にあります。

内閣府(防災担当)の「災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン」には「一斉帰宅抑制における従業員等のための備蓄の考え方」が示されており、企業に対して従業員1人あたり3日分の備蓄が求められています。東京都では帰宅困難者対策条例により、従業員1人3日分の備蓄が努力義務とされ、食料9食・水9リットル・毛布1枚が基準とされています。(出典:内閣府『帰宅困難者対策』

なぜ3日かというと、災害直後の72時間は救命・救助が最優先され、そこに大量の人が移動を始めると救助活動そのものを妨げてしまうからです。備蓄は「快適に過ごすため」ではなく、社員を動かさないための道具なんですね。ここが個人の備蓄と決定的に違う点です。

人数の数え方に注意してください。備蓄の対象となるのは正社員だけではありません。アルバイト・パート・派遣社員など、雇用形態を問わずオフィスで働くすべての人が対象です。さらに来客が数日間留まる可能性もあります。正社員の人数だけで計算した稟議書は、詳しい決裁者に必ず指摘されます。

防災備蓄品の勘定科目と経費処理

経理書類に蛍光ペンで印をつける手元、備蓄品の会計処理を表すイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

防災備蓄品の勘定科目は、金額と用途によって「消耗品費」「福利厚生費」「器具備品」に分かれます。ここは意外と知られていませんが、稟議を通すうえで強力な材料になる部分です。

原則として、使用可能期間が1年未満、または取得価額が10万円未満の什器備品の購入費は「消耗品費」として処理されます。水・食料・簡易トイレといった備蓄品の大半はここに該当します。

そして重要なのがこの点です。通常、消耗品は実際に使用して初めて経費になり、未使用分は期末に「貯蔵品」として資産に振り替える必要があります。ところが災害用の備蓄品は「備蓄すること自体」が目的であるため、備蓄を開始した時点で全額を経費として処理できるとされています。使わないまま棚に置いてあっても、事業の用に供したとみなされるという考え方です。

経理・財務が決裁ラインにいる場合の殺し文句
「購入年度に全額損金算入でき、期末に資産として残りません」
この一文があるかないかで、稟議の通りやすさは変わります。

用途によって科目が変わる点にも注意が必要です。社内で保管・使用する目的なら「消耗品費」、従業員に配布する場合は「福利厚生費」として処理するのが一般的です。10万円以上の器具備品(発電機・大型蓄電池など)は減価償却資産となります。

なお、少額減価償却資産の特例については、令和8年度税制改正で取得価額の上限が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、令和8年4月1日以後に取得して事業の用に供する資産から適用されるとされています。適用期限も令和11年3月31日まで延長されました。発電機や蓄電池のような高額品を検討している企業にとっては、追い風といえる改正です。

税務上の取り扱いは、企業の状況・会計方針・改正の施行状況によって変わります。ここに書いた内容は一般的な考え方であり、実際の処理は必ず顧問税理士にご確認ください。

企業の防災備蓄を稟議で通す手順

会議室で書類を差し出す手元、稟議申請の場面を表すイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

ここからが本題です。金額がわかっても、社内で承認されなければ1本の水も届きません。

稟議書に書くべき5つの項目

付箋を貼った5枚の書類を重ねた、稟議書の構成項目を表すイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

防災備蓄の稟議書は、次の5項目で構成すると通りやすくなります。

項目書く内容書き方の例
1. 目的何のために備えるのか災害発生時における従業員の安全確保と事業継続
2. 必要性・背景公的根拠と企業責任内閣府ガイドラインで従業員3日分の備蓄が求められている
3. 数量根拠掛け算で明示従業員○名×水9L×3日分=○L
4. 予算初期費用と更新費用を分ける初回○円/5年ごとに更新費○円を想定
5. 導入効果金額以外の価値従業員の安心確保、採用・定着への寄与、対外的な信頼

特に2番と3番が要です。「必要だと思うから」ではなく「国が求めているから」「この計算式だから」に置き換えるだけで、稟議書の説得力はまったく変わります。

そのまま使える稟議書の文例

実際の文面に落とすと、次のような形になります。○○の部分をご自身の会社の数字に置き換えてお使いください。

件名:災害時用備蓄品の購入について

目的:災害発生時における従業員の安全確保および事業継続体制の整備のため、社内備蓄品の購入を申請いたします。

背景・必要性:内閣府(防災担当)のガイドラインでは、災害時の一斉帰宅を抑制するため、企業に対し従業員1人あたり3日分の備蓄が求められています。当社は現在備蓄を保有しておらず、発災時に従業員が社内にとどまれない状況にあります。

数量根拠:対象人数○名(正社員○名、契約・派遣○名、来客想定○名)×飲料水9L・食料9食×3日分=水○L、食料○食。詳細は別紙のとおり。

予算:初回導入費用○円(1人あたり約○円×○名)。なお賞味期限到来に伴い、5年後を目安に更新費用○円の発生を見込みます。

導入効果:従業員の安全確保、発災直後の混乱下における判断の安定、および対外的な信頼性の確保。会計処理は消耗品費として購入年度に計上予定です。

ポイントは「別紙のとおり」で逃げないことです。本文にも計算式を1行入れておくと、別紙まで読まない決裁者にも根拠が伝わります。

数量と金額の根拠のまとめ方

備蓄品と電卓を並べ根拠資料をまとめる手元の俯瞰イメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

決裁者が知りたいのは、突き詰めると「その数字は誰が決めたのか」の一点です。

稟議書にそのまま書ける根拠の型

  • 数量根拠:従業員○名 × 水9L・食料9食 × 3日分(内閣府ガイドラインに基づく)
  • 金額根拠:1人あたり○円 × ○名(東京都の補助制度では3日分の上限を1人9,000円と設定)
  • 人数根拠:正社員○名+契約・派遣○名+来客想定○名=○名

この3つを別紙1枚にまとめて添付するだけで、質問の大半は事前に潰せます。私が法人のご担当者とお話しするときも、まずこの1枚を一緒に作るところから始めることが多いです。

もう一つ、忘れられがちなのが保管場所の記載です。数量と金額が完璧でも「それ、どこに置くの」と聞かれて答えられず差し戻されるケースは本当に多いです。備蓄品は水だけでも100名規模で900リットル、段ボールにすると相当な体積になります。「◯階倉庫に○段ラックを設置し、○㎡を使用」まで書いておくと、その場で決裁されやすくなります。棚が必要なら、その費用も予算欄に含めておいてください。

稟議が通らない3つの理由

薄暗い会議室のテーブルに残された書類、差し戻された稟議を表すイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

差し戻される稟議には、はっきりした共通点があります。

  1. 数量の根拠がない——「だいたい100人分」では、なぜ100なのかを説明できません。掛け算の式を必ず書きます。
  2. 人数の定義が甘い——正社員のみで計算し、派遣・パート・来客が抜けている。後から追加購入になると二度手間です。
  3. 費用対効果が語られていない——備蓄は売上を生みません。だからこそ「法的責任」「従業員の安全」「対外的な信頼」という金額以外の価値を書く必要があります。

3つめについて、私自身の経験からお伝えしたいことがあります。

2011年3月11日、私は福島市の事務所で被災しました。信号が止まり渋滞した道を、帰宅に40分かかりました。停電は2〜3日、断水は2日、スーパーは1週間閉まったままでした。ガソリンスタンドには3日連続で並び、そのたびに6時間かかりました。

あのとき私が痛感したのは、備えは「安心を買うもの」ではなく「落ち着いて判断するための時間を買うもの」だということです。水と食料が社内にあるという事実だけで、担当者は「まず社員を動かさない」という正しい判断ができます。備蓄の本当の効果は、混乱の中で判断を誤らないことです。稟議書の「導入効果」欄には、ぜひこの視点を書き添えてみてください。

補助金と税制優遇で負担を下げる

朝の光が差すオフィスのデスクと書類、制度活用による負担軽減を表すイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

予算が厳しい場合、実質負担を下げる選択肢があります。ただし期待しすぎないほうがよい、というのが正直なところです。

従業員用の備蓄品そのものへの直接補助は、多くの制度で対象外とされています。一方で、事業継続力強化計画の認定を受けると、税制措置・金融支援・各種補助金の加点といった措置が受けられます。設備投資については特別償却16%の対象となる制度もあります。

制度の全体像と、個人・企業それぞれが使えるものについては防災の補助金の対象と探し方をまとめた記事で詳しく整理していますので、あわせてご覧ください。

補助金の申請には時間がかかり、年度予算の制約も受けます。「補助金が取れたら備える」と決めた会社は、たいてい何年も備えないまま時間が過ぎていきます。まず必要最低限を確保し、拡充のときに制度を使う。この順番をおすすめします。

まとめ企業の防災備蓄と予算確保

オフィスの備蓄棚を2人で確認する後ろ姿、備蓄導入完了を表すイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

要点を整理します。

  • 費用の目安は1人3日分でおおむね4,000〜9,000円程度
  • 「3日分」の根拠は内閣府ガイドラインと自治体条例。稟議書にそのまま書ける
  • 人数は正社員だけでなく派遣・パート・来客まで含めて数える
  • 備蓄品は備蓄開始時点で全額経費化できるとされている(要・税理士確認)
  • 稟議書は目的・必要性・数量根拠・予算・導入効果の5項目で構成する
  • 初回費用だけでなく5年ごとの更新費用も最初から書いておく

今日できる3つのこと

  • 対象人数を確定させる(正社員+非正規+来客想定)
  • 人数×9L×3日分で必要量を算出する
  • 1人あたり単価の幅を使って、概算総額を出す

企業の防災備蓄は、決めてしまえば1日で形になります。止まっているのはたいてい「金額の根拠が作れない」という一点だけです。

HIHでは、法人向けのご相談に対して必要数量の算出から見積書・商品仕様書・数量算出表の作成まで対応しています。稟議に添付する資料が必要な場合もご相談いただけますので、法人向け防災備蓄・BCP対応の詳細はこちらをご確認ください。

数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。税務上の取り扱いおよび補助・税制の内容は改正により変更される場合があります。

よくある質問

Q. 企業の防災備蓄は1人あたりいくらかかりますか?

A. 3日分でおおむね4,000〜9,000円程度が目安です。内訳は保存水9リットル、保存食9食、簡易トイレ15回分、毛布や衛生用品などです。東京都の民間一時滞在施設向け補助では、3日分の補助上限が1人9,000円と設定されており、相場の裏付けになります。

Q. 企業の防災備蓄に法的な義務はありますか?

A. 国レベルでは内閣府のガイドラインで従業員1人3日分の備蓄が求められています。東京都のように条例で努力義務として定めている自治体もあります。罰則を伴う義務ではありませんが、従業員の安全配慮義務の観点から、実質的に備えが求められていると考えるのが妥当です。

Q. 防災備蓄品の勘定科目は何になりますか?

A. 取得価額10万円未満のものは一般に「消耗品費」で処理します。従業員に配布する場合は「福利厚生費」となることが多く、10万円以上の器具備品は減価償却資産です。災害用備蓄品は備蓄開始時点で全額経費にできるとされていますが、最終的な処理は顧問税理士にご確認ください。

Q. 企業の防災備蓄で対象に含める人数はどう数えますか?

A. 正社員だけでなく、アルバイト・パート・派遣社員など雇用形態を問わずオフィスで働くすべての人が対象です。加えて、災害時に来客が数日間留まる可能性も想定し、余裕を持った人数で計算することが推奨されます。ここを正社員のみで計算すると、稟議で差し戻される原因になります。

🛡️ 防災士監修記事

後藤 秀和(ごとう ひでかず)

防災士/株式会社ヒカリネット 代表取締役

2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得し、防災ブランド HIH(エイチアイエイチ/Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。

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この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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