企業防災の進め方|担当者が最初にやる10ステップ【保存版】

企業防災の進め方|担当者が最初にやる10ステップ【保存版】
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
ある日突然「防災担当」を任されて、何から手をつけていいか分からず戸惑っていませんか。総務や人事の兼任で任されるケースも多く、引き継ぎ資料もないまま「とりあえず備蓄を」と言われて困っている方も少なくないはずです。備蓄品を揃える前に、実はもっと基本的な準備があります。
企業防災の進め方とは、従業員数やリスクの現状把握から始め、備蓄の棚卸し・発注・保管・点検までを段階的に整える取り組みのことです。
企業防災の進め方は、「現状把握」「計画」「運用」の3段階で進めると、担当者一人でも迷わず着手できます。
この記事でわかること:担当者が最初に行う3つの準備と、備蓄を整える実践7ステップ(あわせて10のアクション)です。
防災士として300社以上の法人備蓄支援に携わってきましたが、初めて防災担当になった方がつまずくポイントには共通点があります。それは「備蓄品を何個買うか」から考え始めてしまうことです。実際には、その前にやるべき確認作業があります。この記事では、担当者が最初に行うべき3つの準備と、実践7ステップ(あわせて10のアクション)を順を追って解説します。
企業防災の進め方|担当者が最初に行う3つの準備
備蓄品の発注や予算の話に入る前に、まず自社の状況を把握しておく必要があります。ここを飛ばして発注から始めると、後になって「人数が合っていなかった」「想定していたリスクと違った」と数量や予算を組み直すことになりがちです。急がば回れで、まずは次の3つを押さえておきましょう。
従業員数と在席状況を確認する

最初に確認すべきは、正社員だけでなく、パート・アルバイト・派遣社員を含めた在席人数です。オフィス勤務者と外回りの多い営業職では、災害発生時に社内にいる可能性が大きく異なります。フロアが複数階にわたる場合や、複数拠点がある場合は、拠点ごとの人数も把握しておきましょう。
人事システムの在籍者数をそのまま使うと、実際の在席人数とずれることがあります。シフト制や在宅勤務が多い会社では、ある時間帯にオフィスにいる最大人数を基準にするほうが実態に近くなります。来客が多い業種であれば、従業員数に加えて来客分の余裕も見込んでおくと安心です。この人数が、後のステップで備蓄の必要数量を計算する際の基礎データになります。
想定される災害リスクを確認する

次に、自社の立地でどのような災害が想定されるかを確認します。地震だけでなく、河川の近くであれば水害、沿岸部であれば津波、地下や低層階に拠点があれば浸水被害、盛土や谷地形の周辺であれば土砂災害や液状化など、地域によってリスクは異なります。ハザードマップは自治体のサイトで公開されているので、まずはそこで自社の立地を確認するのが手早い方法です。
拠点が複数ある会社は、拠点ごとにハザードマップを確認しておくことをおすすめします。本社は内陸で安全でも、支店や倉庫が浸水想定区域にある、というケースは珍しくありません。リスクが拠点ごとに違えば、備蓄の内容や優先順位も変わってきます。
あわせて押さえておきたいのが、事業継続計画(BCP)との関係です。BCPとは何かを理解しておくと、防災備蓄が「命を守るための備え」であると同時に「事業を止めないための備え」でもあることが見えてきます。帝国データバンクの2025年調査では、BCPを策定している企業は大企業で38.7%、中小企業では17.1%にとどまり、その差は年々広がっているとされています。中小企業ほど、備蓄と一緒にBCPの検討を進めておく価値があります。
2011年3月11日、私は福島で東日本大震災を経験しました。あのとき、職場や地域で「誰が何をすべきか」があらかじめ決まっていないことが、どれほど混乱を生むかを痛感しました。リスクを確認する作業は地味に見えますが、いざというときの判断のスピードを左右します。
帰宅困難者の発生を想定する

都市部のオフィスでは特に、大規模地震の直後に従業員が一斉に徒歩で帰宅しようとすることで、道路に人が集中し、緊急車両が通行できなくなったり、密集した人の流れの中で将棋倒しのような事故が起きやすくなるとされています。人が密集した状態では、後方からのわずかな圧力が前方へ波のように伝わり、群衆内の圧力が急激に高まることが将棋倒しの一因になると考えられています。こうした事態を避けるため、自治体は「一斉帰宅抑制」を呼びかけています。
東京都は帰宅困難者対策条例(平成24年3月制定・平成25年4月施行)で、事業者に対して従業員の3日分の飲料水・食料等を備蓄するよう努力義務を課しています。内閣府の資料によれば、発災後3日目までは救命救助・消火活動が優先され、4日目以降に帰宅支援体制へ移行していくため、3日分の備蓄が一つの目安とされています。1人あたりの目安は水が1日3リットルで計9リットル、主食は1日3食で計9食とされていますが、これはあくまで一般的な目安なので、自社の状況に合わせて調整してください。
「施設内待機」という言葉もあわせて覚えておくと役立ちます。これは、むやみに帰宅させず、安全が確認できるまで従業員をオフィス内にとどめる考え方です。自治体が指定する一時滞在施設への避難とは異なり、まずは自社の建物内で待機できる体制を整えることが、帰宅困難者対策の基本になります。
企業防災の進め方|実践7ステップ
現状把握が終わったら、いよいよ具体的な備蓄計画に入ります。ここからは、棚卸し・数量計算・予算・稟議・発注・保管・点検という7つのステップを、順番に進めていきます。一気に全部を終わらせようとせず、まずは棚卸しから着手すれば大丈夫です。
現在の備蓄を棚卸しする

すでに何らかの備蓄品がある場合は、まず現物を確認しましょう。水や食料は賞味期限切れになっていないか、乾電池やモバイルバッテリーは劣化していないかをチェックします。簡易トイレや衛生用品、女性従業員がいる職場であれば生理用品なども、意外と見落とされがちな品目です。「何を」「どれだけ」備えるべきかの全体像は、企業の災害備蓄完全ガイドにまとめているので、棚卸しのチェックリスト代わりに使ってみてください。
不足数量を計算する

在席人数と現在の備蓄量が分かれば、不足数量の計算はそれほど難しくありません。防災備蓄 計算ツールに人数と備蓄日数を入力すると、必要な水・食料・トイレなどの数量を自動で算出できます。手計算だと抜け漏れが出やすいので、こうしたツールを一度使っておくと安心です。
食料は「ローリングストック」の考え方を取り入れると管理がしやすくなります。備蓄用に買った食品を日常の社内備品としても消費し、消費した分を買い足していく方法で、賞味期限切れをまとめて廃棄するリスクを減らせます。
予算を設定する

| 従業員規模 | まず優先すべきこと | 理由 |
|---|---|---|
| 20人未満(小規模) | 小口予算で最低限の水・食料の確保 | 意思決定者が少なく即断しやすいため、棚卸しより先に着手しやすい |
| 20〜100人(中規模) | 在席人数の正確な把握とBCPとの接続 | 拠点が複数になりやすく、帰宅困難者の想定人数がぶれやすい |
| 100人以上(大規模) | 予算化と保管場所の分散管理 | 全量を1か所に集約しにくく、拠点ごとの点検ルール整備が必須になる |
必要数量が分かったら、予算感をつかみます。備蓄品は一度にすべて揃える必要はなく、水・食料などの最優先品目から着手し、翌年度以降にトイレや資機材を追加していく分割購入でも構いません。総務・経営層に説明する際は、上の比較表のように「規模に応じて優先順位が変わる」ことを添えると、稟議が通りやすくなります。
予算取りの際は、単年度の購入費だけでなく、翌年以降の入れ替え費用も見込んでおくと後々楽になります。水や食品は数年で入れ替えが必要になるため、初年度に全額を使い切るより、毎年少しずつ更新していく前提で計画を立てるほうが現実的です。
稟議を通し発注する

予算が固まったら、社内稟議に進みます。稟議書には「なぜ必要か(法的根拠・条例の努力義務)」「いくらかかるか」「いつまでに揃えるか」を簡潔に書くと通りやすくなります。前段で確認した在席人数・リスク・帰宅困難者の想定を根拠として添えると、説得力が増します。
発注先は、消費期限の長い保存食や、法人向けにまとめて対応してくれる業者を選ぶと、その後の管理が楽になります。人数分をまとめて発注できるか、追加発注のしやすさはどうかも、選定時に確認しておきたいポイントです。
保管場所を決定する

発注した備蓄品は、直射日光や高温多湿を避けられる場所に保管します。全量を1か所に集約すると、その場所が被災した際に使えなくなるリスクがあるため、拠点や階層ごとに分散して保管するのが望ましいとされています。持ち出しやすさも考え、避難経路の近くに一部を置いておくと安心です。
倉庫や書庫の一角を使う場合は、施錠管理と持ち出しやすさのバランスも考えておきましょう。誰でも自由に持ち出せる状態だと日常的に減っていってしまいますし、逆に管理を厳しくしすぎると、いざというときにすぐ取り出せなくなってしまいます。保管場所を決めたら、社内掲示やイントラネットなどで従業員全員に周知しておくことも忘れないようにしましょう。
年1回点検し備蓄を見直す

備蓄は「揃えたら終わり」ではありません。年に1回は棚卸しを兼ねた点検日を決め、賞味期限・使用期限、在籍人数の変化(増員・拠点統合など)を確認しましょう。9月1日の「防災の日」や、防災週間に合わせて点検日を固定すると、忘れずに続けやすくなります。
点検の記録は簡単なチェックシートで構わないので、必ず残しておきましょう。点検日をカレンダーに登録し、担当が異動しても引き継げる形にしておくことが、備蓄を形骸化させないコツです。
ここまでの7ステップを自社の担当者だけで整えるのが難しい場合は、法人向け防災セットの詳細も選択肢になります。人数分の備蓄をセットでまとめて用意でき、棚卸しや発注の手間を減らせます。
まとめ|企業防災の進め方3段階

企業防災の進め方は、「現状把握(人数・リスク・帰宅困難者の想定)」「計画(棚卸し・数量計算・予算・発注)」「運用(保管・年1回点検)」の3段階で整理すると迷いません。最初の一歩は、備蓄品を選ぶことではなく、自社の従業員数と想定リスクを確認することです。
すべてを一度に完璧に整える必要はありません。まずは現状把握から始め、できるところから一つずつ埋めていく、という進め方で十分です。そこさえ押さえれば、あとは順番に進めるだけです。
よくある質問
Q. 企業防災の進め方は何から始めればいいですか?
A. 備蓄品を選ぶ前に、従業員数・在席状況の確認と、自社の立地で想定される災害リスクの確認から始めるのがおすすめです。この現状把握があると、後の数量計算や予算設定がスムーズになります。
Q. 企業の備蓄は何日分用意すればいいですか?
A. 内閣府の資料では3日分が一つの目安とされ、1人あたり水9リットル・主食9食が目安とされています。東京都の帰宅困難者対策条例でも、事業者に3日分の備蓄が努力義務として求められています。ただし業種や立地によって適切な日数は変わるため、自社の状況に合わせて調整してください。
Q. 防災備蓄の予算はどう決めればいいですか?
A. 最初からすべてを揃える必要はなく、水・食料などの最優先品目から着手し、翌年度以降に段階的に追加していく方法もあります。従業員規模によって優先すべき項目が変わるため、まず自社の規模に応じた優先順位を整理してから予算を組むと稟議が通りやすくなります。
Q. BCPと防災備蓄はどう違うのですか?
A. 防災備蓄は主に従業員の安全確保を目的とした備えです。一方でBCP(事業継続計画)は、災害後も重要業務を止めない、または早期に再開するための計画です。両者は別物ですが、備蓄はBCPを支える土台の一つになります。
Q. 防災担当者が異動したときの引き継ぎはどうすればいいですか?
A. 在席人数・備蓄場所・点検日・発注先をまとめた簡単な引き継ぎシートを作っておくと安心です。年1回の点検記録を残しておけば、新しい担当者もそれを見るだけで状況を把握でき、備蓄計画が途切れずに続けられます。
数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。
🛡️ 防災士監修記事
後藤 秀和(ごとう ひでかず)
防災士/株式会社ヒカリネット 代表取締役
2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得しHIH(Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。



