自主防災組織とは|自治会との違い3タイプと組織図【保存版】

自主防災組織とは|自治会との違い3タイプと組織図【保存版】
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
自治会の役員になったら「防災担当もお願いします」と言われた。回覧板で「自主防災組織」という言葉を見かけたけれど、自治会と何が違うのかよくわからない。そんな方は多いのではないでしょうか。
この記事では、自主防災組織とは何かを簡単に整理したうえで、自治会との違い、組織図と班の役割、そして実際の作り方までを順番に解説します。
自主防災組織とは何かを簡単に解説

自主防災組織とは、地域の住民が「自分たちのまちは自分たちで守る」という考えのもとに自発的につくる防災組織のことで、多くは自治会・町内会を単位に結成されます。
自主防災組織は、自治会の中に「防災の役割分担」をつくる仕組みで、形・班・規約を決めて市町村に届け出れば結成できます。
この記事でわかること
- 自主防災組織が法律でどう位置づけられているか
- 自治会との違いと、組織の形3パターンの比較
- 組織図と班の役割、平常時・災害時の活動
- 結成までの5つのステップと、続けるための工夫
自主防災組織が生まれた背景と法律

自主防災組織は、ふわっとした「ご近所の助け合い」ではなく、法律に根拠のある組織です。災害対策基本法の第5条第2項では、市町村は「住民の隣保協同の精神に基づく自発的な防災組織」の充実に努めなければならない、とされています。この「自発的な防災組織」が、一般に自主防災組織と呼ばれているものです。
災害対策基本法は、伊勢湾台風の被害をきっかけに昭和36年に成立しました。ただ、この時点では「自主防災組織」という言葉はまだ使われていませんでした。この言葉が法律に初めて登場したのは、平成7年の阪神・淡路大震災を受けた同年12月の改正で、このとき育成が行政の責務のひとつとして明記されたとされています。大きな災害のたびに、地域の力の大切さが見直されてきたんですね。
いまでは全国の多くの地域に広がっています。令和6年4月1日現在、全国1,741市区町村のうち1,697市区町村で16万7,233の自主防災組織が設置されています。全世帯のうち自主防災組織の活動範囲に含まれる世帯の割合(活動カバー率)は、全国で85.4%とされています。
「隣保協同(りんぽきょうどう)」とは、隣近所の家々が役割を分担しながら、力を合わせて助け合うことです。少し古い言葉ですが、自主防災組織の規約にもよく出てくるので、覚えておくと役立ちます。
自助と共助と公助の中での役割

防災では、「自助(自分と家族で守る)」「共助(地域で助け合う)」「公助(行政が支える)」の3つがよく言われます。自主防災組織が担うのは、このうちの「共助」です。
ここで少し「防災理科」的に、なぜ共助が欠かせないのかを考えてみましょう。ふだん火事やけがが起きたときは、119番に電話すれば消防や救急が来てくれます。これは、出動の要請が「ときどき、ばらばらに」起きるから成り立つ仕組みです。
ところが大地震では、この前提が崩れます。広い範囲で電話がつながりにくくなり、火災や建物の閉じ込めが同時に、あちこちで起こります。消防の力は一か所に集中できず、分散してしまいます。さらに道路の寸断や渋滞で、現場までたどり着くこと自体が難しくなります。助けを求める数が、助けられる数を一気に上回ってしまうんですね。
| 救助した人 | 割合 |
|---|---|
| 自力で | 34.9% |
| 家族に | 31.9% |
| 友人・知人に | 28.1% |
| 通行人に | 2.6% |
| 救助隊に | 1.7% |
※兵庫県南部地震で生き埋めや閉じ込めから救助された人の内訳とされる数字です(日本火災学会「兵庫県南部地震における火災に関する調査報告書」より)。
この数字を見ると、発災直後に命を救ったのは、ほとんどが自分自身・家族・近所の人だったことがわかります。阪神・淡路大震災では、地域の住民が協力して初期消火を行い延焼を防いだ例や、救助作業で命を救った例が数多く見られたと、国の白書でも紹介されています。
2011年3月11日、私は福島で東日本大震災を経験しました。あの日を経験したからこそ、行政の支援が届くまでの時間を、地域でどう乗り切るかがいちばん大事だと感じています。自主防災組織は、その「最初の時間」を支えるための仕組みなんですね。
自治会との違いは組織の形で決まる

「自主防災組織と自治会は何が違うの?」という疑問は、とてもよく聞きます。ひとことで言えば、自治会は地域のさまざまな活動(親睦・清掃・防犯など)を行う組織で、自主防災組織は防災活動を目的とした組織です。ただ、実際にはメンバーがほとんど重なっていることが多く、両者の関係は「どういう形で作るか」によって変わります。
町内会・自治会を土台にした自主防災組織には、大きく3つのタイプがあります。
| タイプ | 組織のつくり | 長所 | 短所 |
|---|---|---|---|
| 重複型 | 自治会の役員が、そのまま自主防災組織の役員を兼ねる | 組織づくりが簡単で、活動を続けやすい。住民にとって組織の状況がわかりやすい | 自治会の役員交代によって、活動方針や熱意が変わりやすい |
| 下部組織型 | 自治会長(=自主防災組織の会長)の下に、防災部など独自の役員を置く | 組織づくりが比較的簡単。会長以外の役員の負担が軽い | 重複型と同じく、自治会の役員交代の影響を受けやすい |
| 別組織型 | 自治会が中心になって、自治会とは別の組織として作る | 役員全体の負担が軽い。経験が積み重なり、専門性や独自性を発揮しやすい | 地域内にリーダーが2人いる形になり、混乱が起きやすい |
※長所・短所は帯広市の自主防災組織マニュアルの整理をもとにまとめています。
どれが正解ということはありません。小さな自治会なら重複型で始めて、活動が育ってきたら防災部を作る(下部組織型にする)という流れも自然かなと思います。自治会の中に防災部を置いて、それを自主防災組織として届け出ている地域もあります。
なお、補助金を申請するときは「自治会名義」か「自主防災組織名義」かで使える制度が変わることがあります。その違いは自主防災組織の補助金の探し方と確認5項目で詳しく解説しています。
自主防災組織の組織図と班の役割

自主防災組織の組織図は、会長(本部)の下に、役割ごとの班を置く形が基本です。自治体の手引きでは、次のような班編成の例がよく紹介されています。
| 班 | 主な役割(災害時) |
|---|---|
| 本部(会長・副会長) | 全体の指揮、市町村や消防との連絡 |
| 情報班 | 被害や安否の情報を集め、住民や本部に伝える |
| 消火班 | 出火の防止、初期消火 |
| 救出・救護班 | 閉じ込められた人の救出、けが人の応急手当 |
| 避難誘導班 | 避難の呼びかけ、要配慮者の避難支援、人数の確認 |
| 給食・給水班 | 炊き出し、水や救援物資の配分への協力 |
「うちの自治会は世帯が少ないから、こんなに班を作れない」という場合は、1人が複数の班を兼ねても大丈夫です。大切なのは、いざというときに「誰が何をするか」が決まっていることなんですね。
班ごとにどんな道具(防災資機材)をそろえればいいかは、自主防災組織の6班別にそろえる防災資機材リストで一覧にしています。
平常時と災害時にする活動

自主防災組織の活動は、「平常時」と「災害時」の2つに分けて考えるとわかりやすいです。
| 時期 | 主な活動 |
|---|---|
| 平常時 | 防災知識の普及(回覧・講座)、防災訓練、地域の危険箇所の確認、防災資機材や備蓄品の点検、高齢者など要配慮者の把握、連絡網づくり |
| 災害時 | 安否確認、情報の収集と伝達、初期消火、救出・救護、避難誘導、避難所運営への協力、炊き出し |
災害時にできることは、平常時にやっていたことだけです。訓練で一度も使ったことのない道具を、本番でいきなり使いこなすのは難しいものです。だからこそ、平常時の活動が自主防災組織の中心になります。
自主防災組織の作り方と活動を続けるコツ

ここからは、まだ自主防災組織がない自治会が、実際に結成するまでの流れと、結成した後に活動を続けるための工夫を紹介します。
結成までの5つのステップ

自主防災組織の作り方は、市町村によって細かい違いはありますが、おおむね次の5つのステップで進みます。
- 話し合いの場をつくる:役員会や総会、回覧などで、防災の必要性を住民に伝え、結成に向けた話し合いを始めます
- 規模と範囲を決める:自治会全体で1つにするか、大きな自治会なら地区ごとに分けるかを決めます
- 組織の形と班編成を決める:重複型・下部組織型・別組織型のどれにするか、どんな班を置くかを決めます
- 規約と活動計画をつくる:組織の名前・目的・役員・活動内容などを規約にまとめます
- 総会で決めて、市町村に届け出る:規約と役員を総会で承認し、結成届を市町村に提出します
最初から完璧を目指さなくて大丈夫です。まずは「会長と各班の担当者」「年1回の訓練」「連絡網」の3つが決まれば、組織としては十分に動き出せます。
規約と活動計画のつくり方

規約は、自主防災組織の「ルールブック」です。多くの市町村が規約のひな形を公開しているので、それをもとに地域の実情に合わせて作るのが早いです。規約に入れておきたい主な項目は次のとおりです。
- 名称(〇〇自治会自主防災会 など)と、活動拠点(集会所など)
- 目的(隣保協同の精神に基づき、災害による被害の防止と軽減を図る など)
- 事業(防災知識の普及、訓練、災害時の応急活動 など)
- 会員と役員(会長・副会長・班長)、任期
- 会議(総会・役員会)と、会計(経費は自治会費などから)
規約とあわせて、年間の活動計画もつくっておきましょう。たとえば次のような形です。
| 時期の例 | 活動 |
|---|---|
| 春 | 総会で計画と予算を承認、連絡網の更新 |
| 夏 | 防災資機材・備蓄品の点検 |
| 秋 | 防災訓練(9月の防災週間などに合わせる) |
| 冬 | 役員会で振り返り、来年度の計画と見積もり |
年間計画の「夏:備蓄品の点検」で何を確認すればいいか、そもそも防災倉庫に何を備えておくかは、自治会の防災倉庫の中身リストと管理のポイントを参考にしてください。
結成届と市町村の支援制度

結成したら、市町村の防災担当課に結成届を出します。届け出ておくことで、市町村の支援制度を使えるようになる場合が多いです。
実際に、令和5年度には全国の1,024市区町村が資機材の購入費や運営費の補助を行い、176市区町村が資機材などの現物支給を行っています。訓練へのアドバイスや職員の派遣、資機材の貸し出しを行っている市町村もあります。(出典:総務省消防庁『令和6年版 消防白書』)
支援の内容や条件は、市町村によって大きく異なります。結成届の様式や、補助の対象・申請時期は、お住まいの市区町村の防災担当課でご確認ください。
担い手不足を防ぐ運営の工夫

自主防災組織は、作ること以上に「続けること」が難しいと言われます。役員が毎年交代して引き継ぎがうまくいかない、訓練に来るのがいつも同じ顔ぶれ、という悩みはよく聞きます。
私の会社がある福島市でも、市がまとめた「自主防災組織活動支援マニュアル」の中で、防災活動だけを続けているとマンネリ化して参加者が減り、活動が停滞してしまうことが指摘されています。そのうえで、地域のさまざまなイベントや活動と防災を組み合わせること、消防団や女性防火クラブ、地域の団体、事業所などと連携することが、活性化と継続につながるとしています。
- 行事と組み合わせる:夏祭りや清掃活動の日に、消火器の使い方や備蓄品の確認を少しだけ入れる
- 引き継ぎを紙に残す:規約・連絡網・資機材の一覧・年間計画を1冊のファイルにまとめる
- 若い世代の入口をつくる:子ども会や学校と一緒に訓練をすると、親世代も参加しやすくなる
- 役割を小さく分ける:「班長」ではなく「点検の日だけ手伝う」など、関わり方を選べるようにする
行事と組み合わせる工夫のひとつとして、訓練や行事の日に全世帯へ防災セットを配り、家庭の備えを見直すきっかけにしている地域もあります。自主防災組織の活動は、各家庭が最初の数日をしのげることが前提になるので、組織の備えと家庭の備えを同時に進められる方法なんですね。人数や予算に合わせた町内会・自治会向けの防災用品のご相談も受け付けていますので、結成後の最初の一歩として検討してみてください。
まとめ自主防災組織とは地域の備え

自主防災組織とは、行政の支援が届くまでの時間を、地域の力で乗り切るための仕組みです。法律に根拠があり、全国の多くの地域で、自治会・町内会を土台に作られています。組織の形・班・規約を決めれば結成でき、あとは平常時の活動を少しずつ積み重ねていくことが大切です。
結成・見直しのチェックリスト
- 組織の形(重複型・下部組織型・別組織型)を決めたか
- 会長と各班の担当者が決まっているか
- 規約と年間の活動計画があるか
- 市町村に結成届を出し、支援制度を確認したか
- 連絡網と要配慮者の情報を更新しているか
- 年1回以上、訓練と資機材の点検をしているか
大切な人を、死なせない。絶望させない。そのために、一人ひとりの備えと、地域の助け合いの両方を、少しずつ育てていけたらと思います。
数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。自主防災組織の結成や支援制度については、お住まいの市区町村の防災担当課にご確認ください。
よくある質問
Q. 自主防災組織とは、簡単に言うと何ですか?
A. 地域の住民が「自分たちのまちは自分たちで守る」という考えで自発的につくる防災組織です。災害対策基本法にも位置づけられていて、多くは自治会・町内会を単位に結成されます。平常時は訓練や点検、災害時は安否確認や初期消火、避難誘導などを行います。
Q. 自主防災組織と自治会の違いは何ですか?
A. 自治会は親睦・清掃・防犯など地域のさまざまな活動を行う組織で、自主防災組織は防災活動を目的とした組織です。メンバーが重なることが多く、自治会の役員が兼ねる形、自治会の中に防災部を置く形、別の組織として作る形などがあります。
Q. 自主防災組織には必ず入らないといけませんか?
A. 自主防災組織は住民が自発的につくる任意の組織です。ただ、災害時の安否確認や避難の支援は地域の協力があってこそ成り立つため、できる範囲で参加しておくと安心です。具体的な運営は、各組織の規約で確認してください。
Q. 自主防災組織の作り方を教えてください。
A. 話し合いの場をつくる、規模と範囲を決める、組織の形と班編成を決める、規約と活動計画をつくる、総会で決めて市町村に届け出る、の5つのステップで進めるのが一般的です。多くの市町村が規約のひな形を公開しているので、活用すると早く進められます。
Q. 自主防災組織をつくると、どんな支援が受けられますか?
A. 市町村によっては、防災資機材の購入費や運営費の補助、資機材の現物支給や貸し出し、訓練へのアドバイスなどの支援があります。内容や条件は市町村ごとに異なるため、防災担当課に確認してください。
🛡️ 防災士監修記事
後藤 秀和(ごとう ひでかず)
防災士/株式会社ヒカリネット 代表取締役
2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得しHIH(Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。



