6月14日に起きた災害|岩手・宮城内陸地震と土砂崩れから学ぶ防災カレンダー

6月14日に起きた災害|岩手・宮城内陸地震と土砂崩れから学ぶ防災カレンダー
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
6月14日は、過去にどのような災害が起きた日なのでしょうか。
2008年のこの日、岩手県と宮城県の県境付近を震源とする大きな地震が発生しました。マグニチュード7.2、最大震度6強。「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」と気象庁が命名したこの地震は、建物被害よりも土砂崩れの多さが際立った、特徴的な内陸型地震でした。
この記事では、6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震の概要を振り返りながら、この地震が私たちに残した教訓、とくに土砂崩れの備えについて防災士の視点で解説します。
過去の災害を知ることは、不安をあおるためではありません。同じ被害を繰り返さないために、今の暮らしを見直すきっかけにするためです。
6月14日・岩手宮城内陸地震の記録
2008年6月14日に何が起きたのか

2008年6月14日午前8時43分、岩手県内陸南部の深さ約8kmを震源とする地震が発生しました。マグニチュードは7.2。岩手県奥州市と宮城県栗原市では最大震度6強を観測し、宮城県大崎市でも震度6弱を記録しています。
揺れは非常に広範囲に及び、宮城・岩手・秋田・山形・福島・青森の東北各県はもちろん、栃木・茨城・埼玉・千葉・東京・北海道まで震度3以上を観測した地域が広がりました。
気象庁はこの地震を「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」と正式に命名しています。
この地震は内陸型(活断層型)地震であったため、津波は発生しませんでした。しかし、それが「山間部での土砂崩れ」という別の脅威を際立たせる結果にもなりました。
震度6強・M7.2が引き起こした被害の規模

内閣府・消防庁の資料によると、この地震による被害は以下のとおりです(資料の時点や集計方法により数値に差がある場合があります)。
| 項目 | 被害状況 |
|---|---|
| 死者・行方不明者 | 23人(資料・時点により差あり) |
| 負傷者 | 426〜449人(資料による差あり) |
| 住宅全壊 | 23棟 |
| 住宅半壊 | 65棟 |
| 住宅一部破損 | 1,122棟以上 |
| 主な被害地域 | 岩手県奥州市・一関市、宮城県栗原市 |
数字だけ見ると「建物被害は意外と少ない」と感じるかもしれません。しかしこの地震の本当の被害は、建物の外で起きていました。山間部で発生した大規模な土砂崩れが、集落を孤立させ、道路を寸断し、多くの命に関わる状況をつくりだしたのです。
宮城県栗原市の駒の湯温泉では、土石流が発生し宿泊客が被害を受けました。栗原市や奥州市の山間集落では、孤立した地域が相次ぎ、救助・支援活動が長期にわたって続けられることになります。
地震による土砂崩れが被害を広げた要因

この地震の最大の特徴は、内閣府も指摘しているとおり、「同規模の地震と比較して建物被害が少なく、土砂災害が突出して多かった」点にあります。なぜこれほどまでに土砂崩れが多発したのでしょうか。
震源周辺の栗駒山周辺は、火山活動によって形成された地盤が広がるエリアです。火山性の堆積物や凝灰岩(火山灰が固まった岩石)は、水分を含むともろくなりやすい性質を持っています。震源の深さがわずか約8kmと浅かったことも、地表への揺れのエネルギーを大きくした要因の一つとされています。
宮城県栗原市の荒砥沢ダム上流では、日本でも有数規模とされる大規模な地すべりが発生しました。崩落地の最大落差は148m、土砂が水平距離で300m以上も移動した箇所が確認されています(国土地理院資料)。山の斜面が丸ごと動いたとも表現できるような規模で、この地震がいかに地盤に大きな衝撃を与えたかがわかります。
地震直後の降雨でも土砂崩れのリスクは高まります。気象庁はこの地震の翌日、岩手・宮城・秋田の各県に対して土砂災害警戒情報の発表基準を通常より引き下げる「暫定基準」を設けて運用しました。地震後の雨には、通常以上の注意が必要です。
活断層が動いたメカニズムを知る

岩手・宮城内陸地震は、気象庁の分析によると「西北西〜東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型の地殻内地震」でした。これはどういう意味でしょうか。
日本列島はプレートの動きによって、東西方向に少しずつ押しつぶされるような力が常にかかっています。この力に耐えきれなくなった地下の岩盤が、斜め上方向にずれ動く——これが逆断層型地震のメカニズムです。
断層面は南北方向に約27〜45km、幅約11〜15kmにわたる領域と推定されています(資料により差があります。日本地質学会・防災科学技術研究所・気象庁各資料より)。震源域が広く、震源が浅かった(約8km)ことが、強い揺れを広範囲に届けた理由の一つです。
栗駒山周辺のような火山地域では、地層が複雑に重なり合っており、地震の揺れに対して斜面が崩れやすい条件が重なりやすいとされています。火山地帯の近くで地震が起きたとき、土砂崩れのリスクが通常より高いことを覚えておいてください。
地震と断層の関係についてより詳しく知りたい方は、地震が起きた時に取るべき行動の記事もあわせてご覧ください。
緊急地震速報が初めて威力を発揮した日

2008年6月14日は、緊急地震速報の歴史においても重要な日です。気象庁が一般向けに緊急地震速報の提供を開始したのは2007年10月。この岩手・宮城内陸地震は、本運用開始後に実際の大地震で速報が発信された初期の事例の一つでした。
震源に近い岩手県奥州市や宮城県栗原市では、揺れが来るまでの時間が非常に短く、速報は間に合いませんでした。しかし仙台市では約15秒前、秋田市や福島市では20〜30秒前に速報が届いたことが確認されています(消防庁資料)。
当時の調査では、仙台・盛岡・福島市に住む20歳以上の約700人のうち、全体の約4割にあたる267人が速報を受け取ったと回答しています。緊急地震速報というシステムの有効性と、「震源直近では間に合わない」という課題が同時に浮き彫りになった地震でもありました。
緊急地震速報の仕組みやスマートフォンの設定方法については、緊急地震速報の仕組みとスマホ設定を防災士が徹底解説をあわせてご確認ください。
岩手・宮城内陸地震の教訓と土砂崩れの備え
土砂崩れの前兆サインを見逃さない

土砂崩れは突然起きるように見えますが、実は発生前にいくつかの「前兆サイン」が現れることがあります。内閣府・国土交通省の資料をもとに整理すると、主な前兆は以下のとおりです。
土砂崩れの主な前兆サイン(内閣府・国交省資料より)
- 山鳴り・地鳴りがする
- 川の水が急に濁ったり、逆に水量が急に減ったりする
- 井戸や湧き水が濁る
- 土・泥の異様な臭いがする
- 風もないのに木々がざわざわ揺れる、傾く
- 地面から水が噴き出す
- 小石がパラパラと落ちてくる
ただし、前兆が現れないまま突発的に崩れる「がけ崩れ」も多くあります。前兆を探しに危険な場所へ近づくのは絶対にやめてください。あくまで「こういうサインに気づいたら迷わず避難する」という判断材料として覚えておきましょう。
土砂崩れが起きやすい地形と原因

土砂崩れには大きく3つの種類があります(内閣府資料)。
| 種類 | 特徴 | 主な発生条件 |
|---|---|---|
| がけ崩れ | 急斜面の表層が突然崩れ落ちる | 大雨・地震・長雨 |
| 土石流 | 土・石・水が一体となって急速に流れる | 集中豪雨・長雨 |
| 地すべり | 斜面の広範囲がゆっくり下方へ動く | 地下水・地震 |
岩手・宮城内陸地震では、この3種類がほぼ同時多発的に起きたとされています。とくに地震による地すべりは、斜面の広い範囲が一気に崩れる「大規模地すべり」を引き起こすことがあり、荒砥沢ダム上流の事例はその典型例でした。
土砂崩れが特に起きやすいのは以下のような地形です。
- 急傾斜の山・谷(傾斜30度以上の斜面の近く)
- 火山地域・火山性の地盤(もろくなりやすい)
- 水を通しにくい粘土層がある場所
- 過去に土砂崩れが起きたことがある場所
- 長雨・大雨の後、または地震直後
「自分の家の近くに急な斜面はないか」「過去に土砂崩れが起きた地域ではないか」をハザードマップで確認しておくことが、まず最初の一歩です。
地震後に土砂崩れが起こりやすい理由

ここが、岩手・宮城内陸地震から学べる最も重要な「防災理科」の知識です。
地震の強い揺れは、地盤の中の水の圧力(間隙水圧)を一時的に高め、土の粒子同士の結合力を弱めます。これを「液状化」に似た状態と考えると分かりやすいかもしれません。地震後の地盤は、揺れる前と比べて水分を含みやすく、崩れやすい状態になっています。
つまり、地震の後は「少雨でも土砂崩れが起きやすい」状態が続くのです。気象庁が岩手・宮城内陸地震の翌日に土砂災害警戒情報の暫定基準を引き下げたのは、まさにこの理由からです。
地震後に土砂崩れリスクが高まる3つの理由
- 揺れによって地盤の結合力が弱まる
- 地盤のひびや亀裂に雨水が浸入しやすくなる
- 地震で傾いた木や倒木が地盤の不安定化を助長する
大きな地震があった後は、晴れていても・少しの雨でも、周辺の斜面・がけ・山沿いには近づかないことが大切です。特に余震が続いている期間は、地盤が繰り返しダメージを受けている状態です。
土砂崩れへの正しい逃げ方と対策

土砂崩れが起きたとき、または危険を感じたとき、どう逃げればよいでしょうか。首相官邸・内閣府の資料をもとにまとめます。
土砂崩れの正しい逃げ方
- 斜面と垂直方向(横方向)に逃げる——土石流は流れる方向に一直線に進むため、斜面から横にはずれることが最優先
- 高いところへ逃げる——近くの頑丈な建物の2階以上へ避難する
- 絶対に川沿いを逃げない——土石流は川を伝って一気に流れてくることがある
- 車での避難は慎重に——道路が寸断されていると逃げ場を失うことがある
- 前兆に気づいたら迷わず行動する——「様子を見よう」という判断が命取りになることがある
土砂崩れは一瞬の出来事です。がけ崩れは「逃げる時間がない」ほど突発的に起きることがあります。そのためにも、「前兆を感じたら即避難」という習慣を家族で共有しておくことが何より大切です。
(出典:首相官邸「土砂災害から身を守るには」)
ハザードマップで自分の地域を確認する

土砂崩れへの備えで、最初にやるべきことはハザードマップの確認です。
国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」では、全国の土砂災害警戒区域・特別警戒区域をインターネットで無料で確認できます。自宅・職場・子どもの学校・よく使う道路——これらが土砂災害のリスクがある場所に近いかどうかを知っておくことが、逃げるための第一歩です。
土砂災害警戒区域(イエローゾーン)とは、土砂災害が発生した場合に住民に危害が生じるおそれのある区域です。土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は、建物が破壊されるほどの力が加わるおそれのある、より危険度の高い区域です。ハザードマップで色分けを確認しておきましょう。
ハザードマップで確認したら、次は「どこに逃げるか・どのルートで逃げるか」を家族で話し合っておきましょう。特に山や斜面に近い地域にお住まいの方は、大雨警報・土砂災害警戒情報が発表される前に早めに動く「早期避難」を心がけてください。
今日見直したい防災チェックリスト

6月14日を、土砂崩れへの備えを見直す日にしてみましょう。
- 自宅・通勤・通学ルートがハザードマップで土砂災害警戒区域に入っていないか確認した
- 大雨・地震のあと、斜面・がけ・川沿いに近づかないルールを家族で決めた
- スマートフォンに緊急地震速報・防災情報の通知が届く設定になっている
- 土砂崩れの前兆サイン(山鳴り・水の濁り・土の臭い)を家族で共有した
- 避難場所・避難ルートを家族全員で確認した
- 持ち出し袋が玄関にすぐ持って出られる状態にある
地震の備えについてより詳しく知りたい方は、【2026年版】地震に備えるものリスト完全版もあわせてご覧ください。
まとめ:岩手・宮城内陸地震と土砂崩れ備えの教訓

2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震は、M7.2・最大震度6強の内陸型地震でした。この地震が残した最大の教訓は、「地震は建物を壊すだけでなく、山を動かす」という事実です。
栗駒山周辺の火山地帯では、地震の揺れが地盤のもろさと重なり、大規模な土砂崩れが多発しました。荒砥沢ダム上流では最大落差148mの地すべりが発生し、山間集落は孤立しました。そして地震後の雨が、さらに土砂崩れのリスクを高めました。
福島で東日本大震災を経験した防災士として、この教訓の重さを感じます。地震はいつ来るか分かりません。そして地震の後には、揺れが収まってからも別の危険が続くことがある——その事実を、6月14日という日付とともに覚えておいていただけたらと思います。
岩手・宮城内陸地震と土砂崩れの備えから学べることは、「知識と早めの行動」が命を守るということです。大切な人を守るために、まず今日できることから始めていきましょう。
数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。
参考情報について
本記事は公的資料をもとに、過去の災害や防災に関する出来事を紹介しています。災害の記録は調査の進展や資料によって数値・表記が異なる場合があります。最新の正確な情報は、各省庁・自治体・関係機関の公式情報をご確認ください。
本記事は、特定の個人・地域・団体を批判するものではなく、過去の出来事から防災の教訓を学び、今日の備えにつなげることを目的としています。
岩手・宮城内陸地震が教えてくれた備え
岩手・宮城内陸地震から私たちが学べることは、「知識と行動」が命を左右するという事実です。
あなたの備えを今すぐ確認してください。
あなたの防災度チェック
- 地震後に土砂崩れのリスクが高まることを家族に伝えた
- 土砂崩れの前兆サインを覚えた
- ハザードマップで自宅周辺の土砂災害リスクを確認した
- 持ち出し袋が玄関にすぐ持って出られる状態にある
- 家族全員で避難場所・連絡方法を確認している
岩手・宮城内陸地震の教訓は「逃げる準備は、逃げる前に整える」ことを示しています。HIHの防災リュックは、その「準備」をすぐ始められるように設計されています。
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🛡️ 防災士監修記事
後藤 秀和(ごとう ひでかず)
防災士/株式会社ヒカリネット 代表取締役
2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得しHIH(Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。





