後発地震注意情報とは?発表条件・対象地域・正しい備えを防災士が解説

後発地震注意情報とは?発表条件・対象地域・正しい備えを防災士が解説
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
2026年4月20日、気象庁が「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表しました。三陸沖でM7.7の地震が発生したことを受けてのことです。テレビやスマートフォンのニュースでこの言葉を目にして、「いったいどういう情報なんだろう?」「何をすればいいの?」と感じた方も多かったんじゃないかと思います。
私自身、2011年3月11日の東日本大震災を福島で経験しました。あの日から「次の大地震」は常に意識の片隅にあります。この後発地震注意情報という制度は、まさにあの震災の教訓から生まれたものです。今回はこの情報の仕組みと、発表されたときの正しい行動を、できるだけわかりやすく解説したいと思います。

後発地震注意情報とは何か、その仕組みを解説

後発地震注意情報が生まれた背景

後発地震注意情報が生まれたきっかけは、東日本大震災にさかのぼります。2011年3月11日のM9.0の巨大地震が発生する2日前、実はM7.3の地震がすでに起きていました。しかし当時は、その地震が「前兆」であるという認識が社会全体に広まっておらず、特別な警戒呼びかけもされませんでした。
この教訓をもとに、国は「大きな地震の後に、さらに大きな地震が続く可能性がある」という事実を社会に伝える仕組みの必要性を認識しました。そして2021年に中央防災会議が後発地震への注意を促す情報発信の必要性を提言し、2022年12月16日から「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の運用が始まりました。
「先発地震」とは最初に発生した地震のこと、「後発地震」とはその影響を受けて引き続き発生する恐れのある大規模地震のことを指します。気象庁が定めた専門用語です。
あの日を経験した身として言えば、「あと2日早くこういう情報があれば」という思いは正直あります。ただ、科学的に後発地震を確実に予知することは今もできません。だからこそ、この情報の意味を正確に理解することが大切なんです。
後発地震注意情報の発表条件と対象地域

発表基準は「北海道の根室沖から東北地方の三陸沖の巨大地震想定震源域やその周辺でMw(モーメントマグニチュード)7.0以上の地震が発生した場合」です。気象庁が地震発生後15分〜2時間程度でMwを精査し、基準を満たすと判断した時点で、内閣府・気象庁の合同記者会見とともに発表されます。
対象地域は北海道・青森・岩手・宮城・福島・茨城・千葉の7道県・182市町村です。これは最大クラスの地震が発生した際に震度6弱以上の揺れや3m以上の津波が想定される地域を基本として設定されています。
福島県も対象地域に含まれています。三陸沖の巨大地震が発生した場合、福島の太平洋沿岸にも大きな津波が到達する可能性があります。2011年の東日本大震災がまさにそうでした。
なお、国が想定している発表頻度は「2年に1回程度」とされています。頻繁に出る情報ではないぶん、いざ発表されたときにどう動くかを、平時にしっかり確認しておくことが重要です。
南海トラフ地震臨時情報との違い

「後発地震注意情報」と混同されやすいのが「南海トラフ地震臨時情報」です。名前が似ているので同じものだと思われがちですが、対象エリアも仕組みも別の制度です。
| 項目 | 後発地震注意情報 | 南海トラフ地震臨時情報 |
|---|---|---|
| 対象エリア | 北海道〜千葉(太平洋沿岸) | 静岡〜九州中心の太平洋側 |
| 発表基準 | Mw7.0以上の先発地震 | M6.8以上の地震またはゆっくりすべり |
| 情報の種類 | 1種類 | 調査中・巨大地震警戒・巨大地震注意・調査終了の4種類 |
| 運用開始 | 2022年12月 | 2019年5月 |
| 呼びかけ内容 | 備えの再確認(避難は求めない) | キーワードに応じて異なる(警戒では事前避難も) |
大きな違いは「対象エリア」と「呼びかけの強度」です。南海トラフ臨時情報の「巨大地震警戒」が発令された場合は事前避難を求める場合もありますが、後発地震注意情報では現時点で事前避難は求めず、備えの再確認と「いつでも逃げられる態勢を整えること」が基本的な求めです。
どちらの情報も「発生を予知するものではない」という点は共通しています。両方の情報の意味をきちんと区別して理解しておくことが大切ですね。
情報が発表される仕組みと科学的根拠

なぜMw7以上の地震の後に、さらに大きな地震が続くリスクが高まるのでしょうか。ここを「防災理科」的に整理しておきましょう。
日本海溝と千島海溝は、太平洋プレートが陸のプレートの下に沈み込む境界に形成された深い溝です。日本海溝は太平洋プレートと北米プレートの境界、千島海溝は太平洋プレートとオホーツクプレートの境界に当たります。この「沈み込み帯」ではプレートの境界面に沿った「スラスト型(逆断層型)」の地震が繰り返し発生します。スラスト型の地震は断層面のずれが大きく、海底が大きく持ち上がるため、津波を伴いやすいのが特徴です。
この領域では、M7クラスの地震が発生した後、数日以内にM8クラス以上の巨大地震が続いて発生する事例が世界で確認されています。気象庁のデータによると、過去100年程度(1904〜2021年)に世界で発生したMw7.0以上の地震1,529事例のうち、7日以内にMw7.8以上(M8クラス相当)の後発地震が続いたのは19事例(気象庁資料より)。確率にして約1%(100回に1回)程度です。
「たった1%」と思うかもしれませんが、平常時と比べると約10倍高い確率です。そして、万一M9クラスの後発地震が発生した場合の被害は壊滅的になります。内閣府の2021年被害想定では、日本海溝を震源とするM9級地震で最大約30mの津波・死者最大約19.9万人が想定されています。確率は低くても、起きた場合のリスクが極めて大きいからこそ、社会全体に備えを呼びかける意味があるんです。
「Mw(モーメントマグニチュード)」は、地震が放出したエネルギー量をより正確に表す指標です。日本国内で日常的に使われる「震度」とは異なり、地震の規模そのものを示します。気象庁が後発地震注意情報の発表判断に使うのはこのMwです。
過去に発表された事例と経緯

2022年12月に運用が始まったこの情報、これまでに発表されたのは2回です。
【1回目:2025年12月9日(初回)】
2025年12月8日深夜、青森県東方沖を震源とするM7.3(最大震度6強)の地震が発生。翌9日午前2時に初めての後発地震注意情報が発表されました。対象地域は北海道から千葉県にかけての7道県。注意の呼びかけ期間は1週間で、12月16日0時をもって終了しました。
【2回目:2026年4月20日】
2026年4月20日16時52分、三陸沖でM7.7(Mw7.4)の地震が発生。同日19時30分に「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表されました。対象は7道県182市町村で、1週間の警戒が呼びかけられています。
この情報が発表されている間は、引き続き「いつでも逃げられる態勢」を維持することが求められます。1週間という期間はあくまで特別な注意呼びかけの目安であり、その後も油断しないことが大切です。繰り返しになりますが、情報が出ていない状況でも巨大地震は突発的に発生しうることを忘れないでください。

後発地震注意情報が出たときの正しい備え
発表中に取るべき具体的な行動

後発地震注意情報が発表されたからといって、すぐに避難する必要はありません。内閣府は「普段通りの生活や社会経済活動を継続した上で、いつもより地震の発生に注意した対応をとること」を求めています。
では具体的に何をすべきか。内閣府のガイドラインをもとに整理します。
後発地震注意情報が出たらやること
① ハザードマップで自宅・職場の津波浸水エリアと避難場所・避難経路を再確認する
② 非常用持ち出し袋の中身・場所を確認し、玄関に移動しておく
③ 家具の固定状況を点検する
④ 就寝時は枕元に靴・懐中電灯を置く
⑤ 家族・職場との連絡方法・集合場所を再確認しておく
⑥ 大きな揺れや津波警報が出たらすぐに逃げられる態勢を常に維持する
ポイントは「いざというときすぐ動ける準備をしておくこと」です。揺れを感じたら、または津波警報・注意報が発表されたら、迷わず避難行動に移れる状態を1週間維持してください。
地震発生時の場所別の行動について、より詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。→ 地震が起きた時に取るべき行動は?場所別マニュアルと時間軸の鉄則
いつまで警戒が必要か、期間と解除の目安

後発地震注意情報の警戒期間は1週間程度です。後発地震の発生可能性は、先発地震から時間が経過するほど、また震源から距離が遠いほど低くなるという科学的根拠に基づいています。
ただし、注意すべき点が2つあります。
1つ目は、1週間経過後も発生確率がゼロになるわけではないということ。1週間が経過した後も、巨大地震が発生する可能性は残ります。気象庁も「1週間が経過した後も大規模地震が発生する可能性があることなど、極めて不確実性が高い情報」と説明しています。
2つ目は、情報発表がなくても巨大地震は突発的に起きるということ。Mw8クラス以上の大規模地震は、後発地震注意情報が発表されていない状況で突然発生することのほうが多いと気象庁は明示しています。つまり、「今は情報が出ていないから安心」とはならないんです。
1週間の警戒期間が終了しても「解除された」という感覚で備えを緩めないようにしましょう。この情報の本当の意味は「日頃の備えを改めて確認するきっかけ」です。期間が終わったあとも、平時の備えを継続することが最も重要です。
家族・職場で事前に決めておくこと
後発地震注意情報が発表されてから「さて何をしよう」と考え始めると、大切なことが抜け落ちてしまいます。情報が出る前に、家族や職場で「あらかじめ決めておくこと」を確認しておきましょう。
家族で確認しておくこと
まず「避難場所」と「連絡手段」です。地震・津波の場合、携帯電話がつながらない状況も想定されます。「〇〇小学校に集合」「NTTの災害伝言ダイヤルを使う」など、家族全員が同じ情報を共有しておくことが必要です。次に「非常持ち出し袋の場所と担当」。誰がどれを持ち出すかを決めておくと、パニック時でも動きやすくなります。
職場・学校で確認しておくこと
職場では「誰が何をするか」という役割分担と、「社員・顧客をどう避難誘導するか」のフローを再確認する機会として活用してください。300社以上に法人向け防災グッズを導入してきた私の経験上、「情報が出てから考え始める会社」と「事前に準備している会社」では、いざというときの行動スピードが全く違います。
内閣府のガイドラインでは、後発地震注意情報の発表中であっても「社会経済活動を停止する必要はない」とされています。過剰に反応して仕事や学校を休む必要はありませんが、心の隅に「すぐ逃げる」準備を整えておくことが求められます。
見落としがちな誤解と注意点

後発地震注意情報をめぐっては、いくつかの誤解が広まりやすいので整理しておきます。
誤解①「後発地震注意情報=地震予知」
これは違います。気象庁も明確に「後発地震の発生時期・場所・規模を確度高く予測する情報ではない」と説明しています。あくまで「平常時よりリスクが高まっている状態であることを知らせる情報」です。地震がいつ・どこで・どのくらいの規模で来るかは、現在の科学では予測できません。
誤解②「情報が出なければ安心」
先述のとおり、巨大地震の多くは先発地震なしに突発的に発生します。情報が出ていないからといって油断は禁物です。
誤解③「対象地域以外は関係ない」
気象庁は「想定震源域の外側でも、先発地震が発生した周辺では大規模地震が発生する可能性がある」と注記しています。対象地域外であっても、まったく無関係とは言えません。
誤解④「1週間過ぎたら解除だから安心」
1週間の警戒期間終了は「特別な呼びかけ期間の終了」であり、地震リスクがゼロになったわけではありません。引き続き日頃の備えを続けることが大切です。
津波の仕組みと正しい避難行動については、こちらの記事でも詳しく解説しています。→ 津波について知ろう!なぜ起こるのか小学生向けに解説
後発地震注意情報を活かした防災の備えまとめ
最後に、後発地震注意情報をきっかけに見直したい備えのポイントを整理します。
この情報が持つ本当の価値は「地震が来てから慌てないための準備を促す仕組み」であることです。後発地震が実際に起きるかどうかよりも、「1週間、いつでも動ける状態に自分を置く」というプロセスそのものに意味があります。
後発地震注意情報を活かす備えチェック
□ ハザードマップで自宅の津波リスクを確認した
□ 避難場所・避難経路を家族全員が把握している
□ 非常用持ち出し袋が玄関にすぐ取り出せる場所にある
□ 就寝時に枕元へ靴・懐中電灯を置く習慣がある
□ 家族との連絡方法・集合場所を決めている
□ 家具の転倒防止対策が済んでいる
□ 3日〜1週間分の水・食料の備蓄がある
私自身、震災を経験して痛感したのは「備えはいつ始めても早すぎない」ということです。情報が出てから準備を始めるのではなく、情報が出たときに「もう準備できている」状態を目指してほしいと思います。
南海トラフ地震臨時情報との違いや「巨大地震注意」の発表時の行動については、こちらの記事も合わせてご覧ください。→ 巨大地震注意とは?南海トラフ地震臨時情報の期間や備えを解説
数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。
🛡️ 防災士監修記事
後藤 秀和(ごとう ひでかず)
防災士/株式会社ヒカリネット 代表取締役
2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得し、防災ブランド HIH(エイチアイエイチ/Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。

