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防災意識を高めるには?低い理由と今日からできる向上策を防災士が解説

家族4人が防災リュックを持ち希望の朝日の前に立つシーン

防災意識を高めるには?低い理由と今日からできる向上策を防災士が解説

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。

「防災意識を高めるにはどうすればいいの?」——そんな疑問を持ってこの記事にたどり着いた方は、おそらく少し前に大きな地震や台風のニュースを見たか、あるいは「そろそろ備えなきゃな」とふと思ったタイミングではないでしょうか。

私自身、2011年3月11日の東日本大震災を福島で経験しています。あの日を境に、「知識があれば、意識があれば、もっとうまく動けたはずだ」と強く感じるようになりました。防災士の資格を取り、HIHという防災ブランドを立ち上げたのも、そういう後悔を誰かに繰り返させたくないという気持ちからです。

防災意識って、実は「持とう」と思うだけでは育ちません。正しい現状認識と、心理的なしくみを理解したうえで、日常の行動を少しずつ変えていくことが大切なんです。この記事では、そのための具体的な方法を防災士の視点でまとめました。

目次

防災意識を高めるにはまず「現状」を知ることから

家族でハザードマップを確認しながら防災意識を高めるシーンのイラスト
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

防災意識とは何か・定義をおさらい

防災意識の3つの柱「知識・関心・行動」を表すイラスト
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

防災意識とは、災害が起きたときに自分と家族の命を守るために必要な知識・関心・行動力の総体のことをいいます。単に「災害が怖い」と感じることではなく、「だから備える」「だから逃げる」という行動につながってはじめて意味を持つものです。

防災の基本的な考え方として「自助・共助・公助」という枠組みがあります。自助とは自分と家族の命を自分で守ること、共助とは地域の人々と助け合うこと、公助とは国や自治体による救助・支援のことです。大規模な災害が起きると公助には限界があるため、まず自助、次に共助の意識が命を守る土台になります。

防災意識の3つの柱
①知識:ハザードマップの内容・避難場所・正しい避難方法を知っている
②関心:災害を「自分ごと」として捉え続けている
③行動:備蓄・避難訓練・家族との話し合いを実際に行っている

この3つが揃って、はじめて「防災意識が高い」といえます。「知識はあるけど行動していない」という状態は、実はかなり多いんですよね。

日本人の防災意識の現状と調査データ

防災意識と備えのギャップを示すグラフのイラスト
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

まず、日本全体の防災意識の現状を数字で見てみましょう。複数の調査から見えてくる実態は、少し複雑なものになっています。

こくみん共済coopが2024年11月に実施した全国都道府県別意識調査によると、災害に対して不安を感じている人は74.4%にのぼります。一方で、平時から備えを意識しているのはわずか14.6%。多くの人が「不安は感じているのに備えていない」というギャップを抱えているのが現状です。

住友生命保険が2025年2月に発表した調査では、2024年に相次いだ能登半島地震・南海トラフ地震臨時情報などの影響で、防災意識が「高まった」と答えた人が71.9%にのぼりました。しかし意識が高まった人のうち、実際に備蓄やハザードマップ確認などの行動につなげたのは52.4%にとどまっています。

家庭の防災対策の自己評価は平均41.4点(100点満点)(住友生命 2025年調査)。60代が10年連続でトップの一方、20代・30代の点数の伸びが直近で最大という結果も出ています。

内閣府が令和7年に実施した防災に関する世論調査では、防災訓練に「参加したことがある」は40.4%、「参加も見学もしたことがない」は38.4%という数字も出ています。18〜29歳から40歳代では「訓練が行われているのを知らなかった」という割合が特に高い傾向があります。

こうしたデータを見ると、日本人の防災意識は「意識はある・でも行動が伴わない」という段階にある人が多いといえそうです。

防災意識が低い理由を年代別に考える

年代別に防災意識が低い理由を示す3世代
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

防災意識が行動に結びつかないのは、単純な無関心だけが原因ではありません。年代によってその背景はかなり違います。

20〜30代:被災経験が少なく「自分ごと化」が難しい
阪神・淡路大震災も東日本大震災も、記憶として持っていない世代が増えています。「地震が来るとわかっていても、実感がわかない」という状態が続きがちです。また、引っ越し・転職・子育てと変化の多い時期で、防災の優先度が後回しになりやすいです。

40〜50代:忙しさと「後でやろう」の先送り
意識はあるが時間がない、という層です。職場や家庭での役割が重なる時期で、防災準備に腰を上げるタイミングがなかなか来ません。内閣府の令和7年調査でも、防災訓練に参加しない理由の上位は「申し込み方法がわからない」(38.7%)、「時間がなかった」(32.3%)でした。

60〜70代:意識は高いが「体力・スキル」に不安
年代別では最も防災意識が高いとされる世代ですが、「備えているつもりだけど十分ではないかも」という「どちらとも言えない」層も多い。スマートフォンの災害アプリやSNSの活用に戸惑いを感じる方も多いです。

物価高・円安の影響も見逃せません。インテージの2024年調査では、経済状況の変動が防災対策に「影響する」と答えた人が85.5%にのぼっています。「備えたい気持ちはあるけれど、生活が先」という現実も大きな障壁になっています。

若者の防災意識が低い理由と背景

若者の防災意識と正常性バイアスを表す
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

若い世代の防災意識の低さには、心理学的な背景があります。その一つが「正常性バイアス」です。

正常性バイアスとは、予期しない事態が起きたとき「これは大したことじゃない」「自分は大丈夫」と判断してしまう心の働きです。日常生活では不安や心配を減らすための防御機能として役立ちますが、緊急事態ではこれが逃げ遅れの原因になります。

たとえば、職場で火災報知器が鳴っても「また誤作動だろう」と思って動かない——これが正常性バイアスです。地震が来ても「このくらいならいつものことだ」と感じてしまう心理も同じ仕組みです。

さらに日本人は「同調性バイアス」も強いとされています。「周りが逃げていないから自分も逃げなくていい」という集団心理です。東北大学の研究資料でも、こうした認知バイアスが避難行動を遅らせる要因として指摘されています。

防災理科コラム:なぜ人は「大丈夫」と思うのか
人間の脳は、不確実な情報に対して「過去の経験」を強く参照します。「前回の台風のとき大丈夫だったから今回も大丈夫」という判断は「利用可能性ヒューリスティック」と呼ばれる認知バイアスの一種です。しかし今の気候変動の時代、過去の経験が通用しない災害が増えています。「今回は違う」と意識的に切り替えることが、命を守るうえで非常に重要です。

若い世代が特にこうしたバイアスの影響を受けやすいのは、過去の大きな災害をリアルに経験していないためです。「知識として知っている」と「体として知っている」は全然違います。だからこそ、体験型の防災学習や訓練が若年層には特に効果的なんですよね。

親や家族の防災意識が低い場合の対処法

家族に防災の話を持ちかけている穏やかな会話シーン
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

「自分は備えようとしているのに、家族が全然やる気を見せない」——これは非常によく聞く悩みです。特に「旦那が防災に無関心」「親が備蓄をいやがる」というケースは多いです。

こういう場合、正面から「備えよう!」と説得しようとするとうまくいかないことが多いです。なぜなら、防災意識の低い人に対して「怖い話」をしてもかえって心の防御反応(正常性バイアス)が強まってしまうことがあるからです。

効果的なアプローチは次の3つです。

①小さな一歩から始める:「非常食を3日分揃えよう」より「とりあえず飲料水を1ケース多めに買っておこう」のほうが動きやすいです。ローリングストックという考え方——日常の食材を少し多めに買い、消費しながら補充していく方法——は、「特別なこと」として意識させないため心理的ハードルが低いです。

②「もし〇〇になったら?」と具体的に考えてもらう:「地震が来たら」という抽象的な話より「もし今夜2時に大地震が来たら、ウチのトイレはどうする?」という具体的な問いかけのほうが、相手が自分ごととして考えやすくなります。

③ニュースのタイミングを活用する:大きな災害が報道されたとき、人の防災意識は一時的に高まります。こくみん共済coopの調査でも「災害発生の報道を見て」備えを意識する人が41%と最多でした。このタイミングで「ちょっとハザードマップ確認してみようか」と誘うのが効果的です。

防災意識を高めるには日常の行動を変えること

玄関に防災リュックを準備して防災意識を日常に取り入れるシーン
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

防災意識の向上に効果的な取り組み5選

防災意識を高める5つの取り組みを表すアイコン
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

防災意識は「高めよう」と思うだけでは育ちません。日常の中に小さな習慣を組み込むことで、気づかないうちに意識が定着していきます。私が特に効果的だと感じているのは次の5つです。

①ハザードマップを自分の地域で確認する
まず第一歩はここからです。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」で自宅・職場・学校の周辺のリスクを確認してください。「洪水で浸水する区域か」「土砂災害の危険があるか」「津波の影響はあるか」——これを知っているだけで、避難のタイミングと方向が変わります。

②家族で避難場所・連絡方法を話し合う
電通総研の2024年調査では、「家族で避難場所・集合方法・連絡方法を話し合っている」人は2割前後にとどまっています。「うちはどこに逃げる?」「連絡がとれないときは?」という会話を、年に1〜2回でいいのでしてみてください。話し合うこと自体が、防災意識を「家族ごと」にする効果があります。

③防災訓練に参加する(体験型が特に有効)
座学より体験です。実際に消火器を使う、避難経路を歩く、非常食を食べてみる——こういった体験は「記憶に残る防災知識」になります。地域の自治会や消防署が行う防災訓練への参加はもちろん、家族で避難経路を歩いてみるだけでも十分です。

④備蓄品を定期的に見直す
「備えたつもり」で止まっているケースが非常に多いです。非常食の賞味期限が切れていた、電池が放電していた——こういうことは実際よく起きます。3月11日(防災意識を育てる日)と9月1日(防災の日)の年2回を目安に、防災グッズの中身をチェックする習慣をつけましょう。防災グッズの見直しポイントについてはこちらの記事も参考にしてみてください。

⑤防災に関する情報を意識的に取り入れる
テレビやラジオの防災特番、気象庁のウェブサイト、地域の防災情報メールへの登録など、日常的に防災情報が入ってくる環境を作ることが大切です。内閣府の調査でも、SNS(39.3%)やアプリ(32.7%)を防災情報源として活用したいという人が増えています。

最初の一歩は「ハザードマップを見る」だけでOK
防災は一気にやろうとすると挫折します。まずは今日、自分の住む地域のハザードマップを1分だけ見てみてください。それだけで、あなたの防災意識は確実に変わります。

地域ぐるみで防災意識を高める方法

地域住民が集まって災害図上訓練DIGを行っているシーン
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

個人の防災意識を高めるうえで、実は「地域のつながり」が非常に重要な役割を果たします。大規模な災害では、公的支援が届くまでの72時間は自助・共助が命を左右します。

地域防災で特に効果的なのがDIG(ディグ:災害図上訓練)です。地図を広げて地域の危険個所や避難ルートをみんなで話し合うこの訓練は、「地域の防災をみんなで考える」体験として非常に有効とされています。自治体や自主防災組織が主催していることが多いので、お住まいの地域でDIGが開催されていないか確認してみてください。

また、学校と地域・消防団が連携した防災訓練も効果的です。子どもが参加することで、家庭全体の防災意識が高まるという好循環が生まれます。「子どもに先生役になってもらう」というアプローチは、子どもの記憶定着にも、家族の意識向上にも役立ちます。

地域防災でよく指摘される課題は「訓練の形骸化」です。毎年同じことをするだけの訓練は、参加者の意識が高まりにくいです。新しいシナリオを取り入れる、防災カードゲームを活用するなど、参加者が考え・判断する機会のある体験型の内容にアップデートしていくことが求められています。

防災意識を高める日(3月11日)の活用法

3月11日防災意識を育てる日に家族で備えを確認するシーン
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

3月11日は「防災意識を育てる日」として登録されている記念日です。防災士の江﨑洋幸氏が制定し、東日本大震災の教訓を風化させないことを目的として、毎年この日を防災について考える機会にしようという趣旨で設けられました。

私にとって3月11日は特別な日です。あの日を経験した者として、この日が単なる追悼の日で終わらず、「これからの備え」を考える日であってほしいと思っています。

3月11日の具体的な活用法として、次のことをおすすめしています。

まず、防災リュックの中身を全部出して確認すること。非常食の賞味期限・電池の残量・水の保存期限を確認し、必要なものを補充しましょう。次に、家族で「もしも会議」を開くこと。「大地震が来たら、どこに集合する?」「仕事中・学校中だったら?」という話をするだけで防災力は確実に上がります。もう一つは、ハザードマップを家族全員で見ること。自宅周辺のリスクを「見る」という行為が、意識を「自分ごと」にする最初のステップです。

9月1日の防災の日と合わせて、年2回の「防災点検日」として習慣化するのがおすすめです。

子どもと一緒に防災意識を育てる工夫

親子で避難経路を歩きながら防災を学ぶシーン
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

子どもの防災教育は、家族全体の防災意識を底上げする効果があります。子どもが「防災のことを知っている」という状態が、家族の話し合いのきっかけを生み出すんです。

子どもへの防災教育で大切なのは「怖さより楽しさ」です。クイズ形式・ゲーム形式で学べる教材を活用すると、防災知識が記憶に残りやすくなります。実際の避難場所まで一緒に歩いてみる、防災リュックの中身を子どもと一緒に確認する、といった体験も非常に効果的です。

小学生向け防災クイズなども活用しながら、「家族みんなで防災を学ぶ」雰囲気を作ることが大切です。子どもが防災のことを得意分野として語れるようになると、それが自然と家族全体の意識を高めていきます。

また、学校の避難訓練の前後に家庭でも話し合いをするのが効果的です。「今日は学校でどんな訓練をしたの?」「もし授業中に地震が来たらどうするの?」という会話が、子どもの防災意識をしっかり育ててくれます。

子どもに防災を教えるときの注意点
「地震が来たら死ぬかもしれない」「逃げないと大変なことになる」という恐怖を強調しすぎると、子どもの不安を高めるだけになってしまうことがあります。「備えれば大丈夫」「一緒に考えよう」という安心感とセットで伝えることが大切です。

まとめ:防災意識を高めるには今日から始める

防災リュックを持ち今日から備えを始める人物の希望あふれるシーン
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

ここまで読んでいただいてありがとうございます。防災意識を高めるには、「知ること」「感じること」「動くこと」の3ステップが必要です。どれか一つが欠けても、本当の意味での防災力にはなりません。

現状を整理するとこうなります。日本では「不安は感じているけど、備えていない」という人が非常に多い。その背景には正常性バイアス・同調性バイアスといった心理的な仕組みがあり、忙しさや経済的な余裕のなさも重なっています。でも、だからこそ「小さな一歩」から始めることが大切です。

あの日を福島で経験したからこそ、私はこう思います。防災は「いつかやること」ではなく「今日やること」です。完璧でなくていい。まず今日、ハザードマップを1分見てみる。それだけで十分なスタートです。

防災リュックの選び方・中身の確認はこちらの記事も合わせてご覧ください。備えの具体的な中身を確認するための参考になります。

今日からできる「防災意識を高める」5つの行動
①自分の地域のハザードマップを確認する
②家族と「もしも会議」を開く(避難場所・連絡方法)
③防災リュックの中身を全部出して確認する
④備蓄の賞味期限・電池の残量をチェックする
⑤3月11日・9月1日を年2回の「防災点検日」にカレンダーに入れる

数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。

(出典:内閣府『防災に関する世論調査(令和7年)』)

🛡️ 防災士監修記事

後藤 秀和(ごとう ひでかず)

防災士/株式会社ヒカリネット 代表取締役

2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得しHIH(Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。

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この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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