山形県沖地震の教訓5選|夜間津波の備えを防災士が解説

山形県沖地震の教訓5選|夜間津波の備えを防災士が解説
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
2019年6月18日、午後10時22分——。
その夜、日本海の深さ約14kmで大きな揺れが始まりました。山形県沖を震源とするM6.7の地震。新潟県村上市では最大震度6強を観測し、山形県でも観測史上初めて震度6以上の揺れが記録されました。
地震発生からわずか2分後、気象庁は山形県・新潟県・石川県能登に津波注意報を発表。早いところでは、地震発生後わずか5分で津波の第一波が沿岸に到達しました。
幸い、この地震で死者は出ませんでした。でもそれは「たまたま」ではなかったと私は思っています。緊急地震速報が素早く発報し、住民が行動した結果でもありました。そして同時に、夜間の停電・暗闇の中での避難・津波避難所が開放されなかった地域があったという課題も浮き彫りになりました。
この記事では、2019年山形県沖地震とは何だったのか、そこから私たちが今日学べることを防災士の視点で丁寧に解説します。「日本海側に津波は来ない」という根強い誤解を解くことも含めて、ぜひ最後まで読んでいただけたらと思います。
山形県沖地震とは|2019年夜間の記録
山形県沖地震とは、2019年(令和元年)6月18日22時22分に山形県沖で発生したM6.7の地震で、新潟県・山形県の日本海沿岸を震度6強・6弱の揺れと津波注意報が直撃した地震です。
2019年6月18日22時22分の発生

2019年6月18日、午後10時22分。多くの家庭では就寝の準備をしていた、あるいはすでに眠りについていた時間帯です。
この時刻、山形県沖(深さ約14km)を震源とする地震が発生しました。規模はM6.7(暫定値)。気象庁の定める発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、日本海東縁変動帯(ひずみ集中帯)で起きた地震です。
揺れは北海道から中部地方まで広範囲に及び、震度5強・5弱を記録した地点も複数ありました。なかでも最大の揺れを記録したのは新潟県村上市府屋で震度6強。山形県鶴岡市温海川でも震度6弱が観測されました。
山形県で震度6以上の揺れが観測されたのは、この地震が観測史上初めてのことです(気象庁調べ)。「山形は地震が少ない」という印象を持っていた方も多かったかもしれませんが、日本海側には確実に地震リスクが存在しています。
地震発生前、東北地方の日本海側では2011年3月12日以降、M6を超える地震が発生しない状況が約8年続いていました。この山形県沖地震は、その沈黙を破る形で起きた、日本海側での大きな地震でした。
震度6強と日本海側への津波注意報

地震発生からわずか2分後の22時24分、気象庁は山形県・新潟県(上中下越・佐渡)・石川県能登に津波注意報を発表しました。
震度6強という揺れがどの程度のものか、感覚として持ちにくい方もいるかもしれません。震度6強は立っていることが困難になるレベルの揺れで、耐震性の低い住宅では倒壊する可能性がある強さです。震度の階級と最大震度7の意味についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
実際に観測された津波の最大波は、山形県鶴岡市鼠ヶ関で11cm、新潟港で10cmでした(気象庁観測値)。数字だけ見ると小さく感じるかもしれませんが、問題はその「到達の速さ」です。これについては後ほど詳しくお伝えします。
津波注意報は翌19日の午前1時02分に全て解除されました(出典:気象庁仙台管区気象台『令和元年6月18日22時22分頃の山形県沖の地震について』)。
なぜ死者が出なかったのか

震度6強・津波注意報・夜間発生・停電。これだけの条件が重なったにもかかわらず、この地震で死者は出ませんでした。
理由のひとつとして考えられるのが、緊急地震速報の早さです。気象庁は最初の地震波の検知からわずか7.3秒後(22時22分31.5秒)に緊急地震速報(警報)を発表しました。夜間でも多くの方のスマートフォンが鳴動し、揺れの直前に「来る」と知らせたわずかな数秒が、命を守る行動につながった可能性があります。
もうひとつは、近年の建物の耐震化が進んでいたこと。震度6強の揺れを受けながら住家被害は1,500棟超(内閣府調べ)に留まり、倒壊による犠牲が発生しなかったことは、耐震化の積み重ねの結果と言えるかもしれません。
「死者ゼロ」は幸運だけではありません。緊急地震速報への対応・建物の耐震化・住民の避難行動、それらが重なった結果です。一方で「もし規模がもう少し大きかったら」「もし津波がもう少し高かったら」という問いも、この地震は私たちに残しています。
日本海側特有の津波到達の速さ

この地震で特に知っておいてほしいのが、日本海側の津波はとても速いという事実です。
山形県沖地震では、早いところで地震発生後わずか5分で津波の第一波が到達しました。東日本大震災では地震発生後15〜35分程度で津波が到達しましたが、日本海側はそれよりもはるかに短い時間での到達が起こりえます。
なぜこれほど速いのか。大阪管区気象台の公式解説によると、日本海側の地震は震源が沿岸に近いため、津波の到達時間が極めて短くなるのです。また、比較的浅い領域で発生する地震が多いため、海底の変位量が大きくなりやすく、地震の規模のわりに津波が高くなる傾向もあります。
かつて「日本海側に津波は来ない」という俗説が信じられていた時期がありました。しかし1983年の日本海中部地震(M7.7)では104人の方が犠牲になり、そのうち100人が津波によるものとされています。この俗説がいかに危険だったか、歴史が証明しています。日本海沿岸にお住まいの方も、津波避難の準備は必須です。
日本海東縁部での過去の大地震を振り返ると、1833年の庄内沖地震(M7.5)、1964年の新潟地震(M7.5)、1983年の日本海中部地震(M7.7)、1993年の北海道南西沖地震(M7.8)と、M7クラスの地震が繰り返し発生しています。今後もこのエリアで大きな地震が起きる可能性は十分にあります。
夜間地震が引き起こした停電と混乱

22時22分という発生時刻は、防災上の難しさをいくつも生み出しました。
まず、山形・新潟両県で約9,000軒以上が停電しました(内閣府調べ)。就寝準備中あるいは就寝中の住民が、突然の揺れと暗闇のなかで状況を判断しなければならなかったのです。
そのなかで特に課題として指摘されたのが、津波避難時の車による渋滞と避難所の開放問題です。津波注意報が発表された新潟市では多くの市民が避難行動を取りましたが、津波避難所に指定されていた公共施設や民間高層ビルの多くが開放されなかったという状況が生じました。避難しようとした住民が行き場を失った地域もあり、避難所の運用体制の課題として指摘されています。
また、暗闇のなかでの移動は転倒・けがのリスクを高めます。停電状態でどう動くか——これは日頃から準備していないと、いざというときに体が動かない問題です。
山形県沖地震から学ぶ防災の備え
夜間に起きた地震への初動行動
防災士として300社以上の法人備蓄を支援してきた経験から言えば、夜間発生の地震は昼間よりも初動の難度がひとつ高くなります。暗い・動きにくい・情報が入りにくい——この3つが重なるからです。
就寝中に地震が起きた場合、まず布団の中で頭を守り、揺れが収まるまで待つのが基本です。慌てて起き上がって部屋を走り回ると、暗闇での転倒・落下物での負傷リスクが高まります。
就寝時の地震・初動チェックリスト
・布団の中で頭を守り、揺れが収まるのを待つ
・枕元にスリッパ(または厚底の靴)を置いておく(ガラス破片対策)
・枕元に懐中電灯・ヘッドライトを置いておく
・揺れが収まったら、まずスリッパを履いてから動く
・ガスコンロの火が点いていたら消火確認
夜間地震で特に重要なのが「枕元の備え」です。懐中電灯やヘッドライトがなければ、停電時に安全に動くことすら困難になります。スリッパや厚底の靴が手の届く場所になければ、ガラスの破片で足をけがする可能性があります。これらは今日からでもすぐに実践できる備えです。
緊急地震速報と就寝時の備え

山形県沖地震では、緊急地震速報が地震波検知からわずか7.3秒後に発表されました。夜間であっても、スマートフォンの緊急速報設定がオンになっていれば、揺れの直前に音で知らせてくれます。
この数秒が生死を分けることがあります。揺れが来る前に頭を守る姿勢を取れるかどうかだけで、骨折・外傷のリスクが大幅に変わります。スマートフォンの緊急速報(エリアメール)の設定がオンになっているか、定期的に確認しておきましょう。機種によってはマナーモードや「おやすみモード」をオンにしていても緊急速報は鳴動しますが、設定によっては無効化されているケースもあります。緊急地震速報の仕組みとスマホ設定の確認方法はこちらの記事で詳しく解説しています。
また、補助的な備えとして枕元に置く電池式のラジオも有効です。停電でスマホのバッテリーが切れた場合でも、ラジオで情報収集が続けられます。
津波注意報が出たとき何をすべきか

「津波注意報」と聞くと「小さい津波だから大丈夫」と判断してしまう方もいますが、山形県沖地震が示したのは注意報レベルでも第一波は5分以内に到達する場合があるという現実です。
日本海側で「津波注意報」が発表されたら、海岸・川の河口付近にいる方はすぐに行動することが必要です。「11cmだから怖くない」ではなく、「次の波はもっと高いかもしれない」「今後より大きな地震が起きるかもしれない」という前提で動いてください。
津波注意報が出たときの行動原則
・海岸・川の河口付近からすぐに離れる
・できれば徒歩で高台・頑丈な高い建物へ向かう
・車での避難は渋滞を招くため、徒歩が原則(高齢者・障害者等は状況に応じて判断)
・「注意報だから小さい」と判断しない。注意報でも人が流される波は来る
・津波注意報・警報が解除されるまで海には近づかない
なお、山形県沖地震では新潟市で津波避難所が開放されなかったという課題がありました。自分が住む地域・職場・旅行先の近くの津波避難ビルや避難場所を、平時のうちに確認しておくことが大切です。同じ6月18日に起きた大阪府北部地震では都市型直下地震のまた違う教訓が残されています。あわせてご覧ください。
停電・断水時に役立つ備蓄品を確認する

山形県沖地震では山形・新潟両県で約9,000軒以上が停電しました。夜間の停電は、情報収集・移動・生活のすべてに影響します。以下の備蓄品が機能する状態で揃っているか、今日一度確認してみてください。
| 備蓄品 | 主な用途 | 目安数量(1人) |
|---|---|---|
| ヘッドライト・懐中電灯 | 暗闇での移動・作業 | 1人1個以上 |
| 予備電池・充電式バッテリー | ライトの電源確保 | 余裕を持って複数 |
| モバイルバッテリー(大容量) | スマホの充電・情報収集 | 1人1台 |
| 携帯ラジオ | 停電時の情報収集 | 家に1台 |
| 飲料水(ペットボトル) | 断水・ライフライン停止への備え | 1人1日3L×7日分が目安 |
| 携帯トイレ | 断水・避難時のトイレ問題 | 1人あたり複数日分 |
| スリッパ・厚底の靴 | ガラス破片からの足の保護 | 枕元に1足 |
数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。
まとめ:山形県沖地震の教訓と今の備え

2011年3月11日、私は福島で東日本大震災を経験しました。あの日を経験したからこそ、夜間に光がなくなることの怖さが身にしみてわかります。懐中電灯一本あるかないかで、いざというときの行動は大きく変わります。山形県沖地震の夜も、多くの方が同じような状況に置かれていたはずです。
2019年の山形県沖地震が残した教訓を整理すると、3つのポイントに集約できます。
ひとつ目は、日本海側の津波は速いということ。地震発生後5分で第一波が到達した事実は、日本海沿岸に住む方にとって「揺れたらすぐ逃げる」という習慣が絶対に必要だと教えてくれます。
ふたつ目は、夜間の停電への備えが欠かせないということ。懐中電灯・ヘッドライト・モバイルバッテリー・携帯ラジオが機能する状態で手の届く場所にあるかどうかが、暗闇の中での安全な行動を左右します。
みっつ目は、津波避難場所を今日確認するということ。いざ避難しようとしても、指定避難所が開放されていなかった・場所がわからなかったでは意味がありません。平時のうちに自分の地域のハザードマップと避難場所を確認しておきましょう。
山形県沖地震は死者ゼロで終わりました。でもそれは「この規模だったから」という面も大きいです。もし規模がもう一段階大きかったら、もし津波がもう少し高かったら——過去の災害は未来の備えを映す鏡です。
本記事は公的資料をもとに作成していますが、災害の記録は調査の進展により数値が変わることがあります。最新の正確な情報は各省庁・自治体の公式情報をご確認ください。また、掲載内容は特定の個人・団体を批判するものではなく、防災の教訓を共有することを目的としています。
よくある質問
Q. 山形県沖地震はいつ起きましたか?
2019年(令和元年)6月18日22時22分に発生しました。震源は山形県沖(深さ約14km)、規模はM6.7で、新潟県村上市で最大震度6強を観測しました。山形県でも観測史上初めて震度6以上の揺れが記録された地震です。
Q. 山形県沖地震で津波は来ましたか?
気象庁は地震発生の2分後(22時24分)に山形県・新潟県・石川県能登に津波注意報を発表しました。山形県鶴岡市鼠ヶ関で11cmの津波が観測されましたが、人的被害は発生しませんでした。早いところでは地震発生後わずか5分で第一波が到達しており、日本海側の津波の速さを示す事例となりました。
Q. 日本海側に津波は来ないというのは本当ですか?
これは誤りです。日本海側の地震は震源が沿岸に近いため津波の到達が極めて早く、規模のわりに津波が高くなる傾向があります。1983年の日本海中部地震では104人が亡くなり、うち100人が津波による犠牲とされています。太平洋側と同様に、海岸近くで強い揺れを感じたらただちに避難することが必要です。
Q. 夜間の地震で停電したらどう対応すればいいですか?
枕元に懐中電灯やヘッドライト、スリッパを常備しておくことが基本です。揺れが収まったらまず靴やスリッパを履き、足をガラス破片から守ったうえで行動しましょう。モバイルバッテリーを常に充電しておくことで、停電時もスマートフォンで情報収集が可能です。
Q. 緊急地震速報が夜中に鳴ったらどうすればいいですか?
まず布団の中で頭を守り、揺れが収まるまで待ちましょう。山形県沖地震では緊急地震速報が地震波検知から7.3秒後に発表されました。この数秒で頭を守る姿勢を取るだけで、けがのリスクを大幅に下げられます。スマートフォンの緊急速報設定がオンになっているか、定期的に確認しておくことも大切です。
山形県沖地震が教えてくれた備え
2019年の山形県沖地震から私たちが学べることは、「知識と行動」が命を左右するという事実です。
あなたの備えを今すぐ確認してください。
- ☐ 枕元に懐中電灯・ヘッドライトとスリッパを置いている
- ☐ スマートフォンの緊急地震速報設定がオンになっている
- ☐ 自宅周辺のハザードマップと津波避難場所を確認している
- ☐ 持ち出し袋が玄関にすぐ持って出られる状態にある
- ☐ 家族全員で避難場所・連絡方法を確認している
山形県沖地震の教訓は「逃げる準備は、逃げる前に整える」ことを示しています。HIHの防災リュックは、その「準備」をすぐ始められるように設計されています。
🛡️ 防災士監修記事
後藤 秀和(ごとう ひでかず)
防災士/株式会社ヒカリネット 代表取締役
2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得しHIH(Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。





