熱中症特別警戒アラートとは?基準と備えを解説【2026年版】

熱中症特別警戒アラートとは?基準と備えを解説【2026年版】
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
「熱中症特別警戒アラートって聞いたことはあるけど、実際どんな時に出るの?」「熱中症警戒アラートと何が違うの?」——検索してこのページにたどり着いた方は、そんな疑問をお持ちではないでしょうか。私が拠点を置く福島市は、東北というと涼しい避暑地のイメージを持たれることが多いのですが、福島市は盆地地形のため熱がこもりやすく、日本有数の暑さになる地域です。夏には埼玉県熊谷市や群馬県館林市と並んで全国の最高気温ランキングで話題になることも珍しくありません。夏本番になると各地で気温35℃を超える猛暑日のニュースが増え、「特別警戒」という言葉の重みに不安を感じる方も多いと思います。この記事では、防災士の視点から、熱中症特別警戒アラートの仕組みと、私たちが今日からできる備えについて解説します。
熱中症特別警戒アラートとは?基準と発表の仕組み

熱中症特別警戒アラートとは、都道府県内のすべての暑さ指数(WBGT)観測地点で「翌日35以上」が予測された際に、環境省が発表する最高レベルの熱中症警戒情報のことです。
熱中症特別警戒アラートはめったに発表されないからこそ、日頃の熱中症警戒アラート段階での備えこそが実践的な対策になります。
熱中症警戒アラートとの違い

まず整理しておきたいのが、「熱中症警戒アラート」と「熱中症特別警戒アラート」の違いです。名前が似ているため混同されがちですが、発表基準・発表単位・発表時間のすべてが異なります。
| 項目 | 熱中症警戒アラート | 熱中症特別警戒アラート |
|---|---|---|
| 発表基準 | いずれか1地点でWBGT33以上予測 | 都道府県内すべての地点でWBGT35以上予測 |
| 発表単位 | 全国58の府県予報区等 | 都道府県単位 |
| 発表時間 | 前日17時頃・当日5時頃 | 前日14時頃 |
| 運用開始 | 2021年(全国本運用) | 2024年 |
表を見るとわかるとおり、熱中症特別警戒アラートは「都道府県内すべての地点」が基準を満たす必要があるため、熱中症警戒アラートよりもはるかに発表のハードルが高い仕組みになっています。
発表基準となるWBGT35以上とは

発表基準に使われる「暑さ指数(WBGT)」は、単純な気温とは異なる指標です。①気温、②湿度、③日射・輻射熱(地面や建物、人の体から出る熱)という3つの要素を組み合わせて算出されます。同じ気温でも湿度が高いほど汗が蒸発しにくく、体温がこもりやすくなるため、WBGTのほうが実際の熱中症リスクを的確に反映できるとされています。
WBGT35という数値は、観測記録の中でもごくまれにしか到達しない極めて高い水準とされています。2012年から2021年の10年間で、同一都道府県内の日最高WBGTの最低値が最も高かった年でも34℃にとどまっており、都道府県全体で35以上に達した記録は、制度創設時点ではまだありませんでした。
暑さ指数は、気象庁の「気温」だけを基準にした従来の「高温注意情報」の課題(湿度が加味されず、実際の熱中症搬送者数との相関が薄いこと)を踏まえて導入された、より実態に近い指標です。
体の中では、汗をかいて蒸発するときに熱を逃がす「気化熱」という仕組みで体温を調整しています。ところが湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体にどんどん熱がこもっていきます。さらに、アスファルトや建物からの照り返し(輻射熱)も体温上昇に拍車をかけます。気温計の数字だけでは見えないこの「体感の危険度」を数値化したものが暑さ指数であり、防災の視点では「気温より暑さ指数を見る」という習慣を持つことが、熱中症を防ぐ第一歩になります。
発表されるタイミングと時間

熱中症特別警戒アラートは、対象となる前日の午後2時頃に発表されます。熱中症警戒アラート(前日17時頃・当日5時頃)よりも早いタイミングで発表される点が特徴です。これは、学校や企業といった管理者側が、翌日のイベント中止や外出中止の判断を早めに行えるようにするための設計とされています。
創設された背景と法改正
熱中症特別警戒アラートは、令和5年の気候変動適応法改正によって創設され、令和6年(2024年)4月24日から運用が始まりました。近年、熱中症による救急搬送人員は毎年数万人規模で推移し、死亡者数も高い水準が続いています。こうした状況を踏まえ、従来の熱中症警戒アラートに加えて、「過去に例のない危険な暑さ」に対応する一段上の警戒情報として新設されたのがこの制度です。
あわせて、熱中症特別警戒アラートが発表された際には、市町村長が指定する「指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)」を一般開放することも制度化されました。
令和8年度の運用期間
令和8年度の熱中症警戒アラート・熱中症特別警戒アラートは、2026年4月22日(水)から10月21日(水)まで運用されています。また2026年からは、標高が高いなどの理由で暑さ指数が低めに出やすい13県24地点が判定対象から除外され、より実態に即した発表基準に見直されました。
(出典:環境省『令和8年度熱中症特別警戒アラート及び熱中症警戒アラートの運用を開始します』)
熱中症特別警戒アラートの過去の発表実績と対応
これまでの発表回数と実績

意外に思われるかもしれませんが、熱中症特別警戒アラートは2024年の運用開始以降、実際に発表された実績はほとんどないとされています。2025年11月に行われた環境省の有識者検討会でも、熱中症特別警戒アラートについて「これまでに発表実績はない」と報告されています。一方で、一段下の熱中症警戒アラートは2025年度に延べ1,749回発表され、過去最多を更新しました。
つまり「特別警戒アラートが出ていないから安心」ではなく、「熱中症警戒アラートの段階で、すでに命に関わる暑さになっている」というのが実態です。特別警戒アラートの発表を待ってから行動するのではなく、通常の警戒アラートが出た時点でしっかり対策をとることが、実践的な備えになります。
本記事の発表実績は執筆時点の公的資料に基づく情報です。制度の運用状況は変わる可能性があるため、最新の発表状況は環境省熱中症予防情報サイトでご確認ください。
学校や保育園での休校対応

熱中症特別警戒アラートが発表された場合、環境省は校長や経営者、イベント主催者などの管理者に対し、運動・外出・イベント等の中止、延期、変更(リモートワークへの変更を含む)を判断するよう呼びかけています。ただし、「アラートが出たら自動的に休校になる」という全国一律の制度ではなく、実際の休校判断は各自治体・学校の裁量に委ねられています。お子さんが通う学校や保育園の対応方針は、事前に確認しておくと安心です。
また、家庭内でも「うちの子は大丈夫」「自分はまだ平気」と過信せず、熱中症の初期サインを知っておくことが重要です。めまい、大量の発汗、こむら返り、頭痛、吐き気などが見られたら、無理をさせず、涼しい場所へ移動して体を冷やし、水分・塩分を補給させてください。症状が改善しない場合や意識がもうろうとしている場合は、ためらわずに救急要請を検討しましょう。
クーリングシェルターの活用
熱中症特別警戒アラートが発表された地域では、市町村があらかじめ指定した冷房設備のある公共施設などが「クーリングシェルター(指定暑熱避難施設)」として一般開放されます。自宅のエアコンが故障している場合や、停電で冷房が使えない場合の緊急避難先として、お住まいの自治体がどこを指定しているか、事前に確認しておくことをおすすめします。
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発表時に家庭でとるべき備え

2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験した私にとって、電気が止まるということは、単なる不便では済まされない切実な問題でした。真夏の停電は、暑さそのものよりも「涼をとる手段を失うこと」が命に関わります。エアコンが使えない状況で猛暑が重なれば、熱中症のリスクは一気に跳ね上がります。
停電が起きたときの熱中症対策としては、扇風機や保冷剤といったアナログな備えに加えて、モバイルバッテリーや情報収集手段を確保しておくことも欠かせません。停電時に暗闇の中でどう過ごすかについては、地震で停電の夜どうする?暗闇の恐怖を消す防災士の生存対策でも詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
高齢者や小さなお子さんがいるご家庭では、本人が「暑い」と自覚しにくいケースもあるため、周囲からのこまめな声かけが重要です。家庭の備蓄品を見直す際は、水分・塩分補給グッズだけでなく、季節ごとの見直しも忘れずに行いましょう。備蓄全般の考え方については家庭の防災備蓄ガイド:水・食料・日用品の備え方解説を参考にしてください。
停電が長引く夏場は、太陽光で電気を作り続けられる備えがあると安心です。私が防災セットにソーラーパネルを組み込むことをすすめている理由も、モバイルバッテリーだけでは長期の停電に対応しきれないという被災経験からきています。詳しくは防災グッズ最強ランキング10選|被災した防災士が本気で選んだアイテムでも紹介しています。
猛暑による停電対策として、太陽光でスマートフォンなどを充電できる備えを検討している方には、ソーラーパネル付き防災セットの詳細もあわせてご覧いただくと選びやすくなると思います。

まとめ:熱中症特別警戒アラートへの備え方

熱中症特別警戒アラートは、都道府県内すべての地点でWBGT35以上が予測された場合に発表される、国内最高レベルの熱中症警戒情報です。制度創設以来、実際の発表実績はほとんどなく、むしろ一段下の熱中症警戒アラートの段階で、すでに命に関わる暑さになっているケースがほとんどです。特別警戒アラートの発表を待つのではなく、熱中症警戒アラートが出た時点でエアコン・水分補給・声かけを徹底し、停電時の備えまで含めて見直しておくことが、今日からできる実践的な対策です。
今日から見直したい5つのポイント
・熱中症特別警戒アラートは都道府県内「全地点」でWBGT35以上が基準
・発表実績はほとんどなく、熱中症警戒アラートの段階から対策を
・学校の休校は自動ではなく自治体・学校の裁量
・停電時はクーリングシェルターと自宅の備え(充電・冷却)を併用
・高齢者・子どもは自覚しにくいため周囲の声かけが命を守る
猛暑は毎年必ずやってきます。「特別警戒」という言葉に慌てるのではなく、日頃の備えを一つずつ積み重ねておくことが、いざという時にご家族を守る一番の近道だと、私は考えています。今日、この記事を読んだことをきっかけに、ご家庭の暑さ対策とエアコン・充電まわりの備えを、ぜひ一度見直してみてください。
数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。
よくある質問
Q. 熱中症特別警戒アラートは今までに発表されたことがありますか?
A. 2024年の制度創設以降、2025年11月時点の環境省の報告では発表実績はないとされています。一方で一段下の熱中症警戒アラートは毎年数千回規模で発表されており、こちらの段階で十分な警戒が必要です。
Q. 熱中症特別警戒アラートと熱中症警戒アラートの違いは何ですか?
A. 発表基準・発表単位・発表時間が異なります。熱中症警戒アラートは府県予報区内の1地点でもWBGT33以上と予測されれば発表されますが、熱中症特別警戒アラートは都道府県内すべての地点でWBGT35以上と予測される必要があり、発表のハードルがより高くなっています。
Q. 熱中症特別警戒アラートが出たら学校は休みになりますか?
A. 全国一律で自動的に休校になる制度ではありません。環境省はイベントの中止・延期などの判断を管理者に求めていますが、具体的な休校判断は各自治体・学校の裁量です。お子さんの通う学校の方針を事前に確認しておくと安心です。
Q. 熱中症特別警戒アラートの運用期間はいつからいつまでですか?
A. 令和8年度は2026年4月22日から10月21日までです。運用期間は原則として4月第4水曜日から10月第4水曜日までとされています。
🛡️ 防災士監修記事
後藤 秀和(ごとう ひでかず)
防災士/株式会社ヒカリネット 代表取締役
2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得しHIH(Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。



