洪水対策の完全ガイド|個人でできる11の備えを防災士が解説

洪水対策の完全ガイド|個人でできる11の備えを防災士が解説
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
「洪水対策って、堤防やダムを作ることでしょ?」と思っていませんか。確かにそれは行政がやるハード対策ですが、個人でも今すぐできる洪水対策がたくさんあります。
防災士として300社以上の法人備蓄を支援し、福島での被災経験を持つ私が言えることは、「洪水対策は、洪水が来てから考えていては絶対に間に合わない」ということです。警戒レベルが4になってから慌てて水のうを作り始めても、すでに膝まで水が来ていたとしたら…。そうならないための備えを、この記事では11のポイントに整理してお伝えします。
この記事でわかること:ハザードマップの正しい使い方 / 個人でできる浸水防止策(水のう・止水板)/ 洪水対策グッズの選び方 / 警戒レベルと避難のタイミング / 車・バイクの水害対策 / 洪水対策でやってはいけないNG行動
洪水対策とは何か?基本と個人でできること

洪水対策とは、河川の氾濫や大雨による浸水被害から命・財産・生活を守るために、事前に講じる行動・準備・対処の総称です。
大きく分けると、堤防・遊水地・地下調節池などを整備する「ハード対策」と、ハザードマップ確認・避難計画・家庭での浸水防止などの「ソフト対策」があります。行政が担うハード対策に対して、個人が担えるのはソフト対策です。そしてソフト対策こそが、命を守る最後の砦になります。
近年、日本の水害被害は深刻さを増しています。令和元年(2019年)東日本台風では年間水害被害額が約2兆1,800億円(確報値)と統計開始以来最大を記録しました(国土交通省)。過去10年の水害被害額は全国で7兆円を超えるとされています。「昔は洪水なんてなかった地域」でも、線状降水帯やゲリラ豪雨の増加によって突発的な浸水が起きる時代になりました。
洪水がなぜ起きるのか、そのメカニズムをもっと詳しく知りたい方は、洪水はなぜ起こる?原因を簡単に解説もあわせてご覧ください。
洪水対策の定義とハード・ソフトの違い

洪水対策は大きく2種類に分かれます。
| 種別 | 担い手 | 具体例 |
|---|---|---|
| ハード対策 | 国・自治体 | 堤防整備・ダム・遊水地・地下調節池・排水ポンプ場 |
| ソフト対策 | 個人・家庭 | ハザードマップ確認・マイタイムライン・水のう設置・避難リュック準備 |
ハード対策は強力ですが、完璧ではありません。令和元年台風では、整備済みの堤防でも全国142か所で決壊が発生しました。ハード対策を過信せず、ソフト対策で自分を守る意識が不可欠です。
また、「外水氾濫」(川があふれる)と「内水氾濫」(下水処理が追いつかない都市型浸水)の2種類があることも知っておいてください。東京都では水害被害のうち内水氾濫が約8割を占めるとされており(国土交通省資料)、「川の近くじゃないから安心」は通用しません。内水・外水の違いと対策については、内水氾濫と外水氾濫の違いをわかりやすく解説で詳しくまとめています。
個人でできる洪水対策の全体像

個人でできる洪水対策を「発生前の備え」「直前の行動」「発生中の行動」の3フェーズで整理すると、以下のようになります。
【発生前の備え(平時にやっておくこと)】
・ハザードマップで自宅リスクを確認する
・マイタイムラインを家族で作成する
・水のう・止水板・防災リュックを準備する
・車・バイクの避難先を決めておく
【直前の行動(大雨・洪水警報が出たら)】
・水のう・止水板を玄関・排水口に設置する
・警戒レベルに合わせて避難を判断する
・スマホに気象庁「キキクル」を入れておく
【発生中の行動(浸水が始まったら)】
・冠水した道路には絶対に入らない
・2階以上への垂直避難を選択する
・車のエンジンをかけない
ハザードマップで自宅リスクを確認する

洪水対策の第一歩は、自宅がどんなリスクにさらされているかを知ることです。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」では、全国の洪水浸水想定区域・内水浸水想定区域をオンラインで無料確認できます。
確認するポイントは3つあります。①自宅の浸水想定深(何mまで浸水するか)、②浸水継続時間(どのくらい水が引かないか)、③最寄りの指定緊急避難場所の位置です。
ハザードマップを「見たことがある」だけでは不十分です。浸水深が0.5m未満の地域でも、流れがある場合は立って歩くことが難しくなります。数字の意味を理解したうえで避難判断に使ってください。
洪水ハザードマップと内水ハザードマップは別々に存在している自治体が多いため、両方を確認することが大切です。また令和3年の水防法改正により、2025年度をめどに対象河川が約2,000から約17,000河川へ大幅拡大される予定ですので、定期的な確認をおすすめします。
マイタイムラインで動きを事前に決める

「警報が出てから何をするか考える」では遅すぎます。マイタイムラインとは、台風や大雨が来たときに「誰が・いつ・何をするか」を事前に決めておいた個人・家族の行動計画のことです。
作成のポイントは、警戒レベルごとに行動を紐づけることです。たとえば「レベル2になったら水のうを玄関に置く」「レベル3になったら高齢の親に電話する」「レベル4になったら避難所へ向かう」という具合に、迷わず動ける状態にしておきます。
国土交通省の「マイ・タイムライン」作成ガイドは自治体窓口や国交省Webサイトから入手できます。家族全員で一度話し合いながら作成することが、コミュニケーションとしても効果的です。
洪水対策グッズの選び方と優先順位

洪水対策グッズを揃えるとき、何から手をつければいいか迷う方が多いです。私は「逃げるための道具」と「守るための道具」に分けて考えることをおすすめしています。
| カテゴリ | 具体的なグッズ | 優先度 |
|---|---|---|
| 逃げる道具 | 防災リュック・懐中電灯・モバイルバッテリー・携帯トイレ・飲料水・非常食 | ◎最優先 |
| 守る道具 | 水のう(ゴミ袋+水)・吸水性土のう・止水板・止水シート | ○次に揃える |
| 情報収集 | 防水ラジオ・予備バッテリー内蔵ラジオライト | ○必須 |
| 脱出補助 | 緊急脱出ハンマー(車内常備)・ライフジャケット | △あると安心 |
最優先は「逃げる道具」です。いくら家を守る準備をしても、命が失われては意味がありません。まず防災リュックを玄関に置いてから、水のうや止水板を揃えるという順番で備えてください。
洪水対策を家と避難行動で完成させる
ハザードマップで自宅リスクを把握し、マイタイムラインを作ったら、次は「家を守る具体的な行動」と「いざというときの避難行動」を整えます。この2つが揃って初めて、洪水対策は完成します。
玄関・窓・排水口の浸水を防ぐ方法

洪水が迫ってきたとき、家の中への浸水を少しでも遅らせることが被害を軽減します。特に注意すべき場所は3か所です。
①玄関・出入口
最も有効なのが水のうです。40Lのゴミ袋を2〜3枚重ね、半分ほど水を入れて口をしっかり縛ります。それを玄関の隙間なく並べるだけで、ある程度の浸水を抑えることができます。段ボール箱に入れて積み重ねると安定します。より本格的には、市販の吸水性土のうや止水板・止水シートが効果的です。自治体によっては止水板設置費用の補助制度もありますので、事前に確認しておくとよいでしょう。
②排水口・トイレ
浸水時にはトイレや台所の排水口から下水が逆流してくることがあります。水のうやゴミ袋に水を入れたものを排水口に乗せておくことで、逆流を抑えることができます。
③窓・換気口
低い位置にある窓や基礎部分の換気口は、浸水水位によっては浸入経路になります。止水シートをテープで貼るか、水のうで塞ぐことで対応できます。
これらの対策はあくまで「小規模浸水の初期段階」に有効な方法です。大規模な洪水が迫っているときは、家を守ろうとする行動が避難のタイミングを失わせることがあります。警戒レベル4(避難指示)が発令されたら、迷わず逃げることを最優先にしてください。
洪水対策に役立つ防災リュックの中身

洪水・水害時の防災リュックには、地震のときとは少し異なる視点が必要です。水に濡れる可能性があるため、防水性の高いリュックか、中身をビニール袋で二重にパッキングすることが基本になります。
【洪水対策の防災リュック 必須アイテム】
・飲料水(1人1日3L目安 × 最低3日分)
・非常食(3日〜7日分)
・携帯トイレ(避難所でも不足しやすい)
・懐中電灯またはヘッドライト
・モバイルバッテリー(大容量)
・防水ラジオ or ラジオ付きライト
・常備薬・処方箋のコピー
・現金(少額紙幣・硬貨)
・雨具(カッパ・ゴム手袋)
・着替え(ビニール袋に密封)
・ゴミ袋(多目的に使える)
・笛(水中でも音が出せる)
水害時は停電が長期化しやすく、断水が重なることも多いです。2011年3月11日、福島で被災した経験から言えるのは、停電の暗闇の中でライトがあるかないかで、心の余裕が大きく変わるということです。モバイルバッテリーと充電できるラジオライトは水害時の必需品と言えます。
防災リュックの詳しい選び方・中身リストについては、避難場所と避難所の違いと正しい避難行動もあわせてご確認ください。
大雨・洪水情報の集め方と警戒レベル

洪水対策において、情報収集は命を守る直接的な手段です。「何となく雨が強い」ではなく、警戒レベルに基づいて行動することが重要です。
内閣府が定める5段階の警戒レベルは以下の通りです。
| 警戒レベル | 発令者 | とるべき行動 |
|---|---|---|
| レベル1〜2 | 気象庁 | ハザードマップ確認・避難場所・経路の再確認 |
| レベル3(高齢者等避難) | 市町村 | 高齢者・障害者・妊産婦などは避難開始 |
| レベル4(避難指示) | 市町村 | 全員避難。レベル4までに避難完了が基本 |
| レベル5(緊急安全確保) | 市町村 | すでに災害発生・切迫。命を守る最終行動 |
重要なのは「レベル5を待ってから逃げない」ことです。レベル5は必ず発令されるわけではなく、発令されたときはすでに避難が難しい状況になっている場合があります。レベル4が発令された時点で全員が避難を完了していることが理想です。
情報収集には気象庁のキキクル(危険度分布)(出典:気象庁)が役立ちます。土砂・浸水・洪水の3種類の危険度をリアルタイムで地図上に表示してくれます。スマートフォンのブックマークに登録しておくことをおすすめします。
車・バイクの水害から守る事前対策

洪水被害で意外と見落とされがちなのが、車やバイクの水害対策です。浸水した車は修理費用が数十万〜数百万円になることもあり、場合によっては廃車になります。
最も効果的な対策は「事前に高台や立体駐車場へ移動する」ことです。台風や大雨の予報が出たら、早めに安全な場所へ車を移動させてください。事前に「この雨が来たら車を〇〇の立体駐車場に移動する」と決めておくと、迷いなく動けます。
また、国土交通省が公開している「道路冠水注意箇所マップ」で、自宅周辺や通勤ルート上の冠水しやすい場所を把握しておくことも大切です。
浸水した車はエンジンをかけないでください。吸気系に水が入った状態でエンジンをかけると、エンジン自体が壊れる可能性があります(ウォーターハンマー現象)。また車内に緊急脱出ハンマーを運転席近くに必ず備えておきましょう。車のドアは外の水位が高くなると水圧で内側から開けられなくなります。
洪水対策でやってはいけないNG行動

洪水対策でやりがちなミスをまとめました。知っているだけで、いざというときの判断が変わります。
【洪水対策 NGリスト】
❌ 「川が近くにないから大丈夫」と思い込む
→ 内水氾濫は川がなくても起こります。下水処理が追いつかない都市型浸水は川沿いに限りません。
❌ 冠水した道路に車や徒歩で進入する
→ 濁った水は深さがわかりません。マンホールの蓋が外れていることもあります。わずか15〜30cmの水流でも人は流されることがあります。
❌ 警戒レベル5が出てから逃げようとする
→ 発令されないこともあります。レベル4で全員が動くことが基本です。
❌ 浸水した水に素手・素足で触れる
→ 生活排水・汚水・有害物質が混入している可能性があります。長靴・ゴム手袋を着用してください。
❌ 水が引いたら浸水した車のエンジンをかける
→ 吸気系破損・ショートによる車両火災のリスクがあります。専門業者へ連絡してください。
❌ 地下室・アンダーパス付近での滞在
→ 急激に水が溜まります。大雨時は周囲より低い場所から離れてください。
まとめ:洪水対策は「逃げる備え」と「守る備え」の両輪
洪水対策でやっておくべき11のポイントをまとめます。
- ハザードマップで自宅の浸水リスクを確認する(洪水+内水の両方)
- マイタイムラインを家族で作成し、警戒レベルと行動を紐づける
- 洪水対策グッズは「逃げる道具」から優先順位をつけて揃える
- 玄関・排水口・窓の浸水対策(水のう・止水板)を準備する
- 防水対応の防災リュックを玄関に置いておく
- モバイルバッテリーと防水ラジオを常備する
- 警戒レベルの意味を覚え、レベル4では迷わず避難する
- 気象庁「キキクル」をブックマークし、大雨時に確認する
- 車・バイクは早めに高台・立体駐車場へ移動する
- 浸水した道路への進入と、水没車のエンジン始動は絶対にしない
- 浸水した水には素手・素足で触れない
「逃げる備え」(防災リュック・警戒レベルの把握・マイタイムライン)と「守る備え」(水のう・止水板・情報収集)のどちらか一方だけでは不完全です。この両輪が揃って初めて、洪水対策は機能します。
大切な人を守るために、今日できることから一つ始めてみてください。まずはハザードマップで自宅を確認することから。それが洪水対策の第一歩です。
数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。
よくある質問
Q. 洪水対策で個人が最初にやるべきことは何ですか?
最初にやるべきことはハザードマップで自宅のリスクを確認することです。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」から洪水浸水想定区域と内水浸水想定区域の両方を確認してください。自宅がどの程度の浸水リスクにさらされているかを知ることが、すべての洪水対策の出発点になります。
Q. 水のうはどうやって作ればいいですか?
40Lのゴミ袋を2〜3枚重ね、半分ほど水を入れて口をしっかり縛るだけで簡易水のうができます。玄関の出入口や排水口に隙間なく並べることで、小規模な浸水を抑える効果があります。段ボール箱に入れると安定して積み重ねることができます。ただし大規模な洪水には効果が限定的なため、避難判断を遅らせないことが最優先です。
Q. 警戒レベル何になったら避難すればいいですか?
基本はレベル4(避難指示)が発令されたら全員が避難することです。ただし、高齢者・障害者・乳幼児連れの方はレベル3(高齢者等避難)の段階で避難を開始してください。レベル5(緊急安全確保)を待つと既に避難が困難な状況になっている場合があるため、レベル4までに避難を完了させることが原則です。
Q. 洪水対策グッズで最優先で揃えるものは何ですか?
最優先は「逃げるための道具」です。防災リュック・懐中電灯・モバイルバッテリー・携帯トイレ・飲料水・非常食を先に揃えてください。その後に水のう・止水板など「守るための道具」を揃える順番が望ましいです。いくら家を守る準備をしても、命を失っては意味がないからです。
Q. 川の近くでなければ洪水対策は不要ですか?
そうではありません。川の近くでなくても「内水氾濫」(下水処理が追いつかない都市型浸水)は発生します。東京都では水害被害のうち内水氾濫が約8割を占めるとされています(国土交通省資料)。線状降水帯やゲリラ豪雨の増加により、これまで水害がなかった地域でも浸水が起きる時代です。どの地域に住んでいても洪水対策は必要です。
洪水対策を知ったら次は「逃げる備え」を整えよう
洪水から学べることは、「知識と行動」が命を左右するという事実です。
あなたの備えを今すぐ確認してください。
あなたの防災度チェック
- □ ハザードマップで自宅の浸水リスクを確認している
- □ マイタイムラインを家族で作成している
- □ 水のうや止水板を準備している(または作り方を知っている)
- □ 持ち出し袋が玄関にすぐ持って出られる状態にある
- □ 家族全員で避難場所・連絡方法を確認している
洪水対策の教訓は「逃げる準備は、逃げる前に整える」ことを示しています。HIHの防災リュックは、その「準備」をすぐ始められるように設計しています。
🛡️ 防災士監修記事
後藤 秀和(ごとう ひでかず)
防災士/株式会社ヒカリネット 代表取締役
2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得しHIH(Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。





