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南海トラフ臨時情報とは|日向灘地震2回に学ぶ4つの備え【防災士が教える保存版】

スマートフォンに表示された地震臨時情報の通知を確認する手元のイメージ

南海トラフ臨時情報とは|日向灘地震2回に学ぶ4つの備え【防災士が教える保存版】

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。

2024年8月8日、日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震をきっかけに、気象庁は運用開始以来初めて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表しました。ニュースで見聞きしたものの、「結局何をすればいいのか分からなかった」という方も多いのではないでしょうか。

南海トラフ地震臨時情報は、発表されたからといって必ず地震が起きるものではなく、平常時より少し警戒レベルを上げて過ごすための情報です。

この記事でわかること

・南海トラフ地震臨時情報の仕組みと4種類のキーワードの違い
・2024年8月・2025年1月、2度の日向灘地震で実際に何が起きたか
・発表後に社会で起きた混乱と、そこから見えてきた教訓
・今日から見直せる具体的な備え

目次

南海トラフ臨時情報の仕組みと基礎知識

南海トラフ地震臨時情報とは、南海トラフ沿いで通常と異なる現象が観測された際に、気象庁が発表する情報のことです。地震の発生を予知するものではなく、「発生の可能性が平常時より相対的に高まっている」ことを知らせる制度です。

南海トラフ臨時情報とは何か

南海トラフ沿いの監視領域を光の線で表したイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

この制度は2019年5月31日から運用が始まりました。想定震源域とその周辺を気象庁が常時監視し、一定の基準を満たす現象が観測されたときに発表されます。かつては「東海地震の予知」を前提とした大規模地震対策特別措置法(大震法)のもと、確実な予知ができるという考え方がありましたが、地震学の発展により「確度の高い予知は困難」というのが現在の科学的な共通認識です。そのため、確実な予知ではなく「相対的なリスクの高まり」を伝え、社会に自律的な備えを促す方向へと制度が転換された経緯があります。

南海トラフとは何か、そもそもどこにある地形なのかについては、南海トラフとはどこ?小学生向けに簡単に解説でも詳しく紹介していますので、あわせて確認してみてください。

巨大地震注意と警戒の違い

巨大地震注意と警戒の危険度の違いを光の強さで表したイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

臨時情報には「調査中」「巨大地震警戒」「巨大地震注意」「調査終了」の4種類のキーワードがあり、発表基準と求められる行動が異なります。

キーワード発表基準求められる防災行動
調査中監視領域内でM6.8以上の地震等が発生情報に注意し、評価検討会の結果を待つ
巨大地震警戒想定震源域内でMw8.0以上の地震(半割れ)事前避難対象地域は1週間の事前避難、その他は備えの再確認
巨大地震注意監視領域内でMw7.0〜8.0未満の地震(一部割れ)事前避難は不要だが、直ちに避難できる態勢を1週間維持
調査終了いずれの基準にも該当せず特別な措置を終了。ただし日頃の備えは継続

2024年8月8日の地震はモーメントマグニチュード7.0と評価され、「一部割れ」の基準に該当したため「巨大地震注意」が発表されました。「警戒」よりも一段階低いレベルであり、事前避難までは求められていない点がポイントです。

ここで出てくる「半割れ」「一部割れ」という言葉にも触れておきます。南海トラフの想定震源域は東側・西側に大きく分かれており、どちらか半分がまとまってずれ動く現象を「半割れ」と呼びます。これに対し、震源域の一部分だけがずれ動く現象を「一部割れ」と呼びます。半割れは残る半分の震源域に大きな影響を与えるため、より強い警戒が求められる「巨大地震警戒」の基準になっている、という違いです。なお、政府が2025年3月に公表した最新の被害想定では、南海トラフ巨大地震による死者数は最大で約29万8千人にのぼるとされており、迅速な避難によって津波による死者数を大きく減らせる可能性も示されています。

発表期間はいつからいつまでか

臨時情報の呼びかけ期間が1週間続くことを光の粒の列で表したイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

2024年8月8日の発表では、政府による「特別な注意の呼びかけ」は8月15日17時まで、あらかじめ定められた1週間で終了しました。「いつまで続くのか分からない」という不安の声も多く聞かれましたが、制度上は最初から1週間という目安が設けられています。この期間中、特別な備えを維持しつつ、通常の社会生活は続けることが基本方針とされています。

日向灘地震で初めて発表された経緯

夕暮れの海に地震の揺れと津波の兆しが立ち上るイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

2024年8月8日16時42分、日向灘の深さ約31kmを震源とするM7.1(Mw7.0)の地震が発生し、宮崎県日南市で最大震度6弱を観測しました。宮崎港では51cm、日南市油津では40cmの津波も観測されています。気象庁は地震発生から2分後の16時44分に津波注意報を発表し、17時に「調査中」、評価検討会での検討を経て19時15分に「巨大地震注意」を発表しました。総務省消防庁のまとめでは、この地震による負傷者は16人、住家被害は合計79棟にのぼりました。

前兆現象とスロースリップの仕組み

プレート境界がゆっくりずれるスロースリップ現象を光の筋で表したイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

日向灘のプレート境界は一様にひずみが溜まっているわけではなく、場所によって固着の強さが異なります。固着が弱い領域では、通常の地震のように大きく揺れることなく断層がゆっくりと動く「スロースリップ」という現象が起きることがあります。2024年8月の地震前にも、震源付近でこうしたゆっくりすべりが観測されていたことが電子基準点のデータから分かっています。

また、過去の地震活動では、断層が完全には破壊されずに一部が残ってしまう「割れ残り」という状態が生じることがあるとされています。割れ残った領域には周囲からの応力が集中しやすく、それが次の地震の引き金になる可能性が指摘されています。日向灘での地震が単独の被害にとどまらず、南海トラフ全体の監視で重視される理由の一つは、こうした割れ残りのリスクにあります。地震がどのようにプレート境界のずれから発生するのかについては、地震と断層。その「でき方」を簡単に解説でも取り上げていますので、こちらもぜひ参考にしてください。

南海トラフ臨時情報への備えと教訓

制度の仕組みを理解したところで、実際に2度発表された臨時情報から何を学べるのか、教訓として整理していきます。

二度の発表に見る運用の違い

規模の異なる2つの地震波形を並べて比較したイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

2025年1月13日にも日向灘でM6.6の地震が発生しましたが、このときは「調査終了」が23時45分に発表され、特別な呼びかけには至りませんでした。モーメントマグニチュードが7.0に届かなかったためです。被害も負傷者4人、住家一部破損2棟と、2024年8月と比べて限定的でした。同じ日向灘の地震でも、規模によって発表される情報が変わることが、この2つの事例からよく分かります。(出典:政府広報オンライン『南海トラフ地震に備えよう!南海トラフ地震臨時情報が発表されたら?』

発表後に起きた社会的混乱

情報発表後に品薄となった店舗の棚に手を伸ばす様子のイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

2024年8月の発表後、スーパーなどで米の品薄が広がり、いわゆる「令和の米騒動」につながったことをご記憶の方も多いと思います。総務省の統計では、2024年8月の一世帯あたりの米の購入数量は前年同月比で29.1%増加しました。ただし、これは臨時情報だけが原因というわけではなく、前年の猛暑による作況の悪化やインバウンド需要の増加で流通在庫がもともと少なかったこと、お盆明けに報道が集中したことなど、複数の要因が重なった結果と考えられています。実際、2024年初頭に1kgあたり約300円だった米の価格は、その後の需給逼迫を経て2025年5月には約800円まで上昇したとされ、臨時情報の発表がきっかけの一つとなりつつも、複合的な要因で品不足が長期化したことがうかがえます。

観光業への影響も大きく、和歌山県白浜町では海水浴場の閉鎖等により旅館業界で約5億円の損失が生じたと報じられました。串本町では役場職員が1週間にわたり夜間の泊まり込み対応にあたるなど、行政側の負担も課題として指摘されています。

2011年3月11日、私は福島でこの震災を経験しました。あのとき何より不安だったのは、正しい情報がなかなか届かないことでした。臨時情報のような制度も、内容を正しく理解しておくかどうかで、受け止め方が大きく変わってくると感じています。

事前避難対象地域とは何か

家族でハザードマップを確認し避難場所を話し合う様子のイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

「巨大地震警戒」が発表された場合、津波の到達が早いなど地震発生後の避難では間に合わない可能性がある地域は「事前避難対象地域」として、あらかじめ市町村が指定しています。指定地域の住民は、警戒が発表されている1週間、事前に安全な場所へ避難することが求められます。ご自宅がこの対象地域に該当するかどうかは、お住まいの市町村のハザードマップや防災計画で確認しておくことをおすすめします。

2024年8月の発表を受けた社会的な混乱を踏まえ、内閣府(防災担当)は2025年8月7日に「南海トラフ地震臨時情報防災対応ガイドライン」を改訂しました。この改訂では、鉄道などの交通機関について「原則として平常通り運行する」ことや、イベント等についても安全確保策を講じたうえで「継続が望ましい」ことが明記されています。臨時情報が発表されても、社会生活を過度に止めることなく、必要な備えだけを重点的に行うという方向性が、より具体的に示された形です。

今日から見直したい備え

非常持ち出しリュックの中身を家族で点検する様子のイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

臨時情報が発表されてから慌てて備えるのではなく、日頃からの備えを整えておくことが基本です。地震が起きた瞬間にとっさにとってしまいがちなNG行動については、地震発生時やってはいけないこと10選でも詳しく解説していますので、ご家族で確認しておくと安心です。

  • 非常持ち出し袋の中身と重さを確認する
  • 家族の避難場所と安否確認の方法を話し合っておく
  • ハザードマップで自宅周辺の津波・浸水リスクを確認する
  • 水・食料・携帯トイレなど生活必需品の備蓄状況を点検する

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南海トラフ臨時情報から学ぶ備えのまとめ

朝焼けの中、防災リュックを背負い備えを終えた家族の後ろ姿のイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

南海トラフ地震臨時情報は、地震を予知するものではなく、リスクの高まりを社会と共有し、自律的な備えを促すための制度です。2024年8月と2025年1月、2つの日向灘地震の事例からも分かるように、発表される情報は地震の規模によって変わり、必ずしも巨大地震に直結するわけではありません。だからこそ大切なのは、臨時情報が出るたびに一喜一憂することではなく、平常時から非常持ち出し袋や家族の連絡方法を整えておくことです。制度の名前や発表基準を正しく知っておくだけでも、いざというときに落ち着いて行動できるようになります。防災士として法人の備蓄支援にも携わってきましたが、慌てて動くよりも、事前に決めておいた行動をそのまま実行できる状態こそが、本当の意味での「備え」だと感じています。

よくある質問

Q. 南海トラフ臨時情報とはどのような制度ですか?

A. 南海トラフ沿いで通常と異なる現象が観測された際に、気象庁が発生可能性の高まりを知らせる情報です。地震の発生を予知するものではなく、2019年5月から運用されています。

Q. 南海トラフ臨時情報はいつまで続きますか?

A. 2024年8月の「巨大地震注意」では、あらかじめ定められた1週間で特別な呼びかけが終了しました。期間はケースによって内閣府・気象庁が判断します。

Q. 巨大地震注意と巨大地震警戒はどう違いますか?

A. 警戒はMw8.0以上の「半割れ」で発表され、対象地域では事前避難が求められます。注意はMw7.0〜8.0未満の「一部割れ」で発表され、事前避難までは求められません。

Q. 日向灘地震は南海トラフ地震とどう関係していますか?

A. 日向灘は南海トラフの想定震源域の西端にあたります。単独で大きな地震を起こす可能性があるだけでなく、隣接する震源域に影響を与える可能性も指摘されています。

Q. 臨時情報が発表されたら何をすればいいですか?

A. 巨大地震注意の場合は、非常持ち出し袋の確認やハザードマップの確認など、直ちに避難できる態勢を1週間維持することが基本です。特別な行動制限は求められていません。

数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。

🛡️ 防災士監修記事

後藤 秀和(ごとう ひでかず)

防災士/株式会社ヒカリネット 代表取締役

2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得しHIH(Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。

この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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