水難事故の件数推移と原因|2026年最新版・水辺チェック7項目

水難事故の件数推移と原因|2026年最新版・水辺チェック7項目
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
毎年夏になると、水難事故のニュースが続きます。海で、川で、用水路で。「またか」と思いながら、どこかで「自分は泳げるから」「うちの子には気をつけているから」と思っていないでしょうか。
正直に言うと、私もそう思っていた側の人間でした。大学生のとき、実際に離岸流に巻き込まれて沖へ流されかけるまでは。
この記事では、警察庁が発表している水難事故の件数推移をもとに「本当に危ないのはどこで、誰なのか」を整理したうえで、川と海それぞれで人が溺れる仕組みを解説します。最後に、今日そのまま使える水辺チェック7項目をまとめました。
この記事でわかること
- 水難事故の件数は減っているのに、助かる人も減っているという事実
- 泳いでいて亡くなる人は全体の5%未満という、意外な統計の中身
- 川と海で「溺れ方」がまったく違う理由と、それぞれの正しい対処
水難事故の件数推移と夏に集中する危険

水難事故とは、海・川・湖沼池・用水路・プールなどの水域で、人が溺れたり流されたりして死傷する事故のことです。レジャー中だけでなく、釣り・作業中・通行中に発生したものも含まれます。
結論から言えば、水難事故は「泳いでいる人」より「泳ぐつもりがなかった人」に多く起きています。ここを知らないまま夏を迎えるのが、いちばん危ないと私は思っています。
水難事故とは何を指すのか

「水難事故」と聞くと、多くの方が海水浴やプールを思い浮かべると思います。でも警察庁の統計上、水難事故はもっと広い範囲を指します。
釣りをしていて足を滑らせた。河原を歩いていて転落した。田んぼの用水路を見に行って落ちた。散歩中に増水した川に近づいた。これらはすべて水難事故として集計されます。つまり、水着に着替えていなくても、水難事故は起こるということです。
似た言葉に「水難救助」があります。これは消防や海上保安庁などが行う救助活動そのものを指す言葉で、事故の分類名ではありません。ニュースで両方が使われるため混同しやすい部分です。
過去10年の件数と死者数の推移

まず、全体像を数字で押さえておきましょう。警察庁が毎年6月に発表している「水難の概況」から、過去10年の推移をまとめました。
| 年 | 発生件数 | 水難者 | 死者・行方不明者 |
|---|---|---|---|
| 平成28年(2016) | 1,505件 | 1,742人 | 816人 |
| 平成29年(2017) | 1,341件 | 1,614人 | 679人 |
| 平成30年(2018) | 1,356件 | 1,529人 | 692人 |
| 令和元年(2019) | 1,298件 | 1,538人 | 695人 |
| 令和2年(2020) | 1,353件 | 1,547人 | 722人 |
| 令和3年(2021) | 1,395件 | 1,625人 | 744人 |
| 令和4年(2022) | 1,346件 | 1,640人 | 727人 |
| 令和5年(2023) | 1,392件 | 1,667人 | 743人 |
| 令和6年(2024) | 1,535件 | 1,753人 | 816人 |
| 令和7年(2025) | 1,426件 | 1,599人 | 760人 |
(出典:警察庁『令和7年における水難の概況等』)
本記事の統計データについて
掲載している数値は、警察庁が2026年6月に公表した令和7年(2025年)の確定値です。2026年の水難事故については、夏期(7〜8月)の速報が9月以降、年間の確定値は2027年6月に公表される見込みです。公表され次第、本記事も更新します。
令和6年は発生件数・水難者ともに過去10年で最も多い年でした。令和7年はそこから減少しています。ただ、10年のスパンで見ると大きく減ったわけではなく、警察庁も「近年は横ばい傾向」としています。
ここで注目していただきたいのは、件数ではなく中身のほうです。
件数が減っても危険度が下がらない理由

令和7年、水難者は1,599人。そのうち亡くなった方・行方不明の方が760人です。割合にすると約47.5%。溺れた人の、およそ2人に1人が助かっていません。
そしてもうひとつ。令和7年に無事救出された人は487人でした。水難者に占める割合にすると約30.5%、3人に1人ほどです。年による変動はありますが、溺れた人のおよそ半数が助かっていないという構造は、この10年で大きく変わっていません。
「水難事故は減っている」というニュースの見出しだけを見ると安心しがちですが、件数の増減と、自分や家族が助かる確率は別の話です。起きる数が減っても、起きたときの厳しさは変わっていないと考えておくほうが安全だと思います。
この数字を見るたびに思い出す光景があります。
子どもの頃、私は親戚のおじさんに何度も海へ連れて行ってもらいました。そのなかで何度か、砂浜でライフセーバーの方が人工呼吸をしている場面に出会ったことがあります。当時の私は子どもでしたから、ことの重大さは正直わかっていませんでした。それでも「とんでもないことが起きている」ということだけは伝わってきて、40年以上経った今でも、あの光景は鮮明に覚えています。
統計の数字は、ひとつひとつがああいう場面です。760人という死者・行方不明者の数字の向こうには、砂浜に人が集まって、誰かが必死に胸を押していた時間が、確かにあったということなんですね。
7月と8月に事故が集中する季節の理由

水難事故は、1年を通して均等に起きるわけではありません。警察庁が別途まとめている夏期(7〜8月)の統計を見ると、集中の度合いがはっきりします。
夏の2か月に、1年分の3割が集中している
- 令和7年 夏期(7〜8月)の発生件数:446件 / 年間1,426件の約31%
- 令和7年 夏期の死者・行方不明者:241人 / 年間760人の約32%
1年の6分の1の期間に3割が集中しているので、単純計算で密度は約2倍です。
理由はシンプルで、水辺にいる人の数が違うからです。危険そのものが夏だけ増えるわけではありません。危険は年中そこにあって、夏だけ人がそこへ行く。この順番で理解しておくと、油断の仕方が変わります。
猛暑の夏に水辺で起きていること

では、2026年の夏はどうなのか。ここは正直にお伝えします。
2026年の水難事故が多いかどうかは、今の時点では誰にもわかりません。警察庁の夏期統計が出るのは9月以降、年間の確定値は翌年6月だからです。SNSやニュースで事故が続くと「今年は異常だ」と感じますが、それは印象であって、統計ではありません。
ただ、はっきりしていることが一つあります。今年の夏が記録的に暑いということです。気象庁は2026年8月3日、7月中旬から下旬の顕著な高温について発表しました。7月中旬と下旬の西日本の平均気温は、統計を開始した1946年以降で最も高い記録になったとされています。最高気温40℃以上の「酷暑日」も、8月3日時点でのべ34地点となり、比較可能な2010年以降では最も多くなりました。
暑ければ、人は水辺に向かいます。母数が増えれば、事故の絶対数も増えやすくなる。だから私は「今年は特別に危ない」ではなく、「今年もいつもどおり危ない。しかも、水辺に行く人はいつもより多い」と考えるのが正確だと思っています。
もうひとつ、猛暑の夏に見落とされがちなのが「暑いのに川が増水する」という現象です。地上が晴れて暑いほど大気は不安定になり、上流で局地的な豪雨が発生しやすくなります。自分のいる河原がカンカン照りでも、水位は突然変わります。この仕組みは洪水対策の完全ガイドで解説している「川の近くじゃないから安心」が通用しない理由とも共通しています。
水難事故を防ぐために今日からできること
ここからは、実際に人が溺れる仕組みと、その場でどう動けばいいかを整理します。私が「防災理科」と呼んでいる、原理から理解するパートです。
先に統計の話を一つだけ。令和7年に亡くなった760人を行為別に見ると、最も多いのは魚とり・釣りの168人(22.1%)でした。水遊びが53人、水泳は37人で全体の4.9%です。泳いでいて亡くなる人は、全体の5%未満。多くの方が思い描く「水難事故」の絵と、統計はかなりズレています。
川で溺れる仕組みを防災理科で解説

場所別に見ると、死者・行方不明者760人のうち海が352人(46.3%)、河川が282人(37.1%)。そして意外に多いのが用水路の69人です。
川で人が溺れるのには、はっきりした物理的・生理的な理由があります。
川が危ない4つの理由
- 急に深くなる……川底は平らではなく、数歩で足がつかなくなる場所があります
- 中心部は冷たく速い……冷たい水にさらされると筋肉が痙攣し、泳げる人でも泳げなくなります
- 濁ると深さがわからない……増水後は特に、水面から底の形が読めません
- 監視の目がない……海水浴場と違い、川にライフセーバーがいる場所はほとんどありません
河川事故の多い自治体が公開している河川水難事故のQ&A(岐阜県)では、水難事故の典型的なパターンとして「川を横断しようとして溺れる」「流されたサンダルや帽子、ボールを追いかけて溺れる」の2つが挙げられています。どちらも、事故を起こそうとした人はひとりもいません。ほんの数メートル、軽い気持ちで足を踏み出しただけです。
そして川の怖さは、天気が良くても水位が変わることです。上流でゲリラ豪雨が発生すると、下流では数分で水位が上がることがあります。水が濁ってきた、木の枝やゴミが流れてきた、水音が変わった。こうした前兆についてはゲリラ豪雨の仕組みと危険な前兆のサインで詳しくまとめています。
もし川で流されてしまったら、無理に立とうとしないことです。上を向いて体の力を抜き、手足を横に広げて浮く。足を下流に向けて、体力を使わずに救助を待つ。これが公的機関が共通して示している姿勢です。
海の離岸流から命を守る方法

ここで、私自身の体験をお話しさせてください。
大学生のとき、友達といわきの薄磯海岸に行きました。そこで私は、強烈な離岸流に巻き込まれました。
浜に戻ろうと必死に泳ぐのですが、まったく戻れません。それどころか、じりじり沖へ引かれていく。なんとか流れの外へ出ることができて難を逃れましたが、あれは運が良かっただけだと思っています。
このとき、少し離れたところで泳いでいた若い女性が、そのまま流されていきました。「助けて!」という声が聞こえました。でも私にできることは何ひとつありませんでした。なす術がない、というのはこういうことなんだと、あとになって思いました。彼女はライフセーバーの方に救助され、一命を取り留めています。
海が怖いと本当の意味で思ったのは、あのときが最初です。なお、この薄磯の海岸は、後の東日本大震災で大きな被害を受けた場所でもあります。
では、なぜ私はあれほど泳いでも戻れなかったのか。答えは根性でも泳力でもなく、単純な物理でした。
離岸流の速さは秒速2メートル程度とされ、第11管区海上保安本部はこれを「五輪メダル級の水泳選手と同等」と説明しています。人が歩く速度は一般に毎秒1メートル前後といわれますから、その倍ほどの流れです。岸に向かって泳ぐ限り、体力が尽きるまで勝てません。
ただし、離岸流には弱点があります。幅が10〜30メートルしかないということです。海上保安庁の資料では、離岸流帯に入ると30〜150メートルほど沖へ流されるものの、それ以上は沖へは行かないとされています。
だから正解は、こうなります。
離岸流に流されたときの手順
- まず慌てない。周囲に流されていることを知らせる
- 岸に向かって(流れに逆らって)泳がない
- 海岸線と平行に泳いで、流れの帯から横に抜ける
- 沖への流れを感じなくなったら、岸に向かって泳ぐ
- 泳ぎに自信がなければ、泳ごうとせず「浮くこと」に専念する
私が助かったのは、結果的に流れの帯から横に外れたからでした。当時はそんな知識はまったくなく、ただ必死にもがいた末の偶然です。この手順を知っていれば、あんなに消耗せずに済んだはずですし、あのとき叫んでいた女性に、せめて「横に泳いで!」と伝えることができたかもしれません。
川と海では、危険の性質そのものが違います。整理しておきます。
| 比較項目 | 川 | 海 |
|---|---|---|
| 主な危険 | 急な深み・冷たい水・流れ | 離岸流・高波 |
| 流される方向 | 下流へ(一方向) | 沖へ(帯状の範囲) |
| 水温 | 低く、筋肉が動かなくなりやすい | 川より高いが体温は奪われる |
| 深さの見えやすさ | 濁ると判断できない | 比較的見えるが地形は変わる |
| 監視体制 | ほとんどない | 海水浴場ならライフセーバーがいる |
| 基本の対処 | 仰向けで浮き、足を下流に向ける | 岸と平行に泳ぎ、流れから抜ける |
| 通報先 | 119番・110番 | 118番(海上保安庁) |
浮いて待つを家族で練習する

川でも海でも、共通する最後の砦が「浮くこと」です。泳いで助かろうとするのではなく、呼吸を確保したまま救助を待つ。これが生存率を大きく変えます。
そのために最も確実な道具がライフジャケットです。警察庁も、釣りやボートで水辺に行くときは必ず着用すること、幼児や泳げない子どもには必ず着用させることを呼びかけています。サイズが合っていないと脱げてしまうので、体格に合ったものを正しく着けることが前提です。
ライフジャケットは水難事故専用の道具ではありません。水害時の避難でも有効です。防災リュックに入れておく装備の考え方については、防災リュックの中身リストと選び方でも触れています。
道具がない場面もあります。そのときのために、家族で一度やっておいてほしいのが「背浮き」です。上を向いて、力を抜いて、手足を広げる。人間の体はもともと水に浮くようにできていて、力を入れて暴れることで沈みます。知識としてではなく、体でやっておくかどうかが分かれ目です。
防災士として、そして東日本大震災を福島で経験した一人として言えるのは、備えは「持っているか」ではなく「使ったことがあるか」で差がつくということです。これは水も、地震も同じでした。
防災用品を一つずつ揃えるのが難しい方へ。HIHでは、福島の被災経験と防災士の視点をもとに考えた防災リュックを楽天市場で販売しています。
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助けに行く前に通報する判断

ここは、いちばん書くのがつらい部分です。目の前で誰かが溺れていたら、人は飛び込みます。特に、それが自分の子どもや兄弟だったら、迷う人はいないでしょう。
でも統計には、助けに向かった人が亡くなった記録が残っています。令和7年の水難救助活動中の死者・行方不明者は3人、令和6年は14人でした。毎年、誰かを助けようとした人が命を落としています。
水に飛び込むのは最終手段とされています。溺れている人は、助けに来た人につかまろうとするといわれており、救助に入った人ごと沈むことがあるからです。まず次の選択肢を思い出してください。
- 声をかけて、浅い方向へ誘導する
- 周囲の人に大声で協力を求める
- 浮くもの(クーラーボックス、ペットボトル、浮き輪、ランドセルなど)を投げ入れる
- 通報する……海は118番、川や湖は119番/110番
海の緊急通報が118番であることは、意外と知られていません。私も大人になるまで知りませんでした。今日この番号を覚えることが、この記事でいちばん短時間でできる備えです。
薄磯であの女性を助けたのは、私ではなくライフセーバーの方でした。訓練を受けた人が、道具を持って入る。これが正しい形なんですね。私にできたことがあるとすれば、それは大声で人を呼ぶことだったと思います。
まとめ:水難事故から大切な人を守るために

ここまでの内容を、今日そのまま確認できる7項目にまとめました。ご家族で読み合わせていただけると嬉しいです。
夏の水辺チェック7項目
- 行く場所が遊泳区域か、監視員がいるかを事前に確認した
- 当日の天気と、上流の雨の情報を確認した
- 子ども・泳げない人のライフジャケットを用意し、サイズを合わせた
- 「流されたものは追いかけない」を家族全員で共有した
- 離岸流に遭ったら岸と平行に泳ぐと全員が言える
- 背浮き(上を向いて力を抜く)を一度は試したことがある
- 海の緊急通報は118番だと覚えた
水難事故の統計を見て私が感じるのは、「特別に無謀な人が亡くなっているわけではない」ということです。釣りに行った人、河原を歩いていた人、子どもの水遊びに付き添っていた人。ごく普通の夏の一日が、数分で変わっています。
そして、溺れた人の約2人に1人が助かっていないという現実がある以上、対策は「溺れてからどうするか」より「溺れない状況をつくる」ことに重心を置くべきだと思います。装備と、事前の情報と、家族の合言葉。この3つです。
私は40年以上前に見た砂浜の光景も、薄磯で聞いた「助けて」という声も、いまだに忘れられません。忘れられないからこそ、こうして書いています。この記事を読んだ方のご家族が、今年の夏も全員そろって家に帰ってこられますように。
数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。
よくある質問
Q. 水難事故は年間どのくらい起きているのですか?
A. 警察庁の統計によると、令和7年(2025年)の発生件数は1,426件、水難者は1,599人、うち死者・行方不明者は760人でした。過去10年ではおおむね1,300〜1,500件台で推移しています。年による増減はありますが、大きく減少している傾向は見られません。
Q. 水難事故が最も多い場所と時期はいつですか?
A. 死者・行方不明者の場所別では海が46.3%、河川が37.1%を占めます。時期は7〜8月に集中しており、この2か月だけで年間の約3割が発生しています。用水路での事故も年間69人と少なくありません。
Q. 水難事故を防ぐために最も効果があることは何ですか?
A. ライフジャケットの着用です。泳ぐ力ではなく浮く力を確保することで、呼吸を保ったまま救助を待てるようになります。あわせて、遊泳区域と当日の気象情報、特に上流の降雨を確認しておくことが重要です。
Q. 子どもの水難事故はどこで起きやすいですか?
A. 令和7年の中学生以下の死者・行方不明者27人のうち、海が12人、河川が12人でほぼ同数でした。行為別では水遊びが11人と最も多く、泳ぐ場面よりも水辺で遊んでいる場面で起きています。子どもだけで水辺に行かせず、ライフジャケットを着用させてください。
Q. 目の前で人が溺れていたら、水難事故ではどう動けばよいですか?
A. すぐに飛び込むのは最終手段です。溺れている人はしがみつくため、救助者ごと沈む危険があります。まず大声で周囲に助けを求め、浮くものを投げ入れ、海なら118番、川や湖なら119番・110番へ通報してください。
🛡️ 防災士監修記事
後藤 秀和(ごとう ひでかず)
防災士/株式会社ヒカリネット 代表取締役
2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得し、防災ブランド HIH(エイチアイエイチ/Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。



