激甚災害とは?4制度の違いと指定後の流れ【保存版】

激甚災害とは?4制度の違いと指定後の流れ【保存版】
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
大きな豪雨や地震のあと、ニュースで「激甚災害に指定される見込み」という言葉を耳にすることがありますよね。でも、「指定されると何が変わるの?」「被災した人にお金が出るの?」と聞かれると、意外と説明が難しいかなと思います。
この記事では、激甚災害とは何か、誰がどう決めるのか、指定されると何が起きるのかを、内閣府などの公的資料をもとに整理していきます。難しい制度の話ですが、できるだけ平易な言葉でお伝えしますね。
激甚災害の指定は、自治体や事業者の復旧費用を支える国のお金の制度で、被災者個人への給付とは別物です。
この記事でわかること
・激甚災害の意味と、法律上の位置づけ
・指定基準と、本激・局激の違い
・災害救助法・特定非常災害との違い
・指定後に何が変わるのか、個人への補助金との関係
・令和8年熊本地震の指定の流れ
激甚災害とはどんな制度なのか

激甚災害とは、国民経済に著しい影響を及ぼす大規模な災害のうち、国が特別の財政援助や助成を行うと政令で指定した災害のことです。
日本では、豪雨や台風、地震のたびに、道路や河川、学校、農地などが被害を受けます。こうした施設の復旧には、そもそも国が費用の一部を負担・補助する仕組みが、通常の法律で用意されています。
ただ、被害があまりに大きいと、被災した自治体の負担も大きくなり、復旧が進まなくなってしまいます。そこで、通常の補助に上乗せして国が補助率を引き上げるなどの特別措置を取るのが、激甚災害制度です。内閣府の整理でも、基本的には「通常の国庫補助に対して、補助率のかさ上げといった特別の財政援助を行う制度」とされています。
激甚災害の読み方と法律上の位置づけ

読み方は「げきじんさいがい」です。「甚」は「はなはだしい」という意味で、「激しく、はなはだしい」被害をもたらした災害、というニュアンスですね。
根拠となる法律は、「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」(昭和37年法律第150号)です。一般には「激甚災害法」と略されます。1962年に制定されました。
この法律の背景には、1959年の伊勢湾台風があるとされています。伊勢湾台風の被害を受けて、1961年に災害対策基本法が制定され、その翌年に激甚災害法が整えられました。激甚災害法の第1条にも、災害対策基本法に規定する「著しく激甚である災害」に対する財政援助や助成を定める、という趣旨が書かれています。伊勢湾台風については、伊勢湾台風の被害が大きかった理由と高潮・地形の教訓で詳しくまとめていますので、あわせて読んでみてください。
東日本大震災は、発災の翌日にあたる2011年3月12日の閣議で、全国を対象とする激甚災害に指定されました(政令の名称は、のちに「東日本大震災」へ改められています)。
激甚災害指定基準と判断の流れ

激甚災害に指定するかどうかは、中央防災会議があらかじめ定めている「激甚災害指定基準」と「局地激甚災害指定基準」に照らして判断されます。感覚や雰囲気で決まるわけではなく、被害額などを基準と比べる仕組みなんですね。
流れをざっくり整理すると、次のようになります。
- 市町村や都道府県が被害状況を調べ、所管の省庁に報告します
- 各省庁が、被害報告額に全国の平均査定率をかけて、復旧事業費の「査定見込額」を算出します
- 内閣府が気象庁と協議して、災害の範囲や期間を確定し、指定基準と照らし合わせます
- 指定の政令案を作成し、内閣法制局の審査、中央防災会議への諮問・答申を経て、閣議で決定します
- 政令が公布・施行されます
被害の集計から政令の公布までは、災害の種類にもよりますが、発災から1〜2か月程度かかるのが通例とされています。
公共土木施設の基準を例にすると、全国の査定見込額が、全国の標準税収入の0.5%を超える場合などが、本激の基準のひとつです。農地、中小企業、住宅など、対象によって基準は別々に定められています。
標準税収入って何?
その自治体が、標準的な税率で課税した場合に見込まれる税収の規模を表す指標です。「その自治体の財布の大きさ」くらいに考えるとイメージしやすいかなと思います。基準も補助率も、この「財布の大きさに対して、復旧費用がどれだけ重いか」で判断されます。
(出典:内閣府『激甚災害からの復旧・復興対策』)
本激と局激の違いを比較

激甚災害には、「本激」と「局激」の2種類があります。ニュースでも出てくる言葉ですね。
| 比較項目 | 本激(激甚災害) | 局激(局地激甚災害) |
|---|---|---|
| 指定の単位 | 災害そのものを指定(対象区域は全国) | 災害と市町村を明示して指定 |
| 基準の考え方 | 全国的な被害の大きさ、または特定の県の負担の大きさ | 市町村ごとの復旧費用が、その市町村の財政規模に対して大きいか |
| 指定の時期 | 発災から1〜2か月程度が通例 | 年度末にまとめて指定が通例(基準を大きく超える場合は早期局激) |
| 適用される措置 | 同じ激甚災害法に基づく措置で、内容に違いはありません | |
ここで押さえておきたいのは、「本激のほうが補助率が高い」わけではないという点です。内閣府のQ&Aでも、本激も局激も同じ法律に基づく特例措置が適用され、同種の措置の内容に違いはないとされています。また、同じ災害で同じ措置が二重にかさ上げされることもありません。
なお、「本激」という言葉は、局激に対する通称で、法令や指定基準上の言葉ではない、と内閣府は説明しています。
災害救助法との違い

名前が似ていて混同しやすいのが、災害救助法です。こちらは、発災直後の「応急的な救助」を定めた法律(昭和22年)です。
避難所や応急仮設住宅の提供、炊き出しや飲料水の供給、被服や寝具の給与、医療などが救助の内容にあたります。実施するのは都道府県知事で、適用の基準は、市町村の人口に応じた住家の滅失世帯数などで決まっています。たとえば、人口5,000人未満の市町村なら、住家の滅失が30世帯以上、という具合です。
つまり、災害救助法は「いま目の前の被災者を助ける」ための現物の救助、激甚災害は「その後の復旧費用を国が支える」ための財政の特例、という違いがあるんですね。
特定非常災害との違い

もうひとつ、ニュースで並んで出てくるのが「特定非常災害」です。これは「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」(平成8年法律第85号)に基づく制度で、激甚災害とは別の法律です。
中身は、被災者の「手続き」を守るための特例です。たとえば、運転免許証などの有効期間の延長、期限内に履行できなかった義務の免責、債務超過となった法人の破産手続開始の決定の留保、相続の承認・放棄の期間の特例などが定められています。
指定の判断には、数値の基準はありません。人的被害や住家被害の多さ、ライフラインの広い範囲での途絶、地域全体の日常生活や業務の混乱などが、総合的に勘案されます。
ここまでの違いを、一枚の表にまとめておきます。
| 制度 | 根拠となる法律 | 主な中身 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 激甚災害 | 激甚災害法 | 復旧事業の補助率のかさ上げなど、お金(財政)の特例 | 自治体、農林漁業者、中小企業など |
| 災害救助法 | 災害救助法 | 避難所、仮設住宅、炊き出し、飲料水、医療などの応急救助 | 被災者(現物の救助が中心) |
| 特定非常災害 | 特定非常災害特別措置法 | 免許などの有効期間の延長、義務の免責、相続の承認・放棄期間の特例など、手続きの特例 | 被災者本人 |
| 被災者生活再建支援法 | 被災者生活再建支援法 | 住宅が全壊した世帯などへの支援金(最大300万円) | 被災した世帯 |
激甚災害とは指定後の支援と私たちの備え
激甚災害に指定されるとどうなる

激甚災害に指定されると、災害復旧事業にかかる国の補助率のかさ上げや、中小企業向けの保証の特例などの措置が、災害ごとに「適用すべき措置」として指定されます。主な条文は次のとおりです。
- 第3・4条:公共土木施設(河川、道路、港湾、下水道など)の災害復旧事業等の特別の財政援助
- 第5条:農地、農業用施設、林道などの災害復旧事業の補助の特別措置
- 第6条:農協・漁協などの共同利用施設の災害復旧事業の補助の特例
- 第12条:中小企業信用保険法による災害関係保証の特例
- 第24条:小災害債に係る元利償還金の基準財政需要額への算入
大事なのは、どの条文が適用されるかは災害ごとに違い、一度に出そろうとは限らないことです。被害の調査が進んでから、追加で指定されることもあります。
「指定された=すぐにお金が出る」ではありません
内閣府のQ&Aによると、年度の途中で指定されても、補助金がすぐ交付されるわけではありません。通常の災害復旧の補助と同じく、原則として補助率が確定した後に交付されます。復旧事業を急ぐため、確定前に概算で交付する仕組みも用意されています。また、実際に特別の財政援助を受けられる自治体は、指定の政令とは別に、年度末の告示で確定します。
国の補助率が上がる復旧事業

では、補助率はどれくらい上がるのでしょうか。令和8年熊本地震での内閣府の資料では、過去5か年の実績の平均で、公共土木施設等が71%から84%へ、農地が86%から97%へかさ上げされるとされています。共同利用施設の復旧では、通常20%の補助が50%(農林水産大臣が告示した市町村は90%)になります。
ここで注意したいのは、これはあくまで「過去5か年の実績の平均」を使った目安だということです。個別の事業の補助率が、そのまま決まるわけではありません。
この仕組みには、「防災理科」ならぬ、財政のメカニズムがあります。公共土木施設の復旧では、復旧費用の地方負担が、その自治体の標準税収入に対して大きいほど、国の援助が段階的に(超過累進的に)手厚くなる、いわゆるプール計算方式が取られています。個別の事業ごとにかさ上げするのではなく、その年の地方負担額を合計して、財政規模に応じて一括で国が負担する形です。所得税の累進課税を思い浮かべると、イメージしやすいかもしれません。
内閣府のQ&Aには、次のような計算例が載っています。標準税収入が100億円の県で、地方負担額の合計が125億円だった場合、特別財政援助額は62.5億円になる、というものです(負担の区分ごとに、0%、50%、55%、60%の率をかけて合計します)。「財布に対して重い負担ほど、手厚く支える」仕組みであることがよくわかります。
個人向け補助金と激甚災害の関係

「激甚災害に指定されたら、個人にも補助金が出るの?」という疑問は、検索でもとても多いテーマです。結論から言うと、激甚災害の指定そのものは、個人への現金給付を決める制度ではありません。主な対象は、自治体の復旧事業や、農林漁業者、中小企業などです。
住宅が全壊した世帯などへの給付は、別の制度である被災者生活再建支援法に基づくもので、支援金は最大300万円(単身世帯は3/4の額)とされています。避難所や仮設住宅などの応急的な救助は、災害救助法の役割です。
ただし、激甚災害法の措置のなかには、雇用保険の特例(第25条)や、罹災者公営住宅の建設への補助の特例(第22条)のように、被災した人の暮らしに関わるものもあります。どの措置が適用されるかは災害ごとに異なるため、実際にご自身が対象になるかどうかは、お住まいの市町村の窓口で確認してください。
2011年3月11日、私は福島で東日本大震災を経験しました。あの日を経験したからこそ、制度の存在はとても大切だと感じる一方で、復旧のお金が動き出すまでには時間がかかること、そして最初の数日間は自分と家族の備えが頼りになることも、強く思います。
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熊本地震など近年の指定事例

実際の流れを、令和8年熊本地震で見てみましょう。2026年10月時点で公表されている内閣府の資料をもとに整理します。
| 日付 | 主な動き(2026年10月時点) |
|---|---|
| 2026年7月28日 | 地震が発生(特定非常災害の発生日) |
| 8月3日 | 内閣府が、激甚災害と特定非常災害の指定見込みを公表 |
| 8月7日 | 激甚災害(本激)の政令を閣議決定し、同日公布・施行。第3〜6条と第24条を適用。同日、特定非常災害の政令も公布・施行 |
| 8月25日〜28日 | 第12条(中小企業の災害関係保証)を、県内の一部の市町を対象に追加(25日閣議決定、28日公布・施行) |
| 9月15日〜17日 | 第16・17・19・22条の4項目を追加(15日閣議決定、17日公布・施行) |
(出典:内閣府 令和8年8月7日・8月25日・9月17日公表資料)
発災から10日ほどで本激が指定されたことになります。通例の1〜2か月と比べても、かなり早い対応ですね。そして、いったん指定されたあとも、被害の調査が進むにつれて適用措置が追加されていることがわかります。「指定は一度で終わりではない」という点は、覚えておきたいところです。
この地震の被害や経過については、令和8年熊本地震とは|断水と猛暑3週間の全記録でまとめています。あわせて読んでみてください。
近年では、2017年7月の九州北部豪雨を含む梅雨前線の豪雨が、8月8日に閣議決定、8月10日に政令が公布・施行されました。指定の見込みは7月21日に先行して公表されています(内閣府広報誌「ぼうさい」)。被害の詳細は、九州北部豪雨とは|流木と線状降水帯3つの教訓をどうぞ。
復旧費用を支える制度がある一方で、避難した直後の数日間は、自分の備えが頼りです。水、食料、携帯トイレ、ライトなど、最低限そろえておきたいものを整理した防災リュックの選び方と中身の考え方も、参考にしてみてください。
激甚災害とは何かを知り備えるまとめ

ここまで、激甚災害とは何かを、制度の面から整理してきました。最後に、ポイントをまとめます。
- 激甚災害とは、国が特別の財政援助や助成を行うと政令で指定した災害で、自治体や農林漁業者、中小企業などの復旧を支える「お金の制度」です
- 本激と局激は、指定の単位と時期が違うだけで、適用される措置の内容は同じです
- 災害救助法は「応急の救助」、特定非常災害は「手続きの特例」、被災者生活再建支援法は「世帯への支援金」で、それぞれ別の制度です
- 指定されても補助金がすぐ出るわけではなく、適用される措置は災害ごとに異なり、追加されることもあります
制度を知っておくと、ニュースの見え方が変わります。そして、制度の中身を知れば知るほど、「最初の数日間は、自分たちの備えが頼りになる」という備えの意味も、はっきりしてくるかなと思います。
今日できることとしては、次の3つくらいから始めてみてください。
- お住まいの市町村の防災情報やハザードマップを確認する
- 家にある水・食料・携帯トイレ・ライトの数を点検する
- 家族で避難場所と連絡方法を話し合っておく
数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。
よくある質問
Q. 激甚災害とは簡単に言うとどんな制度ですか?
A. 激甚災害とは、被害が特に大きな災害について、国が自治体などの復旧費用の補助率を引き上げるなど、特別の財政援助を行うと政令で指定した災害のことです。指定されると、公共土木施設や農地などの復旧事業で、通常より手厚い国の支援が受けられます。被災者個人への現金給付を決める制度ではありません。
Q. 激甚災害に指定されるとどうなりますか?
A. 国が自治体などに出す復旧事業の補助率がかさ上げされるほか、中小企業の災害関係保証の特例などが、災害ごとに指定された条文に応じて適用されます。令和8年熊本地震では、公共土木施設等の補助率が過去5か年の平均で71%から84%に、農地は86%から97%に引き上げられるとされています。補助金は、原則として補助率の確定後に交付されます。
Q. 激甚災害と特定非常災害の違いは何ですか?
A. 激甚災害は、復旧費用などを国が支える「財政面」の制度で、根拠は激甚災害法です。特定非常災害は、運転免許証の有効期間の延長や相続の承認・放棄期間の特例など、被災者の「手続き面」を守る制度で、根拠は別の法律です。大きな災害では両方が指定されることがあり、令和8年熊本地震では2026年8月7日に、両方の政令が公布・施行されました。
Q. 激甚災害に指定されると、個人に補助金は出ますか?
A. 激甚災害の指定そのものは、個人への現金給付を決める制度ではありません。住宅が全壊した世帯などへの給付は、被災者生活再建支援法によるもので、最大300万円(単身世帯は3/4の額)とされています。一部の措置(雇用保険の特例など)が個人に関わる場合もあるため、詳しくは市町村の窓口でご確認ください。
Q. 激甚災害の指定は、誰がどのように決めるのですか?
A. 被害報告をもとに内閣府が指定基準と照らし合わせ、内閣法制局の審査と中央防災会議への諮問・答申を経て、閣議で政令を決定します。指定までは、発災から1〜2か月程度が通例とされています。市町村単位の局激は、年度末にまとめて指定されるのが一般的です。
