MENU

火山灰対策の完全ガイド|防災士が教える7つの備え

火山ガラスの破片を拡大した火山灰対策のイメージ

火山灰対策の完全ガイド|防災士が教える7つの備え

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。

「火山灰なんて、鹿児島の話でしょう」と思っていませんか。私も正直、防災を深く学ぶ前はそう思っていました。でも調べれば調べるほど、火山灰というのは日本中どこでも、そして想像よりずっと少ない量で生活を止めてしまうものだと分かってきたんです。

火山灰は水に溶けず乾いて消えることもなく、粒が角張っているため、普通のマスクや水洗いでは対処できません。この一点を知っているかどうかで、降ってきたときの初動がまったく変わります。

この記事では、火山灰とは何でできているのかという理科の話から、降灰量ごとに何が起きるのか、そして今日からそろえておくべき火山灰対策まで、防災士の視点で順番に解説していきます。

この記事でわかること

・火山灰は「灰」なのに、なぜ水に溶けず消えないのか
・どのくらい積もると、停電や通行止めが起きるのか
・普通のマスクではなぜ足りず、何を選べばよいのか
・積もった灰を、どう片付ければ安全なのか

目次

火山灰の正体と対策が必要な理由

火山灰とは、噴火で放出されたマグマが急に冷やされてできた、直径2mm未満のガラス質の破片と鉱物の粒のことです。紙や木が燃えたあとに残る灰とは、名前が同じだけでまったくの別物なんですね。

火山灰は「灰」ではなく「細かく砕けた岩石とガラス」です。だから燃えませんし、水にも溶けません。降った分は、誰かが取り除くまでそこに残り続けます。

火山灰とは何でできているのか

火山灰を構成する火山ガラスと鉱物の粒を拡大したイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

火山の地下には、岩石が高温で溶けたマグマがあります。このマグマがゆっくり冷やされると鉱物の結晶になりますが、噴火によって地上に放出され、外気にさらされて急に冷やされると、結晶になる時間がないままガラスになります。これを火山ガラスと呼びます。

ここが面白いところなんですが、私たちの身の回りにある窓ガラスも、原料を溶かして急に冷やすことで作られています。つまり火山ガラスは、窓ガラスとほとんど同じでき方をしているわけですね。(参考:琵琶湖博物館「火山灰の性質と分析」)

火山灰には、この火山ガラスのほかに、マグマの中で先にできていた鉱物の結晶や、噴火のときに吹き飛ばされた周囲の岩石の破片も混ざっています。中学1年生の理科では、火山灰を水で洗って双眼実体顕微鏡で観察する実験をやりますよね。あのときスケッチした透明な破片や色のついた粒こそが、火山ガラスと鉱物なんです。

火山灰がどのように積もって地層をつくるのかについては、火山による地層のでき方と地球の活動の記事で詳しく解説していますので、地層の視点から知りたい方はあわせてご覧ください。

火山灰の成分と特徴を理科で解説

鋭く角張った火山灰の粒子の表面を拡大したイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

火山灰の性質は、大きく3つに整理できます。この3つが、そのまま対策の理由になります。

性質理科的な理由生活への影響
角張っていて硬いガラスや岩石が砕けた破片のため、断面が鋭い目の角膜を傷つける。こすると車の塗装や窓が傷つく
水に溶けない岩石・鉱物・ガラスであり、塩や砂糖のように水に溶ける物質ではない雨が降っても消えない。排水口に流すと沈殿して詰まる
見た目より重い中身が岩石の粒なので密度が高く、水を含むとさらに重くなる屋根やカーポートに積もると荷重が一気に増す

特に3つ目の「重さ」は、数字にすると実感が変わります。米国地質調査所の資料をもとにした解説によると、厚さ1cmの乾いた火山灰は1平方メートルあたりおよそ9〜18kg、雨に濡れた場合はおよそ18〜28kgになるとされています。畳一枚分の面積に、米袋が何袋も乗っているような重さです。

雪であれば、待っていれば溶けます。しかし火山灰は溶けません。乾いても、風で舞い上がるだけで量は減らないのです。「時間が解決してくれない災害」であることが、火山灰のいちばん厄介なところだと思います。

火山灰が人体に与える影響

火山灰の微粒子が気道に入り込む仕組みを表した抽象イメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

角張ったガラス質の粒を吸い込めば、気道が刺激されます。もともと喘息などの呼吸器の持病がある方は、症状が悪化する可能性が指摘されています。

目も同じです。細かい粒が目に入ると角膜を傷つけるおそれがあり、特にコンタクトレンズを使っている方は注意が必要です。レンズと角膜の間に粒が入り込むと、まばたきのたびに角膜をこすってしまいます。降灰時はコンタクトを外して眼鏡に替える、というのが各自治体の資料で共通して呼びかけられている対応です。

肌の露出も減らしたほうが無難です。長袖・長ズボン・帽子で覆い、帰宅時は玄関の外で灰を払い落としてから入る。この一手間が、室内への持ち込みを大きく減らします。

火山灰の被害はどこまで広がるか

火山灰が風に流されて広範囲に広がる様子を表した俯瞰イメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

火山灰の被害範囲は、噴火の規模と上空の風向きで決まります。火口から数十キロ、大規模な噴火であれば百キロ単位で運ばれることもあります。

実際の例を見てみましょう。2013年8月18日の桜島の噴火では、鹿児島市役所で約300g/㎡、厚さにして約0.2〜0.3mm程度の降灰が観測されました。この程度の量でも、鹿児島県内を通るJR日豊線は1時間半にわたって運転を見合わせています。

厚さ0.3mm、つまりほとんど「うっすら積もった」程度でも、鉄道は止まるんです。ここが火山灰の怖さで、私たちが想像する「災害レベル」よりはるかに手前で、社会は動かなくなります。

日本国内の大規模噴火がどの程度の範囲に影響するかについては、阿蘇山カルデラ噴火の歴史と規模の記事で過去の事例をもとに整理していますので、スケール感をつかみたい方はご覧ください。

降灰量ごとの影響の目安

降灰量の違いを層の厚さで段階的に表したイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

気象庁は、噴火に伴ってどこにどれだけ火山灰が降るかを「降灰予報」として発表しています。降灰予報には定時・速報・詳細の3種類があり、噴火前の事前情報から、噴火直後のおよそ5〜10分後の速報、そして噴火からおよそ20〜30分後により精度を高めた詳細情報へと、段階的に切り替わっていきます。

降灰量は厚さによって「多量」「やや多量」「少量」の3階級に区分されており、多量が1mm以上、やや多量が0.1mm以上1mm未満、少量が0.1mm未満とされています(出典:気象庁『降灰予報の説明』)。

では、実際にどのくらい積もると何が起きるのか。内閣府の検討資料では、次のような目安が整理されています。

積もった厚さ起きるとされること
微量地上を走る鉄道は運行を停止する
0.5mm程度道路のセンターラインが見えにくくなり、スリップしやすくなる
降雨時3mm以上電線を支える碍子の絶縁が低下し、停電が発生するおそれ
降雨時3cm/乾燥時10cm以上二輪駆動車が通行不能になるおそれ
降雨時30cm以上火山灰の重みで倒壊する木造家屋が発生するおそれ

注目していただきたいのは、「降雨時3mmで停電」「降雨時3cmで車が動けない」という数字です。家が潰れる30cmより、この3mm・3cmのほうが現実に起こりやすい。つまり火山灰対策の本命は、倒壊対策ではなく停電と移動不能への備えだということになります。

なお、火山灰に関する情報のあり方は現在も見直しが進められています。降灰量が3cm以上と予想される場合に「火山灰警報」、0.1mm以上で「火山灰注意報」を発表するという方向で検討が進められており、運用開始までには数年程度かかるとされています。今後ニュースで新しい用語を聞くことがあるかもしれません。

今日からできる火山灰対策の手順

ここからは実践編です。2011年3月11日、私は福島で東日本大震災を経験しました。あのとき痛感したのは、「災害が起きてから買いに行く」は成立しないということです。店は閉まり、道は混み、棚は空になります。火山灰対策も同じで、勝負は降る前についています。

火山灰用マスクの選び方と基準

防じんマスクのフィット感を確かめる人物のイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

まず結論から言うと、普段使っている不織布マスクでは火山灰は十分に防げません。火山灰の粒は非常に細かく、そして顔とマスクの隙間から入ってきてしまうからです。

マスクの種類火山灰への有効性想定できる使い方
布マスク・ウレタンマスクほぼ期待できない火山灰対策としては非推奨
不織布マスク応急的な位置づけ屋内や短時間の移動。濡れタオルの併用も応急策とされる
防じんマスク(DS2/N95相当)推奨される屋外での行動、屋根や庭の除灰作業

DS2は日本の国家検定の区分、N95は米国の規格で、いずれも細かい粒子を捕集する性能を示すものです。火山灰対策としてはこのクラスが推奨されています。

性能の高いマスクを買っても、顔に合っていなければ意味がありません。隙間があるとそこから吸い込んでしまいます。買ったら一度つけてみて、鼻のあたりに隙間ができないか確認しておいてください。家族の顔の大きさもそれぞれ違います。

ゴーグルで目を守る必要性

密閉型ゴーグルで目を守っている様子のクローズアップイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

マスクは意識する方が多いのですが、ゴーグルまで用意している家庭はかなり少ないと感じています。先ほどお伝えしたとおり、火山灰は角膜を傷つけるおそれがあるので、屋外に出る場面では目の保護が欠かせません。

選ぶときのポイントは、通気孔のない密閉型を選ぶことです。一般的なゴーグルは曇り防止のために小さな通気孔が開いていますが、火山灰はそこから入ってきます。曇り止め加工がされた無気孔タイプが理想的とされています。

眼鏡だけでは横から入ってきますし、そもそもレンズに灰が付いた状態で拭くと傷がつきます。「眼鏡があるから大丈夫」とは考えないほうがいいですね。

車についた灰の正しい落とし方

車に積もった火山灰を水で洗い流している様子のイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

ここは多くの方がやってしまう失敗があります。積もった灰を、乾いた布やワイパーでこすってはいけません。

火山灰は硬く角張った粒です。こすれば、やすりをかけているのと同じことになります。ボディの塗装にもフロントガラスにも、細かい傷が残ります。

車の灰を落とす手順

1. こすらずに、まず大量の水で上から流し落とす
2. 流しきれない分だけ、水を含ませた状態でやさしく拭く
3. ワイパーは灰が乗ったまま動かさない(ガラスを削ります)
4. エアコンの外気導入は止めておく

運転そのものも危険です。路面に灰が乗るとスリップしやすくなり、視界も悪くなります。先ほどの表のとおり、わずか0.5mm程度でセンターラインが見えにくくなるとされています。降灰中は運転を控えるのが基本です。

とはいえ、外出先で降られる可能性もあります。車に最低限の防災用品を置いておく考え方については、車載用防災グッズの必要最小限リストと選び方で解説していますので参考にしてください。

屋根と屋内の降灰への備え

窓の隙間を目張りして火山灰の侵入を防いでいる様子のイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

屋内への侵入を防ぐのは、意外とシンプルです。窓と玄関を閉め、換気口や給気口をふさぐ。隙間にはタオルを詰める。エアコンの室外機や給湯器の吸気口も、灰を吸い込むと故障の原因になります。

そして屋根です。多くの屋根は10cmの灰の重みに耐えられないとされており、雨を含めばさらに重くなります。降灰がやんだら早めに除去したいところですが、屋根に上がる作業そのものが危険です。灰の上は非常に滑ります。防じんマスクとゴーグルを着け、無理をせず、高齢の方だけで作業しないでください。

集めた灰の処分にも決まりがあります。桜島を抱える鹿児島市では、住宅地の降灰を市が無償配布する「克灰袋」で収集する仕組みが整えられており、袋がない場合はレジ袋を2枚重ねて出すこともできるとされています。道路はロードスイーパーや散水車で清掃されています。

火山灰を排水口やベランダの雨どいに流してはいけません。水に溶けないので、途中で沈殿して詰まります。自分の家の排水だけでなく、地域の下水機能を止めることにつながります。面倒でも、掃いて集めて袋に入れる。これが正解です。

そろえたい火山灰対策グッズ

火山灰対策としてそろえたい防災グッズ一式を並べたイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

ここまでの話を、そろえるべき7つの備えとして整理します。

  • ① 防じんマスク(DS2/N95相当)…家族の人数分。顔に合うサイズを事前確認
  • ② 密閉型ゴーグル…通気孔のないタイプ
  • ③ 予備の眼鏡…コンタクトの方は防災リュックに一本入れておく
  • ④ 厚手のゴミ袋・シャベル・ほうき…灰の回収用。ちりとりだけでは足りません
  • ⑤ 飲料水と数日分の食料…外出できない期間をしのぐため
  • ⑥ モバイルバッテリー・ラジオ…降雨時3mmで停電するおそれがあるため
  • ⑦ ラップ・養生テープ…換気口や室外機の吸気口の保護に

見ていただくと分かるのですが、①〜③以外は、地震や台風の備えとほぼ同じです。火山灰のためだけに特別な備蓄を作る必要はなく、普段の防災セットに防じんマスクとゴーグル、そして予備の眼鏡を足す。この3つを加えるだけで、7つの備えは完成します。

防災用品を一つずつ揃えるのが難しい方へ。HIHでは、福島の被災経験と防災士の視点をもとに考えた防災リュックを楽天市場で販売しています。
楽天市場でHIH防災リュックを見る →

福島の被災経験から生まれたHIH防災リュックを楽天市場で見る

まとめ|火山灰対策は今日から

最後に、今日やることだけを並べておきます。

今日やること

1. 防災リュックに防じんマスク(DS2/N95相当)を家族の人数分入れる
2. 通気孔のない密閉型ゴーグルを用意する
3. コンタクトを使っているなら、予備の眼鏡を一本入れておく
4. 灰を回収する厚手の袋とシャベルの置き場所を決めておく

火山灰は、地震や台風に比べて自分ごとにしにくい災害だと思います。でも、追加で必要なものはマスクとゴーグルと眼鏡だけです。それなら、今日できますよね。

ご家庭全体の備えを一度見直したい方は、防災リュックおすすめと選び方の完全ガイドで中身の考え方をまとめていますので、あわせて確認してみてください。

よくある質問

Q. 火山灰対策に普通のマスクは使えますか?

A. 応急的には使えますが、十分とは言えません。火山灰の粒は細かく、顔とマスクの隙間から入り込みます。DS2規格(N95相当)の防じんマスクが推奨されています。手元にない場合は、濡らしたタオルで口と鼻を覆う方法が応急策として挙げられています。

Q. 火山灰対策として家の中で何をすればよいですか?

A窓・玄関・換気口を閉め、隙間をタオルなどでふさいでください。エアコンの室外機や給湯器の吸気口も保護すると故障を防げます。洗濯物は屋内に取り込み、灰のついた衣類はいきなり洗濯機に入れず、外で払い落としてから洗うのが基本です。

Q. 積もった火山灰は水で流してもよいですか?

A. 流さないでください。火山灰は水に溶けないため、排水口や雨どいの中で沈殿して詰まりの原因になります。乾いた状態で掃いて集め、厚手の袋に入れて、お住まいの自治体の指示に従って処分してください。鹿児島市では克灰袋という専用の袋が配布されています。

Q. 火山灰はどのくらい積もると危険ですか?

A. 公的資料では、降雨時に3mm程度で停電が発生するおそれ、降雨時3cm・乾燥時10cm以上で二輪駆動車が通行不能になるおそれ、降雨時30cm以上で木造家屋が倒壊するおそれがあるとされています。0.5mm程度でも道路のスリップや鉄道の停止が起こり得ます。


本記事は気象庁・内閣府などの公的資料をもとに作成していますが、火山灰に関する数値や制度は調査・検討の進展により変わることがあります。数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。

🛡️ 防災士監修記事

後藤 秀和(ごとう ひでかず)

防災士/株式会社ヒカリネット 代表取締役

2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得しHIH(Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。

一人暮らし向けの1人用防災リュックを背負った女性と商品画像を配置したHIH防災セットのLPバナー
夫婦・カップル向けの2人用防災セットを背負った男女と「大切な人と一緒に乗り越える備え。」のバナー
法人・団体向け防災対策として、企業が従業員に防災リュックを配布している様子を表したHIHの防災セット案内バナー

この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

目次