フェーズフリー防災グッズとは?プロが選ぶ3つの基準

フェーズフリー防災グッズとは?プロが選ぶ3つの基準
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
「防災グッズをそろえなきゃと思うけど、なかなか手が出ない」「買っても押し入れにしまったまま、気づけば期限切れ」——こういう声、本当によく聞きます。私自身も防災の仕事をしていて、ここが一番の悩みどころだなと感じています。
そんな中で、ここ数年じわじわ注目されているのが「フェーズフリー」という考え方です。ざっくり言うと「わざわざ防災用に身構えなくても、ふだん使っているものを災害時にも役立てよう」という発想ですね。今日は、このフェーズフリー防災グッズとは何なのか、ローリングストックとどう違うのか、そして具体的に何を選べばいいのかを、私の被災経験も交えながらお話ししていきます。
この記事でわかること
・フェーズフリー防災グッズの意味と「備える防災」との違い
・よく混同される「ローリングストック」との関係
・水・食品・明かり・電源・トイレ、今日から選べる具体的なアイテム
・失敗しないための3つの選び方の基準
フェーズフリーな防災グッズとは何か

まずは言葉の意味から、できるだけシンプルに整理しておきますね。
フェーズフリーとは、「日常時」と「非常時」という2つのフェーズ(局面)の境目をなくし、ふだん使っているモノやサービスを災害時にも役立てようとする考え方です。
「フェーズ(phase)」は局面、「フリー(free)」は自由にする・なくす、という意味です。一般社団法人フェーズフリー協会は、これを「日常時はもちろん、非常時にも役立つようにデザインしようという考え方」と説明しています。フェーズフリー防災グッズとは、その考え方にもとづいて作られた、ふだんの暮らしで便利に使えて、いざという時にも頼りになる道具のことですね。
フェーズフリーの意味と考え方
従来の防災用品って、ほとんどが「ふだんはしまっておいて、非常時だけ取り出して使うもの」でした。これだと、買ったことに満足してそのまま忘れてしまったり、いざ使おうとしたら電池が切れていたり、ということが起きがちなんですね。
フェーズフリーの面白いところは、ここを発想転換した点です。「災害のためだけに備える」のではなく「ふだん使っているものが、そのまま災害時にも役立つ」状態をつくる。だから「備えない防災」とも呼ばれています。自治体のサイトでもこの呼び方をよく見かけますね。
フェーズフリーには5つの原則があるとされています。提唱者やフェーズフリー協会が示しているもので、商品やサービスを考えるときの軸になっています。
| 原則 | 意味 |
|---|---|
| 常活性 | どんな状況でも利用できること |
| 日常性 | 日常から使え、日常の感性に合っていること |
| 直感性 | 使い方が直感的に分かりやすいこと |
| 触発性 | 防災意識や災害へのイメージを呼び起こすこと |
| 普及性 | 手に入れやすく、広めやすいこと |
私がとくに大事だなと思うのは「日常性」と「直感性」です。理由は後ほど、私自身の経験のところでお話ししますね。
備える防災との違い

「じゃあ、これまでの防災(備える防災)はもう要らないの?」と聞かれることがあるのですが、そうではありません。両方とも必要で、役割が違うんです。
| 比較 | 備える防災(従来型) | フェーズフリー |
|---|---|---|
| 使うタイミング | 非常時のみ | 日常+非常時 |
| 保管場所 | 押し入れ・倉庫 | ふだん使う場所 |
| 期限切れリスク | 気づきにくい | 使うので気づきやすい |
| 代表例 | 非常持ち出し袋・保存食 | カセットコンロ・モバイルバッテリー |
たとえば避難するための非常持ち出し袋は、フェーズフリーだけではカバーしきれません。家から逃げる場面では、やはり「持ち出し用にまとめてある一式」が必要だからです。逃げるための備えについては、防災リュックの中身リストと選び方|必要なもの・容量・家族構成別の完全ガイドで詳しく解説していますので、あわせて読んでみてください。フェーズフリーは「家にとどまって過ごす局面(在宅避難)」にとても強く、従来型の防災リュックは「逃げる局面」に強い。この2つを組み合わせるのが、現実的な備え方だと私は考えています。
ローリングストックとの違い

ここ、いちばん混同されやすいポイントなので、しっかり整理しますね。結論から言うと、ローリングストックはフェーズフリーの一部のような関係です。
農林水産省は、ローリングストックを「普段の食品を少し多めに買い置きしておき、賞味期限を考えて古いものから消費し、消費した分を買い足すことで、常に一定量の食品が家庭で備蓄されている状態を保つための方法」と説明しています。つまりローリングストックは「食品備蓄の、具体的なやり方(手段)」なんですね。
一方フェーズフリーは、食品にかぎらず、明かりも電源もトイレも家具も含めた「考え方(概念)」です。整理すると、こうなります。
・フェーズフリー=モノやサービス全般を、日常と非常時の両方で役立てる「考え方」
・ローリングストック=そのうち「食」の分野で実践する具体的な「方法」
だから「フェーズフリーかローリングストックか」という二択ではなくて、フェーズフリーという大きな考え方の中で、食の部分をローリングストックで回す、というのが正しいイメージです。両方を敵対させず、うまく組み合わせていきましょう。
日常で役立つ仕組みの理科

少し「防災理科」的な話をさせてください。なぜ、ふだん使いの道具が非常時に強いのか。ここには、ちゃんと理由があります。
大きな災害が起きると、電気・ガス・水道といったライフラインが止まります。政府広報オンラインによれば、過去の例では災害発生からライフラインの復旧まで1週間以上かかるケースがほとんどで、その間は支援物資が届かなかったり、店で食品が手に入らなかったりする状況が想定されます。
このとき効いてくるのが、フェーズフリー品の「日常性」です。仕組みとしてはシンプルで、日常的に使っているもの=中身が常に新しく、しかも使い方に体が慣れている、という点に尽きます。カセットコンロを例に考えてみましょう。
カセットコンロは、電気やガスの供給が止まっても、ガスボンベの燃焼という独立した熱源で加熱ができます。停電・ガス停止下でも温かい食事がとれる仕組みです。ふだん鍋料理などで使っていれば、ボンベの残量感覚も操作手順も自然と身につきます。
逆に、買ってから一度も使ったことのない道具は、いざという時に「あれ、どう動かすんだっけ」となりがちです。暗い中、慌てている状況で初めて使う——これがいちばん危ない。だからこそ、フェーズフリーの「直感性」と「日常性」が、命を守る確かさにつながっていくわけですね。
今日から選べるフェーズフリー防災グッズ
ここからは具体編です。分野ごとに、どんなフェーズフリー防災グッズを選べばいいかを見ていきましょう。難しく考えず、「ふだんも使えて、災害時にも役立つか?」という一点で見ていけば大丈夫です。まずは、私がとくにおすすめしたい代表的な7つをあげておきますね。
今日から選べる代表的なフェーズフリー防災グッズ7選
1. ローリングストック食品(レトルト・缶詰など)
2. ペットボトルの飲料水
3. カセットコンロとガスボンベ
4. LEDランタン・懐中電灯
5. 手回し・ソーラー対応の多機能ラジオライト
6. モバイルバッテリー(必要に応じてポータブル電源)
7. 携帯トイレ・簡易トイレ
この7つを、分野ごとに少し詳しく見ていきましょう。
水と食品の備え方

食と水は、まさにローリングストックの出番です。ポイントは「特別な保存食」だけに頼らないこと。ふだん食べているレトルトカレー、缶詰、インスタント味噌汁、お湯を注ぐだけのスープなどを少し多めに買い、古いものから食べて買い足していきます。
水も同じで、ペットボトルの飲料水を箱で買い置きし、日常的に飲みながら回していけば、いつも新しい在庫が一定量キープできます。農林水産省は、非常食だけでなく「日常で使用し、災害時にも使えるもの」をバランスよく備えることが大事だとしています。具体的に何をどれだけそろえるかは、【2026年版】地震に備えるものリスト完全版もチェックしてみてください。
注意したいのは、ローリングストック食品の多くは「加熱」や「お湯」が前提だという点です。電気・ガスが止まると調理できないことがあるので、後述するカセットコンロのような熱源とセットで考えておきましょう。
明かりと情報の確保

停電時にまず困るのが「明かり」と「情報」です。ここは私の被災経験から、とくに強くお伝えしたいところでもあります。
明かりは、ランタンや懐中電灯を「ふだんから手の届く場所に置いておく」のがフェーズフリー的です。最近は、おしゃれで日常のインテリアになじむLEDランタンも増えました。日常で使っていれば電池切れにも気づけますし、置き場所も体が覚えています。
情報については、スマホが基本になりますが、停電が長引くと充電が課題になります。手回しやソーラーで充電できる多機能ラジオライトは、ふだんアウトドアや車のお供として使いながら、非常時にも情報源・光源・電源として働いてくれます。1台で複数の役割をこなしてくれるので、フェーズフリーの考え方ととても相性がいいアイテムです。
停電時は、テレビやネットが使えなくなることがあります。電池やソーラー、手回しで動くラジオを1台持っておくと、電力が確保できない状況でも防災情報を受け取れます。情報が入るだけで、不安がずいぶん和らぎますよ。
電源とモバイルバッテリー

現代の防災で、電源の確保は本当に重要なテーマになりました。スマホひとつで、連絡・情報収集・地図・ライト・家族の写真まで全部まかなう時代ですから、ここが切れると一気に心細くなります。
モバイルバッテリーは、まさにフェーズフリーの代表選手です。通勤・外出でふだんから使い、常に充電された状態をキープしておけば、災害時にもそのまま戦力になります。容量が大きめのものを1つ、家族の人数が多ければポータブル電源も検討する価値があります。
モバイルバッテリーやポータブル電源は、内部のリチウムイオン電池に電気をためておき、必要なときに取り出す「蓄電」の仕組みです。日常的に充放電して使うことで劣化や残量を把握でき、いざという時の「空っぽだった」を防げます。
2011年3月11日、私は福島でこの揺れを経験しました。あのとき、暗くなってからの心細さは今でも忘れられません。手元に確かな明かりと電源があるかどうかで、心の余裕がまったく違う。道具は単なるモノではなく、不安な時間に冷静さを取り戻すための支えなんだと、身をもって感じました。フェーズフリーの良さは、その支えをふだんから手元に置いておけることだと思います。
トイレと衛生の備え

意外と見落とされがちですが、災害時にとても深刻なのが「トイレ問題」です。断水すると水洗トイレが使えなくなり、これは食料以上に待ったなしの問題になります。
携帯トイレ・簡易トイレは、従来は「非常用」の代表でしたが、最近はアウトドアや車中泊、渋滞対策として日常使いする人も増えています。こうした使い方をしておくと、いざという時に「使ったことがある」という安心感があります。凝固剤や処理袋の数も、家族の人数と日数を意識して多めに確保しておきましょう。必要数の考え方は、防災トイレの選び方と必要数|携帯トイレ・凝固剤・災害時の使い方で具体的に解説しています。
あわせて、水のいらない歯みがきシート、ウェットティッシュ、ドライシャンプーなども、ふだんの旅行やアウトドアで使いながら備えておけるフェーズフリーアイテムですね。
選ぶときの3つの基準

たくさん紹介してきましたが、選ぶときの基準はとてもシンプルです。私はいつも、この3つで考えるようにおすすめしています。
1. ふだん使えるか:日常で出番があるものほど、中身が新しく、使い方に慣れている
2. 直感的に使えるか:説明書なしでも操作できるものは、慌てた非常時でも頼りになる
3. 家族構成に合っているか:人数・年齢・持病などに合わせて、量と種類を調整する
そして、ここで一つお伝えしておきたいことがあります。市販の防災セットは便利な出発点ですが、それだけで「完成」ではありません。防災セットを土台にして、フェーズフリーの考え方で「自分の暮らしに合うもの」を少しずつ足していく——これが、いちばん長続きして、いざという時に役立つ備え方だと、私は現場で感じています。
防災士として法人の備蓄も多く支援してきましたが、本当に役立つ備えは「立派なものを一度そろえる」ことより「日常に溶け込んで、無理なく続く」ことから生まれます。フェーズフリーは、その続けやすさを後押ししてくれる考え方なんですね。
まとめ・フェーズフリー防災グッズで備える

ここまで、フェーズフリー防災グッズについて整理してきました。最後にポイントを振り返っておきましょう。
・フェーズフリーとは、日常と非常時の境目をなくし、ふだん使うものを災害時にも役立てる考え方
・「備える防災(逃げる備え)」と組み合わせることで、在宅避難にも避難にも対応できる
・ローリングストックは、フェーズフリーを「食」で実践する具体的な方法
・選ぶ基準は「ふだん使えるか・直感的に使えるか・家族に合っているか」の3つ
フェーズフリーの一番いいところは、防災を「特別なこと」から「日常の延長」に変えてくれる点だと思います。気負わず、まずは身のまわりの一つから。それが、大切な人を守る備えの第一歩になります。
とはいえ、ゼロから一つずつそろえるのは大変だなと感じる方も多いと思います。そんな時は、必要なものがまとまった防災セットを土台にして、そこにフェーズフリーの考え方で「自分の暮らしに合うもの」を足していくのがおすすめです。HIHの防災セットは、被災経験をもとに「本当に必要なもの」を厳選して構成しています。備えの出発点として、よければのぞいてみてください。
数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。(参考:政府広報オンライン『今日からできる食品備蓄。ローリングストックの始め方』)
よくある質問
Q. フェーズフリー防災グッズは、普通の防災グッズと何が違うのですか?
普通の防災グッズは非常時だけ使うことを想定していますが、フェーズフリー防災グッズはふだんの暮らしでも便利に使えるのが特徴です。日常的に使うことで中身が常に新しく保たれ、使い方にも慣れるため、いざという時に確実に役立ちます。
Q. フェーズフリーとローリングストックはどう違いますか?
フェーズフリーはモノやサービス全般を日常と非常時の両方で役立てる「考え方」です。ローリングストックはそのうち食品備蓄で実践する具体的な「方法」で、フェーズフリーの一部に位置づけられます。対立するものではなく、組み合わせて使うのが理想です。
Q. フェーズフリー防災グッズだけ備えれば、防災リュックは不要ですか?
いいえ、両方をおすすめします。フェーズフリーは家にとどまる在宅避難に強い一方、家から逃げる場面では持ち出し用にまとめた防災リュックが必要です。役割が違うので、両方を組み合わせるのが安心です。
Q. 何から買えばいいか迷います。最初の一つは何がおすすめですか?
ふだんの出番が多く、効果を実感しやすいものから始めるのがおすすめです。モバイルバッテリーやカセットコンロ、携帯トイレあたりは日常でも使いやすく、災害時の安心にも直結します。家族構成に合わせて少しずつ足していきましょう。
🛡️ 防災士監修記事
後藤 秀和(ごとう ひでかず)
防災士/株式会社ヒカリネット 代表取締役
2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得しHIH(Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。





