避難場所と避難所の違いとは?防災士がわかりやすく解説

避難場所と避難所の違いとは?防災士がわかりやすく解説
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
「避難場所と避難所って、何が違うんですか?」—お客様からよくいただく質問ですが、実はこの違いを知らないことが、命にかかわる問題につながることがあります。私自身、2011年3月11日の東日本大震災を福島で経験したとき、この違いが明確でなかったことで混乱した現場を目の当たりにしました。
当時、避難場所と避難所が明確に区別されていなかったため、津波から逃げる場所として適切ではない施設に避難した方々が被災するという痛ましい事態が起きました。この教訓を受けて、2013年に災害対策基本法が改正され、「指定緊急避難場所」と「指定避難所」が法律で明確に区分されるようになったんです。
rebels法律が変わっても、まだまだこの違いを正確に理解している方は少ないのが現状です。いざというときに「どこに逃げればいいのか」を判断できるかどうかが、あなたや家族の命を守ることにつながります。
この記事では、避難場所の避難所の違いについて、法的な定義から実際の使い分け方、 pinkそして私たち福島の経験も交えながら、わかりやすくお伝えしていきます。
- 避難場所と避難所の法的な定義と役割の違い
- 災害種別ごとの避難先の使い分け方法
- 避難場所と避難所それぞれで受けられる支援内容
- 東日本大震災の教訓から学ぶ正しい避難行動
避難場所と避難所の違いを正しく理解しよう

避難場所の避難所の違いを理解することは、災害時に命を守るための第一歩です。この2つは似ているようで、実は目的も役割もまったく異なります。ここでは、法律に基づいた正確な定義と、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
避難場所とは命を守る緊急避難先

指定緊急避難場所とは、災害の危険から命を守るために緊急的に避難をする場所のことです。市町村長により、洪水、崖崩れ・土石流・地滑り、地震、津波、大規模な火事等の災害種別ごとに指定が行われます。これは災害対策基本法第49条の4に定められている法的な制度です。
避難場所の最大の特徴は、「命を守ることに特化している」という点です。快適に過ごすための設備や食料の備蓄があるわけではなく、あくまで差し迫った危険から一時的に身を守るための場所なんですね。
具体的には、公園や校庭、高台、津波避難ビルなどが指定されています。例えば津波の危険がある場合は、できるだけ高い場所にある施設や、津波に耐えられる構造のビルが避難場所として指定されます。洪水の場合は浸水想定区域外の高台、土砂災害の場合は土砂災害警戒区域外の安全な場所といった具合です。
指定緊急避難場所の最新統計
令和4年4月1日現在、全国の指定緊急避難場所の指定数は117,013箇所で、1箇所以上指定している自治体は1,666団体(95.7%)となっています。(出典:内閣府「避難場所に関すること」)
東日本大震災の教訓として、岩手県釜石市の鵜住居地区防災センターでの事例があります。この施設は本来、避難生活を送るための避難所であり、津波から緊急的に逃げる避難場所ではありませんでした。しかし当時は区別が明確でなかったため、地震直後に推定200人を超える方が避難し、津波によって多くの方が亡くなるという痛ましい事態が起きました。
この経験を受けて、2013年6月に災害対策基本法が改正され、避難場所と避難所の役割が法律で明確に区分されるようになったんです。私自身も福島で震災を経験しましたが、「どこに逃げればいいのか」という判断基準が曖昧だった当時の混乱を、今でも鮮明に覚えています。
避難所とは生活する場所

一方、指定避難所とは、災害の危険性があり避難した住民等を災害の危険性がなくなるまで必要な期間滞在させ、または災害により家に戻れなくなった住民等を一時的に滞在させることを目的とした施設です。市町村が災害対策基本法第49条の7に基づいて指定します。
避難所では、食べ物や生活物資が提供され、災害の危険性がなくなる間や、仮設住宅が建設されるまでの期間など、被災者が通常の生活に戻るまでの一時的な生活拠点となります。学校の体育館、公民館、福祉施設などが指定されることが多いですね。
令和5年版防災白書によると、令和4年12月1日現在で全国の指定避難所の数は82,184ヶ所です。避難場所の117,013箇所と比べると数が少ないのは、避難所には一定期間の生活を支えるための設備や広さが必要とされるためです。
私が防災セットの販売を通じて全国300社以上の企業様とお話しする中で感じるのは、多くの方が「避難所=すぐに逃げ込む場所」と誤解されていることです。でも実際には、避難所は生活をする場所であって、緊急時に真っ先に駆け込む場所ではありません。
避難所での生活期間の目安
東日本大震災では、避難所での生活が数週間から数ヶ月に及んだケースも多くありました。熊本地震や令和6年能登半島地震でも、仮設住宅への入居や自宅の修繕が完了するまで、長期にわたって避難所生活を送った方が多数いらっしゃいます。
指定緊急避難場所の役割と特徴

指定緊急避難場所の最も重要な特徴は、災害種別ごとに指定されるという点です。これは災害対策基本法施行規則第1条の6で定められており、洪水、崖崩れ・土石流・地滑り、高潮、地震、津波、大規模な火事、内水氾濫、火山現象(溶岩流や火砕流、噴石など)といった災害種別ごとに、それぞれ適切な場所が指定されています。
なぜ災害種別ごとの指定が必要なのか、防災理科的な観点から説明しますね。例えば津波の場合、海抜の高さと建物の構造強度が重要になります。津波は秒速数メートルから十数メートルのスピードで押し寄せ、高さも数メートルから十数メートルに達することがあります。ですから、海抜が高い場所、もしくは鉄筋コンクリート造の高層建築物が避難場所として適しています。
一方、洪水の場合は、河川の氾濫による浸水を避けることが目的です。浸水想定区域を避け、かつ避難経路が冠水しない場所である必要があります。土砂災害の場合は、土砂災害警戒区域から離れた場所が指定されます。
| 災害種別 | 避難場所に求められる条件 | 施設例 |
|---|---|---|
| 津波 | 海抜が高い、または高層で津波に耐えられる構造 | 高台の公園、津波避難ビル、高層建築物 |
| 洪水 | 浸水想定区域外、避難経路が安全 | 高台の学校、公共施設 |
| 土砂災害 | 土砂災害警戒区域外 | 平地の公園、体育館 |
| 大規模火災 | 延焼の危険がない広い空間 | 大規模公園、グラウンド |
| 地震 | 建物倒壊の危険がない広い空間 | 校庭、広場、公園 |
内閣府が令和8年1月に改定した「指定緊急避難場所の指定に関する手引き」では、民間施設の活用も推進されています。公共施設だけでは十分な避難場所を確保できない地域では、民間の商業施設やマンション、場合によっては個人宅の屋上なども指定緊急避難場所として活用されているケースがあります。
市町村長は、防災施設の整備の状況、地形、地質その他の状況を総合的に勘案し、必要があると認めるときは、災害が発生し、または発生するおそれがある場合における円滑かつ迅速な避難のための立退きの確保を図るため、政令で定める基準に適合する施設または場所を指定緊急避難場所として指定しなければならないと法律で定められています。
指定避難所で受けられる支援内容

指定避難所では、被災者が一定期間の生活を送るために必要な様々な支援が提供されます。具体的にどのような支援が受けられるのか、詳しく見ていきましょう。
まず最も基本的な支援がプッシュ型支援です。これは東日本大震災の教訓を糧に制度化されたもので、2016年の熊本地震の際に初めて実施されました。国が被災都道府県からの具体的な要請を待たないで、避難所避難者への支援を中心に、被災者の命と生活環境に不可欠な物資を調達し、被災地に緊急輸送する仕組みです。
プッシュ型支援で提供される基本8品目は、飲料水、食料、毛布、おむつ(大人用・子供用)、生理用品、トイレットペーパー、ブルーシートです。2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震の際は、9月8日から13日の間に合計26万点以上の飲食料品が提供されました。
令和6年12月改定:避難所ガイドライン
内閣府は2024年12月13日、令和6年能登半島地震を踏まえて「避難所に関する取組指針・ガイドライン」を改定しました。新たにトイレカー・トイレトレーラーの確保、キッチンカーの活用、パーティションや段ボールベッドの避難所開設時からの設置、仮設風呂の資機材の備蓄等が追記されています。
避難所では、食事の提供だけでなく、生活環境を整えるための様々な物資が配布されます。段ボールベッド、パーティション、冷暖房機器、マスクや消毒液などの感染症対策用品などです。私が福島で震災を経験したときは、まだこうした備えが十分ではなく、体育館の固い床に毛布を敷いて寝るだけという環境でした。プライバシーもほとんどない状態で、精神的にも肉体的にも非常に辛い経験でした。
令和6年の能登半島地震では、新たに「1.5次避難所」という概念が導入されました。これは要介護認定が低い方や乳幼児など、福祉避難所の対象ではないけれど見守りが必要な避難者のための避難所です。従来の避難所と福祉避難所の間を埋める存在として注目されています。
また、避難所は単に避難所にいる人だけのための施設ではありません。内閣府の方針では、地域で在宅にて避難生活を送る者も支援の対象とし、地域の避難所を情報収集や情報提供、食料・飲料水、物資、サービスの提供等に関する地域の支援拠点とすることが示されています。
つまり、自宅が無事で在宅避難をしている方や、やむを得ず車中泊をしている方も、避難所に行けば情報や物資を得ることができるということです。実際、令和6年6月には「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」が公表され、こうした避難者への支援体制が整備されつつあります。
災害種別によって使い分けが必要

ここが非常に重要なポイントなのですが、指定避難所として指定されている施設でも、災害の種類によっては指定避難所として開設されないことがあります。これを知らないと、命にかかわる判断ミスをしてしまう可能性があります。
例えば、ある中学校の校舎や体育館が指定避難所として指定されているとします。しかし、その施設が土砂災害警戒区域内にある場合、大雨などで土砂災害が発生するおそれがある時には、その避難所は開設されません。土砂災害から逃げるために避難所に行ったのに、その避難所自体が土砂災害の危険がある場所にあったら本末転倒ですよね。
お住まいの地域のハザードマップを見ると、避難場所や避難所に災害種別を示すピクトグラム(絵文字)表示されています。洪水、土砂災害、津波、地震、大規模火災などの災害ごとに、その施設が適しているかどうかが示されているんです。
2014年広島土砂災害での教訓
平成26年8月の広島土砂災害では、災害対策基本法改正後にもかかわらず、土砂災害に適さない避難先に避難した居住者1名が被災し、亡くなるという事案が発生しました。災害種別に応じた避難先の選択がいかに重要か、この事例が教えてくれています。
実際の避難行動では、次のような判断が必要になります。大雨で洪水の危険がある場合、浸水想定区域内にある避難所は使えません。浸水想定区域外の高台にある避難場所に避難する必要があります。その後、洪水の危険が去れば、より生活環境が整った避難所に移動することになります。
津波の場合はさらにシビアです。津波警報が出たら、とにかく高い場所へ逃げることが最優先。海抜の低い場所にある避難所には絶対に行ってはいけません。まずは津波避難ビルや高台の避難場所に逃げて、津波の危険が完全に去ってから、必要に応じて避難所に移動します。
私が福島で経験した東日本大震災では、地震の直後に津波警報が出ました。内陸部にいた私たちは津波の直接的な危険はありませんでしたが、沿岸部では「いつもの避難所に行こう」と海側に向かってしまった方もいたと聞きます。津波から逃げるときは「高く、遠く」が鉄則です。
地震の場合は、まず建物倒壊や火災の危険から離れるため、校庭や公園などの広い空間に避難します。その後、余震が落ち着き、自宅の安全が確認できない場合に避難所での生活を開始することになります。
避難場所と避難所の違いを踏まえた防災準備

避難場所の避難所の違いを理解したら、次は実際の防災準備です。いざというときに正しい判断ができるよう、日頃からの準備が欠かせません。ここでは、具体的にどんな準備をすればいいのか、私の経験も交えながらお伝えしていきます。
ハザードマップで確認すべきポイント

防災準備の第一歩は、ハザードマップの確認です。ハザードマップには、あなたの地域でどんな災害のリスクがあるのか、そしてどこに避難すればいいのかが詳しく記載されています。
まずお住まいの自治体のホームページから、ハザードマップを入手してください。最近では紙の冊子だけでなく、Webで見られる電子版も用意されている自治体が増えています。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」を使えば、全国のハザードマップを一括で確認することもできます。
ハザードマップで確認すべきポイントは次の通りです。まず、自宅がどんな災害リスクのある場所にあるかを確認します。洪水浸水想定区域、土砂災害警戒区域、津波浸水想定区域など、色分けされたエリアを見て、自宅の位置を確認しましょう。
次に、最寄りの指定緊急避難場所を確認します。ここで重要なのが、災害種別ごとに避難場所が異なる可能性があるということです。洪水の時の避難場所、土砂災害の時の避難場所、地震の時の避難場所が、それぞれ違う場所になっていることもあります。
ハザードマップで確認すべき6つのポイント
1. 自宅の災害リスク(浸水深、土砂災害警戒区域など)
2. 災害種別ごとの指定緊急避難場所の場所と距離
3. 指定避難所の場所と、対応している災害種別
4. 避難経路の安全性(狭い道、アンダーパス、崖下などを避ける)
5. 避難に要する時間(徒歩での所要時間を実際に確認)
6. 家族の職場・学校から最寄りの避難場所
そして指定避難所の場所も確認します。避難場所で一時的に身を守った後、生活が必要になった場合にどこに行けばいいのかを把握しておくことが大切です。
私が防災士として企業研修を行う際、必ずお伝えするのが「避難経路の複数確保」です。ハザードマップを見ながら、自宅から避難場所までのルートを複数考えておきましょう。メインルートが使えない場合に備えて、サブルートも確認しておくことが重要です。
福島での震災経験から言えることは、実際の災害時には想定外のことが起こるということです。道路が陥没していたり、建物が倒壊して道を塞いでいたり、地割れが発生していたり。普段通れる道が通れなくなることは珍しくありません。だからこそ、複数のルートを確認しておくことが命を守ることにつながります。
避難のタイミングと判断基準

避難場所の避難所の違いを理解していても、避難のタイミングを誤れば意味がありません。特に風水害の場合、避難のタイミングが生死を分けることもあります。
2019年の台風19号では、「避難指示が出ているのに避難しなかった」というケースが多く報告されました。「これまで大丈夫だったから今回も大丈夫」という正常性バイアスが働いてしまうんですね。でも気候変動の影響で、これまでに経験したことのない規模の災害が増えています。
気象庁が発表する防災気象情報と、市町村が発令する避難情報には、5段階の警戒レベルがあります。レベル3「高齢者等避難」、レベル4「避難指示」、レベル5「緊急安全確保」です。
警戒レベル3(高齢者等避難)が出たら、高齢者や障害のある方、小さなお子さんがいるご家族は避難を開始します。避難に時間がかかる方は、このタイミングで動き始めることが重要です。
警戒レベル4(避難指示)が出たら、危険な場所にいる人は全員避難です。このレベルが出たら、もう迷っている場合ではありません。すぐに指定緊急避難場所に避難してください。
警戒レベル5(緊急安全確保)は、すでに災害が発生または切迫している状況です。このレベルになってからの避難は非常に危険です。避難場所への移動が危険な場合は、建物の高い階に避難する垂直避難や、近くの頑丈な建物に避難するなど、命を守る最善の行動をとってください。
夜間・暴風雨時の避難は特に危険
夜間や暴風雨の最中の避難は、視界が悪く足元も見えにくいため非常に危険です。可能な限り、明るいうちに、天候が悪化する前に避難することが鉄則です。警戒レベル3が出たら、「まだ大丈夫」と思わずに避難を開始しましょう。
地震の場合は予測ができないため、発災直後の判断が重要です。大きな揺れを感じたら、まず身の安全を確保します。揺れが収まったら、自宅の安全を確認し、倒壊の危険や火災の危険がある場合は、すぐに指定緊急避難場所に避難します。
津波の場合は「津波警報」が出たら、とにかく高台や津波避難ビルへ避難することが最優先です。「津波なんて来ないだろう」という思い込みは絶対に捨ててください。東日本大震災では、「ここまでは津波は来ない」と言われていた場所まで津波が到達し、多くの命が失われました。
私自身、あの日は内陸部にいましたが、テレビで津波の映像を見て、自然の力の恐ろしさを痛感しました。「想定外」という言葉が何度も使われましたが、命を守るためには「最悪の事態を想定して行動する」ことが何より大切だと学びました。
避難時の持ち物チェックリスト

避難場所に避難する場合と避難所に避難する場合では、必要な持ち物が異なります。それぞれの状況に応じた準備をしておきましょう。
指定緊急避難場所への避難時(一次避難)は、とにかく命を守ることが最優先です。荷物は最小限にして、素早く避難できるようにします。必要なものは、貴重品(現金、通帳、印鑑、保険証、マイナンバーカード)、携帯電話と充電器、常備薬、メガネやコンタクトレンズ、飲料水、簡単な食料(飴やチョコレートなど)、懐中電灯、タオル、マスクなどです。
リュックサックひとつに入る程度の量にまとめておくことが理想です。両手が空いていれば、避難中に転んだときに手をつけますし、何かにつかまることもできます。
指定避難所での避難生活を想定した持ち物(二次避難)は、もう少し充実させる必要があります。避難場所で安全が確認できた後、自宅に一時帰宅できる状況であれば、避難所での生活に必要なものを持ち出します。
避難所での生活に必要な持ち物リスト
【基本】飲料水(1人1日3リットル×3日分)、食料(アルファ米、缶詰、レトルト食品など×3日分)、携帯ラジオ、予備電池、モバイルバッテリー、救急セット、常備薬(お薬手帳も)
【衛生用品】マスク、消毒液、ウェットティッシュ、トイレットペーパー、生理用品、歯ブラシ、石鹸
【衣類・寝具】着替え(下着・靴下を含む)、防寒着、タオル、毛布、寝袋(季節に応じて)
【その他】筆記用具、ビニール袋、ガムテープ、ロープ、軍手、雨具、ホイッスル
私たちヒカリネットでこれまで20万個以上の防災セットを販売してきた経験から言えることは、実際に使えるものを準備することの重要性です。賞味期限が切れた食料、電池が切れた懐中電灯、サイズが合わない服では、いざというときに役立ちません。
最低でも年に2回、防災の日(9月1日)と東日本大震災の日(3月11日)には、防災グッズの点検をすることをお勧めします。食料や飲料水の賞味期限、電池の残量、衣類のサイズなどを確認し、必要に応じて入れ替えましょう。
また、家族構成によって必要なものは変わります。赤ちゃんがいるご家庭では、粉ミルク、哺乳瓶、おむつ、おしりふきが必須です。高齢者がいる場合は、入れ歯や入れ歯洗浄剤、老眼鏡、介護用品なども必要になります。ペットがいる場合は、ペットフードやペット用の水、ケージなども準備が必要です。
家族で共有したい避難経路の決め方

避難場所の避難所の違いを理解し、それぞれの場所を確認したら、次は家族全員で避難経路を共有することが大切です。災害時は家族がバラバラの場所にいることも多いですから、それぞれがどこに避難するかを事前に決めておく必要があります。
まず、家族会議を開いて、次の3つのポイントを話し合いましょう。
1. 災害種別ごとの避難場所の確認
洪水の時はどこ、土砂災害の時はどこ、地震の時はどこ、というように、災害種別ごとに避難する場所を家族全員で確認します。ハザードマップを広げて、実際に場所を指差しながら確認するのが効果的です。
2. 集合場所の設定
家族がバラバラの場所にいるときに災害が起きた場合、どこで落ち合うかを決めておきます。第一集合場所(自宅近くの公園など)、第二集合場所(指定緊急避難場所)、第三集合場所(指定避難所)というように、段階的に設定しておくと良いでしょう。
3. 連絡方法の確認
災害時は電話がつながりにくくなります。NTTの災害用伝言ダイヤル「171」や、携帯電話各社の災害用伝言板の使い方を家族全員で練習しておきましょう。また、LINEなどのSNSは比較的つながりやすいので、家族でグループを作っておくのもお勧めです。
災害用伝言ダイヤル「171」の使い方
毎月1日と15日、防災週間(8月30日~9月5日)、防災とボランティア週間(1月15日~1月21日)は体験利用ができます。家族で実際に使ってみることで、いざというときにスムーズに使えるようになります。
私の会社では、従業員全員に「家族防災計画シート」の作成を推奨しています。家族の連絡先、集合場所、避難場所、かかりつけ医、持病やアレルギー情報などを一枚のシートにまとめたものです。これを家族全員が持ち歩くことで、いざというときに適切な行動がとれるようになります。
また、実際に避難経路を歩いてみることも重要です。地図で見るのと実際に歩くのでは、距離感や所要時間、道の状況などが全く違います。特に高齢者や小さな子ども、障害のある方がいる家族は、実際に避難にどれくらい時間がかかるかを確認しておくべきです。
福島での震災後、私の家族も避難経路を実際に歩いてみました。普段車で通っている道を歩いてみると、意外と遠いことに気づきました。また、途中に古い塀があって地震で倒れそうだったり、狭い道で両側にブロック塀があったりと、危険な箇所がいくつも見つかりました。こうした危険箇所を事前に把握しておくことで、災害時により安全なルートを選択できるようになります。
福祉避難所や在宅避難という選択肢

避難というと指定緊急避難場所や指定避難所をイメージしがちですが、実はそれ以外にも選択肢があります。福祉避難所や在宅避難、そして最近注目されている「1.5次避難所」についても知っておきましょう。
福祉避難所とは、一般の避難所では生活が困難な高齢者や障害者、妊産婦、乳幼児など、特別な配慮を必要とする方(要配慮者)のための避難所です。バリアフリー化された施設で、専門的な支援を受けながら避難生活を送ることができます。
福祉避難所は、原則として一般の指定避難所に避難した後、必要に応じて市町村が開設し、対象者を受け入れる流れになります。ただし令和3年5月の災害対策基本法改正により、あらかじめ受入対象者を特定して公示した福祉避難所については、発災直後から直接避難することも可能になりました。
福島での震災のときは、まだ福祉避難所の概念が十分に浸透しておらず、車いすの方や認知症の高齢者が一般の避難所で大変苦労されていた光景を今でも覚えています。プライバシーもなく、トイレも使いづらく、周りに気を遣いながらの避難生活は、本当に辛いものでした。
令和6年の能登半島地震では、新たに「1.5次避難所」という概念が導入されました。これは、福祉避難所の対象にはならないけれど、一般の避難所での生活が難しい方のための避難所です。例えば、要介護1~2程度の方、乳幼児がいる家族、妊産婦などが対象になります。通常の避難所と福祉避難所の間を埋める重要な役割を果たしています。
在宅避難のメリットと条件
自宅の安全が確保できる場合、在宅避難という選択肢も有効です。プライバシーが保たれ、自分のペースで生活でき、ペットとも一緒にいられます。ただし、建物の安全性が確認できていること、ライフライン(電気・ガス・水道)が使えるか代替手段があること、最低3日分(できれば1週間分)の食料・飲料水があることが条件です。
在宅避難は、自宅が安全な場所にあり、建物にも損傷がない場合に選択できる避難方法です。避難所での集団生活にはストレスも多いため、可能であれば在宅避難が望ましいケースも多くあります。
ただし在宅避難をする場合でも、地域の指定避難所の場所は必ず把握しておいてください。令和6年6月に公表された「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」では、避難所を地域の支援拠点として、在宅避難者も情報や物資を受け取れる体制を整えることが示されています。
私たちが防災セットをお届けする際、「避難所に行くから備蓄は不要」と考えている方が時々いらっしゃいます。でも実際には、避難所がすぐに開設されるとは限りませんし、避難所に入れる定員にも限りがあります。在宅避難の準備をしておくことは、避難所の混雑を緩和することにもつながり、本当に避難所が必要な方がスムーズに利用できることにもつながります。
車中泊避難も、近年増えている避難形態です。熊本地震では多くの方が車中泊避難を選択しました。プライバシーが保たれ、余震への不安も軽減されるというメリットがある一方、エコノミークラス症候群のリスクがあることに注意が必要です。
車中泊避難をする場合は、定期的に体を動かす、十分な水分補給をする、足を上げて寝る、弾性ストッキングを着用するなど、エコノミークラス症候群の予防策を必ず実施してください。
避難場所と避難所の違いまとめ

ここまで、避難場所の避難所の違いについて詳しく見てきました。最後にもう一度、重要なポイントをまとめておきましょう。
指定緊急避難場所は、災害の危険から命を守るために緊急的に避難する場所です。災害種別ごとに指定され、一時的な避難が目的です。公園、校庭、高台、津波避難ビルなどが該当し、全国に117,013箇所(令和4年4月時点)指定されています。
指定避難所は、災害の危険性がなくなるまで、または家に戻れなくなった場合に一定期間生活する場所です。災害種別に限らず指定され、食料や生活物資の提供を受けながら避難生活を送ります。学校体育館、公民館、公共施設などが該当し、全国に82,184ヶ所(令和4年12月時点)指定されています。
| 比較項目 | 指定緊急避難場所 | 指定避難所 |
|---|---|---|
| 目的 | 命を守る緊急避難 | 一定期間の避難生活 |
| 滞在期間 | 一時的(数時間~数日) | 長期(数日~数ヶ月) |
| 指定方法 | 災害種別ごと | 災害種別に限らない |
| 全国の指定数 | 117,013箇所 | 82,184ヶ所 |
| 主な設備 | 最小限(安全確保が優先) | 生活に必要な設備・物資 |
| 施設例 | 公園、校庭、高台、津波避難ビル | 学校体育館、公民館、福祉施設 |
この2つの違いを理解することが、災害時に正しい判断をするための第一歩です。東日本大震災の教訓から生まれた制度ですが、まだまだ十分に理解されていないのが現状です。
避難のタイミングは、警戒レベル3で高齢者等は避難開始、警戒レベル4で全員避難が基本です。「まだ大丈夫」という正常性バイアスに負けず、早めの避難を心がけてください。
ハザードマップで自宅のリスクと避難先を確認し、災害種別ごとに避難場所を把握しておくこと。家族で避難経路を共有し、実際に歩いて確認しておくこと。避難時の持ち物を準備し、定期的に点検すること。これらの準備が、いざというときにあなたと家族の命を守ります。
また、避難所だけでなく、福祉避難所や在宅避難という選択肢があることも知っておきましょう。自分や家族の状況に応じて、最適な避難方法を選択することが大切です。
私が東日本大震災を経験して強く感じたのは、「備えあれば憂いなし」という言葉の重みです。あのとき、もっと準備していれば、もっと知識があれば、もっと違う行動ができたかもしれない。そんな後悔を一人でも多くの方にしてほしくないという思いで、防災士の資格を取り、この仕事を続けています。
避難場所の避難所の違いを理解することは、決して難しいことではありません。でもこの知識が、いざというときに命を救うことにつながります。ぜひ今日から、ご家族と一緒に防災について話し合ってみてください。
数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。
