防災リュックを買わない理由を解消する|備えられない心理と最初の一歩

防災リュックを買わない理由を解消する|備えられない心理と最初の一歩
「必要だとはわかっている。でも、なかなか動けない。」防災リュックを買わない理由として、多くの方がこの言葉に共感するのではないでしょうか。
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。私は2011年3月11日、東日本大震災を福島市内で経験しました。震災後、ガソリンを求めて6時間並ぶ日が続き、情報が入らない不安の中で何もできない無力感を痛感しました。あのとき「備えがあれば、もう少し心に余裕が持てた」と思った経験が、この仕事を始めたきっかけです。
この記事では、防災リュックを買わない・備えが進まない背景にある心理的・現実的な理由を整理し、それぞれの解消策をお伝えします。「何を揃えればいいかわからない」「置く場所がない」「面倒で後回しにしてしまう」——そのどれもが、実は解決できる壁です。
- 防災グッズを備えていない人の割合と、備えない本当の理由
- 備えない理由を阻む4つの壁とその解消策
- 備えがないまま被災したときに起こること
- 今日からできる、最初の一歩の踏み出し方
防災リュックを買わない理由と準備の現状
防災リュックを買わない・備えが進まない理由は、怠慢ではなく、情報・費用・場所・手間という4つの現実的な壁にあります。まずその実態を数字で確認してみましょう。

防災グッズを用意している人の割合は?
防災グッズを何らかの形で用意している人の割合は、全体の約半数から6割程度という調査結果が複数報告されています。裏を返せば、約4割から5割の世帯では十分な備えができていないのが現状です。
プレミアムウォーター株式会社が2023年に実施した調査では、防災グッズを用意していない人の割合は45.0%にのぼりました。特に20代では59.1%が用意していないと回答しており、世代間の意識差も浮き彫りになっています。
注目すべきは、「必要だとは思っているが、まだ対策できていない」という人が大多数を占める点です。ある調査では、9割以上の人が災害への備えは必要と感じている一方、約65%が十分な備えをしていないと回答しています。意識と行動の間には、大きなギャップが存在します。
用意している人と用意していない人の差

用意している人と用意していない人の最も大きな差は、災害を「自分ごと」として捉える危機感の差と、その危機感を具体的な行動に移せているかどうかという点に集約されます。
備えている人の多くは、ハザードマップや過去の災害報道を通じて「いつ自分の身に起きてもおかしくない」という現実的な危機感を持ち、家族構成や地域の特性を踏まえて具体的な計画を立てています。彼らにとって防災は「特別なこと」ではなく、「日常の備え」の一部です。
一方、備えていない人の多くも必要性は認識しています。この「意識」と「行動」の間に生まれるギャップの背景には、正常性バイアスという心理的な働きが影響している可能性があります。
正常性バイアスとは?
自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりする人間の心の特性のことです。「自分だけは大丈夫」「まさか自分の地域で」という無意識の思い込みが、客観的な危険性を軽視させ、防災対策を遅らせる一因とされています。
日々の忙しさの中で、発生確率が低いと感じてしまう災害への対策は優先順位が下がりがちです。この「後回し」の心理が、意識と行動のギャップを生み出す最大の要因といえます。「いつかやろう」は「やらない」と同じになりやすいのです。
防災グッズを持っていない理由は何ですか?
備えが進まない背景には、複数の調査で共通して見られる4つの現実的な壁があります。
防災対策を阻む「4つの壁」
- 情報の壁:何を揃えればいいのかわからない。情報が多すぎて、自分と家族に本当に必要なものを判断できず、最初の一歩で立ち止まってしまいます。
- 費用の壁:市販の防災セットは数千円から数万円以上まで幅広く、家族全員分を一度に揃えようとすると経済的な負担が大きいと感じて躊躇してしまいます。
- 場所の壁:特に都市部のマンションでは収納スペースが限られており、家族分の防災リュックや備蓄品を置く場所を確保できないという物理的な問題があります。
- 手間の壁:必要なものをリストアップして買い揃え、非常食の賞味期限を定期的に確認して入れ替えるといった管理が面倒に感じられ、継続が難しくなります。
アントロット社が関東在住者に行った調査では、「何を用意すればよいかわからないから」(52.7%)が最も多く、被災経験のある東北在住者では「自宅に置き場所がないから・邪魔だから」(54.4%)が最多でした。情報・費用・場所・手間という4つの壁が、防災対策への第一歩を阻んでいます。
この4つの壁は、どれも「解決策がない」わけではありません。次のセクションで、それぞれの解消策を具体的にお伝えします。
防災グッズを用意しないとどうなる?

備えがないまま大規模な災害に遭遇した場合、「不便」という言葉では済まされない事態が起こります。生命の維持と人間の尊厳の両面で、深刻な状況に直面する可能性があります。
ライフライン(電気・ガス・水道)が完全に停止した状況を具体的に想像してみてください。
- 水がない:成人は1日に約2.5Lの水分を失うとされており、飲料水がなければ数日で脱水症状に陥り、命の危険に直結します。手洗いや衛生管理もできなくなり、感染症リスクが高まります。
- 食料がない:支援物資が届くまでの数日間、空腹と寒さに耐えなければなりません。体力が落ちると思考力も鈍り、冷静な判断が難しくなります。低体温症のリスクも高まります。
- 明かりがない:停電した夜は、月明かりがなければ完全な暗闇です。散乱したガラス片で足を怪我したり、階段から転落したりと、自宅の中ですら安全でない状況になります。
- 情報がない:スマートフォンの充電が切れ、ラジオもなければ、避難所の場所や給水の案内など生命線となる情報を得られず、社会から孤立してしまいます。私が震災後に最初に感じた恐怖は、「今、何が起きているのかわからない」という情報の不安でした。
- トイレが使えない:断水で自宅のトイレが使えない状況は、最も深刻な問題の一つです。国土交通省も災害時のトイレの重要性を啓発していますが、トイレを我慢して水分や食事を控えた結果、脱水症状やエコノミークラス症候群を引き起こし、命を落とす「災害関連死」につながるケースが後を絶ちません。
備えがないことは、災害そのものだけでなく、その後の過酷な避難生活によって心身が蝕まれる二次被害のリスクを大きく高めます。
災害時に非常食がないとどうなるのか

非常食がない場合、単に空腹を満たせないという問題だけでなく、心と体の両面に深刻な影響を及ぼします。
災害発生直後、コンビニやスーパーの棚から食料品は数時間で消えます。支援物資が安定して届くまでには、大規模災害では1週間以上かかることも想定しなければなりません。
- 体力と免疫力の著しい低下:エネルギーが補給できなければ、がれきの片付けや給水所までの往復といった行動をとる体力が失われます。栄養不足は免疫力の低下にも直結し、不衛生な環境下で感染症にかかりやすくなります。
- 精神的なストレスの極限状態:温かいものを口にできない状況は、想像以上に大きな精神的ストレスとなります。被災経験者からは「冷たい缶詰ばかりで気が滅入った」「一杯の温かい味噌汁に涙が出た」といった声が聞かれます。食事は、極限状況において心を落ち着かせる重要な役割を持っています。
- 低体温症と関連疾患のリスク:特に冬場の災害では、温かい食事で体内から体温を維持することが生死を分けます。十分なカロリー摂取ができなければ、命に関わる低体温症を引き起こす危険性が高まります。
非常食は、単に空腹を満たすアイテムではありません。災害という非日常を生き抜き、日常を取り戻すための体力・気力・回復力を維持するための命綱です。

防災リュックを買わない理由を解消する方法

防災グッズがなぜ必要なのかを再確認
防災グッズが必要な最大の理由は、大規模災害発生直後の72時間、公的支援が届く前の時間を自力で乗り越えるためです。この「自助」の時間を支えるのが、手元にある防災グッズです。
防災には「自助」「共助」「公助」という3つの基本的な考え方があります。
- 自助:自分の命は自分で守ること。防災の最も基本となる考え方です。
- 共助:近隣住民や地域コミュニティで助け合うこと。
- 公助:国や自治体、消防、警察、自衛隊による救助や支援のこと。
大規模な災害が発生した直後、消防や自衛隊などの公的機関は倒壊家屋からの人命救助や大規模火災への対応が最優先となります。すべての被災者にすぐ支援の手が届くわけではありません。特に、災害発生から72時間は「人命救助の黄金の時間」と呼ばれ、自助が基本中の基本となります。
「最低3日分、推奨1週間分」の根拠
「最低3日分」という備蓄の目安は、この72時間を乗り越えるために設定されています。ただし、南海トラフ巨大地震や首都直下地震のような広域・甚大な被害が想定される災害では、交通網の寸断により支援物資の到着が大幅に遅れることが予測されます。政府広報オンラインでも「1週間分以上」の備蓄が望ましいとされており、より長い自助期間を想定しておくことが求められています。
防災グッズで助かった事例:被災経験者の声
実際に備えがあって助かった、あるいは「これだけは持っていてよかった」と感じたアイテムを、被災経験者の声をもとに紹介します。あくまで参考事例ですが、備えを考えるうえでの具体的なヒントになるはずです。
- フルーツの缶詰・お菓子:疲弊した心と体に、甘いものが何よりの慰めとエネルギー源になったという意見が多数。「子どもが笑顔を取り戻した」という声も聞かれます。
- 食品用ラップ:お皿に巻けば食器を洗う必要がなく、貴重な水を節約できます。体に巻いて防寒対策にしたり、応急処置で傷口を保護したりと、万能性が高く評価されています。
- 大容量モバイルバッテリー:家族との安否確認や情報収集でスマートフォンのバッテリーは生命線です。何度も充電できる大容量タイプを持っていたことで、心の余裕がまったく違ったという声が非常に多いです。
- ヘッドライト:両手が使えるため、暗闇の中での作業や避難に懐中電灯より格段に役立ったという声が多く聞かれます。
最低限の生命維持アイテムに加えて、少しでも心穏やかに、衛生的に過ごすための工夫がいかに大切かを、これらの声は示しています。
備えを阻む4つの壁、それぞれの解消策

「わからない」「お金がない」「場所がない」「面倒」という4つの壁は、いずれも現実的な解消策があります。一つひとつ見ていきましょう。
情報の壁:何を揃えればいいかわからない→まず7つに絞る
防災グッズで優先すべき基本カテゴリーは、水・食料・携帯トイレ・照明・情報収集グッズ・モバイルバッテリー・救急セットの7つです。この7つを1人3日分を目安に揃えることが出発点です。詳しい選び方・必要量・チェックリストは、防災グッズで本当に必要なもの完全ガイドにまとめています。
費用の壁:高くて手が出ない→分割・段階的に揃える
一度にすべてを揃えようとするから高く感じます。まず「水2本とライト1個」から始め、毎月少しずつ追加する方法が現実的です。市販の防災セットは、専門家が必要なアイテムを厳選してまとめたものなので、個別に揃えるより効率的なケースも多くあります。
場所の壁:置く場所がない→分散保管と日用品の兼用
防災グッズは一か所にまとめなくても構いません。玄関・寝室・車の中・職場など、複数の場所に分けて保管する「分散保管」が基本です。備蓄水はクローゼットの床、非常食は台所の引き出しの奥など、すでにある収納の隙間を活用できます。
手間の壁:管理が面倒→ローリングストックで日常に組み込む
普段食べているレトルト食品や缶詰を少し多めに買い置きし、食べたら補充するローリングストック法を使えば、「賞味期限切れ」の問題がほぼなくなります。特別な管理をしなくても、日常の買い物の延長で備蓄が維持できる、最も継続しやすい方法です。
「いらなかった」と言われがちな防災グッズとその理由
備えを進める前に、実際に被災した方が「あまり役に立たなかった」と感じたアイテムも知っておくと、限られた予算とスペースを有効に使えます。
多機能すぎる十徳ナイフは、「いざという時にどの機能を使えばいいかわからなかった」「刃が小さくて使いにくかった」という声が多いです。災害時のパニック状態では、直感的に使えるシンプルな道具が確実です。頑丈なハサミやシンプルな缶切りを個別に用意する方が実用的です。
電池式のモバイルバッテリーは、乾電池の消耗量に対してスマートフォンを充電できる量が少なく、コストパフォーマンスが低いのが実情です。基本的には事前にフル充電した大容量の充電式モバイルバッテリーを複数用意する方が効率的です。
100円ショップの圧縮タオルは、「タオル」という名称ですが実態は厚手の不織布シートに近く、吸水性が低いため体を拭くタオルとしての役割は期待できません。また使用時に貴重な水を消費する点も難点です。体を拭くなら大判のボディシート、タオルが必要なら速乾性のマイクロファイバータオルがおすすめです。
「多機能・特殊」より「シンプル・実用的」を優先することが、後悔しない防災グッズ選びの鉄則です。より詳しくは、防災グッズ完全ガイド|本当に必要なもの一覧・選び方もご覧ください。

防災リュックを買わない理由をなくす、今日からできる最初の一歩
「完璧に揃えてから備える」ではなく「今日できることから1つ始める」という姿勢が、備えを現実に変える唯一の方法です。ここまで読んでくださった今この瞬間が、行動を起こす絶好のタイミングです。
- 防災グッズの準備は、公的支援が届くまでの時間を生き抜く「自助」の基本
- 多くの人が必要性を感じつつも、半数近くが未準備なのが現状
- 「わからない」「お金がない」「場所がない」「面倒」という4つの壁は、いずれも解消策がある
- 備えがない状態での被災は、生命維持や衛生面で深刻な二次被害リスクを伴う
- 特に水とトイレの確保は、災害関連死を防ぐための最重要課題
- まずは「水2本」「ライト1個」から。ゼロからの大きな一歩になる
- 日常の食品を少し多めに買い置きするローリングストック法が、最も継続しやすい第一歩
- 市販の防災セットは「何を揃えればいいかわからない」という最大の壁を一度に解消できる
- まずセットを土台にして、家族の状況に合わせてカスタマイズするのが現実的な理想形
- 「いらなかったもの」を知ることで、無駄な出費とスペースを避けられる
- 防災リュックは玄関・寝室・車の中など、すぐ持ち出せる場所に分散して保管する
- 防災は「一度準備して終わり」ではなく、定期的な点検と見直しが重要
「防災リュックを買わない理由」のほとんどは、信頼できる市販の防災セットを選ぶことで解決できます。「何を揃えればいいかわからない」という最大の悩みを解消し、まずは「最低限の備えがある」という安心感を手に入れることが、次の行動への力になります。あなたとご家族を守るための、確かな第一歩を踏み出してください。
よくある質問
Q. 防災リュックを買わない理由として多いのは何ですか?
A. 複数の調査で共通して多いのは「何を揃えればいいかわからない」という情報の壁です。関東在住者への調査では52.7%がこれを理由に挙げています。次いで「費用がかかる」「置く場所がない」「管理が面倒」が続きます。これらは4つの壁と呼ばれ、いずれも具体的な解消策があります。
Q. 防災グッズを全部一度に揃えないといけませんか?
A. 一度に揃える必要はありません。まず「水2本とライト1個」から始めて、毎月少しずつ追加していく方法が現実的で続けやすいです。完璧を目指すより、今日できる小さな一歩を踏み出すことの方が大切です。
Q. 防災リュックを置く場所がないときはどうすればいいですか?
A. 防災グッズは一か所にまとめなくても構いません。玄関・寝室・車の中・職場など複数の場所に分けて保管する分散保管が基本です。備蓄水はクローゼットの床、非常食は台所の引き出しの奥など、すでにある収納の隙間を活用できます。
Q. 防災グッズの賞味期限管理が面倒です。何かいい方法はありますか?
A. ローリングストック法がおすすめです。普段食べているレトルト食品や缶詰を少し多めに買い置きし、食べたら補充するサイクルを作れば、賞味期限切れをほぼ防げます。日常の買い物の延長で備蓄が維持できる、最も継続しやすい方法です。
Q. 市販の防災セットは本当に使えますか?
A. 市販の防災セットは、防災の専門家が必要なアイテムを厳選してまとめたものです。「何を揃えればいいかわからない」という最大の壁を一度に解消できるという点で、備えのスタートとして有効です。ただし、標準的な成人を想定した構成になっているため、ご自身の家族構成や健康状態に合わせて中身を足し引きすることが重要です。




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