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バヌアツの法則は本当か?24年間分のデータ徹底検証

バヌアツと日本を結ぶ俗説を宇宙からの視点で問い直すイメージ

バヌアツの法則は本当か?24年間分のデータ徹底検証

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。

南太平洋のバヌアツで大きな地震があるたびに、SNSで「日本も危ないのでは」という声が広がりますよね。今回は、そんな「バヌアツの法則」を実際の地震データで検証してみた話をお伝えします。

検証の結果、バヌアツ地震後2週間以内に日本でM6以上が起こる確率は30.7%で、何もない時期の30.3%とほぼ同じでした。

この記事でわかること

  • バヌアツの法則の由来と、SNSで拡散してきた背景
  • 24年分・555回の地震データを使った一次検証の結果
  • 専門家・研究機関の見解と本記事の検証結果の一致点
  • 法則に頼らず、今日からできる地震への備え
目次

バヌアツの法則とは?由来と拡散した理由

南太平洋発の噂が波紋のように世界へ広がる様子を表したイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

バヌアツの法則とは、バヌアツ周辺でマグニチュード(M)6以上の地震が起きると、2週間以内に日本でも同規模以上の地震が起こるとされる、インターネット発の俗説です。

バヌアツの法則の意味とSNSで拡散した経緯

SNSで噂が連鎖的に拡散する様子を光の軌跡で表したイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

正式な学術用語ではなく、明確な提唱者もはっきりしないまま、大きな地震のたびにSNSで再燃してきた言葉です。「バヌアツで地震があったから、次は日本かもしれない」という不安が、共感を呼びやすい形で拡散してきました。

広まった背景には、実際に「バヌアツの地震の後に日本でも大きな地震が起きた」という事例がいくつか存在することがあります。例えば2016年の熊本地震(4月14日M6.5、後にM7.3の本震)の直前にも、バヌアツ周辺で大きな地震があったとされています。こうした一致が話題になるたびに、まとめサイトやSNSで「バヌアツの法則」という言葉が再拡散され、知恵袋のような質問サイトでも繰り返し話題にのぼるようになりました。私自身、地震のたびにこの言葉を目にする機会が増えたと感じています。

東日本大震災前に注目されたクライストチャーチ地震

夜明け前の広大な太平洋を上空から見たイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

この俗説が広く知られるきっかけの一つが、2011年2月22日にニュージーランドで発生したクライストチャーチ地震(M6.3)です。その17日後に、東日本大震災が起きました。

私自身、福島でその東日本大震災を経験した一人です。停電が2〜3日続き、懐中電灯の数が足りず、暗闇の中で子どもの顔がはっきり見えないだけで心の余裕を失ってしまうことを痛感しました。だからこそ「法則が当たるかどうか」よりも「いつでも動ける備えがあるか」の方がずっと大事だと感じています。

トカラの法則・ニュージーランドの法則との違い

遠く離れた複数の海域と日本のつながりが霧散して消えるイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

同じ系統の俗説として、「ニュージーランドの法則」や、2025年に話題になった「トカラの法則」もあります。トカラの法則はもともと「トカラ近海で地震が頻発したら桜島が噴火する」という投稿が変化したものとされ、専門家からは科学的根拠がないと指摘されています。パプアニューギニアの地震と絡めて語られることもありますが、いずれも「地震の多い遠方の国」と「地震の多い日本」を結びつけて考えてしまうという、発想の構造自体は共通しています。

「当たって見える」統計のからくりと確証バイアス

多くの偶然の中で当たった事例だけが目立って見える心理を表したイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

ここが本記事の一番大事なポイントです。実は日本周辺では、M6以上の地震が年平均で十数回起きています。1年は約26回の「2週間」に区切ることができるので、単純に計算しても、2〜3回に1回程度の「2週間」でM6以上の地震が観測されてもおかしくない、ということになります。つまり、バヌアツの地震というきっかけがなくても、もともと3割程度の確率で「当たって」しまう構造があるわけです。

これに加えて、確証バイアス(都合のいい事例だけを記憶・注目してしまう心理的な偏り)も関係しています。当たった事例だけがSNSでリスト化されて拡散され、外れた事例(バヌアツで地震があっても日本で何も起きなかったケースや、バヌアツの地震がないのに日本で大きな地震が起きたケース)は誰も数えないため、実際以上に「当たっている」ように見えてしまうんですね。

検証に必要な4マスの表という考え方

4つの区分すべてを数えて検証する考え方を表した光るグリッドのイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

「本当に関係があるか」を調べるには、当たった事例だけでなく、次の4パターンをすべて数える必要があります。

日本でM6以上あり日本でM6以上なし
バヌアツでM6以上あり①的中②外れ
バヌアツでM6以上なし③見逃し④無関係

①だけを集めて「当たっている」と言うのは簡単ですが、②の「バヌアツで地震があったのに日本では何も起きなかった」ケースや、③の「バヌアツで地震がなかったのに日本で大きな地震が起きた」ケースも含めて初めて、バヌアツの地震が本当に日本の地震を予告しているのかどうかが判断できます。次の章では、この4マスの考え方に基づいて実際のデータを検証します。

バヌアツの法則を24年分の地震データで検証

長期間の地震データの点が時間軸上に並ぶ様子を表したイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

検証方法と対象にした地震データの範囲

今回、USGS(米国地質調査所)の地震カタログをもとに、2000年1月から2024年1月までの約24年分を使い、一次検証を行いました。長期間のデータを使うのは、数年分だけでは「たまたま当たった/外れた」期間に偏ってしまう可能性があるためです。

・トリガー:バヌアツ周辺(南緯22〜10度・東経165〜173度)のM6.0以上 241回
・判定対象:日本周辺(北緯24〜46度・東経122〜148度)のM6.0以上 314回
・判定基準:バヌアツ地震の後14日以内に、日本でM6.0以上が発生したか

マグニチュードや震度の考え方については、以前震度とマグニチュードの違いを解説した記事でも触れていますので、あわせて読んでいただけると分かりやすいかと思います。なお、USGSのマグニチュードは気象庁発表の値と若干異なる場合があるため、あくまで一つの検証方法として見ていただければと思います。

的中率30.7%と期待値の一致

ほぼ同じ高さの2本の柱で的中率と偶然の期待値の一致を表したイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

結果はこうなりました。

検証条件的中率偶然の期待値確率利得
全期間(2000〜2024)30.7%30.3%1.01倍
震災余震期(2011/3〜2012/12)を除外31.2%28.7%1.09倍
震災前のみ(2000〜2011/3)36.3%31.3%1.16倍
震災後のみ(2013〜2024)25.7%26.1%0.98倍

「6〜7割で的中する」というネット上の主張に対して、実際の的中率は約3割でした。ただし、これは何もない時期でも同じく約3割起きているので、バヌアツのおかげで的中しているわけではなく、単に日本が地震大国だから、というのが実態に近いと考えられます。確率利得(偶然と比べてどれだけ的中率が上乗せされるかを示す指標)は1.01倍で、これはほぼ「情報として意味がない」レベルです。恐らくネットで言われる「6〜7割」は、対象範囲やマグニチュードの基準を緩めに取った数え方の結果ではないかと考えられます。

期間や日数(10日にする、M6.5以上に絞る等)を変えると1.2〜1.5倍程度の弱い偏りが出ることもありますが、条件を変えるたびに結果が揺れること自体が、安定した法則が存在しない証拠だと私は考えています。「基準を変えれば数字は変わる」からこそ、基準を明示して検証することが重要だと感じています。

ニュージーランドの法則も同じ手法で検証

同系統の「ニュージーランドの法則」についても、同じ方法で検証しました。ニュージーランド周辺(南緯48〜28度)のM6.0以上38回を対象にすると、14日以内の的中率は36.8%、期待値は30.3%でした。統計的に有意な差はなく(P=0.46)、事例数が少ないための偶然の範囲と考えられます。バヌアツの法則と同様、「たまたま当たって見える」現象と整合する結果です。

遠くの地震が日本に影響する仕組みと専門家の見解

遠方の地震波が長距離で減衰していく仕組みを表した地中断面のイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

「遠くの地震が本当に無関係なのか」という点も、科学的な補足として触れておきます。地震学では、巨大地震が出す表面波が、遠く離れた場所の小さな地震活動にわずかな影響を与える「動的誘発」という現象自体は研究されています。ただしこれは、「〇日後にM6以上が起こる」と言い切れるような、決定論的な予知に使えるものではありません。あくまで、ごく小規模な地震活動にわずかな変化が見られる場合がある、という研究レベルの話です。

東京大学地震研究所の古村孝志教授は、遠く離れた場所の地震が日本に与える影響は限りなくゼロに近く、どちらも地震が多い国なので偶然が重なると結びつけて考えがちになる、とテレビ番組で説明しています。京都大学の研究者は2023年、日本地震学会誌に「バヌアツの法則は成立しない」とする論文を発表しました。地震予兆研究センターの検証でも、バヌアツと日本は地理的に7000kmほど離れており、両者の地震活動に安定した関連は確認されていないとされています。私自身の検証結果は、こうした専門機関の見解ともおおむね一致しています。

プレートの動きと地震の関係については、世界の地震とプレートの仕組みを解説した記事でも詳しく書いていますので、よければご覧ください。

気象庁も、地震の発生時期・場所・規模を確度高く予測することは現在の科学ではできないとしており、日時を特定した地震予知の情報は一般にデマと考えられるとしています(出典:気象庁『地震予知について』)。一方で、南海トラフ沿いのように、大規模地震の直後に隣接領域で同規模の地震が続けて発生しやすくなるという、近接した領域内での相対的な確率の高まりは気象庁も認めています。これはあくまで近接領域の話であり、7000km離れたバヌアツと日本のような遠距離の関係とは分けて考える必要があります。

バヌアツの法則の教訓と今日からの備え

家族で防災リュックの重さを確認する朝の玄関のイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

ここまでの検証をまとめると、バヌアツの法則で地震は予知できません。日本周辺ではM6以上の地震が年平均で十数回起きており(気象庁の統計では年によって19〜30回程度と幅があります)、「法則が出たから危ない」のではなく、「日本に住んでいること」自体が常に一定のリスクを抱えているということです。

俗説にただ一つ意味があるとすれば、それは「備えるきっかけになること」だと思います。ただし、法則が外れても地震は来ます。だからこそ、「法則が出たら備える」ではなく「常に備えておく」ことが、唯一の答えになります。防災士として300社以上の法人備蓄を支援してきた経験からも、備えを始めるタイミングに「正解」はなく、気になったその日が一番良いタイミングだといつもお伝えしています。

何から揃えればいいか迷う方は、防災グッズで本当に必要なものをまとめた記事も参考にしてみてください。

備える際に意外と見落とされがちなのが「重さ」です。一般的には男性15kg・女性10kgが目安とされることが多いのですが、私たちHIHでは男性10kg以下・女性7kg以下、できれば男性8kg以下・女性5kg以下を推奨しています。災害時は瓦礫や人混みの中を歩くことも想定されるため、機敏に動ける軽さの方が、結果として命を守ることにつながると考えているからです。

今日からできる、バヌアツの法則に頼らない備えチェック

  • 懐中電灯・モバイルバッテリーがすぐ使える状態か確認した
  • 飲料水・食料が最低3日分、家族の人数分そろっている
  • 防災リュックの重さが背負って動ける範囲(男性10kg以下・女性7kg以下が目安)か確認した
  • 家族で避難場所・連絡方法を話し合っている

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よくある質問

Q. バヌアツの法則は本当ですか?

A. 24年分のデータで検証したところ、的中率は30.7%、何もない時期の期待値も30.3%とほぼ同じでした。バヌアツの地震から日本の地震を予知する効果は確認できませんでした。

Q. バヌアツで地震が起きました。日本は危険ですか?

A. バヌアツの地震と関係なく、日本では2週間ごとに約3割の確率でM6以上の地震が起こり得ます。バヌアツの地震の有無にかかわらず、常に備えておくことが大切です。

Q. ニュージーランドの地震と東日本大震災は関係があったのですか?

A. クライストチャーチ地震の17日後に東日本大震災が発生した事実はありますが、同じ手法で長期データを検証すると、統計的に有意な関連は確認されませんでした。偶然が重なった可能性が高いと考えられます。

Q. トカラ列島の群発地震は大地震の前兆ですか?

A. 専門家は科学的根拠がないとしています。気象庁も、日時や場所を特定した地震予知は現在の科学では不可能だとしています。

Q. 法則が当たらないなら、いつ備えればいいですか?

A. 今すぐです。日本では特定の兆候がなくても大きな地震はいつでも起こり得るため、法則の的中を待つのではなく、常に備えておくことが唯一の確実な対策になります。

数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。

🛡️ 防災士監修記事

後藤 秀和(ごとう ひでかず)

防災士/株式会社ヒカリネット 代表取締役

2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得しHIH(Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。

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この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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