震度とマグニチュードの違いとは?換算できない理由と早見表【防災士解説】

震度とマグニチュードの違いとは?換算できない理由と早見表【防災士解説】
「マグニチュード6なのに震度7?」「M9の巨大地震なのに、うちは震度4だった」——ニュースを見ていて、この2つの数字の関係が分からなくなったことはありませんか。実はこの混乱には明確な理由があります。マグニチュードと震度は、測っているものがまったく別だからです。
この記事では、東日本大震災を福島で経験した防災士が、2つの違いを「電球と明るさ」のたとえで一度で分かるように解説します。換算できない理由、実際の地震での組み合わせ早見表、「震度8が存在しない理由」、そして巨大地震の速報を聞いたときに取るべき行動まで、この1本で完結します。
震度とマグニチュードの違い【一言でいうと】

マグニチュードは「地震そのものの大きさ(エネルギー)」を表す1つの数字、震度は「その場所がどれだけ揺れたか」を表す場所ごとの数字です。1回の地震にマグニチュードは1つしかありませんが、震度は観測地点の数だけあります。
一番わかりやすいのは電球のたとえです。マグニチュードは「電球のワット数」、震度は「あなたの手元の明るさ」。100Wの電球(大きなM)でも、遠くにあれば手元は暗い(震度は小さい)。20Wの電球(小さなM)でも、目の前にあればまぶしい(震度は大きい)。地震も同じで、震源からの距離と深さによって、同じ地震でも場所ごとに震度が変わります。
音で考えるなら、コンサートホールの太鼓のたとえも役立ちます。マグニチュードは「太鼓を叩いた力」、震度は「あなたの席に届いた音の大きさ」。叩く力は1回の演奏で1つですが、聞こえる音量は最前列と最後列でまったく違います。地震速報で報じられる「最大震度」とは、全国の観測点の中で最も大きな揺れを記録した”最前列の席”の数値のことです。あなたの街の揺れは、あなたの街の震度を見る必要があります。
| マグニチュード(M) | 震度 | |
|---|---|---|
| 表すもの | 地震そのもののエネルギー | その場所の揺れの強さ |
| 1つの地震での数 | 1つだけ | 場所ごとに異なる(多数) |
| 段階 | 上限の決まった段階はない(小数で表す) | 10段階(0〜7、5と6は強弱あり) |
| 決まるタイミング | 地震の規模の分析で算出 | 各地の地震計で観測 |
マグニチュードとは?1違うとエネルギーは約32倍

マグニチュード(M)は、地震が放出したエネルギーの大きさを表す尺度です。ポイントは、ふつうの数直線ではなく「対数」の尺度だということ。Mが1大きくなると、エネルギーは約32倍。2大きくなると、32×32で約1,000倍になります。
なぜ32倍という中途半端な数なのかというと、エネルギーEとマグニチュードMの間には「log₁₀E = 4.8 + 1.5M」という関係式があるためです。Mが1増えると、エネルギーは10の1.5乗=約31.6倍(約32倍)に増える計算になります。細かい数式を覚える必要はありませんが、「Mが0.2違うだけでエネルギーは約2倍」と知っておくと、速報の数値の重みが変わって見えるはずです。
つまりM7の地震は、M5の地震の約1,000倍のエネルギーを持っています。「M6とM7は1しか違わない」という感覚は、実態とかけ離れているのです。東日本大震災(M9.0)は、阪神・淡路大震災(M7.3)の実に約350倍のエネルギーでした。
マグニチュードに「何段階」という決まりはない

震度と違い、マグニチュードには「全部で何段階」という決まった区分はありません。小数を使って連続的に表され、理論上の明確な上限もありません。ただし目安としての呼び方はあり、M7以上を「大地震」、M8クラスを「巨大地震」と呼びます。今後30年以内に高い確率で発生が想定されている首都直下地震はM7程度、南海トラフ地震はM8〜9クラスと想定されています。
では上限はどこにあるのか。地震は断層(岩盤のずれ)で起こり、マグニチュードの大きさは「ずれた断層の面積」と「ずれた量」で決まります。東日本大震災のM9.0でさえ、長さ約500km・幅約200kmという広大な断層が動いた結果でした。M10クラスとなると、地球上の主要なプレート境界のほぼすべてが一度に動く必要があり、物理的に現実的ではありません。実際、観測史上最大は1960年チリ地震のM9.5。これが事実上、地球が起こしうる地震の最大級と考えられています。だからこそ「M9クラスは日本で既に起きた」という事実を、備えの前提にする必要があります。
MjとMwの違い:速報の数値が後から変わる理由
「速報でM7.9だったのに、後からM9.0に変わった」——東日本大震災で実際に起きたことです。これは間違いではなく、マグニチュードに種類があるためです。日本の速報で使われる気象庁マグニチュード(Mj)は、周期の短い地震波から数分で計算できる速報向きの尺度。一方、モーメントマグニチュード(Mw)は断層の面積とずれの量から物理的に計算する尺度で、時間はかかりますが巨大地震でも正確です。
Mjには「巨大地震では数値が頭打ちになる(飽和する)」という弱点があり、M8を超えるクラスでは実際より小さく出ることがあります。東日本大震災では速報Mj7.9→暫定Mj8.4→最終Mw9.0と更新されました。速報のMは「暫定値であり、巨大地震ほど後から上方修正されうる」——この一点を知っているだけで、発災直後の判断が変わります。
震度とは?日本の震度階級は10段階

震度は、その場所での揺れの強さを表す指標で、日本では気象庁震度階級が使われます。震度0・1・2・3・4・5弱・5強・6弱・6強・7の10段階です。かつて震度は人の体感や被害状況で決めていましたが、現在は全国に設置された震度計による機械観測に切り替わっています。世界共通の尺度であるマグニチュードと違い、この震度階級は日本独自の指標である点も覚えておきたいポイントです。各階級でどんな揺れ方をするのかは、震度階級ごとの揺れの詳しい解説をご覧ください。
なぜ「震度8」は存在しないのか

震度7は「これ以上の揺れは想定上の区別が意味を持たない」上限として設けられています。震度7とは、立っていることができず、はわないと動けない揺れ。耐震性の低い建物は倒壊し、固定していない家具のほとんどが倒れ、飛ぶことさえあるレベルです。それ以上を細分化しても、取るべき防災対応が変わらないため、震度8は設けられていません。
ここから導かれる実践的な結論はひとつです。震度7では「揺れてから動く」ことはほぼ不可能なので、家具の固定・寝室の安全確保・持ち出し袋の準備といった対策は、揺れる前に完了させておくしかないということ。つまり震度7は「上限のある尺度の最大値」、マグニチュードは「上限を区切らない尺度」という設計の違いがあります。震度7の実際の被害は震度7の記事で詳しく解説しています。
震度とマグニチュードが換算できない理由

「M7は震度いくつ?」という質問には、答えがありません。換算表も存在しません。震度は次の3つの要因で複雑に決まるためです。
- 震源からの距離:同じMでも、震源に近いほど震度は大きく、遠いほど小さくなります
- 震源の深さ:深い場所で起きた地震は、Mが大きくても地表の揺れ(震度)は小さくなりがちです。逆に浅い直下型は、Mが中規模でも激しい揺れになります
- 地盤の性質:柔らかい地盤は揺れが増幅されます。同じ市内でも震度が1階級違うことがあるのはこのためです(液状化しやすい地盤の解説も参照)
ただし、換算はできなくても「想定」はできます。M7クラスの地震が自分の街の直下・浅い場所で起きた場合、最大で震度7に達する可能性がある——首都直下地震の被害想定で、地盤の柔らかい地域に震度7が想定されているのはこの考え方です。防災対策は「Mいくつなら安心」ではなく「最悪の震度」を基準に立てる。これが換算できない世界での正しい備え方です。
この「換算不可」を体で理解できるのが、次の実例です。
過去の地震で見る「Mと震度」の組み合わせ早見表

| 地震 | マグニチュード | 最大震度 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 東日本大震災(2011) | M9.0 | 震度7 | 国内観測史上最大のM。広範囲が長時間揺れた |
| 阪神・淡路大震災(1995) | M7.3 | 震度7 | Mは東日本の約350分の1でも、浅い直下型で震度7 |
| 熊本地震・本震(2016) | M7.3 | 震度7 | 前震でも震度7。同一地域で震度7が2回の初事例 |
| 北海道胆振東部地震(2018) | M6.7 | 震度7 | M6台後半でも震度7。地盤条件も影響した実例 |
| 新潟県中越地震(2004) | M6.8 | 震度7 | M6台でも浅ければ震度7に達する実例 |
| 深い場所で起きる地震(深発地震) | M7級でも | 震度3〜4程度のことも | 深さ数百kmだと大きなMでも揺れは小さい |
M6.8(中越)とM9.0(東日本)——エネルギーは約2,000倍違うのに、最大震度は同じ7。これが「換算できない」ということの実像です。だからニュースでは、地震の全体像はマグニチュードで、自分の街の危険度は震度で読み取るのが正しい使い方になります。
Mが大きいときは津波に警戒——揺れが小さくても逃げる
「自分の街の危険度は震度で見る」には、ひとつだけ重大な例外があります。津波です。津波のエネルギーは震度ではなくマグニチュードに左右されます。東日本大震災では、震源から遠く揺れが比較的小さかった地域にも巨大な津波が到達し、多くの命が失われました。M9.0という莫大なエネルギーは、海を伝わってもほとんど減衰しなかったのです。
だからこそ、覚えておいてほしい鉄則があります。沿岸部でM8クラス以上の速報を聞いたら、体感した揺れが小さくても、ためらわず高台へ避難する。速報のMは巨大地震ほど後から上方修正されうる(前述のMjの飽和)ことも、早めの避難を後押しする理由になります。津波避難の考え方は津波てんでんこの記事でも詳しく解説しています。
2つの数字の意味が分かると、速報を聞いた瞬間の判断はここまで具体的になります。
- 「M7クラス・震源は内陸・深さ10km」→ 直下型。震源付近は震度7クラスの可能性。落下物と家具から身を守る
- 「M9クラス・震源は沖合・深さ20km」→ 東日本大震災クラス。自分の場所の震度が4でも、沿岸なら今すぐ高台へ
よくある質問
Q. マグニチュードと震度、どちらを見ればいいですか?
A. 自分の身を守る判断には震度です。速報で自分の地域の震度を確認し、行動を決めてください。マグニチュードは津波の可能性や被害の広がりなど、地震の全体像を知る手がかりになります。
Q. マグニチュードが1違うとどれくらい違いますか?
A. エネルギーで約32倍です。2違うと約1,000倍になります。0.2の違いでも約2倍です。
Q. マグニチュード7の地震だと震度はいくつになりますか?
A. 一律には決まりません(換算できません)。ただし震源が浅く直下で起きた場合は、最大で震度7に達する可能性があります。首都直下地震(M7程度想定)で震度7が想定されている地域があるのはこのためです。
Q. マグニチュード10の地震は起こりますか?
A. 理論上の上限はありませんが、断層の長さには物理的限界があるため、M10を大きく超える地震は現実には起こらないと考えられています。観測史上最大は1960年チリ地震のM9.5です。
Q. 速報のマグニチュードが後から変わるのはなぜですか?
A. 速報用の気象庁マグニチュード(Mj)は巨大地震で数値が頭打ちになる性質があり、後から正確なモーメントマグニチュード(Mw)に更新されるためです。東日本大震災も速報M7.9から最終M9.0に修正されました。
Q. 震度8はなぜないのですか?
A. 震度7が階級の上限だからです。震度7の時点で最大級の防災対応が必要になるため、それ以上を区分する実用上の意味がないとされています。
Q. 同じ市内なのに震度が違うのはなぜですか?
A. 地盤の硬さと震源からの距離が地点ごとに違うためです。柔らかい地盤では揺れが増幅され、1階級程度変わることがあります。
まとめ:数字の意味がわかったら、次は備えです

本記事の要点をまとめます。
- マグニチュードは地震のエネルギー、震度はその場所の揺れの強さ。測るものが別で、換算はできない
- Mが1違うとエネルギーは約32倍、2違うと約1,000倍
- 震度は10段階で震度7が上限。マグニチュードに段階の決まりはなく、観測史上最大はM9.5
- M6台でも浅い直下型なら震度7は起こり得る(中越M6.8、胆振東部M6.7)
- 沿岸部でM8クラス以上の速報を聞いたら、揺れが小さくても高台へ
そして防災士として付け加えたいのは、震度7が「いつ・どこで」来るかは、この知識をもってしても予測できないということです。私自身、2011年3月11日の福島で、それを思い知りました。震度7の世界では「揺れてから動く」ことはできません。数字の意味を知った今日を、備えを始める日にしてください。→ 被災した防災士が解説する防災リュックの選び方と中身
この記事を書いた人
後藤秀和(株式会社ヒカリネット 代表取締役・防災士)
2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得しHIH(Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。
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