緊急地震速報の仕組みとスマホ設定を防災士が徹底解説

緊急地震速報の仕組みとスマホ設定を防災士が徹底解説
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
突然スマホから鳴り響くあの音。緊急地震速報の警報音を初めて聞いたとき、思わず体がすくんでしまった、という方も多いのではないでしょうか。私自身、2011年3月11日に福島で東日本大震災を経験してから、あの音に対する感覚が大きく変わりました。あの日を境に、「備え」の意味を全身で理解するようになりましたし、緊急地震速報という仕組みをもっと深く知っておけばよかったと感じることもありました。
でも実は、緊急地震速報には「知っていると知らないとでは大違い」な仕組みがたくさん詰まっています。どうやって地震の到来を数秒前に知らせることができるのか、なぜスマホに届くのか、なぜときに誤報が起きるのか。そして、いざ鳴ったときにどう動けばいいのか。
この記事では、緊急地震速報の仕組みを防災士の視点からわかりやすく解説しながら、スマホの設定確認方法や、速報が鳴ったときの具体的な行動まで、まるごとお伝えします。

緊急地震速報の仕組みを防災士が解説

緊急地震速報とは何か

緊急地震速報とは、地震の強い揺れが到達する前に警告を発する、気象庁が運営する地震早期警報システムです。2007年10月1日から一般向けの本運用が始まり、国内ほぼ全域を対象とした「一般公衆向けシステム」としては世界初のものでした。
テレビやラジオで流れるNHKのチャイム音、スマホから鳴り響くブザー音。あの音の正体がこのシステムです。気象庁が全国の地震計から得たデータを瞬時に解析し、強い揺れが予想される地域へ「もうすぐ揺れが来ます」と伝える、まさに”命を守る数秒”を生み出すための仕組みなんです。
緊急地震速報は「警報」と「予報」の2種類があります。テレビ・スマホで一般の方に届くのは「警報」。工場の機械停止や交通機関の制御などに使われるのが「予報(高度利用者向け)」です。
P波とS波の違いが命を救う

緊急地震速報の仕組みを理解するうえで、まず知っておきたいのがP波とS波の違いです。これが、数秒前の警告を可能にしている「防災理科」の核心です。
地震が発生すると、震源から2種類の地震波が同時に放射されます。
| 地震波 | 速度 | 揺れの特徴 | 伝わる媒質 |
|---|---|---|---|
| P波(Primary波) | 秒速 約7km | 小さな縦揺れ(カタカタ) | 固体・液体・気体 |
| S波(Secondary波) | 秒速 約4km | 大きな横揺れ(グラグラ) | 固体のみ |
P波はS波の約1.7倍の速さで伝わります。先に届くP波は小さな縦揺れで被害はほとんどありません。問題なのは、後から到達するS波による大きな横揺れです。この「速いが弱いP波」と「遅いが強いS波」の到達時間の差こそが、緊急地震速報を成立させる物理的な根拠なのです。
震源から100km離れた場所では、P波とS波の到達時間差はおよそ10秒前後になります(地盤の状態により変わります)。震源が遠いほど猶予時間は長く、近いほど短くなる。この「時間の窓」をどう使うかが、命を守る鍵になります。
P波は「Primary(最初の)」、S波は「Secondary(2番目の)」の頭文字。P波が「前触れ」、S波が「本震の揺れ」と覚えましょう。
震度何から速報が届くのか

「緊急地震速報はどのくらいの地震から届くの?」という質問をよく受けます。気象庁が定める発表基準は明確です。
一般向けの緊急地震速報(警報)は、2点以上の観測点で地震波が観測され、最大震度5弱以上または長周期地震動階級3以上と予想された場合に発表されます。震度4以上が予測される地域が配信対象となります。
なぜ震度5弱以上で発表するのかというと、これ以上の揺れになると全壊家屋100棟程度以上の深刻な被害が生じ始めるからです。また、観測点を「2点以上」とするのは、落雷など地震以外の揺れを誤検知しないための安全策でもあります。
なお2023年2月1日からは、高層ビルなどに影響する長周期地震動階級3以上の場合も新たに警報の対象となりました。高層マンションにお住まいの方も、この基準は知っておいて損はないですね。
「緊急地震速報が鳴ったのに震度3だった」という経験のある方もいるかもしれません。これは予測震度に±1程度の誤差が生じることがあるためで、誤報ではなく「予測の幅」として理解してください。
気象庁の発表と予測の流れ

緊急地震速報が私たちの手元に届くまでには、信じられないくらいの「瞬間的な処理」が自動で走っています。その流れを順番に見てみましょう。
まず、震源付近の地震計がP波を検知します。このデータが気象庁のシステムに送られ、震源の位置・マグニチュード・各地の予測震度を数秒以内に自動計算します。発表基準に達すれば、テレビ・ラジオ・携帯電話会社を経由して各端末へ一斉配信されます。
第1報は地震検知からわずか2〜3秒後、第2報は5〜10秒後に発表されます。その後も5〜10回程度の続報が出され、精度が徐々に高まる仕組みです。
全国には気象庁の約690か所の地震計に加え、防災科学技術研究所の約1,000か所の観測点が活用されています。さらに、2011年以降は南海トラフ沿いの海底地震計(DONET)や日本海溝沿いの観測網(S-net)のデータも順次組み込まれ、海底地震の初期検知精度が向上しています。
「強い揺れが来るまでの時間は数秒〜数十秒」。震源に近い直下型地震では間に合わないこともあります。だからこそ日頃の訓練が大切なんです。
誤報が起きる原因と対処法

緊急地震速報は完璧なシステムではありません。ときに誤報(空振り)が起きることもあります。「鳴ったのに揺れなかった」という経験がある方も多いでしょう。
誤報の主な原因は大きく3つに分かれます。
1つ目は複数の地震の混同です。ほぼ同時刻に異なる場所で起きた2つの地震を、システムが1つの大きな地震として誤解析してしまうケースです。これが誤報の最多原因とされています。
2つ目は落雷や機器障害による誤検知です。観測点のすぐ近くで落雷があると、その電気的ノイズをP波と誤認することがあります。2016年8月の関東地方への誤報はこれが原因でした。
3つ目はソフトウェアのバグや機器故障です。2024年1月の能登地方で一時「震度7」と誤報された事例では、システムのメモリに過去の震度情報が誤って流出したことが原因とされています。
誤報だと思っても、絶対に「どうせ誤報だろう」と油断しないでください。気象庁も「速報が発表されているときは、地震が起きていると判断して身を守る行動をとってほしい」と呼びかけています。誤報に慣れて行動が遅れることが、最も危険な「誤報の副作用」です。
緊急地震速報とスマホ設定の正しい知識

スマホに届く仕組みと携帯キャリアの役割

「スマホになぜ緊急地震速報が届くの?」と思ったことはありませんか。実は、普通のメールやLINEとはまったく異なる仕組みで動いています。
スマホへの緊急地震速報は主にETWS(Earthquake and Tsunami Warning System)という方式で配信されます。これは携帯電話の基地局から、エリア内のすべての端末に一斉にブロードキャスト送信する仕組みです。特定の個人を宛先にするのではなく、「このエリアにいる全端末に同時送信」するため、通常の通信が混雑していても届きやすいという特長があります。
NTTドコモ・au・ソフトバンク・ワイモバイル・楽天モバイルの5社が配信サービスを提供しています。また、ETWS方式の仕組み上、SIMフリースマホでも基本的に受信可能です。Android 8.1以降の機種であれば、ほぼ対応していると考えてよいでしょう。
格安SIM(MVNO)でも緊急地震速報は受信できます。以前は一部の格安スマホで受信できないケースがありましたが、現在は多くの機種で解消されています。
緊急地震速報が鳴らない主な原因

「地震があったのに自分のスマホだけ鳴らなかった」という経験はないでしょうか。これは故障ではなく、多くの場合設定の問題や受信条件の問題です。
主な原因を整理すると、次のとおりです。
①設定がOFFになっている:初期設定ではONになっていますが、機種変更時や設定変更の際に無効になっている場合があります。これが最も多い原因です。
②「常に警報音を鳴らす」がOFF(iPhone):iOS16から追加されたこの設定がOFFの場合、サイレントモード中は警報音が鳴りません。気づかずにOFFにしている方が意外と多いです。
③機内モード・圏外・電源OFF:ETWSは電波を受信することで機能するため、これらの状態では受信できません。
④対象エリア外にいた:配信は震度4以上が予測されたエリアに限定されるため、エリア外では届きません。
⑤別エリアの基地局に接続していた:移動中に別エリアの基地局の電波を拾っていると、受信されないことがあります。
「鳴らなくて助かった」という感覚は危険です。緊急地震速報が鳴らないということは、いざ本当に必要なときも届かない可能性があります。今すぐ設定を確認してください。
iPhoneとAndroidの設定確認方法

設定の確認は今すぐできます。数分でできる作業なので、ぜひこの記事を読みながら確認してみてください。
【iPhoneの設定確認方法】
「設定」アプリ →「通知」→「緊急速報」をタップ。「緊急速報」がオンになっているか確認。さらに、「常に警報音を鳴らす」もオンにすることで、サイレントモード中でも確実に鳴るようになります(iOS16以降)。
【Androidの設定確認方法】
「設定」アプリ →「通知」→「緊急速報メール」を確認。メーカーやキャリアによって画面が異なる場合があります。「緊急速報メールの許可」にチェックが入っているか確認してください。auをお使いの方は、「au災害対策」アプリ内の「マナー時の鳴動」が「鳴動する」になっているかも確認を。
スマホを機種変更した際や、iOSのアップデート後は設定がリセットされることがあります。定期的な確認を習慣にしましょう。半年に一度、防災訓練の日などに合わせてチェックするのがおすすめです。
機内モード・電源オフでも鳴るのか

「夜中に電源を切っていても緊急地震速報は届くの?」という質問もよく受けます。結論からいえば、電源がOFFの状態や機内モードでは受信できません。
ETWSは基地局からの電波を受信することで機能しますが、電源がOFFや機内モードでは電波を受け取れない状態になっています。「電源を切っていても鳴る」という情報がSNSで拡散されることがありますが、これは正確ではありません。
夜間の対策としては、スマホを「サイレントモード(マナーモード)のまま充電しておく」のがベストです。iPhoneなら「常に警報音を鳴らす」をONにしておけば、サイレントモード中でも緊急地震速報だけは大音量で鳴ります。電源を完全に切る必要がなければ、緊急地震速報のためにも電源はONのまま充電する習慣をつけましょう。
東日本大震災を経験した私が感じているのは、「いざというときにスマホが役に立たない状態」にしておくことのリスクです。あの日を経験したからこそ、日常的な小さな備えが本当に大切だと実感しています。
鳴ったら何秒で何をすべきか

緊急地震速報が鳴ってから揺れが到達するまでの時間は、数秒から数十秒。震源が近ければ数秒、遠ければ数十秒の猶予があります。この限られた時間で何ができるか、あらかじめ体に叩き込んでおくことが重要です。
気象庁が推奨する基本行動は「周囲の状況に応じて、あわてずに、まず身の安全を確保する」こと。場所別の行動イメージは以下のとおりです。
| いる場所 | まずとるべき行動 |
|---|---|
| 自宅・室内 | 机の下に潜り頭を守る。火元から離れている場合は無理に消火しない |
| 屋外 | 壁・ガラスから離れ、カバンなどで頭を保護し身を低くする |
| 車の運転中 | ハザードランプを点灯しながらゆっくり減速・路肩停車 |
| エレベーター内 | 全ての階のボタンを押し、最初に止まった階で降りる |
| 電車・バス内 | つり革・手すりをしっかり握り、低い姿勢をとる。乗務員の指示に従う |
また、「揺れがこなかった」場合でも、速報を見聞きしてから1分程度は警戒を続けてください(気象庁推奨)。震源が遠い場合は揺れの到達が遅れることがあります。
慌てて外に飛び出すのは非常に危険です。屋外では看板・窓ガラス・ブロック塀などの落下・倒壊リスクがあります。まず「いる場所で身を守る」を最優先に。
まとめ:緊急地震速報の仕組みを知り備えを整えよう

この記事では、緊急地震速報の仕組みからスマホの設定、鳴ったときの行動まで解説しました。最後に要点を整理しておきます。
・P波とS波の速度差を利用して「強い揺れ」の前に警告を発するシステム
・一般向け警報は「最大震度5弱以上または長周期地震動階級3以上」の場合に発表
・スマホへの配信はETWS方式で、基地局から一斉ブロードキャスト
・誤報があっても「身を守る行動」を優先する
・iPhoneは「常に警報音を鳴らす」をON、Androidは「緊急速報メール」の許可を確認
・電源OFFや機内モードでは受信できない。夜間はサイレントモード+充電で待機が基本
・鳴ったら数秒〜数十秒以内に「頭を守り、身を低くする」行動を
緊急地震速報は「知っているだけで使えない」システムです。仕組みを理解し、設定を確認し、行動を体に覚えさせておくこと。この3つがそろってはじめて、あの警報音が命を守る音になります。
日本はいつどこで大きな地震が起きるかわかりません。あの日を経験したからこそ、私は防災士として「知識と備えは裏切らない」と確信しています。この記事がみなさんの備えを一歩前に進めるきっかけになれば、これ以上うれしいことはありません。
数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。
(出典:気象庁『緊急地震速報のしくみ』)
緊急地震速報が教えてくれた備え
緊急地震速報の仕組みを知ることで、私たちが学べるのは「知識と行動」が命を左右するという事実です。
あなたの備えを今すぐ確認してください。
あなたの防災度チェック
- □ スマホの緊急速報設定がONになっている
- □ iPhoneは「常に警報音を鳴らす」がONになっている
- □ 緊急地震速報が鳴ったときの行動を家族と確認している
- □ 持ち出し袋が玄関にすぐ持って出られる状態にある
- □ 家族全員で避難場所・連絡方法を確認している
緊急地震速報の「数秒」は、準備している人にだけ活きる時間です。HIHの防災リュックは、その「準備」をすぐ始められるように設計されています。
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🛡️ 防災士監修記事
後藤 秀和(ごとう ひでかず)
防災士/株式会社ヒカリネット 代表取締役
2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得しHIH(Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。


