防災グッズ完全ガイド 本当に必要なもの一覧・選び方・家庭の備えを防災士が解説

家族で防災グッズの本当に必要なものについて話し合っている様子

防災グッズ完全ガイド 必要なもの一覧と選び方・備え

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。

「防災グッズ完全ガイド」と検索して、この記事にたどり着いたあなたは、「本当に必要なものって結局何?」「どう選べばいいの?」「家庭での備えはどうしたら…」と、たくさんの情報の中で迷っているかもしれませんね。

防災グッズの必需品リストはよく見かけますが、ご家庭の状況によって最適な備えは違ってきます。例えば、一人暮らしの方と赤ちゃんがいるご家庭、高齢者の方がいるご家庭では、優先すべきアイテムが変わってきますよね。また、リュックの選び方や、女性ならではの必需品、寝袋やマットの必要性、カセットコンロの備蓄、100均で揃えるべきものなど、考えることはたくさんあります。

この記事では、そうした疑問を解消し、リストを揃えるだけではない、本当に「使える」備えの知識を、防災士の視点から完全ガイドとしてまとめました。賞味期限の管理が楽になるローリングストック法から、玄関や寝室といった具体的な保管場所まで、あなたの家の防災レベルをグッと引き上げるヒントをお伝えしますね。

  • 防災グッズを「3つの段階」に分けて考える戦略
  • 命を守る「簡易トイレ」や「ポータブル電源」の正しい選び方
  • 世帯別(女性・赤ちゃん・高齢者)で追加すべき必需品リスト
  • 備えた後の「管理方法」と「よくある失敗」の防ぎ方
防災準備のジレンマ

理想と現実のギャップを可視化 「完璧に備えなきゃ!」と思うほど動けなくなる…。サムネイルの左側(理想)と右側(現実)のような、私たちが陥りがちな心理的・物理的な「壁」の正体に迫ります。

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目次

防災グッズ完全ガイド:一覧と選び方、家庭の備え

防災のプロが教える防災グッズの3段階(0次・1次・2次)の分け方と、簡易トイレ・ヘッドライト・ローリングストックの重要ポイント図解
防災リュックと家庭で備える防災グッズ一式を日本人家族が確認している様子
【HIH】ヒカリネット・イメージ

まずは、防災グッズを備える上での「基本戦略」から見ていきましょう。「何を」「どれだけ」「どう備えるか」の土台をしっかり固めることが、失敗しない備えの第一歩です。

備えの基本戦略とローリングストック法

ローリングストックで食品備蓄を入れ替える日本人親子の防災準備シーン
【HIH】ヒカリネット・イメージ

防災グッズの準備で一番よくある失敗は、「在宅避難用の水や食料」と「避難所に持っていくリュック」を混同してしまうことです。1週間分の水をリュックに詰めたら、重すぎて持ち出せないですよね。

大規模な災害が発生すると、公的な支援(食料や水の配給)がすぐに届くとは限りません。「最低3日分、できれば1週間分」の備蓄が推奨されている(出典:首相官邸「災害に対するご家庭での備え」)のは、この支援が届くまでの「空白期間」を自力で生き抜くためです。

この問題を解決するため、備えは以下の3つのフェーズ(段階)に分けて考えるのが最も合理的です。

【0次】常時携帯(いつもカバンに)

外出先で被災した際、自宅や避難所へたどり着くための「お守り」です。

  • 目的:帰宅困難や、閉じ込めからの脱出をサポート。
  • アイテム例:モバイルバッテリー、小型ライト、ホイッスル(閉じ込め時用)、衛生用品(マスク、絆創膏)、現金(小銭)

【1次】非常用持ち出し袋(すぐに持ち出すリュック)

避難指示が出た際、あるいは自宅が危険になった際に、即座に持ち出して避難するためのリュックです。「避難所への移動」が前提です。

  • 目的:命を守り、避難所で数日間を過ごすための厳選されたアイテム。
  • 重さ目安:男性15kg、女性10kg程度。これ以上重いと、避難の妨げになります。
  • アイテム例:水(500ml 1~2本)、食料(1日分)、携帯ラジオ、ヘッドライト、救急セット、貴重品コピー、簡易トイレ(数回分)

【在宅避難】備蓄(家で生き抜く)

ライフラインが停止した自宅で、支援が届くまでの数日~1週間を生き抜くための備えです。持ち出すことは想定しないため、重量を気にする必要はありません。

  • 目的:水道・電気・ガスが止まっても、自宅で生活を維持する。
  • アイテム例:大量の水と食料(7日分)、カセットコンロとガスボンベ、大量の簡易トイレ、ポータブル電源

そして、特に「在宅避難」用の備蓄(水や食料)で絶対に実践してほしいのが、「ローリングストック法」です。

ローリングストック法とは?

  1. 普段使うレトルト食品(カレー、パスタソース)、缶詰(ツナ、サバ)、乾麺(パスタ、そうめん)、レトルトご飯などを「少し多めに」買います。
  2. 古いものから順に、日常の食事で「消費」します。
  3. 食べた分だけ「補充(買い足し)」します。
  4. 期限切れ防止:食品を無駄にせず、常に新しいものが補充されます。
  5. 経済的:特別な「非常食」を大量に買うより、普段の食費の延長で備えられます。
  6. ストレス軽減:災害時でも「食べ慣れたもの」を食べられる安心感が、被災時のストレスを大幅に軽減します。

災害時でも「食べ慣れたもの」が食べられる安心感は、想像以上に大きいです。ぜひ、今日から始めてみてください。

命を守る簡易トイレの備蓄量と選び方

簡易トイレのセット内容と使い方を確認する日本人家族の防災対策
【HIH】ヒカリネット・イメージ

防災グッズの中で、私が「水・食料」と並んで、いや、それ以上に最優先で備えてほしいのが「簡易トイレ(携帯トイレ)」です。

ライフラインの復旧目標をご存知ですか?大地震の場合、水道の復旧には7日から30日以上かかると想定されています。つまり、水洗トイレは「必ず」使えなくなるんです。

トイレは我慢できません。我慢すると、無意識に水分摂取を控えがちになります。その結果、血流が悪化して血栓ができやすくなる「エコノミークラス症候群」になったり、体調を崩したり、最悪の場合「災害関連死」にも繋がります。

簡易トイレの備蓄目安

  • 1人あたり「1日5回分」(高齢者の方は頻度が多いため「1日10回分」で計算)
  • 在宅避難用に「最低1週間分」

(例)3人家族(大人2人、高齢者1人)の場合
(5回×2人)+(10回×1人)= 1日20回
20回 × 7日分 = 合計140回分

かなりの量になりますが、これこそが命を守る備えです。選ぶ際は、以下のポイントをチェックしてください。

凝固剤の性能

排泄物の水分を素早く確実に固める能力が求められます。ほとんどが「高分子吸水ポリマー」ですが、製品によって性能に差があります。レビューなどで「しっかり固まるか」を確認するのがおすすめです。

消臭力と防臭袋

在宅避難が長引くと、「臭い」の問題は想像以上に深刻です。凝固剤自体に消臭機能があるか、さらに強力な防臭袋(BOSなど)がセットになっているかは非常に重要なポイントです。

袋の耐久性

排泄物の重さに耐え、破れにくい素材であることも大切です。袋が薄いと、処理の際に破れてしまうリスクがあります。

そして一番大事なのは、「購入したら一度、家族で使ってみる」ことです。「使い方がわからなかった」という失敗が本当によく報告されていますからね。洋式便器に被せるタイプか、ダンボールなどで組み立てるタイプか、設置方法も確認しておきましょう。

断水時のトイレ対策については、こちらの記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
断水時のトイレどうする?防災士が教える対処法

必須アイテムチェックリスト【1次・在宅】

一次持ち出し用防災グッズと在宅避難用備蓄を比較しながら整理する家族
【HIH】ヒカリネット・イメージ

ここでは、基本となる防災グッズを「1次持ち出し(避難リュック)」と「在宅避難(備蓄)」に分けて一覧にしました。ご家庭の状況に合わせて、過不足がないかチェックしてみてくださいね。これはあくまで「基本」なので、ご家庭の状況に合わせてカスタマイズしてください。

カテゴリ品名1次持ち出し (推奨数)在宅備蓄 (推奨数)備考・選び方
【生命維持】飲料水500ml x 1~2本1人3L/日 x 7日分在宅備蓄は2Lと500mlを併用。軟水が◎
食料1~2日分(すぐ食べられる物)1人3食/日 x 7日分ローリングストックで管理
簡易トイレ携帯トイレ (3~5回分)1人5~10回/日 x 7日分最重要アイテム
医薬品・お薬手帳救急セット、持病薬 (2~3日分)常備薬、持病薬 (1週間分以上)お薬手帳はコピーをリュックにも
【情報・電源】携帯ラジオ1台(小型)1台手回し充電式が望ましい
モバイルバッテリー10,000mAh以上 x 1複数または大容量スマホは最重要の情報源
乾電池ラジオ・ライト用予備大量 (単3・単4中心)ローリングストックで管理
【避難・安全】明かりヘッドライト (1人1つ)LEDランタン (各部屋)両手が空くヘッドライトが最強
アルミシート1人1枚予備防寒・保温の必須アイテム
寝袋・マット(可能な限り)1人1セット避難所の床は固く冷たい。マット必須
【衛生用品】ウェットティッシュ1パック大容量体拭き、手拭きに多用
ポリ袋・ゴミ袋大小数枚大量 (各種)汚物処理、防寒、水の運搬など万能
消臭ゴミ袋(推奨)大量 (推奨)トイレの汚物処理に必須
【その他】現金(小銭)1~3万円程度停電時は電子マネー不可。小銭も必須
カセットコンロ1台温かい食事は心の支え。ボンベも多めに

このリストの中でも、特に私が重要だと思うアイテムについて補足しますね。

明かりは「ヘッドライト」が最強な理由

懐中電灯も良いのですが、防災用としては「ヘッドライト」を断然おすすめします。理由は「両手が空く」からです。夜間の避難時、瓦礫が散乱する中での作業、トイレに行く時など、両手が使えるメリットは計り知れません。100均のものでも良いので、ぜひ「1人1つ」用意し、寝室の枕元にも置いてください。置き型の「LEDランタン」も、食卓や部屋全体を照らすのに便利なので、併用が最強ですね。

寝袋と「マット」の重要性

避難所生活を経験された方が口を揃えるのが、「床が硬くて冷たくて眠れなかった」ということです。毛布はかさばる割に、床からの冷気(底冷え)は防げません。コンパクトな寝袋(シュラフ)と、床の冷気と硬さを遮断する「マット(エアマットや銀マット)」は、睡眠の質を保ち、体力を維持するために非常に重要です。寝袋だけでは不十分で、必ず「マットとセット」で備えてください。

カセットコンロとガスボンベ

在宅避難が続くと、冷たい非常食ばかりでは精神的に参ってしまいます。カセットコンロが1台あるだけで、「温かい食事」や「お湯」を確保できます。この心理的効果は絶大です。ガスボンベは、1本で約1時間程度の燃焼が目安です(使い方による)。ローリングストックで管理し、最低でも1週間分(10本以上)は備蓄しておくと安心ですね。

在宅避難の要、ポータブル電源の選び方

停電時にポータブル電源で明かりと充電を確保する日本人家族の在宅避難
【HIH】ヒカリネット・イメージ

「在宅避難」の質を劇的に変えるアイテムが、「ポータブル電源」です。

停電が長引いた時、これがあるだけで「スマホの充電(情報収集)」「夜間の明かり(LEDランタン)」「(夏場なら)扇風機」「(冬場なら)電気毛布」など、最低限の電力を確保できます。この安心感は計り知れません。

決して安い買い物ではありませんが、台風による計画停電など、日常に近い「もしも」にも役立つので、予算が許すならぜひ検討してほしいアイテムです。

ポータブル電源選びのポイント

バッテリーの種類

「リン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO4)」採用モデルがおすすめです。従来のタイプ(三元系リチウムイオン)に比べ、圧倒的に長寿命(充放電サイクルが多い)で安全性が高いため、数年使わずに保管することもある防災用途に最適です。

容量(Wh)の目安

Wh(ワットアワー)は、「どれくらいの電力をどれくらいの時間使えるか」を示す数値です。

  • 300Wh前後:スマホ充電、LEDライトなど、情報収集と明かりの確保が中心。
  • 600Wh以上:上記に加え、扇風機や電気毛布など、体調管理に役立つ小型家電も使える。
  • 1,000Wh以上:家族が多く、小型冷蔵庫や調理家電も一時的に使いたい場合の目安。

機能(出力ポート、充電方法)

ACコンセント(家庭用電源)、USB-C(PD対応か)など、使いたい機器のポートがあるか確認しましょう。また、停電が長引いても太陽光で充電できる「ソーラーパネル対応」モデルを選ぶと、さらに安心ですね。

ポータブル電源の保管・管理の注意点

ポータブル電源は「買って終わり」ではいけません。リチウムイオン電池の特性上、満充電やゼロの状態で長期間放置すると劣化が進みます。「60%~80%程度の充電量で保管」し、「半年に一度は点検と充放電」を行うことが推奨されています。メーカーの取扱説明書を必ず確認してくださいね。

100均で揃えてもいい防災グッズとは?

アルミブランケットやポリ袋など100均で揃う防災グッズを選ぶ親子の様子
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防災グッズは専門品ばかりでなく、100円ショップ(100均)も賢く活用するのがおすすめです。特に「消耗品」や「数を揃えたいもの」の補充にとても役立ちますよ。

【100均で買うべきもの(消耗品・補助品)】

  • アルミブランケット(保温シート):軽量コンパクトで保温性抜群。家族分+予備を。
  • 使い捨てカイロ:冬場の防寒に必須。
  • 軍手(滑り止め付き):ケガ防止や作業用に。
  • マスク、ウェットティッシュ、除菌シート:衛生用品はいくらあっても困りません。
  • ポリ袋(大小さまざま):汚物処理、水の運搬、防寒、仕分けなど万能。
  • 小型ライト、ホイッスル:0次(常時携帯)用や、家の各部屋に置く補助用に。
  • ガムテープ:メモ代わり、補修、ケガの固定など。
  • レインコート:両手が空くポンチョタイプがおすすめ。防寒・防風にも。

100均で買う際の注意点

100均の「簡易トイレ」は、入っている回数が1回~数回分と少ないものがほとんどです。「0次(常時携帯)」や「1次(数回分)」と割り切って使い、在宅備蓄で必要な「100回分」といった大量の備えは、専門の50回・100回分セットを別途購入するほうが、結果的にコストパフォーマンスも性能(特に消臭力)も良くなるかなと思います。

また、ライトやラジオなどの「電子機器」は、専門品に比べると耐久性や性能が劣る場合があります。あくまで「補助」や「お試し」と割り切り、メインの備えは信頼できるものを選ぶのが安心ですね。

家庭の備え編:防災グッズ完全ガイドと一覧・選び方

家庭の防災会議で防災グッズを比較し備蓄計画を立てる日本人家族
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基本の備えがわかったところで、ここからは「ご家庭の状況別」の備えを深掘りします。市販の防災セットではカバーしきれない、個別のニーズに合わせた備えこそが、防災の「質」を高めます。

女性・一人暮らしの備えと必需品リスト

女性の一人暮らし用防災グッズを整理する日本人女性の防災対策
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女性の備えは、基本のグッズに加えて、「衛生」「防犯」「プライバシー」という3つの視点が不可欠です。

衛生面での備え

避難所では衛生用品が不足しがちです。特に生理用品は、支援物資として届いてもサイズが選べるとは限りません。

  • 生理用品:ナプキン、タンポン、おりものシート。普段使っているものを最低でも2~3周期分は備蓄しましょう。
  • 衛生用品:水がなくても使えるドライシャンプー、体拭きシート、歯磨きシート、デリケートゾーン用シート。これらは体調維持とストレス軽減に直結します。

防犯面での備え

残念ながら、災害時の混乱や避難所での生活では、性被害を含む犯罪のリスクが高まることが報告されています。自分の身を守る意識が重要です。

  • ホイッスル、防犯ブザー:危険を知らせるため、必ず携帯してください。ホイッスルは瓦礫の下に閉じ込められた時にも役立ちます。
  • 服装:避難時や就寝時は、肌の露出を避け、動きやすい服装を心がけることも防犯の一つです。

プライバシーの確保

避難所での集団生活は、プライバシーの確保が困難です。

  • 中身の見えないゴミ袋:これは本当に重要です。生理用品の廃棄や、下着の持ち運び、汚れた衣類の処理など、他人の目を気にせず処理するために必須です。
  • 大判ストール:防寒だけでなく、着替えの目隠しや、授乳ケープ、避難所の仕切り代わりにもなる万能アイテムです。
  • 耳栓、アイマスク:就寝時のプライバシー確保と安眠のために。

特に「一人暮らし」の方は、助けを呼べる家族が近くにいない分、カセットコンロや大容量のモバイルバッテリーなど、生活の自立性を高めるアイテムを重視すると安心ですね。また、日頃から近所の方と挨拶を交わすなど、いざという時に安否確認をし合える関係づくりも、立派な防災の一つかなと思います。

赤ちゃん・乳幼児がいる家庭の備え

赤ちゃん用ミルクや紙おむつなど育児家庭の防災グッズを準備する家族
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赤ちゃんの備えは、「代替が効かない」ものが多いのが特徴です。大人のように「これで我慢しよう」が通用しないため、専用の備えが必須です。

食料・水分

  • 粉ミルク・液体ミルク:お湯が不要で調乳も不要な「液体ミルク」が最強です。普段から飲ませて慣れさせておくことも大切。計量不要なキューブ型粉ミルクも便利ですね。
  • 水(軟水):ミルクの調乳用に、ミネラル含有量の少ない「軟水」の備蓄が必須です。大人が飲むミネラルウォーター(硬水)は使えません。
  • ベビーフード:開けてそのまま食べられるレトルトパウチ。アレルギーにも配慮し、普段から食べ慣れたものをローリングストックしましょう。
  • 哺乳瓶(プラスチック製):割れないもの。消毒が難しい状況を想定し、使い捨ての哺乳瓶や、哺乳瓶用の消毒シートもあると便利です。

衛生用品

  • 紙おむつ:サイズアウトも考慮し、今使っているサイズと一つ上のサイズを、最低でも1週間分は備蓄しましょう。
  • おしりふき:おむつ替え以外にも、体拭きや手拭きとして多用するため、多めに準備します。
  • 防臭ポリ袋:使用済みおむつの臭いを防ぐために、専用の防臭袋があると非常に助かります。

医療・その他

  • 母子手帳・保険証のコピー:これらはセットで必ず1次持ち出し袋に入れてください。
  • 常備薬:お子さん専用の薬があれば多めに。
  • 抱っこ紐:両手が空くため、避難時に必須です。瓦礫の中を歩く際も、ベビーカーより安全です。
  • バスタオル:おくるみ、掛け布団、おむつ替えマットの代わりになります。
  • 音の出ないおもちゃ:避難所生活でのストレスを和らげるため。他の避難者に配慮したものを。

高齢者がいる家庭の備え

高齢者の薬や口腔ケア用品、防災グッズを家族が確認しているシーン
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高齢者の備えは、「災害関連死」を防ぐことに直結します。「持病の管理」「誤嚥性肺炎の予防」「エコノミークラス症候群の予防」がキーワードです。

医療・介護用品

  • 持病の薬:絶対に切らせません。かかりつけ医と相談し、最低でも1週間分、できれば2週間分以上の予備を持てるようにしましょう。
  • お薬手帳:薬そのものと同じくらい重要です。これが無いと、避難先で薬の処方が受けられません。原本かコピー、またはスマホで全体を写真に撮っておくのでもOKです。必ず1次持ち出し袋に入れてください。
  • 入れ歯(洗浄シート):入れ歯が合わないと食事ができず、体力が一気に低下します。水がなくても使える洗浄シートが必須です。
  • 補聴器(予備電池):避難情報が聞こえないと命に関わります。予備の電池も忘れずに。
  • 大人用おむつ・尿取りパッド:普段使っているものを多めに備蓄してください。

食料

硬い非常食は食べられません。普段から食べている、食べ慣れたものを用意しましょう。

  • レトルトのおかゆ、やわらかく煮た食品
  • きざみ食、ミキサー食、とろみ剤:介護食が必要な方は、それ自体を備蓄(ローリングストック)する必要があります。

トイレ・衛生

  • 簡易トイレ(大量に):前述の通り、高齢者の方はトイレの頻度が多いため、1日10回分を目安に備蓄してください。トイレを我慢して水分を控えることが、エコノミークラス症候群(血栓)のリスクを急激に高めます。
  • 口腔ケア用品:歯ブラシ、歯磨きシート、入れ歯洗浄シート。口腔内が不潔になると、細菌が唾液や食べ物と一緒に肺に入り「誤嚥性肺炎」を引き起こすリスクが高まります。これは災害関連死の大きな原因の一つです。

よくある失敗と防災グッズの正しい置き場所

防災グッズを玄関・寝室・物置などに分散収納し点検する日本人家族
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防災グッズは「買って終わり」ではありません。いざという時に使えなければ意味がないですよね。過去の災害で報告された「よくある失敗」から学び、対策を講じることが最も重要です。

よくある失敗例原因の一例改善策
ランタンの電池が切れていた・液漏れ長期間しまいっぱなし半年に一度は点灯チェック。電池は抜いて保管。
簡易トイレの使い方がわからない開封しないまま保管購入後に一度、家族で試用する。
食品が期限切れローリングストック未導入ローリングストック法を導入し、日常的に循環させる。
リュックが重すぎる1次と在宅備蓄を混同「1次持ち出し」と「在宅備蓄」を明確に分ける。
保管場所を忘れた・取り出せない家族で共有していない・1箇所集中保管場所リストを貼りだし、「分散収納」する。
カセットコンロのボンベが古すぎた点検不足(ボンベにも使用期限あり)ボンベもローリングストック。サビがないか確認。

最後の「保管場所」も重要です。全ての備えを1箇所(例:玄関の物置)にまとめると、その場所が地震で倒壊したり、水害で浸水したりした場合、全ての備えを一度に失うリスクがあります。

基本戦略は「集中」ではなく「分散収納」です。

防災グッズの分散収納(例)

  • 玄関:1次持ち出し(非常用持ち出し袋)。家を出る際に必ず通る場所であり、即座に持ち出せます。
  • 寝室:1次持ち出しの一部(小型ライト、スリッパ、ホイッスル)。夜間の災害発生時に、まず身を守り、暗闇で行動を開始するための装備を枕元に置きます。
  • 物置・車・屋外倉庫:在宅避難(備蓄)。水、食料、簡易トイレ、カセットコンロなどのかさばる物は、家屋が倒壊しても取り出せる場所に分散して保管します。
  • 車:車は「移動できる備蓄倉庫」にもなります。水や携帯トイレ、寝袋などを積んでおくのも有効です。

どこに何を置いたか、家族全員で情報を共有しておくことが大切ですね。

よくある質問(防災士が回答)

Q1:防災グッズは何から揃えればいいですか?

A:まずは「一次持ち出し(逃げる用)」と「備蓄(家で耐える用)」の2つに分けると迷いません。一次持ち出しは最低限の命を守るセット、備蓄は3日〜1週間生き延びるためのセットです。

Q2:市販の防災セットだけで十分ですか?

A:市販セットは“ベースキット”として便利ですが、家族構成(子ども・高齢者・女性)ごとの追加が必要です。特に水・食料は市販セットだけでは不足します。

Q3:3日分の備蓄は具体的にどれくらい必要ですか?

A:水は「1人あたり1日3L」、食料は「1人1日3食」が基本です。
<例>3人家族なら水27L、食料27食を目安にしてください。

Q4:最低限そろえるべき“必需品”はありますか?

A:はい。モバイルバッテリー、簡易トイレ、ヘッドライト、ブランケット、救急セットは優先度が高いです。特に簡易トイレは災害時の最大のストレス源と言われるため、必ず準備しましょう。

Q5:防災グッズはどこに置くのがいいですか?

A:一次持ち出しは玄関付近、備蓄はキッチンやリビングなど“普段使う場所”が理想です。非常時は探している時間が命取りになるため、生活導線に沿った配置がベストです。

Q6:自宅が狭い場合、どう保管すればいいですか?

A:100円ショップの収納ケースや防災ボックスを活用すれば十分です。「1カ所にまとめる」よりも「必要なものを普段の動線上に置く」方が、災害時の取り出しやすさが向上します。

Q7:防災士として、まず最初にやるべきことは何ですか?

A:「家族で避難先と連絡方法を決める」ことです。持ち物より“行動”が命を救います。その上で、防災グッズを家族仕様にカスタマイズすると生存率が高まります。


総まとめ:防災グッズ完全ガイドと家庭の備え

防災リュックと備蓄を整え達成感を共有する日本人家族の防災準備シーン
【HIH】ヒカリネット・イメージ

ここまで、防災グッズ完全ガイドとして、必要なもの一覧から選び方、家庭での備えまで詳しくお話ししてきました。

たくさんのアイテムや知識が出てきましたが、一番お伝えしたいのは、防災グッズは「一度買っておしまい」ではなく、「管理を続ける」ことが本質だということです。

本当の備えとは、第5部で指摘した「失敗」(期限切れ、電池切れ、使い方が不明)を、ローリングストックや定期的な点検によって克服し、管理を「続ける」ことです。

ローリングストックを実践し、半年に一度はリュックの中身をチェックし(特に食品の賞味期限と電池)、簡易トイレの使い方を家族で試してみる。そうした「継続」と「実践」こそが、いざという時にあなたとご家族の命を守る、最も確実な防災戦略だと私は思います。

この記事を参考に、まずはご家庭の状況に合わせた「3つのフェーズ」の備えを構築し、家族全員で保管場所と使い方を共有し、年に一度(例えば「防災の日」や家族の誕生日など)は見直しと点検を実践してみてくださいね。

防災士の経験から生まれた、信頼できる備え。
経験が語るHIHの「本当に必要な防災セット」。

この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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