こどもの命を守る!福島在住防災士が語る「こども防災グッズ」の必須リストと備え

株式会社ヒカリネット 防災士 後藤秀和

私は福島県在住で東日本大震災を経験し、現在はプロの防災士として活動している者です。あの日、目の前で起こった出来事、そしてその後の長い避難生活を通じて、私は「備えこそが、命と日常を守る唯一の方法だ」と痛感しました。特に、小さなこどもの命を守るための備えは、大人用の防災グッズとは全く異なる視点が必要です。

こどもは、大人と比べて体力、判断力、体温調節能力が低く、精神的なストレスも大きくなります。また、成長に伴い必要なものが刻々と変わっていくため、防災グッズも「成長」と「個別性」を考慮して、常にアップデートしていく必要があります。

「こども 防災グッズ」をテーマに東日本大震災の教訓を活かし、「備えの5ステップ」として、具体的に何を備えるべきか、どう管理すべきかを徹底的に解説します。

目次

1. 備えの基本哲学:大人の備え+こども特有のニーズ

大人の防災グッズは「サバイバル」を目的としますが、こどもの防災グッズは「心身の健康維持と安心」に重きを置くべきです。

福島での経験から学んだ教訓

震災時、避難所生活が長期化するにつれ、こども特有の問題が顕在化しました。

  1. アレルギー・持病への対応の難しさ: 避難所では食料の確保が最優先。アレルギー対応食や薬は、手に入りにくくなります。
  2. 衛生環境の悪化による体調不良: 免疫力の低いこどもは、不衛生な環境ですぐに体調を崩します。
  3. 精神的なストレス: いつもと違う環境、慣れない食べ物、親と離れる不安などから、夜泣きや体調不良が増加しました。

これらを踏まえ、こどもの防災グッズは「3つの場所」に分散して備えるのが鉄則です。

  1. 一次持ち出し品(非常持ち出し袋): 避難する際に背負って逃げる、最低限の命と安全を守るためのグッズ。
  2. 二次持ち出し品(備蓄品): 避難所や自宅避難が長期化した際に、日常を取り戻すための備蓄品。
  3. 普段使いの持ち歩き品: 登下校中や外出先で被災した場合に、一時的に身を守るための最低限のグッズ。

2. 一次持ち出し品(非常持ち出し袋):命を守るために

こどもの非常持ち出し袋は「こども自身が背負える重さ(体重の1/10程度)」を上限とし、中身は大人用とは別に用意します。

カテゴリ必須アイテム備えのポイント
食料・水分1. 飲料水 (500ml  3本)飲み慣れたもの。パック飲料やスポーツドリンクも可。
2. 慣れた非常食(3日分)アレルギー対応のクッキー、ゼリー、レトルト食品(おかゆ、ベビーフード)。
3. スプーン/フォーク慣れたもの。
衛生用品4. マスク、ウェットティッシュ衛生管理の基本。使い慣れたこども用サイズを。
5. 携帯トイレ夜間の避難所などで役立ちます。
6. オムツ、おしりふき年齢に合わせて。
衣類・防寒7. 防災ずきん/ヘルメット重要アイテム。頭部保護と防寒を兼ねる。
8. 着替え季節に合わせたもの。圧縮袋に入れると省スペース。
9. タオルケット/アルミシート軽くてかさばらないもの。体温保持に必須。
健康・安心10. 常備薬・お薬手帳1週間分。持病がある場合は最優先。
11. 母子手帳・保険証コピー避難先での医療機関受診に必須。
12. お気に入りのおもちゃ抱き人形、ぬいぐるみ、絵本など。心の安定に最も役立ちます。
13. 連絡カード親の氏名・連絡先、血液型、アレルギー情報などを記載したもの。
その他14. 笛(ホイッスル)自分の居場所を知らせるため。首から下げられるように。

3. 二次持ち出し品(備蓄品):日常を取り戻す

自宅や車に備蓄するもので、ライフラインの復旧が遅れた際に、こどもの心身の健康を守るためのアイテムです。

栄養と衛生の長期確保

  • 長期保存可能なこども用食品:
    • アレルギー対応食: 尾西のアルファ米やアレルギー対応レトルト。
    • 缶詰: フルーツの缶詰(ビタミン補給)、魚の缶詰(タンパク質)。
    • おやつ: 栄養補助ゼリー、カロリーメイト、飴、チョコレートなど(ストレス軽減にも)。
    • ミルク: 粉ミルク、哺乳瓶。
  • 衛生用品の余裕:
    • オムツ・おしりふき(1週間分以上の余裕)。
    • 全身清拭シート(入浴できない時のために)。
    • 除菌スプレー

心と学びのサポート

避難所生活で最も重要なのは「日常に近い環境」を維持することです。

  • 学習・遊び道具:
    • 塗り絵、クレヨン、トランプ、折り紙、ブロックなど(電気を使わないもの)。
    • 読み慣れた絵本や児童書
  • プライバシー・防音:
    • アイマスク、耳栓(避難所での騒音対策)。
    • パーテーション代わりになる大きな布等(段ボールなどで簡易スペースを作る)。
  • 冷暖房対策:
    • 使い捨てカイロ、冷感タオル
    • 毛布、寝袋

4. 普段使いの持ち歩き品:外出先での一時避難

登下校時や家族での外出中に被災する可能性に備え、こどものリュックや親のバッグに常に入れておくものです。

  • 笛(ホイッスル)か防犯ブザー: 危険を知らせ、自分の位置を伝えるため。
  • 防水加工の連絡カード: 上記の「連絡カード」をランドセルや通学カバンの内側に入れる。
  • 小銭: 公衆電話や自動販売機で使用するため(10円玉や100円玉を数枚)。
  • ミニタオルとポケットティッシュ: 常に携帯。

5. 管理と見直し:備えは「生き物」である

防災グッズは、一度用意したら終わりではありません。こどもは驚くほどのスピードで成長し、必要なサイズや好みが変わります。私の経験上、この「管理と見直し」こそが、防災で最も難しく、最も重要なステップです。

定期的な見直しを習慣化する「チェックサイクル」

こどもの成長に合わせ、年2回(例えば、春の進級時と秋の衣替え時)に見直しを行うのが理想です。

  1. 賞味期限のチェック: 食料・飲料の賞味期限を確認し、期限が近いものは「ローリングストック法」で消費し、新しいものを補充します。
  2. サイズのチェック: 衣類、オムツ等のサイズが合っているか確認します。
  3. 薬のチェック: 常備薬の量と期限を確認します。
  4. 使用感のチェック: 懐中電灯の電池、ラジオの動作確認。

️ こどもと一緒に備える「防災教育」

グッズを揃える過程は、そのままこどもへの防災教育になります。

  • 自分の袋の確認: 「これはあなたの命を守る宝物だよ」と教え、何が入っているか一緒に確認します。
  • 笛の練習: 笛は正しく吹けば大人の叫び声より遠くまで聞こえます。「困った時は3回吹く」など、簡単なルールを教えます。
  • 連絡方法の確認: 災害時の家族の集合場所や、親と離れた時の行動を決めておくことで、こどもは安心感を得られます。

結びに:備えは、未来への「愛の証」

「こども防災グッズ」の準備は、単なるモノの準備ではなく「どんなことがあっても、私はあなたの命を守り、あなたを安心させる」という、親からこどもへの未来への「愛の証」です。

災害は、いつ、どこで起こるかわかりません。この準備リストは、あくまで一例です。お住まいの地域のハザードマップや、こどもさんの個性(特にアレルギーや持病)に合わせて、常にカスタマイズし続けてください。

今日から少しずつ、しかし着実に、こどもの未来を守るための備えを始めていきましょう。このガイドが、あなたの家族の安全と安心の一助となれば幸いです。

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