中小企業でもできる!会社で揃える防災グッズとは

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震災経験者としての危機感と中小企業の特性

  • 株式会社ヒカリネット 防災士 後藤秀和

東日本大震災を経験した者として、「まさか」は必ず起こるという危機感を強く持っています。発災直後、ライフラインの途絶は想定以上で、特に中小企業では、事業継続の備え(BCPの有無が明暗を分けました。 中小企業は、大企業のような潤沢な資金やリソースがないため、一度の被災で倒産に追い込まれるリスクが高いのが実情です。だからこそ、従業員7日分の水・食料・簡易トイレなどの備蓄は、コストではなく「事業を守る保険」として最優先で確保してください。備蓄は、社員の命を守り、早期の事業再開を可能にする企業のレジリエンスそのものです。

会社に備えておきたい防災グッズリスト

  • 5年保存水

1人あたり1日3リットル×7日分=21リットル

  • アルファ米・乾パン

1人あたり3食×7日分=21食

  • 簡易トイレ

1人あたり7回×7日分=49回

  • トイレットペーパー・ウエットティッシュ

1人あたり3ロール・1人あたり100枚程度

  • スマホ充電機能付きラジオライト・ランタン

5人あたり1台

  • 寝袋(シュラフ)

1人あたり1枚

会社の備蓄に潜む「盲点」

「水や食料は準備しているから大丈夫」と安心していませんか? 会社の備蓄には、命取りになりかねない「盲点」が潜んでいます。

最も見落とされがちなのが、「トイレ問題」です。災害で断水すれば、洋式トイレはすぐに使えなくなります。水や食料を3日分備えていても、トイレが使えなければ不衛生な環境で健康を害し、社員は職場に留まることすら困難になります。

また、「在庫」と「備蓄」の混同も危険です。「倉庫にあるカップ麺」はあくまで在庫であり、誰でも取り出せる「手の届く場所」に「明確なルール」とともに備蓄されなければ意味がありません。

備蓄品リストに、簡易トイレと生理用品といった衛生用品が組み込まれているか、そして、それらが緊急時にすぐ使える状態にあるか、今すぐ確認しましょう。盲点をなくすことが、社員の安全と事業継続の第一歩です。

備蓄の基本:「3日分」から「7日分以上」へ

かつて、災害備蓄は「最低3日分」が基本とされていました。しかし、東日本大震災や近年の大規模災害の教訓から、この考え方は大きく見直されています。

広域かつ甚大な被害が発生した場合、国や自治体からの支援物資の到着には3日以上、場合によっては1週間程度かかることが想定されています。特に、交通網が寸断される中小企業においては、従業員が自力で乗り切るための備えが不可欠です。

企業の備蓄は、水・食料・トイレといった生命維持に必要なものを、最低でも7日分以上」に増強してください。これは、事業を早期に再開し、地域社会の復興に貢献するための「時間稼ぎ」です。7日間の自給自足体制こそが、現代の防災対策の新しいスタンダードです。

会社備蓄の問題点(賞味期限切れ、持ち出しの困難さ、公平性の問題)

多くの会社備蓄には、見過ごせない3つの問題点があります。

第一に「賞味期限切れ」です。非常食は高価な“死蔵在庫”になりがちで、チェックや更新を怠ると、いざという時、食べられない備蓄が残ります。対策は、ローリングストックの導入と年2回の確実な点検です。

第二に「持ち出しの困難さ」。備蓄が倉庫の奥や高所に置かれていると、地震で通路が塞がれたり、物が散乱したりした際に取り出せません。「手の届く場所」への分散配置が重要です。

第三に「公平性の問題」。備蓄量が不透明だと、「自分に回ってくるか不安」という従業員の不公平感が生まれます。備蓄量と保管場所を全社員に公開し、安心と信頼を確保してください。備蓄は、ただモノを用意するだけでなく、管理体制の確立こそが鍵です。

「帰宅困難者」ではなく「事業継続者」としての視点

大震災後の企業防災において、多くの経営者が陥りがちなのが、従業員を単なる「帰宅困難者」として捉えてしまうことです。しかし、中小企業にとって、発災後の社員はすぐに「事業継続者」へと役割が変わります。

社員を単に帰宅させることだけを考え、3日分の水や食料だけを備蓄していると、交通機関の麻痺や二次災害で社員が社内に留まらざるを得なくなったとき、数日後には事業再開どころか、社員の生命維持が困難になります。

私たちは、社員を「被災者」としてではなく、「この会社を、事業を、そして地域を守るために現場にいる人間」として捉え直すべきです。そのためには、7日分以上の備蓄に加え、簡易トイレや救護用品、そして事業継続に必要な最低限のツールを揃えることが、企業の社会的責任であり、未来への投資となります。

「社内の備蓄」ではなく「社員に防災リュックを配る」のが最適

企業が災害に備える上で、大規模な「社内備蓄」の設置は、賞味期限管理公平性、そして地震時の「持ち出し困難」という根本的な課題を抱えます。そこで、中小企業にこそ推奨したいのが、社員一人ひとりに防災リュックを配備する手法です。

社内に集中備蓄するのではなく、最低限の必需品(水、食料、簡易トイレ、防寒具など)を入れたリュックを各自のデスクやロッカーに置いてもらう。これは、備蓄を分散させることで、地震による倉庫の倒壊や通路の閉塞といったリスクを回避します。

また、「自分の命は自分で守る」という意識を社員に持たせ、帰宅時や避難時に即座に持ち出せる機動性を高めます。管理の手間も減り、全社員が等しく備えを持てる公平性も担保できます。これは、社員の安全と事業継続への最も現実的な投資です。

「社員配布用防災リュック」に必須のアイテムリスト

生命維持に最低限必要なもの

  • 年保存水(500ml 3本)
  • 食料(カンパン・アルファ米)
  • 衛生用品(救急セット・簡易トイレ・マスク・歯ブラシ・ウエットティッシュ)
  • 照明(スマホ充電可能なラジオライト・ランタン)

福島での経験から強く推奨する追加アイテム

  • 透明ではない黒ゴミ袋

(汚物処理、目隠し、加工してポンチョ等多用途。透明ゴミ袋は特に使い道は無し。)

  • レインコート・レインポンチョ

(雨天避難時は傘で片手が塞がるのは想像以上に不利になる。)

  • 防災用アルミシート・アルミ寝袋

(アルミの保温力は絶大。寝袋はタバコの箱サイズまで小さくたたまれている。)

  • 防災頭巾・簡易ヘルメット

(大きな落下物には対応できないが、避難時の心理面で非常に楽になる。)

まとめ

大震災を経験した防災士として、中小企業にお伝えしたい最も現実的な対策は「全社員への防災リュック配備」です。

高額で管理が大変な集中備蓄に頼るのではなく、一人ひとりに最低限の水、食料、簡易トイレ、防寒具を入れた個人用防災リュックを備えてください。

これは、備蓄を全社で分散させ、地震で倉庫が使えなくなっても各自の備えを確保する、最も確実な手法です。「自分の命は自分で守る」という意識を高め、緊急時の公平性と機動性を担保します。

防災はコストではなく、事業を守る「保険」です。 まずは、この「個人配備」から始めることで、社員の命と事業継続の基盤を、今すぐ、そして確実に築いてください。

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