防災士が教える!車載用防災グッズの必要最小限リストと選び方

防災士が教える!車載用防災グッズの必要最小限リストと選び方
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
「防災グッズ 車載」と検索してこの記事にたどり着いたあなたは、通勤や買い物、あるいは家族との旅行など、車を使う機会が多く、「もし運転中に地震が起きたらどうしよう」「冬の雪道で立ち往生したら怖いな」という不安をお持ちではないでしょうか。
特に最近は、夏の車内温度が猛烈に上がることによる熱中症のリスクや、食品を入れっぱなしにすることへの不安、そして「必要最小限で何を備えればいいのか」「100均のグッズでも大丈夫なのか」といった疑問をよく耳にします。
実は、車という空間は、家とは違って「移動する密室」であり、備えるべきアイテムや注意点が大きく異なります。家の備蓄をそのまま積むだけでは、いざという時に役に立たないどころか、事故の原因になることさえあるのです。
この記事では、私たち防災士が考える、本当に車に積んでおくべき必須アイテムと、夏や冬の過酷な環境に対応するための具体的なノウハウをわかりやすく解説します。
- 万が一の時に命を守る「必要最小限の車載リスト」がわかります
- 夏の高温や冬の凍結に負けない、正しいグッズの選び方と保管方法が理解できます
- 100均で買える便利なアイテムと、専門店で買うべきアイテムの使い分けがわかります
- 女性や子供、ペット連れなど、家族構成に合わせた備えのポイントが掴めます

車載用防災グッズの基本と選び方

車載用の防災グッズを考えるとき、まず押さえておきたいのは、車は「移動手段」であると同時に、災害時には「一時的な避難シェルター」にもなり得るということです。しかし、トランクのスペースには限りがありますし、燃費への影響も気になりますよね。ここでは、プロの視点から厳選した「本当に必要なもの」に絞って解説します。
必要最小限の車載リストを作る

車に積んでおくべき防災グッズは、大きく分けて「緊急脱出用」と「車内待機用」の2つのフェーズで考える必要があります。
まず最優先すべきは、事故や水没などの緊急事態から物理的に脱出するためのアイテムです。これがないと、その後の避難生活以前に命を落とす危険があるからです。次に、大雪での立ち往生や、地震による道路寸断で、車内で数時間から数日過ごすための「車内待機用」グッズが必要になります。
| カテゴリー | アイテム名 | 備考・重要度 |
|---|---|---|
| 緊急脱出 | 緊急脱出用ハンマー | 【必須】運転席から手の届く場所に固定 |
| 衛生・排泄 | 携帯トイレ | 【必須】最低5回分×人数分。防臭袋もセットで |
| 水・食料 | 非常用保存水・食料 | 耐熱ボトル推奨。羊羹などの高カロリー食 |
| 防寒・睡眠 | アルミブランケット 使い捨てカイロ | 低体温症防止。毛布や寝袋があれば尚良し |
| 電源・情報 | モバイルバッテリー スマホ充電器 | 乾電池式を推奨(熱対策) |
これらをベースに、ご自身の使用環境に合わせてカスタマイズしていくのがおすすめです。まずはこのリストにあるものだけでも揃えておくと、安心感が全く違います。
水と食料の備蓄量と保管のコツ

「水はどれくらい積めばいいの?」という質問をよくいただきます。人間が生きていくためには1日3リットルの水が必要と言われますが、家族4人分で12リットルもの水を常に車に積んでおくのは、スペース的にも重量的にも現実的ではありません。
車載備蓄の現実的な解としては、「救助が来るまでの最初の数時間を凌ぐためのバッファ」と割り切ることが大切です。
具体的には、500mlのペットボトルを人数分×2〜3本程度常備しておき、もしもの時は給水所などで水を確保するための「給水袋(折りたたみ式)」を積んでおくのが賢い方法です。また、保存水は通常のペットボトルよりも容器が厚く、耐熱性に優れた「7年保存水」などを選ぶと、温度変化の激しい車内でも安心して保管できます。
車載には「羊羹(ようかん)」が最強な理由
食料に関しては、チョコレートなど溶けやすいものは夏場の車内でドロドロになってしまうため避けましょう。私が特におすすめしているのが「羊羹(ようかん)」です。
- 溶けない:砂糖の結晶構造により、夏の高温でも溶け出しません。
- 高カロリー:小さな体積で効率よくエネルギーを摂取できます。
- 精神安定:甘いものは、極限状態でのストレスを和らげてくれます。
- 水なしで食べられる:口の中の水分を奪いにくく、飲み込みやすいのもメリットです。
Check!
車内ではお湯を沸かせないことも多いため、調理不要で食べられる食品選びが重要です。火を使わない非常食のアイデアについては、以下の記事も参考にしてみてください。
火を使わない非常食の簡単レシピ10選!いざという時に備えよう
携帯トイレは必須の防災アイテム

車内での滞在で最も切実な問題、それが「トイレ」です。高速道路での立ち往生や、周囲に人がいる避難所の駐車場では、野外で済ませるわけにもいきません。
成人の1日の平均排泄回数は約5回と言われています。もし家族4人で車内で一晩過ごすことになれば、単純計算で20回分のトイレ処理が必要になります。これを我慢して水分を控えてしまうと、狭い座席で長時間同じ姿勢を続けることと相まって、「エコノミークラス症候群(血栓症)」のリスクが急激に高まり、命に関わります。
Check!
トイレの備えについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
車載用には、凝固剤と汚物袋がセットになった薄型の携帯トイレを選びましょう。そして、忘れてはいけないのが「防臭袋(BOSなど)」です。密閉された車内で排泄物の臭いが充満するのは耐え難いストレスになります。臭いを漏らさない高機能な袋を必ずセットで用意してください。
100均で揃う車載グッズの活用法

最近の100円ショップの防災グッズコーナーは非常に充実しており、上手に活用することでコストを抑えながら充実した装備を整えることができます。
しかし、全ての防災グッズを100均で済ませるのは危険です。「命に関わる道具」は専門店で、そうでない「消耗品」は100均で、という使い分けが賢い防災術です。
【100均で揃えてもOKなもの】
- ウェットティッシュ(除菌・からだ拭き)
- ポリ袋・ゴミ袋(多用途に使えて便利)
- 給水袋(ウォーターバッグ)
- アルミブランケット(薄手ですが予備として)
- 軍手・ゴム手袋
- 蛍光ペン・油性マジック(安否確認の張り紙などに)
【専門店で買うべきもの】
- 緊急脱出用ハンマー:100均のものは強度が不足している可能性があります。必ずJIS規格品などを。
- 携帯トイレ:凝固剤の固まる早さや消臭力に大きな差が出ます。
- 寝袋:100均のアルミシートだけでは冬の寒さは凌げません。
- 長期保存水:ボトル自体の強度が重要です。
運転席周りに置く防災ボトル

水没事故やトンネル事故など、トランクまで荷物を取りに行けない状況も想定されます。そんな時に役立つのが、警視庁なども推奨している「防災ボトル」です。
これは、500ml程度のウォーターボトル(プラスチック製のハードケース)の中に、緊急時に必要な小物を詰め込み、ドアポケットやドリンクホルダーに入れておくというアイデアです。
中身の例としては、以下のようなものが入ります。
- ホイッスル:閉じ込められた際に外部へ存在を知らせるため。
- ミニライト:夜間のトラブルや足元の確認に。
- 圧縮タオル:水で戻して使いますが、止血などにも使えます。
- 常備薬・絆創膏:普段飲んでいる薬を1日分。
- 羊羹や飴:低血糖を防ぐための糖分補給。
- 現金:公衆電話用の10円・100円硬貨と、千円札数枚。
- 緊急連絡先メモ:スマホの充電が切れた時のために、家族の番号を書いておきます。
これなら、運転席から一歩も動けなくても、最低限の「光・音・情報・エネルギー」を確保することができます。
車載防災グッズの温度対策と注意点

車載防災の最大の敵、それは「過酷な温度変化」です。真夏の車内は50℃を超え、ダッシュボード付近は70℃以上に達することもあります。逆に冬は氷点下になり、水も凍ります。この環境特性を無視して家と同じ感覚で備蓄すると、いざという時に使えないばかりか、事故の原因になることもあります。
夏の車載で入れっぱなしは危険?

夏場の車内放置で特に危険なのが、モバイルバッテリーなどの「電池類」です。一般的なリチウムイオン電池は熱に弱く、高温環境下ではセパレーターが破損し、発火や爆発のリスクがあります。
JAF(日本自動車連盟)が行ったユーザーテストによれば、真夏の炎天下(気温35℃)に駐車した車内温度は、わずか数時間で50℃を超え、ダッシュボード上は79℃まで上昇することが確認されています。この温度は、一般的な電子機器やリチウムイオン電池の許容範囲を大きく超えています。
電池の選び方と対策
モバイルバッテリーを車載する場合は、以下の対策を徹底してください。
- 原則持ち歩く:車内に放置せず、降車時はカバンに入れて持ち出すのが最も安全です。
- 乾電池式を選ぶ:乾電池はリチウムイオンに比べて熱による劣化リスクが低く、コンビニ等で電池を調達しやすいため、車載用の予備電源として優秀です。
- 耐熱モデルを選ぶ:ポータブル電源を積む場合は、熱安定性の高い「リン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO4)」を採用したモデルを選びましょう。それでも直射日光は厳禁です。サンシェードや日陰駐車を心がけてください。
冬の立ち往生に備える防寒対策

冬の雪道での立ち往生(スタック)は、命の危険に直結します。マフラーが雪で埋まると排気ガスが車内に逆流し、一酸化炭素中毒になる恐れがあるため、原則としてエンジンを切って救助を待つ必要があります。
Check!
雪道での立ち往生対策については、以下の記事で具体的な生存戦略を解説しています。雪国にお住まいの方やスキーに行かれる方は必読です。
エンジン(暖房)なしで氷点下の夜を越すために必要なのは、体の熱を逃がさない「空気の層」を作るレイヤリング(重ね着)の考え方です。
- 熱源:背中や腰に「使い捨てカイロ」を貼り、血液を温めます。
- 反射層:「アルミブランケット」で体から出る輻射熱を反射させます。
- 保温層:その上から「毛布」や「寝袋」を被り、温まった空気を逃がさないようにします。
車中泊避難に役立つ寝袋の選び方

もし車中泊用に寝袋を用意するなら、「マミー型(ミイラ型)」がおすすめです。封筒型は広くて寝心地が良いですが、肩口から冷気が入りやすいというデメリットがあります。一方、マミー型は体に密着しやすく、首元のドローコードを絞ることで冷気の侵入を遮断できるため、保温性が高く生存に適しています。
また、意外と見落としがちなのが「床からの冷気」です。どれだけ良い寝袋を使っていても、背中側(シート側)がつぶれてしまうと断熱効果が失われます。厚手の銀マットや車中泊用マットを敷いて、下からの冷気をシャットアウトすることが、朝まで熟睡するための鍵となります。
女性や子供に必要な車載備蓄

汎用的な防災セットには入っていないけれど、特定の属性の人には絶対に欠かせないものがあります。
女性の場合
生理用品は多めに備蓄しましょう。ストレスで周期が乱れることもありますし、怪我をした際の止血帯やガーゼ代わりにもなります。また、車中泊での着替えやトイレの際に、外からの視線を遮るための「目隠しポンチョ(透けない黒やグレー)」は必須アイテムです。下着泥棒などの被害を防ぐため、カップ付きインナーや使い捨て下着を用意するのも良いでしょう。
乳幼児連れの場合
お湯がなくてもそのまま飲める「液体ミルク」は、災害時の強力な武器になります。ただし、推奨保管温度(20℃〜30℃程度)があるため、夏場の車内放置は避け、普段のお出かけバッグに入れて持ち歩くのが基本です。飲み残しは雑菌が繁殖しやすいため、再利用はせず使い切りましょう。また、いつものお菓子や音の出ないおもちゃなど、子供の精神安定剤となるグッズも忘れずに。
緊急脱出用ハンマーの重要性

水没や衝突事故でドアが開かなくなった時、窓ガラスを割って脱出するための「緊急脱出用ハンマー」。これはトランクに入れていては全く意味がありません。必ず運転席に座ったまま手が届く場所(ドアポケットやコンソールボックスの側面など)に固定してください。
選ぶ際は、100均のものではなく、「JIS D5716」などの規格に適合したものや、GSマークがついた信頼できる製品を選びましょう。先端に超硬チップが埋め込まれており、女性や高齢者の力でも確実にガラスを割ることができます。
合わせガラスに注意!
最近の車種は、フロントガラスだけでなくサイドガラスにも割れにくい「合わせガラス」を採用している場合があります。合わせガラスは通常のハンマーでは割ることが困難です。ご自身の車のガラス仕様を確認し、対応した特殊ハンマーを選定する必要があります。
車載防災グッズの定期点検と更新

最後に、車載防災で一番大切なことをお伝えします。それは「積みっぱなしにしない」ということです。
車という過酷な環境では、食品の賞味期限だけでなく、ウェットティッシュが乾燥してカピカピになったり、電池が液漏れしたり、カイロの期限が切れていたりと、いざという時に使えない状態になっていることが多々あります。
おすすめは、年2回、夏タイヤと冬タイヤの交換時期(あるいは衣替えの時期)に合わせて、中身を全点検することです。
「防災専用」としてしまい込むのではなく、ドライブやキャンプで保存水やお菓子を食べ、使った分を買い足して補充する「ローリングストック」を車の中でも実践してみてください。そうすることで、常に新しいものが車にある状態をキープでき、使い慣れた道具で安心してもしもの時を迎えることができます。
あなたと大切な家族を守るために、まずは「防災ボトル」ひとつからでも、車載への備えを始めてみませんか?

