地震が起きた時に取るべき行動は?場所別マニュアルと時間軸の鉄則

地震について話し合う家族

地震が起きた時に取るべき行動は?場所別マニュアルと時間軸の鉄則

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。

突然の揺れ、怖いですよね。いざグラッときた瞬間、頭では分かっていても体が動かない、声が出ないという経験は、実は私にもあります。人間は想定外の事態に直面すると、どうしても一瞬フリーズしてしまうものなんです。

しかし、「地震が起きた時に取るべき行動」を正しく、具体的に知っているかどうか。その知識の有無が、極限状態での生存率を大きく左右することも事実です。今回は、家の中や外、運転中の車やエレベーターなど、今あなたがどこにいるかという場所別のマニュアルと、揺れが収まってからどう動くべきかという時間経過に沿った鉄則を、専門用語を使わずに分かりやすく解説します。

  • 地震発生の瞬間から揺れが収まるまでの「シェイクアウト」という基本動作
  • 家の中や屋外、運転中などシチュエーション別の命を守る具体的な行動
  • 揺れが収まった直後の火の始末や避難判断など時間軸で見る対応の流れ
  • 日頃からの備えがいかに地震発生時の生存率を高めるかという重要な事実

地震発生時の正しい行動とは?そなぷーが教える安全行動

地震が起きたときにあわてず机の下で身を守るそなぷーの防災4コマ漫画
目次

場所別で見る地震が起きた時に取るべき行動の鉄則

地震発生時に家の中や屋外、車内など場所ごとに身を守る行動を取る人々の様子
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

地震はいつ、どこで起こるか予測できません。自宅でくつろいでいる時かもしれませんし、満員電車の中かもしれません。まずは、今いる場所に応じた「物理的に命を守るための最適解」を解説します。

地震対策マニュアルの基本シェイクアウト

地震の揺れから身を守るため机の下で頭を守り低い姿勢を取る家族の様子
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

世界中で推奨されている、地震発生時の最も基本的かつ重要な安全確保行動が「シェイクアウト(ShakeOut)」です。これは、決して難しいことではありません。以下の3つのステップを、反射的に行えるようになることが目標です。

命を守る3つの安全行動(1-2-3)

  1. DROP(姿勢を低くする):
    強い揺れで転倒しないよう、すぐに床に膝をつきます。
  2. COVER(頭を守る):
    机やテーブルの下に入り、頭と首を落下物から守ります。机がない場合は、腕やバッグで頭を保護します。
  3. HOLD ON(動かない):
    揺れが収まるまで、テーブルの脚をしっかり掴んでじっとしています。

震度6弱以上の大きな揺れの中では、人間は自分の意志で立っていられませんし、這って移動することすら困難です。「火を消さなきゃ」とか「出口を開けなきゃ」と考えて動き回ろうとすると、家具や家電が飛んでくる中、無防備な状態で放り出されることになり、怪我のリスクが跳ね上がります。

まずは床に膝をつき、机の下に入って頭を守り、揺れが収まるまでテーブルの脚をしっかり掴んでじっとしていること。これが最優先です。

「命の三角形」は信じていいの?
以前、家具の横にうずくまる「命の三角形」という説がインターネット上で広まりましたが、現在の日本の耐震基準の建物においては推奨されていません。家具自体が倒れてきたり、中身が飛び出してきたりする危険性が高いため、基本は「机の下」などの落下物から物理的に身を守れる場所が安全です。

家の中で家具の転倒を防ぐ安全地帯

家具から離れた安全な場所で頭を守り地震の揺れに備える室内の様子
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

家の中にいる時、一番の脅威は間違いなく「家具」です。リビングなら背の高い本棚やテレビ、キッチンなら冷蔵庫や食器棚、寝室ならタンス。これらが凶器となって襲ってきます。

リビング・ダイニング

地震が起きた時に取るべき行動として、まずは「家具が倒れてこない、物が落ちてこないスペース」へ移動してください。もし机が近くになければ、部屋の中央でクッションや雑誌などで頭を保護し、ダンゴムシのように丸まりましょう。窓ガラスが割れて飛散する恐れがあるため、窓際からは離れてください。

キッチン

キッチンは刃物や熱湯、重い家電が集まる危険地帯です。無理にコンロの火を消しに行こうとせず、まずは冷蔵庫や食器棚から離れて身の安全を確保してください。床には割れた食器が散乱している可能性が高いため、揺れが収まっても裸足で歩き回らないようにしましょう。

トイレ・浴室

トイレや浴室は空間が狭いため、壁や柱が多く比較的潰れにくい場所と言われていますが、閉じ込められるリスクがあります。揺れを感じたら、可能であればドアを開けて避難路を確保してください。浴室では、鏡やタイルの破損、浴槽に転落して溺れる危険があるため、洗面器などで頭を守りつつ、低い姿勢を保ちましょう。

やってはいけないNG行動
慌てて外に飛び出すのは非常に危険です。屋根瓦やガラス、エアコンの室外機、看板などが降ってくる可能性があります。まずは屋内の安全な場所で揺れをやり過ごすのが鉄則です。

屋外のブロック塀や落下物への対策

地震発生時にブロック塀や建物から離れて身を守る屋外避難行動の様子
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外にいる時は、頭上と足元の両方に注意が必要です。特に危険なのが、古いブロック塀や自動販売機です。過去の地震でも、倒壊したブロック塀の下敷きになって亡くなられた方が多くいます。

街中・オフィス街

ビル街では、窓ガラスや外壁タイル、看板が「ガラスの雨」となって降り注いできます。鞄や上着で頭をしっかりと保護し、建物のそばから離れてください。もし近くに耐震性の高そうな新しいビルがあれば、そのエントランスホール(ロビー)に逃げ込むのも一つの有効な手段です。

住宅街

揺れを感じたら、ブロック塀や石積み、自動販売機からはすぐに離れてください。これらは震度5強程度でも倒壊する恐れがあります。電柱や垂れ下がった電線にも近づかないようにし、公園や広場など、落下物の危険が少ない場所へ移動しましょう。

運転中の車を安全に停止させる手順

地震を感じた運転中に落ち着いて車を安全な場所に停止させるドライバーの様子
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運転中に地震に遭遇すると、タイヤの接地感がなくなり、まるでパンクしたかのようにハンドルが取られます。ここで一番怖いのは、ドライバーがパニックになって急ブレーキを踏んでしまうことによる、後続車との玉突き事故です。

ドライバーが取るべき行動ステップ

  1. 急ブレーキは踏まない:
    まずはハザードランプを点灯させ、周囲の車に異常を知らせます。
  2. ゆっくり減速:
    あわてず、徐々にスピードを落とし、道路の左側に寄せます。
  3. 安全な場所に停止:
    交差点やガソリンスタンドの前を避け、建物や崖から離れた場所に止めます。
  4. エンジンを切る:
    揺れが収まるまで車内で待機し、カーラジオやスマホで地震情報や交通情報を集めます。

もし津波の危険があるなどで、車を置いて避難する必要がある場合は、緊急車両や救援部隊の通行の妨げにならないよう、キーは付けたまま(またはダッシュボードなど分かりやすい場所において)ドアロックをせずに避難してください。連絡先を書いたメモを残しておくのもマナーです。

エレベーターや電車で被災した時の対応

地震発生時に電車内で手すりを持ち低い姿勢で安全を確保する乗客の様子
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エレベーターに乗っている時に揺れを感じたら、「全ての階のボタンを押す」のが正解です。そして、最初に止まった階で迷わず降りてください。

エレベーターに閉じ込められたら

最近のエレベーターは地震感知器で最寄り階に自動停止するものが多いですが、万が一停電などで閉じ込められた場合は、無理に天井から脱出しようとしてはいけません(映画のような脱出は非常に危険です)。インターホンで管理室や外部と連絡を取り、救助を待ちましょう。エレベーター内には通気口があり窒息することはないので、体力を温存して落ち着くことが大切です。

電車・地下鉄

電車の場合は、緊急地震速報と連動して急ブレーキがかかる可能性があります。つり革や手すりを両手でしっかり握り、足を広げて踏ん張り、低い姿勢をとってください。
最も危険なのは、乗客がパニックになって勝手に非常コックを開け、線路に降りてしまうことです。対向列車との接触や、地下鉄では第三軌条(高圧電流)による感電死のリスクがあります。乗務員の指示があるまで、車内で待機するのが一番安全です。

時間軸で考える地震が起きた時に取るべき行動の流れ

地震直後から落ち着いて行動を切り替えていく家族の様子を時間の流れで表した場面
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揺れが収まったからといって、安心はできません。むしろ、そこからが本当の戦いです。ここからは、発生直後から避難生活に至るまでの時間の流れに沿った行動指針を見ていきましょう。

揺れ直後の火の始末と初期消火

地震の揺れが収まった後に安全を確認し火元を点検するキッチンの様子
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昔は「グラッときたら火の始末」と教わった方も多いと思いますが、今の常識は違います。激しく揺れている最中に火元に近づくと、鍋の熱湯を浴びたり転倒したりして、重篤な火傷を負うリスクがあるからです。

火の始末は「揺れが収まってから」で大丈夫です。現在の都市ガスやプロパンガスのメーター、石油ストーブには、震度5程度で自動的にガスを遮断したり消火したりする安全装置が標準装備されています。

揺れが収まったら、落ち着いて火元を確認し、もし火が出ていて天井に届く前であれば、消火器などで初期消火を行います。そして、避難する前には必ずブレーカーを落としてください。これは、電気が復旧した際に、倒れた家具の下敷きになった電気コードや、スイッチが入ったままの家電が発熱して出火する「通電火災」を防ぐための最重要アクションです。

(出典:東京消防庁『地震に対する10の備え』)

津波警報発令時の避難場所とルート

強い揺れの後に津波から逃れるため高台へ向かって避難する人々の様子
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沿岸部にお住まいの方や海沿いにレジャーに来ている方は、強い揺れ、あるいは弱くても長い揺れを感じたら、津波警報を待たずに直ちに避難を開始してください。

「津波てんでんこ」という言葉をご存じでしょうか。「津波が来たら、家族のことも構わず、各自がてんでばらばらに一刻も早く高台へ逃げろ」という教訓です。薄情に聞こえるかもしれませんが、全員が助かるためには、互いを探しに戻らず、それぞれが自分の命を守ることが結果として最善なのです。

避難場所は「遠く」よりも「高く」を目指してください。頑丈な鉄筋コンクリートのビルや、指定された津波避難タワーへ全力で走ります。車での避難は、信号停止や渋滞に巻き込まれて波に飲まれる危険性が非常に高いため、原則は徒歩での避難を推奨します。

震度階級と被害の目安については、こちらの記事で詳しく解説していますので、どの程度の揺れでどんな被害が出るのか、ぜひ確認しておいてください。

災害用伝言板を使った安否確認の方法

災害時にスマートフォンを使って家族の安否を確認しようとする手元の様子
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大きな地震の直後は、安否を気遣う通話が殺到し、電話回線がパンクしてまず繋がりません。何度も電話をかけると、貴重なスマートフォンのバッテリーを消耗するだけです。そんな時に役立つのが「災害用伝言ダイヤル(171)」や「web171」です。

サービス名特徴・使い方
災害用伝言ダイヤル(171)「171」に電話をかけ、ガイダンスに従って録音・再生します。被災地の方の電話番号がキーになります。
録音:「1」→電話番号→録音
再生:「2」→電話番号→再生
web171インターネット上で安否情報をテキスト登録できます。電話番号で検索して閲覧可能です。テキストなので詳細な情報を残せます。
携帯各社の伝言板スマホのアプリや災害用メニューから「無事です」「避難所にいます」などのステータスをワンタップで登録できます。

LINEやSNSもリアルタイムの連絡には有効ですが、基地局の被害状況やサーバーダウンによっては使えないこともあります。音声通話以外の複数の連絡手段を、家族で共有しておくことが大切ですね。

避難所生活におけるトイレと衛生管理

避難所で手指消毒や履き替えを行い衛生管理に気を配る人々の様子
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避難所や車中泊で生活することになった場合、気をつけたいのが「エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)」と「感染症」です。

エコノミークラス症候群を防ぐ

狭い場所で長時間動かずにいると、足の静脈に血の塊(血栓)ができ、それが肺に飛んで血管を詰まらせる恐れがあります。これを防ぐために、トイレを我慢せずにこまめに水分を摂り、定期的に足首を回したり、ふくらはぎをマッサージしたりする運動を心がけてください。

感染症対策

断水時は手洗いが十分にできません。ノロウイルスやインフルエンザなどの蔓延を防ぐため、アルコール消毒液やウェットティッシュを常備し、食事前やトイレ後の手指衛生を徹底しましょう。特に避難所のトイレではスリッパを履き替えるなど、衛生ルールを守ることは、自分だけでなくコミュニティ全体の命を守ることに繋がります。

まとめ:日頃から地震が起きた時に取るべき行動

日頃から防災の備えを確認し家族で話し合う安心した家庭の様子
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

ここまで「地震が起きた時に取るべき行動」をお伝えしてきましたが、これらをパニック状態の中で完璧に実行するためには、平時の準備が9割と言っても過言ではありません。

例えば、寝室の家具をL字金具や突っ張り棒で固定しておけば、寝ている時に地震が来てもタンスに押し潰される心配は減ります。玄関に非常持ち出し袋を置いておけば、着の身着のままでもすぐに避難できます。震度6弱の実体験と家具固定の重要性については、私の体験談も踏まえて詳しく書いていますので、ぜひ参考にしてください。

知識として「知っている」だけでなく、日頃から家族で避難場所を話し合ったり、実際に家具を固定したりして「備えている」状態にしておくこと。それこそが、あなたと大切な人の命を守る最強の行動指針になります。

最後に、もしもの時の備えに不安がある方は、非常用持ち出し袋の必要性や中身についての記事もあわせてご覧ください。いつ来てもおかしくない地震、今日からできることを一つずつ始めていきましょう。

この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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