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防災グッズでいらなかったものを防災士が解説|後悔しない備えの選び方

家族で防災グッズを見直し本当に必要なものを選ぶ明るい場面

防災グッズでいらなかったものを防災士が解説|後悔しない備えの選び方

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。

防災グッズを一通り揃えたのに、いざ避難してみたら「これ、全然使わなかった……」と後悔した経験はありませんか?実は私自身も、2011年3月11日の東日本大震災を福島で経験したあと、防災の知識を深めていく中で「あのとき揃えていたものの中には、いらなかったものもあったな」と気づいた瞬間が何度もありました。

あの日を経験したからこそ、「本当に使えるものだけ選んでほしい」という思いが人一倍強いんです。今回はそんな立場から、防災グッズでいらなかったものを正直にお伝えします。備えの見直しに、ぜひ役立ててもらえると嬉しいです。

目次

防災グッズでいらなかったものの共通点

防災グッズでいらなかったものが並ぶ平置き画像

重くてかさばる防災グッズが命取りになる

重すぎる防災リュックを背負って避難に苦労する様子

防災グッズで失敗しやすい最大のパターンは、「重すぎて持ち出せない」というものです。備えとして正しくても、いざというときに持ち出せなければ意味がありません。

政府広報オンラインでは、非常用持ち出し袋の目安として成年男性で約15kg、成年女性で約10kgを目安としています。ところが実際の避難現場では、瓦礫が散乱した道を歩いたり、子どもを抱えながら移動したりという状況になりがちです。リュックが重すぎると転倒リスクが上がり、歩行速度が落ちて避難が遅れてしまいます。

防災リュックの適正重量は体重の15%以内が目安です。体重50kgの方なら7〜8kg程度。「これを背負って2km歩けるか?」を基準にグッズを選びましょう。

重さという観点でいらなかったものの代表格が毛布です。毛布は確かに暖かいのですが、防災リュックに入れると体積も重さも大きく膨らみます。同じ防寒効果を得るなら、薄く折りたためるアルミブランケット(エマージェンシーシート)の方がはるかに合理的です。体温の約80%を反射してくれる素材なので、防寒性能は毛布に引けをとりません。かさばる毛布はリュックから出して、アルミブランケットに置き換えることを強くおすすめします。

同様に大きいテントも要注意です。「避難所が満員だったときのために」と考える気持ちはわかりますが、実際の避難所では基本的にテントの持ち込みは難しく、一人での設営も困難です。重くてかさばるテントをリュックに詰めると、本当に必要なものが入らなくなります。

使い慣れない道具は災害時に役立たない

使い慣れていない多機能ツールとコンパスの接写

防災グッズでいらなかったものの第2のパターンは「使い慣れていないから、いざというときに使えない」というものです。

その典型が多機能ツール(マルチツール)です。ナイフ・缶切り・ドライバーなどがひとつに収まったコンパクトなツールは、一見すると非常に便利に見えます。しかし、これらの道具は日常的に使い慣れていないと、暗い中・焦った状況では正直どのツールがどこにあるのかすらわかりません。しかも意外と重く、携帯性も高くないんです。

「いざという時に使えないグッズ」は、スペースと重さを奪うだけの存在になります。普段から使い慣れているシンプルな道具の方が、災害時には何倍も頼りになります。

同じ理由で大型コンパス(方位磁石)も出番がほとんどありません。コンパスは方角を示すだけで、避難経路を案内してくれるわけではありません。自宅周辺の道は大抵覚えているものですし、現代ではスマートフォンのGPSやハザードマップの方がはるかに実用的です。紙のハザードマップを印刷しておく方が何百倍も役に立つと思います。

大型ヘルメットも同様です。頭を守る重要性は誰もが理解しているのですが、大型ヘルメットは収納場所を大きく取るうえ、普段着用する習慣がないため咄嗟に手に取れないケースが多いです。代わりにおすすめしたいのが折りたたみ式ヘルメットです。私たちHIHでも取り扱っているオサメット(折りたたみ防災ヘルメット)はA4サイズ・厚さ4.5cmまでコンパクトに折りたためるので、本棚や引き出しなど目につく場所に収納できます。「どこにしまったかわからない」という最悪の事態を防げるのが最大のメリットかなと思います。

賞味期限切れになりやすい食料の落とし穴

賞味期限切れのカップ麺と長期保存食の比較

防災食でいらなかったものとして必ず挙がるのがカップ麺です。保存食として定番のイメージがありますが、実はいくつかの致命的な弱点があります。

まず、カップ麺はお湯がないと食べられません。大規模災害では断水と停電が同時に起きるケースが多く、お湯を沸かせる環境が整っていないことが多いんです。さらに賞味期限が製造日から約6ヶ月と短めで、非常食として長期備蓄するには頻繁な入れ替えが必要になります。

【防災理科】カップ麺の賞味期限は2014年以降、日本即席食品工業協会のガイドライン改訂により製造日から6ヶ月が主流となりました。一方、アルファ米は製造日から5年6ヶ月(尾西食品の場合)、缶詰の非常食は一般的に3年程度、長期保存タイプは5年以上のものもあり、防災備蓄との相性が格段に違います。食品の「賞味期限」は品質が保証される期間であり、これを超えると風味や安全性が保証されなくなります。非常食の選択では保存期間の長さが重要な判断基準のひとつです。

また、携帯浄水器も「あれば使えるかも」程度のアイテムです。確かに汚染された水を浄化できるのですが、ペットボトルの保存水をしっかり備蓄しておけば、浄水器が必要になる状況はほぼ発生しません。浄水器は高価なうえかさばるので、その分のスペースと費用を保存水の備蓄に回した方が確実です。

いらなかったものランキングに学ぶ教訓

防災グッズのいらなかったものと代替品の比較レイアウト

ここまで挙げてきたいらなかったものをまとめると、以下のようになります。

アイテムいらなかった主な理由代替品
ろうそく余震時の火災リスク。東日本大震災でも出火事例多数LEDランタン・ヘッドライト
カップ麺断水時にお湯が作れない。賞味期限が短いアルファ米・缶詰・栄養補助食品
大きいテント避難所に持ち込めない。設営が困難アルミシート・簡易寝袋
携帯浄水器保存水があれば不要なケースが大半長期保存水の備蓄
大型コンパススマホGPS・ハザードマップで代替可能ハザードマップ印刷
毛布重くてかさばる。リュックの容量を圧迫アルミブランケット
多機能ツール使い慣れないと緊急時に使えない用途別の単品アイテム
大型ヘルメット収納場所をとる。咄嗟に使えない折りたたみ式ヘルメット・防災頭巾

このリストを見ると、ひとつの共通点が見えてきますよね。「いざというときに使えない」「重くて持ち出せない」「代替品がある」の3つが揃ったものは、いらなかったものになりやすいんです。

特にろうそくについては、あの日を経験した立場からはっきりお伝えしたいと思います。東日本大震災の停電時、計画停電中のろうそく使用が原因とみられる火災が各地で発生しました。大きな地震のあとは余震が続き、ろうそくが倒れやすい状態が何日も続きます。しかもガス漏れが起きている可能性がある環境で裸火を使うのは、二次災害の引き金になりかねません。停電対策は迷わずLEDランタンやヘッドライトを選んでください。

100均防災グッズで本当に使えないものとは

100均の防災グッズ売り場でアイテムを選ぶ場面

「100均でコスパよく防災グッズを揃えたい」という方も多いかなと思います。100均活用は基本的には良いことなのですが、品質に差があるアイテムは100均で揃えない方が無難というものも正直あります。

たとえばアルミブランケットは100均でも売っていますが、厚みや耐久性に差があります。使い捨て前提で1枚予備として持つのは良いのですが、メインの防寒具として頼るには心もとないかもしれません。同様に簡易レインコートも、激しい雨や風の中での避難を想定するなら、ある程度の品質のものを選んだ方が安心です。

100均で揃えてOKなもの:ポリ袋・マスク・絆創膏・単三電池・メモ帳・ボールペン・輪ゴム・ガムテープ・油性マジックなど、品質の差が命に直結しないアイテム。

逆に100均でも十分なのに、高いものを買いすぎてしまうのももったいないです。ポリ袋やガムテープなど消耗品の類は100均で問題ありません。大切なのはバランスよく揃えることですね。

防災グッズで本当に必要なものの選び方

実際に役立ったものと役立たなかったものの差

災害時に役立ったものと役立たなかったものの比較

あの日を経験した者として、役立ったものと役立たなかったものの差をひと言で表すなら「すぐ使えるかどうか」だと思っています。

暗闇の中、余震が続く状況で、人は正常な判断力をかなり失います。「この道具どうやって使うんだったっけ」と考える余裕はありません。スイッチひとつで光るLEDランタン、袋を開けて水を注ぐだけのアルファ米、ポンと座れる簡易トイレ。こういう「使い方を考えなくてもいいもの」が本当に頼りになりました。

また、防災リュックの中身を見直す際にいつもお伝えしているのですが、「入れたつもり」で終わっていないか確認してほしいんです。防災グッズは買って満足するのではなく、実際に手に取って使い方を確認しておくことが大切です。

最強の防災グッズに共通する3つの条件

いらなかったものを整理していくと、自然と「本当に必要なものの条件」が見えてきます。私が考える最強の防災グッズに共通する条件は次の3つです。

① 軽くてコンパクトである
持ち出せなければ意味がありません。体重の15%以内に収まる重さを意識して、ひとつひとつのグッズを選んでください。

② 使い慣れていて、暗闇でも直感的に使える
複雑な操作が必要なものは緊急時に役に立ちません。シンプルで、普段から扱いに慣れているものを選ぶことが大切です。

③ 複数の用途に使える
たとえばポリ袋はゴミ袋にもなり、雨よけにもなり、水の運搬にも使えます。アルミブランケットは防寒だけでなく目隠しにも使えます。1アイテム多用途なものを選ぶと、リュックを軽く保ちながら備えを充実させられます。

この3条件を満たすものかどうかを基準にグッズを選ぶと、「いらなかったもの」を防災リュックに詰め込むリスクが大きく減ります。

一人暮らしに不要な防災グッズの見極め方

一人暮らしの玄関に置かれたコンパクトな防災リュック

一人暮らしの方の防災グッズ選びでよくある失敗は、家族世帯向けのリストをそのまま参考にしてしまうことです。たとえば4人家族向けのセットには大容量の食料や複数枚の毛布が含まれていますが、一人暮らしには明らかに過剰です。

一人暮らしで特に省いていいものとして挙げられるのが大容量の備蓄食料です。大量の缶詰を用意しても、一人では消費しきれずに賞味期限切れになることが多いんですよね。ローリングストックを意識して、少量ずつ回転させる方がよほど現実的です。

また、大型のテントや大きな毛布類は一人暮らしの狭い収納には向きません。コンパクトなアルミブランケットやスリーピングバッグ(寝袋)で代替した方が収納面でも合理的です。

女性が後悔した防災グッズの典型例

女性の防災グッズの見直し前後の中身比較

女性からよく聞く防災グッズへの後悔として多いのが「セットで買ったら使わないものがたくさん入っていた」というものです。市販の防災セットは汎用的に作られているため、女性特有のニーズが抜けていることがあります。

女性がいらなかったと感じやすいものの代表は多機能ツールやコンパスです。一方で足りなかったと後悔するのが生理用品や目隠しポンチョ、除菌シートなど衛生・プライバシー関連のアイテムです。

女性向けの防災グッズ選びについてはより詳しく解説している記事がありますので、ぜひ女性が本当に必要な防災グッズで実際に役立ったものも合わせて読んでみてください。

セゾン自動車火災保険の調査(2024年)では、女性用品を十分に準備できている人はわずか8%という結果が出ています。女性特有の備えは意識しないと抜け落ちやすいので、意識的にリストに加えることが大切です。

防災グッズいらなかったものを整理するコツ

家族で防災グッズの中身を定期的に見直している様子

最後に、今ある防災グッズを見直して「いらなかったもの」を整理するための実践的なコツをお伝えします。

年に1〜2回、リュックごと中身を出して確認する習慣を持ってください。3月11日前後と、9月1日の防災の日前後が見直しのタイミングとしておすすめです。確認する際のチェックポイントは3つです。

まず賞味期限・使用期限の確認です。食料・電池・常備薬はすべて確認します。次に実際に背負ってみること。重すぎないか、走れる重さかを体で確認します。そして「使い方がわかるか」の確認です。ひとつひとつのグッズを手に取って、暗い中でも使えるか想像してみてください。

この3つのチェックを通じて「これ、いざというときに使えないな」と感じたものは潔く外す勇気も大切です。備えの「量」より「質」を意識することが、本当に命を守る防災につながります。

(出典:政府広報オンライン『ACTION01 災害に事前に備える』

数値データはあくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトでご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。

🛡️ 防災士監修記事

後藤 秀和(ごとう ひでかず)

防災士/株式会社ヒカリネット 代表取締役

2011年3月11日、東日本大震災を福島で経験。「あのとき備えていたら」という後悔をなくすため、防災士資格を取得しHIH(Hope is Here)を設立。防災セット累計出荷20万個超、法人導入実績300社以上。

この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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