マンションの長周期地震動と地震対策!高層階の揺れと備え

マンションの長周期地震動と地震対策!高層階の揺れと備え
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。最近、ニュースなどでもよく耳にするようになった長周期地震動ですが、特に高層マンションにお住まいの方やこれから購入を検討されている方にとっては、非常に気になるキーワードではないでしょうか。
地震対策といっても、地面に近い戸建てと、空高く伸びるマンションとでは、揺れ方が大きく異なります。特に高い建物特有の「ゆっくりとした大きな揺れ」には、従来の地震対策だけでは不十分な場合があり、専用の備えが必要です。この不思議な揺れの原因やメカニズムを知り、適切な対策を行うことで、漠然とした不安を「具体的な安心」に変えていきましょう。
この記事のポイント
- 長周期地震動がマンションに与える影響とメカニズム
- 高層階で起きる揺れの特徴(階級)と具体的な被害想定
- 効果的な家具固定テクニックと室内安全対策の優先順位
- 管理組合で取り組むべき組織的な備えと資産防衛
「高い階ほど要注意!長周期地震動と動く家具のひみつ」

マンションで警戒すべき長周期地震動と地震対策

まずは、なぜマンション、特に高層階において長周期地震動がこれほどまでに恐れられているのか、その仕組みとリスクについて整理してみましょう。敵を知ることで、正しく怖がることができますし、対策の優先順位も見えてきます。
高層階で発生する共振現象と揺れのメカニズム

一般的な地震のイメージである「ガタガタ」「ドンドン」という激しい突き上げとは異なり、「ユラーッ、ユラーッ」と船に乗っているような揺れが長く続くのが長周期地震動の特徴です。これは、巨大地震によって生じた長い周期の波が、堆積盆地(関東平野や大阪平野のような柔らかい地盤の平野)で増幅され、さらに高い建物が持つ「揺れやすいリズム(固有周期)」と一致してしまうことで起こります。
これを専門用語で「共振(レゾナンス)」と呼びます。イメージしやすい例で言うと、公園のブランコです。ブランコを漕ぐとき、タイミングよく背中を押し続けると、小さな力でも大きく揺れますよね?あれと全く同じ原理なんです。
地面の揺れ自体はそれほど大きくなくても、建物の上層階に行けばいくほど揺れが増幅され、時には数メートルもの幅で数分間にわたって揺れ続けることもあります。この現象は、震源から遠く離れた場所でも発生するのが厄介な点です。
過去の事例
2011年の東日本大震災の際、震源から700km以上離れた大阪府の咲洲庁舎(55階建て)等の高層ビルにおいて、この共振現象によって最大約2.7m(片振幅約1.3m)もの大きな揺れが観測され、エレベーターの停止や内装材の破損などの被害が出ました。
実は、「揺れた気がするけれど地震情報がない」「自分だけが揺れている気がする」という現象も、この長周期地震動や遠くの地震が関係していることが多々あります。このあたりについては、以前書いた記事でも詳しく触れていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
気象庁の長周期地震動階級と想定される被害

従来の「震度」は、あくまで地表付近の揺れの強さを表す指標であり、高層ビル内での揺れの実感を必ずしも反映していませんでした。「震度は2だったのに、立っていられないほど揺れた」という乖離が生まれてしまったのです。そこで気象庁が導入したのが「長周期地震動階級」という新しいモノサシです。
これを知っておくと、緊急地震速報が出たときに「高層階ではどれくらいの揺れが来るか」を具体的にイメージしやすくなります。
| 階級 | 人の体感・行動 | 室内の状況・被害想定 |
|---|---|---|
| 階級1 | 室内にいるほとんどの人が揺れを感じる。驚く人もいる。 | ブラインドやカーテンが大きく揺れる。吊り下げ物が振れる。 |
| 階級2 | 室内で大きな揺れを感じ、物につかまりたいと感じる。 | キャスター付きの家具(ワゴン等)がわずかに動くことがある。棚の食器や本が落ちることがある。 |
| 階級3 | 立っていることが困難になる。 | キャスター付き家具が大きく動く。固定していない家具が移動し、不安定なものは転倒する。 |
| 階級4 | 立っていることができず、這わないと動くことができない。 | キャスター付き家具が大きく動き、転倒するものがある。固定していない家具の大半が移動し、重量物でも倒れる。 |

(出典:気象庁『長周期地震動階級関連解説表』)
現在では、長周期地震動階級3以上が予測される地域に対して、緊急地震速報(警報)が発表されるようになっています。「震度は小さいはずなのに、立っていられない!」という事態が起こり得るので、マンションにお住まいの方は、震度だけでなくこの階級情報にも注目してください。
耐震や免震など構造による揺れ方の違い

マンション選びや対策において、ご自宅の建物の構造を知ることは、まさに「命綱」を確認するようなものです。大きく分けて「耐震」「制震」「免震」の3つがあり、それぞれ揺れ方が全く異なります。
- 耐震構造(Earthquake Resistance):
柱や梁を太くし、ガッチリと固めて地震に耐える構造です。一般的なマンションの多くがこれに該当します。長周期地震動に対しては、上層階ほど揺れが増幅されやすく、家具の転倒や移動のリスクが最も高まる傾向があります。 - 制震構造(Vibration Damping):
建物内の壁や柱に「ダンパー(振動軽減装置)」を組み込み、地震のエネルギーを吸収する構造です。耐震構造よりは揺れを軽減し、揺れが収まるのを早くする効果がありますが、揺れそのものをシャットアウトするわけではありません。 - 免震構造(Seismic Isolation):
建物と基礎の間に「積層ゴム」などの免震装置(アイソレータ)を設置し、建物を地面から切り離して揺れを伝えない構造です。長周期地震動に対して最も被害軽減効果が高いとされていますが、コストが高額になる傾向があります。
免震構造の注意点
「免震なら絶対安心」かというと、実はそうとも言い切れません。極めて周期の長い地震動(長周期パルスなど)が発生した場合、免震装置の可動範囲(クリアランス)を超えて、建物が擁壁(ようへき)に衝突するリスクも研究されています。過信せず、基本的な室内対策は必要です。
エレベーター停止や地震酔いなどの二次被害

高層マンション特有の深刻な悩みとして、「エレベーターの停止」があります。最新のエレベーターには長周期地震動を感知するセンサーが付いており、大きな揺れを検知すると安全装置が働いて自動停止します。また、エレベーターのロープ自体が共振して絡まるのを防ぐために停止することもあります。
復旧までには専門技術者の点検が必要になるため、長時間、場合によっては数日間にわたり、高層階は「陸の孤島」になってしまいます。こうなると、水や食料の調達、ゴミ出し、そして何よりトイレの問題が深刻化します。
トイレ対策は最優先!
断水や排水管の破損も想定し、非常用トイレは「1人1日5回 × 7日分」を目安に備蓄してください。「水は我慢できてもトイレは我慢できない」のが現実です。
また、船酔いのような症状が出る「地震酔い」も無視できません。揺れが収まった後も、三半規管が刺激され続け、数時間から数日間、地面が揺れているような感覚(幻震)や吐き気が続くことがあります。そんな時は、無理に動かず、遠くを見ないようにして、部屋の中央で姿勢を低くして目を閉じ、安静にすることが大切です。
高層マンション特有のリスクと物件の選び方

これからマンションを選ぶ方は、やはり構造(できれば免震や制震)や、地盤の固さをハザードマップで確認することが重要です。柔らかい地盤の上に建つ高層建築物は、どうしても揺れが増幅されやすい宿命にあります。
また、物件の内見時には「防災倉庫」の有無や中身、非常用発電機がどこにあるか(浸水しない上層階にあるか)などをチェックすると、そのマンションの防災力が見えてきます。そして何より、家具が「倒れる」だけでなく「部屋の端から端まで滑走する」という高層階特有のリスクを理解し、入居前から家具配置をシミュレーションしておくことが賢明です。
わかりやすいマンションの長周期地震動と地震対策

脅かすような話が続いてしまいましたが、ここからは「じゃあどうすればいいの?」という解決策についてお話しします。建物自体を変えることは難しいですが、室内の対策は今日からでも、誰にでも始められます!
命を守るための家具固定と室内配置の工夫

最大の対策は、シンプルですが「家具を壁に固定する」ことと「家具の配置を見直す」ことです。特に、人生の3分の1を過ごす「寝室」と、逃げ道を確保する「玄関・廊下」には、背の高い家具を置かないのが鉄則です。
高層階の揺れでは、家具が倒れてくるだけでなく、移動してドアを塞いでしまい、部屋に閉じ込められるケースが多発します。「寝ている場所に家具が直撃しないか?」「ドアの開閉範囲に家具がないか?」という視点で、一度部屋を見渡してみてください。リスクがある家具を別の部屋に移動したり、思い切って処分(断捨離)したりすることも、立派な防災対策の一つです。
凶器となるキャスター付き家具の移動防止策

これ、意外と盲点なんですが、キャスター付きの家具は高層階において本当に危険です。テレビ台、キッチンワゴン、コピー機などが、長周期地震動のゆっくりとした揺れに乗って、まるでスケートのように部屋中を走り回り、壁を破壊したり人をなぎ倒したりします。
「ストッパー(ロック)をかけているから大丈夫」と思っていませんか?実は、大きな揺れ(特に縦揺れが混じる場合)では家具が浮き上がったり、床自体が滑りやすくなったりするため、簡易的なロックでは耐えきれずに動いてしまうんです。最悪の場合、ロック部分が破損して弾け飛びます。
対策の決定版
キャスターの下に敷く専用の受け皿(キャストッパーなど)を使いましょう。これは車輪の回転を止めるだけでなく、床との摩擦を増やして滑走を防ぎます。さらに、壁と家具をチェーンやベルトで連結する「二重の対策」をしておくと安心です。
ピアノや冷蔵庫など大型重量物の固定方法
ピアノや冷蔵庫といった数百キロあるものが動くと、もはや凶器です。
- 冷蔵庫:
冷蔵庫は重心が高く、中身(食品)も重いため、非常に倒れやすい家電です。上部の「ベルト通し穴」を使って、壁の強度がある部分とベルトでしっかり連結しましょう。突っ張り棒だけでは、天井の強度が足りずに突き破ったり、揺れで外れてしまったりすることが多いので、あくまで補助として考えてください。 - ピアノ:
アップライトピアノなら、必ず背面を壁に向けて設置し、壁とベルト等で固定します。そして脚には「耐震インシュレーター(深さのある受け皿)」を履かせます。これで脱輪や滑走を大幅に防げます。グランドピアノの場合も専用のインシュレーターと、床への固定(可能であれば)が推奨されます。
L字金具やマットなど固定グッズの正しい活用

ホームセンターに行くと様々な固定グッズがありますが、防災士として断言できるのは、最強なのは「L字金具」による壁へのネジ止めだということです。壁紙の裏にある「間柱(下地)」を探し、そこに木ネジでガッチリ固定するのが基本にして王道です。
しかし、賃貸マンションなどで壁に穴を開けられない方も多いですよね。その場合は、「突っ張り棒」と「粘着マット(耐震ジェル)」の併用がおすすめです。
なぜ「併用」なのか?
突っ張り棒だけだと、大きな揺れで天井が変形した際に外れてしまうことがあります。しかし、足元に粘着マットを敷いておくと、揺れた瞬間に家具が浮いたり滑ったりするのを防げるため、突っ張り棒が外れにくくなるんです。この「上下からの挟み撃ち」効果で、強度は格段にアップします。
管理組合で進める防災マニュアルと保険

個人の対策には限界があります。マンション全体の安全と資産価値を守るためには、管理組合での話し合いが欠かせません。「長周期地震動対策」を防災マニュアルに盛り込んだり、エレベーター停止時の「共助」のルール(高齢者の安否確認や水運びの支援など)を平時から決めておくことが重要です。
また、地震保険も見直してみてください。建物が「耐震等級」の認定を受けていたり、「免震建築物」であったりする場合、地震保険料の割引(10%〜50%)が適用される制度があります。これには公的な証明書が必要になるので、管理組合で書類を一括して整備し、居住者にアナウンスすることで、全世帯の家計を助けることができます。これは管理組合だからこそできる「防災×節約」の施策です。
マンションの長周期地震動と地震対策の重要性

長周期地震動は、現代の都市生活における新しいリスクですが、決して「防げない災害」ではありません。建物の構造特性を理解し、室内の家具を「凶器」にしないよう固定し、水や食料(そして簡易トイレ!)を備蓄することで、被害を最小限に抑えることは十分に可能です。
「高層階だから怖い」と過度に恐れるのではなく、「高層階だからこそ、人一倍しっかり対策をしよう」と前向きに捉えてみてください。できることから一つずつ始めていきましょう。その一つひとつの備えが、いざという時にあなたと大切なご家族を守る「最強の盾」になります。
免責事項
本記事の情報は一般的な知見に基づいています。個別の建物の構造的特性や安全性については、必ず専門家(構造一級建築士等)や管理会社にご確認ください。また、紹介した対策グッズや工法は、すべての地震動に対して安全を保証するものではありません。



