防災トイレの選び方と必要数 携帯トイレ・凝固剤・災害時の使い方を防災士が詳しく解説

防災トイレの選び方と必要数、携帯トイレの使い方を解説
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
大規模な災害が発生すると、停電や断水、物流の停止など、生活が一変しますよね。食料や水の備蓄は意識していても、意外と見落とされがちなのが「トイレ問題」です。ですが、この問題こそが、在宅避難の生活の質、ひいては健康や命に直結する、非常に深刻な問題なんです。
防災トイレを備えようと思っても、「防災トイレの選び方と必要数」って、本当に悩みますよね。特に携帯トイレや凝固剤の使い方が具体的にどうなのか、性能(特に消臭や防臭)は大丈夫か、気になるところだと思います。また、一人暮らしや4人家族で、いったい何回分、何日分を目安に用意すればいいのか、そして一番困る「使用後の処理」はどうするのか…など、考え始めると不安は尽きないかなと思います。
この記事では、在宅避難の成否を分けるとも言われるこの災害時のトイレ対策について、防災士の視点から、防災トイレの選び方と必要数、そして携帯トイレや凝固剤の具体的な使い方まで、皆さんの疑問や不安が解消できるように、かなり詳しく解説していきますね。
- 災害用トイレがなぜ最優先で必要なのかがわかる
- 世帯人数別の具体的な「必要数」の目安がわかる
- 失敗しない防災トイレ(凝固剤・防臭袋)の選び方がわかる
- 携帯トイレの正しい使い方と、使用後の処理方法がわかる
防災トイレの選び方と必要数、携帯トイレや凝固剤の使い方を防災士が解説


まずは、防災トイレの備蓄が「なぜ」必要なのか、そして「どれだけ」必要なのか、という基本的な部分から見ていきましょう。この「必要数(量)」と「選び方(質)」が、災害時の在宅避難生活の質を大きく左右することになります。ここをしっかり押さえることが、防災の第一歩ですね。
なぜトイレ対策が最優先なのか?

災害時、食料の心配をする方は多いですが、実はトイレ問題は「災害関連死」に直結する、命の問題なんです。
「災害関連死」とは、地震や津波などの直接的な被害で亡くなるのではなく、避難生活などでの身体的・精神的な負担によって病気が悪化したり、発症したりして亡くなることを指します。(出典:内閣府 防災情報のページ)
地震などで断水すると、水洗トイレは一瞬で使えなくなります。避難所に設置される仮設トイレも、到着が遅れたり、数が圧倒的に足りなかったりして、すぐに汚物であふれ、ひどい衛生状態になることが多いんですね。
汚い、臭い、暗い、プライバシーがない。そんなトイレを使いたくないという心理が、「我慢」を生みます。トイレに行く回数を減らしたいから、無意識的にも意識的にも、水分や食事を控えるようになってしまうんです。
この「我慢の連鎖」が、本当に怖いんです。
トイレの我慢が引き起こす「我慢の連鎖」と健康被害
- 脱水症状:水分摂取を控えることで発生します。体力が低下し、思考力も鈍ります。
- エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症):脱水で血液がドロドロになり、車内や避難所で長時間同じ姿勢でいることで足に血栓(血の塊)ができ、これが肺などに飛ぶと命に関わります。
- 脳梗塞・心筋梗塞:脱水による血液の濃縮が引き金となり、持病が悪化したり、新たに発症したりするリスクが高まります。
- 感染症の蔓(まん)延:不衛生な環境は、ノロウイルスや大腸菌などの感染症の温床となります。汚物からの感染が広がるリスクも高まります。
- 膀胱炎・腎盂腎炎:特に女性は、排泄を我慢することで膀胱炎になりやすく、悪化すると腎盂腎炎になる危険性もあります。
このように、トイレ問題は「不便」や「不快」なだけじゃなく、公衆衛生の崩壊と「災害関連死」に直結する、最優先で解決すべき「生命と健康の問題」なんです。特に高齢者や女性、子供にとっては、尊厳に関わる深刻な問題でもあるんですね。
防災トイレの必要数は何回分?

では、具体的にどれくらい備蓄すればいいのでしょうか。
多くの自治体や公的なガイドラインでは、「最低3日分、推奨7日分」とされていることが多いです。これは、1日の平均排泄回数を1人あたり5回と仮定し、「5回 × 7日間 = 1人35回分」が最低ラインの目安になる、という計算ですね。
でも、これはあくまで公的な支援(仮設トイレの設置など)が始まるまでの「避難所」での目安かも、と私は思います。特に在宅避難を真剣に考えるなら、この「7日分」では危険な可能性があります。
なぜなら、電気や水道(給水)と比べて、「下水道」の復旧は非常に時間がかかるからです。
下水道の復旧が遅い理由
- 地中の排水管は、地震の揺れや液状化で破損・ズレ・詰まりが発生しやすいです。
- 破損箇所が目に見えないため、調査と特定に時間がかかります。
- 下水処理場自体が被災し、機能停止してしまうと、地域全体が長期間使えなくなります。
電気や水道が復旧しても、下水が使えない限り、自宅の水洗トイレは使えません。したがって、在宅避難を前提とするなら、より長期戦を想定する必要があります。
在宅避難の現実的な備蓄ライン(防災士推奨)
- 最低ライン(2週間分):5回 × 14日間 = 1人あたり 70回分
- 安心ライン(4週間分):5回 × 30日間 ≈ 1人あたり 150回分(100回分超)
特に都市部でインフラが完全に止まった場合、100回分という備蓄は決して「過剰」ではなく、衛生と尊厳を保ちながら「生活を維持」するための、現実的かつ合理的な備蓄目標だと私は考えています。
家族の人数別 備蓄目安(何日分)

ご家庭の人数に合わせて、必要な備蓄数の目安を計算してみました。ぜひ、ご自宅の備蓄計画の参考にしてください。
| 世帯人数 | 公的ガイドライン (7日分) | 在宅避難 推奨 (14日分) | 在宅避難 理想 (30日分) |
|---|---|---|---|
| 1人 | 35回 | 70回 | 150回 |
| 2人 | 70回 | 140回 | 300回 |
| 3人 | 105回 | 210回 | 450回 |
| 4人 | 140回 | 280回 | 600回 |
※これはあくまで一般的な目安です。ご家族の体調(お腹が弱い方など)や年齢(特にトイレが近くなりがちな高齢者の方)なども考慮して、少し多めに見積もっておくと安心ですね。
また、乳幼児がいるご家庭では、使用済み紙おむつの処理も「トイレ問題」の一環です。おむつ自体と、それを入れる防臭袋も併せて備蓄計画に含める必要があります。

防災トイレの選び方 3つのポイント

「100回分セット」と書かれていても、その品質は製品によって様々です。「回数」や「価格」だけで選んでしまうと、いざという時に「臭くて使えない」「処理に困る」といった事態に陥る可能性があります。
品質を見極める、最低限押さえておきたい3つの基準を解説しますね。
- 【最重要】防臭性能(専用の防臭袋の有無)
- 凝固剤の品質(抗菌性・消臭性)
- 長期保存と使用期限(10年以上推奨)
特に重要なのが、1. 防臭性能と2. 凝固剤の品質です。使用後の排泄物を、自宅で数週間「一時保管」することを想像すれば、この2つがいかに重要かお分かりいただけるかなと思います。次のセクションで、それぞれ詳しく見ていきましょう。
凝固剤の品質と抗菌性をチェック

凝固剤は、ただ排泄物の水分を固めれば良いわけではありません。
先ほどからお伝えしている通り、使用済みの排泄物は、ゴミ収集が再開されるまで、自宅で「一時保管」することになります。これが数日ならまだしも、数週間に及ぶ可能性も十分にあります。
その時に重要になるのが、「抗菌性」です。もし抗菌機能がなければ、固めた排泄物から菌が増殖し、悪臭の強力な発生源になったり、感染症のリスクを高めたりします。固めた後も菌の増殖を防ぐ機能があるかどうかは、必ず確認してください。製品によっては1ヶ月の抗菌効果を謳うものもありますね。
凝固剤のチェックポイント
- 抗菌機能:菌の増殖を防げるか。JIS規格(日本産業規格)や第三者機関での抗菌試験データがあると信頼性が高いです。
- 消臭機能:凝固剤自体に、活性炭やヤシ殻、消臭ポリマーなど、臭いを吸着・分解する成分が含まれているか。
- 大便への対応:水分の少ない大便(固形物)にどう対応するかが明記されているか。(これは使い方の部分で後ほど詳しく解説します)
- 凝固速度と量:少量の粉末で、素早くしっかり固まるか。
品質の高い凝固剤は、これらの機能を備えていることが多いです。パッケージの裏側や説明書をしっかり確認してみてください。
失敗しない防臭袋の選び方

そして、凝固剤の品質と並んで、いえ、それ以上に私が重要視しているのが「防臭性能」です。
想像してみてください。4人家族が7日間在宅避難した場合、計算上「140袋」の使用済み排泄袋が発生します。これを、何十袋も自宅のベランダや玄関先に保管する状況を。もし臭いが漏れたら…生活空間は耐え難いものになり、害虫(ハエなど)の発生源にもなります。
何より、悪臭はトイレ使用への心理的な抵抗感を強め、結局あの「我慢の連鎖」を引き起こします。せっかくトイレを備えても、使われなくなっては意味がありません。
選ぶ際は、排泄袋(便袋)とは別に、使用済みの袋を入れるための「防臭専用の処理袋」が付属しているかを確認してください。BOS(驚異の防臭袋)のような、臭いを化学的に遮断する専用素材を使った製品が望ましいですね。
防臭袋のチェックポイント
- 専用の「防臭袋」が付属しているか:便袋とは別に、処理用の袋があることが重要です。
- 素材:臭い分子を通さない特殊な素材(多層構造フィルムなど)が使われているか。一般的なポリ袋(PE)では、臭いは簡単に透過してしまいます。
- サイズと強度:排泄袋を余裕をもって入れられ、口をしっかり縛れるサイズか。また、簡単に破れない強度があるか。
もし、購入した防災トイレセットの処理袋が心許ない場合は、高性能な防臭袋だけを別途追加で購入し、備えておくのも非常に賢明な方法です。これは普段の生ゴミやおむつ処理にも使えるので、ローリングストックにも向いていますよ。
防災トイレの選び方と必要数とは?携帯トイレ・凝固剤の使い方を防災士が解説

備蓄の「量(必要数)」と「質(選び方)」が決まったら、いよいよ次は「使い方(実践)」です。災害用トイレにはいくつか種類があり、特に在宅避難の主役となる携帯トイレは、正しい手順で使わないと汚染や悪臭の原因になってしまいます。ここを間違えると、せっかくの備えが無駄になってしまう可能性もあるんですね。ここでは具体的な使い方と、特にマンションにお住まいの方が知っておくべき注意点を見ていきましょう。
携帯トイレと簡易トイレの違い

まず、災害用トイレには大きく2種類あることを知っておくと、ご自宅の状況に合わせて最適な備えを考えやすくなります。
1. 携帯トイレ(便袋・凝固剤タイプ)
これが在宅避難の主役だと私は考えています。これは、今ある自宅の洋式便器に、専用の袋(便袋)を取り付け、排泄後に凝固剤で固めて処理するタイプです。
- 長所:備蓄スペースが非常にコンパクトです(100回分でも本棚に入る程度)。何より、使い慣れた自宅の便座で用を足せるので、心理的ストレスが格段に少ないのが最大のメリットですね。
- 短所:便器そのものが地震で割れたり、家具の転倒でトイレ室自体に入れなくなったりした場合は使えません。また、ほとんどの製品は洋式トイレ専用で、和式トイレには対応していない点も注意が必要です。
2. 簡易トイレ(便座・構造体タイプ)
こちらは、段ボールやプラスチックなどで便座とそれを支える構造体を組み立てるタイプです。便座部分に、携帯トイレの袋(排泄袋と凝固剤)をセットして使用します。
- 長所:場所を選ばず、どこにでも(例えばリビングの隅や車の中など)トイレ空間を設置できます。自宅の便器が使えない時の強力なバックアップになります。車中泊避難も視野に入れるなら必須アイテムかもしれません。
- 短所:構造体があるため、備蓄にかさばります。また、製品によっては安定性が低かったり、プライバシーの確保(目隠し用のポンチョや小型テント)が別途必要になったりしますね。
防災士が推奨する「ハイブリッド戦略」
在宅避難の戦略としては、「携帯トイレ(便袋タイプ)」をメイン(例:100回分)に備蓄しつつ、「簡易トイレ(便座タイプ)」を最低1セット、バックアップとして備える。この「ハイブリッド戦略」が、最もレジリエント(強靭)で安心かなと思います。
携帯トイレの正しい使い方
携帯トイレの設置で最も多い失敗が、便袋1枚だけで使おうとすることです。汚染や、万が一の漏れを防ぐため、できれば「二重袋方式」で設置してください。
- ステップ1:安全確認と下準備まず、トイレ室内が安全か、便器が地震動でグラついていないか、破損していないかを確認します。停電時を想定し、ヘッドランプ(両手が使えるため懐中電灯より推奨)も準備しておきましょう。
- ステップ2:【下地袋】の設置便座を上げ、便器全体を覆うように大きめのポリ袋(45L推奨、セットに付属している場合も)を被せます。これは便器内の溜まり水(トラップ水)をカバーし、便器本体の汚染を防ぐための「下地袋」です。この袋は毎回交換しません。汚れるのはこの上にセットする排泄袋だけだからですね。
- ステップ3:【排泄袋】の設置便座を下ろし、【下地袋】の上から、キット付属の【排泄袋】(実際に用を足す袋)を便座の中にセットします。袋が便器の底に着くようにたるませ、便座でしっかり挟み込むように固定します。ここがずれると大惨事になるので、丁寧にセットしてください。
- ステップ4:用を足す便座に座り、排泄袋の中に用を足します。トイレットペーパーも排泄袋の中に入れます(水には流せません)。
- ステップ5:凝固剤の投入用を足した「後」に、排泄物全体にかかるように凝固剤を1包振りかけます。※先に入れないでください。先に粉末を入れると、排泄物がうまく広がらず固まりムラができたり、粉が舞い上がったりする可能性があります。
大便(固形物)への凝固剤の使い方

ここが、防災トイレ使用時の非常に重要な、そして見落としがちなポイントです。
防災トイレの凝固剤の多くは「高吸水性ポリマー」で、「水分」に反応してゲル状に固まる仕組みです。
そのため、水分の少ない大便(固形物)だけの場合、凝固剤を振りかけても水分が足りず、反応せずに固まらないのです。これでは、抗菌も消臭も機能しません。
【最重要】大便の時の対処法
大便をした場合、必ずコップ1杯程度(約200ml)の水(ペットボトルの水などでOK)を、大便が浸る程度に加えて水分を確保してから、凝固剤を投入してください。
貴重な飲料水を使うのはためらわれるかもしれませんが、これを怠ると、凝固・抗菌・消臭が一切機能せず、保管時に強烈な悪臭と衛生問題を引き起こすことになります。衛生を守るための「必要経費」と考えてください。
使用後の処理と保管場所

用を足したら終わり、ではありません。むしろ、ここからが「一時保管」という次のフェーズの始まりです。これも訓練が重要ですね。
処理の手順
- 【排泄袋】の取り外し:【排泄袋】のみを便器から慎重に取り外します(下地袋は便器に残したまま)。
- 密封:袋内の空気をできるだけ抜き(破裂防止と、保管時の容量削減のため)、袋の口を固く、できれば二重に結びます。空気を抜く際は、強く押しすぎると袋が破れる可能性があるので優しく。
- 【防臭袋】への封入:密封した【排泄袋】を、セット付属の「防臭処理袋」に入れ、そちらの口も固く結びます。これで二重に臭いを閉じ込めます。
- 手指の消毒:処理が完了したら、必ずアルコール消毒液や除菌ウェットティッシュで手指を消毒します。これらの衛生用品は、トイレキットと一緒に保管することが不可欠です。使い捨てのゴム手袋も備えておくと万全ですね。
一時保管の場所と方法
災害時、ゴミ収集は即座に停止します。使用済み排泄袋は、ゴミ収集が再開されるまでの間(数日~数週間)、自宅で「一時保管」する必要があります。
- 場所:ベランダや玄関先(室内)、物置など、居住空間から隔離でき、かつ換気の良い場所を選びます。直射日光は絶対に避けてください。袋の劣化を早めたり、内部の温度上昇で破裂や悪臭の拡散を招いたりする危険があります。
- 方法:防臭袋に入れたものを、さらにフタ付きの大型ポリバケツや、プラスチック製の頑丈な収納ボックス(RVボックスなど)に入れます。これにより、物理的な密閉、カラスなどの動物からの保護、万が一の漏れ出し防止、といった多重の防御が可能です。
ゴミ収集が再開されたら、基本的には「可燃ごみ」として出せるのが一般的ですが、必ずその時の自治体(市区町村)の指示に従ってください。「災害ごみ」として別途の収集場所が指定される場合もあります。
出す際は、袋が破れないよう二重にするか丈夫な袋を使い、収集作業員への安全と配慮のため、ゴミ袋にはマジックなどで大きく「トイレごみ」(または「おむつ」など)と明記する配慮も大切ですね。
マンション特有のトイレリスク

特に集合住宅(マンション)にお住まいの方は、戸建て住宅とは異なる、非常に重大なトイレのリスクが存在します。これは、ご自身の世帯だけでなく、マンション全体に関わる問題です。
「流してはいけない」絶対原則
地震の後、たとえ断水が復旧していなくても、絶対にトイレを流してはいけません。お風呂の残り湯や、給水車でもらってきた水などがあったとしても、ダメです。
なぜなら、目に見えない地中や壁の中の「排水管」が、地震動によって破損・ズレ・詰まりを起こしている可能性があるからです。
マンションで流した場合の最悪の事態
もし建物の中間階(例えば3階)で排水管(縦管)が破損していた場合、4階以上の住人が流した汚水が、その破損箇所から漏れ出し、3階や2階の住戸を汚水まみれにするという、最悪の二次災害を引き起こします。
また、建物外の排水管が破損していれば、流した汚水が下水道に届かず地中に漏れ出したり、公共下水道が機能停止していれば、流した汚水が行き場を失い、建物内のトイレ(特に低層階)から逆流してきたりする危険もあります。
安全確認のプロセス
水洗トイレの使用再開は、以下の2つが両方とも確認されてから、というのが鉄則です。
- 【公共インフラ】の安全:自治体(市区町村)が、公共下水道網の機能が正常であることを公式に発表すること。
- 【私有インフラ】の安全:マンションの管理組合が、専門業者に依頼し、敷地内および建物内の排水管・縦管に破損や詰まりがないことを確認すること。
「ちょっと流してみたら流れたように見えた」といった自己判断は、絶対に禁物です。
逆流を防ぐ「水のう」
自分が流さなくても、公共下水道の満水や、他の住戸の間違った使用により、自宅の排水口から汚水が逆流してくる危険性があります。その「外部からの侵入」を防ぐための防御策が「水のう(水のう)」です。
- 作り方:45L程度のポリ袋を二重にします。中に1/3~半分程度の水を入れます(持ち上げられる重さ)。
- 縛り方:袋の空気をしっかり抜きながら、口を固く、きつく縛ります。
- 設置場所:トイレの便器内の排水口を塞ぐように置きます(便器の傷防止にポリ袋を1枚敷いても良いです)。お風呂や洗濯機、キッチンの排水口の上にも、直接「水のう」を置いて重しにします。
これはあくまで「フタ」であり「プラグ」です。逆流を物理的に防ぐための防御策ですね。
よくある質問(防災士が回答)
Q1:災害時に「水洗トイレ」が使えなくなるって本当ですか?
A:はい。地震・津波・停電・断水などによって、水洗トイレの“給排水”や“下水処理”が機能停止する事例が多く報告されています。例えば、発災直後の避難所で「便器が便の山になった」ケースもあります。
そのため、災害用の「携帯トイレ」「簡易トイレ」の準備が非常に重要です。
Q2:どのくらいの数を準備すれば安心ですか?
A:例えば避難所ガイドラインでは「1人あたり1日5回の使用を想定」してトイレ個数や便袋数を算出しています。
家庭備蓄としては「1人1日5回 × 日数(3日・7日など)」を目安にし、便袋・簡易トイレシステムを準備しておくと安心です。
Q3:どのタイプの防災トイレを選べばいいの?携帯トイレ、簡易トイレ、仮設トイレ…違いは?
A:用途・設置場所・備蓄の規模によって使い分けが必要です。
- 携帯トイレ:戸建て・マンション家庭備蓄向け。コンパクトで備蓄しやすい。
- 簡易トイレ:断水時の既設便座活用/移動設置向け。
- 仮設トイレ・マンホールトイレ:自治体・避難所など大規模対応用。
家族構成・住宅状況・避難先を考慮して、少なくとも「携帯トイレ+簡易トイレ」を家庭で揃えておくと安心です。
Q4:女性・高齢者・子どもが使いやすくするにはどんな配慮が必要ですか?
A:特にトイレ環境が劣悪だと、女性や高齢者、子どもは使用をためらってしまい、トイレを我慢することで健康被害につながることが指摘されています。
- プライバシー確保(目隠しシート・夜間照明)
- 足腰に負担の少ない便座・椅子タイプの検討
- 簡易トイレ設置場所の十分なスペース確保
などを備えておくと安心です。
Q5:備蓄した防災トイレ用品は場所や期間でどう管理すべき?
A:次のポイントを押さえておきましょう:
- 備蓄場所:玄関近く・キッチン・備蓄庫など「すぐ取り出せる場所」
- 期限管理:携帯トイレや凝固剤などは有効期限があるものが多いため、購入日や使用期限をラベルなどで管理
- 運用チェック:年2回(例:3月・9月)に在庫数・劣化・使用説明書の有無を点検することをおすすめ
こうした運用により、いざという時に「使えない・出せない・誰も分からない」状態を避けられます。
Q6:在宅避難を想定する場合、トイレ対策で優先すべきことは?
A:在宅避難では“水・電気・下水が断絶される可能性”を前提に行動する必要があります。
まずは「家庭内で数日過ごせる便の処理手段を確保する」こと。携帯トイレ+防臭袋+使用済みの保管袋のセットを一まとめにしておくと安心です。
さらに、寝室・リビング・玄関等、避難中に“暗くて移動が困難な場所”でも利用しやすいよう、ライトや手すりなども想定しておきましょう。
防災トイレの選び方と必要数、携帯トイレ・凝固剤の使い方(まとめ)

今回は、防災トイレの選び方と必要数、そして携帯トイレや凝固剤の具体的な使い方について、かなり詳しく解説してみました。
災害時のトイレ対策は、単に「製品を買っておく」ことではなく、
- 在宅避難の現実に基づいた「量」(1人100回分目安)を確保し、
- 「防臭」「抗菌」という「質」(一時保管に耐える品質)で選び、
- 「二重袋方式」「大便には加水」という「正しい使い方」を習得し、
- 使用後の「一時保管」という兵站(ロジスティクス)まで計画する、
という、総合的な「衛生戦略システム」なんだと私は思います。
この記事を読んで「備えなきゃ」と強く思っていただけたら、ぜひ5回~10回分の少量パックをまず1つ購入し、非緊急時に家族全員で「使用訓練」をしてみることを強く、強く推奨します。
第4部で解説した設置手順から、実際に(水などで良いので)凝固剤で固め、防臭袋に封入し、第5部で計画した「一時保管場所」に置いてみるまでの全プロセスを、一度でも経験しておくこと。
「知っている」ことと、「停電の暗闇と余震の恐怖の中で、汚物に触れずに冷静に実行できる」ことの間には、本当に大きな隔たりがありますからね。
その隔たりを埋める訓練こそが、あなたとご家族の健康、そして災害時の「尊厳」を守る、最も確実な備えになるはずです。

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