引力や重力がなぜ発生するのか?防災士がやさしく解説

中学生が引力や重力について学んでいる

引力や重力がなぜ発生するのか?防災士がやさしく解説

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。

「引力」や「重力」って、当たり前に使っている言葉ですけど、「じゃあ、引力と重力の違いって何?」「そもそも、なぜ発生するの?」と聞かれると、意外と答えに困っちゃいますよね。

引力と重力の違いや、重力がなぜ発生するのか簡単に知りたい、といった疑問は、私も昔から持っていました。アインシュタインやニュートンといった科学者の名前は聞くけれど、結局、重力はどこまで届くのか、なんて考えると奥が深そうです。子供向けの分かりやすい説明を探している親御さんもいるかもしれません。

防災士として地震や津波、土砂崩れといった自然現象を考えるとき、この「重力」は切っても切れない、むしろ全ての現象の根本にある関係なんです。なぜモノは下に落ちるのか、なぜ水は高いところから低いところへ流れるのか(津波もそうです)、なぜ重い建物は地震で倒れやすいのか…。すべては地球の「重力」の仕業です。この記事では、そんな「引力や重力がなぜ発生するのか」という宇宙の根本的なナゾについて、専門家ではない私の視点から、中学生にも分かるように、できるだけ簡単に解説してみたいと思います。

  • 引力と重力の基本的な違い
  • 重力が「時空の歪み」と呼ばれる理由
  • 無重力と無重量の意外な違い
  • 重力に関する最先端の科学のナゾ
重力の真実

当たり前に存在している「重力」。その正体を知れば、宇宙の見方が変わります! 防災士の視点も交え、アインシュタインが解明した驚きの真実を中学生にも分かりやすく解説します。

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目次

引力と重力、なぜ発生するか中学生にも簡単に解説

中学生が地球儀とボールを使い引力と重力の仕組みを考えている実写風のイメージ
【HIH】ヒカリネット・イメージ
重力の正体を図解したインフォグラフィック。地球の引力と遠心力の関係、質量による時空の歪みのイメージ、重力が強い場所で時間が遅くなる仕組み、電磁気力と重力の強さの比較を示した科学解説図

まずは基本の「き」です。私たちが普段「重さ」と感じているものは何なのか。「引力」と「重力」という、似ているようで実はちょっと違う二つの言葉の意味から、一緒に見ていきましょう。

防災士の視点でお話しすると、地球の重力は、地震や津波、土砂災害といった自然災害のすべてに深く関わっています。例えば、巨大地震を引き起こすプレートの動きも、重い海洋プレートが大陸プレートの下に重力で沈み込むことで発生します。重力の正体を知ることは、私たちが住む地球でなぜ災害が起こるのかを理解する第一歩でもあるんですね。

(参考:世界の地震とプレートの仕組みをわかりやすく解説

まず知ろう!引力と重力の違いとは

リンゴと地球模型を手に持ち引力と重力の違いを考える中学生の実写風写真
【HIH】ヒカリネット・イメージ

「引力」と「重力」、普段はあまり区別せずに使っちゃいますよね。でも、科学の世界、特に地球のことを考えるときは、この二つを分けて考えると非常に分かりやすいんです。

引力(万有引力)とは?

まず「引力(いんりょく)」ですが、これは正式には「万有引力(ばんゆういんりょく)」と呼ばれます。かの有名なアイザック・ニュートンが、木からリンゴが落ちるのを見て発見した(とされる)力ですね。

これは、「質量がある全てのモノ同士が、お互いに引き合う力」のことです。この「全て」というのがポイントです。

地球とリンゴの間だけでなく、地球と月、太陽と地球、もっと言えば、私とあなた、私とこのパソコン、目の前にあるコーヒーカップとの間にも(ものすごーく微弱ですが)働いている、宇宙の基本的な力です。質量さえあれば、宇宙のどこにいても必ず働く、普遍的な力なんですね。

重力(地球の場合)とは?

一方、「重力(じゅうりょく)」は、特に地球のような「自転している(回っている)星」の上で、私たちが感じる「重さ」の正体です。実はこれ、単一の力ではなく、2つの力が合わさった(合力)ものなんです。

それが、「地球の引力」「地球の自転による遠心力」です。

遠心力(えんしんりょく)っていうのは、バケツに水を入れてぐるぐる回すと水がこぼれない、あの外側に引っ張られる「見かけ上の力」のことです。地球も約24時間で1回、コマみたいにグルグル自転しているので、地表にいる私たちも常にちょっとだけ外側(宇宙側)に放り出されそうになっているんですね。

つまり、地球の中心に向かって引っ張る「引力」と、それを邪魔するように外側に引っ張る「遠心力」。この綱引きの結果、私たちが最終的に感じる力が「重力」というわけです。

簡単にまとめると…

  • 引力(万有引力)= 質量が引き合う根本的な力(地球が中心に引っ張る力)
  • 遠心力 = 地球の自転によって外側に放り出される力
  • 重力 = 地球の引力 ー 遠心力(合わさった正味の力)

私たちが日常で「重力」と呼び、「重さ」として感じているのは、厳密にはこの「引力から遠心力を差し引いた残り」なんですね。

防災の観点では、この「重力」こそが、地震の際に家具や建物が倒れようとする力の源です。重力があるからこそ、重いものは下に落ちようとし、震度7のような強烈な揺れでは、その重いものが凶器にもなり得ます。家具の固定が重要なのも、この重力と地震の揺れに対抗するためなんですね。

場所によって重力が異なる理由を解説

体重計に乗る中学生と赤道・極を示す地球儀で重力の違いを学ぶ様子
【HIH】ヒカリネット・イメージ

「重力が引力と遠心力の合体技」と分かると、面白いことが見えてきます。それは、「地球上でも場所によって重力の大きさが違う」ということです。

よく「赤道付近は痩せる」なんて冗談がありますけど、あながちウソでもないんです(笑)。体重計の針は、本当に少しだけですが、動くんですよ。

赤道(せきどう)付近:遠心力が最大

赤道は、地球の自転軸(コマの芯)から一番遠い場所です。地球儀で考えると、一番外側ですよね。そのため、回転による遠心力が一番強く働く場所になります。

外側に引っ張られる力が強い分、地球の中心に向かう引力を打ち消す効果が最大になります。結果として、「重力」は地球上で一番軽くなります。

北極や南極(きょくち):遠心力がほぼゼロ

逆に、北極や南極は自転軸のほぼ真上に位置します。コマの芯のど真ん中です。その場でクルクル回っているだけなので、円運動の半径はほぼゼロ。だから、遠心力もほぼゼロになります。

邪魔する遠心力がないので、地球の引力がほぼそのまま「重力」になります。結果として、「重力」は地球上で一番重くなります。

豆知識:どれくらい違うの?

赤道と極(北極・南極)では、重力は約0.5%も違うそうです。体重60kgの人なら、赤道に行くと300gくらい軽くなる計算ですね(60,000g × 0.005 = 300g)。まあ、だからといって体の質量(肉や骨の量)が減ったわけじゃないんですが(笑)、体重計の目盛りは確かに減るんです。

(厳密には、地球がまん丸ではなく赤道付近が少し膨らんだ「回転楕円体」であることも、この重力の差に影響しています)

日本国内でも、緯度が高い北海道と緯度が低い沖縄では、わずかに重力が違います。国土地理院などが管理する「水準点」という高さの基準も、この重力の違いを精密に補正して決められているんですよ。とても精密な機械じゃないと感じられないレベルですけどね。

重力の正体は「時空の歪み」?

布がくぼんだ上に置かれた地球模型で時空の歪みを表現した実写風構図
【HIH】ヒカリネット・イメージ

さて、ここからが本題です。ニュートンは「引力がどう計算できるか(質量に比例し、距離の2乗に反比例する)」という法則を発見しましたが、「そもそも、なぜ質量があると引力が発生するの?」という根本的なナゾについては、説明(あるいは仮説立て)をしませんでした。

この「なぜ?」という問いに、ニュートンの時代から200年以上経って、とんでもない答えを出したのが、あの有名なアルベルト・アインシュタインです。

アインシュタインの「一般相対性理論」によると、「重力は、物体同士が見えない糸で引き合う『力』ではない。それは、時間と空間(合わせて『時空』)の歪(ゆが)みそのものだ」と言うんです。

…と言われても、「時空が歪む??」ってなりますよね。私も最初は何のことかサッパリでした。時間が歪むとか、空間が曲がるとか、まるでSFです。

この「時空の歪み」を理解するために、よく使われる例えが「トランポリン」です。

トランポリンで考える重力

  1. ピンと張ったまっ平らなトランポリンのシートを、何もない(質量がない)まっ平らな宇宙空間(時空)だと想像してください。
  2. そこに、重いボーリングの玉(例えば、太陽)をドスンと置くと、シートはその重みで沈んで「歪み(くぼみ)」ができますよね。これが、質量が時空を歪ませた様子です。
  3. その歪んだシートの上を、小さなパチンコ玉(例えば、地球)をまっすぐ転がそうとしてみてください。
  4. パチンコ玉は、まっすぐ進もうとしているだけなのに、トランポリンの歪みに沿って進路が曲がり、ボーリングの玉の周りをぐるぐる回り始めます。

これが、アインシュタインが考えた「重力」の正体です。

地球は、太陽に不思議な糸で「引っ張られている」んじゃなくて、太陽がその巨大な質量で作った「時空のくぼみ(歪み)」に沿って、本人はただただ「まっすぐ」進んでいるだけ。それが、はたから見るとグルグル回っている(公転している)ように見える、というわけです。

では、なぜリンゴは「落ちる」のか?

リンゴが木から落ちるのも同じです。地球という巨大な質量が作った時空の歪み(くぼみ)の中で、リンゴが(時空の中で)「まっすぐ」進もうとした結果、その軌道がたまたま地球の表面(地面)に向かっていた、というだけなんです。

なぜ私たちは「重さ」を感じるのか?

さらに不思議なのは、「じゃあ、立っている私たちが感じる『重さ』って何?」ということです。アインシュタインの理論によれば、私たちが「重さ」を感じる瞬間は、重力が私たちを「引いている」時ではありません。

むしろ逆です。

時空の歪みに沿って「まっすぐ進もう(=自由落下しよう)」とする私たちの体を、地面が「電磁気力」という別の力で強引に押し返し、その自然な運動を妨げているからです。私たちが足の裏に感じる「重さ」や「体重」とは、この地面からの「抗力(こうりょく)」に他なりません。

エレベーターが急降下した時にフワッとする、あの「無重力(無重量)」状態こそが、時空の歪みに沿って素直に動いている「自然な状態」であり、地面に立って重さを感じている状態こそが「不自然な状態」だ、というのがアインシュタインの考え方なんです。すごい発想の転換ですよね。

重力は光の速さで伝わるって本当?

星空を見上げる中学生と重力波の光のイメージを重ねた実写風画像
【HIH】ヒカリネット・イメージ

アインシュタインの考え方(重力=時空の歪み)だと、ニュートンの時代には説明できなかったナゾも解けてきます。

それは「重力って、どれくらいの速さで伝わるの?」という大問題です。

ニュートン理論の「困った点」

ニュートンの考え(万有引力)だと、力は何もない空間を隔てて「瞬時」に伝わる(遠隔作用)ことになっちゃいます。もし太陽が今、パッと消滅したとしたら、地球はその瞬間に引力を失って、軌道を外れて宇宙の彼方に飛んでいってしまう…。

でも、太陽が消えたって情報が、光(地球まで届くのに約8分かかる)よりも速く、一瞬で伝わるなんて、どうも変ですよね?

アインシュタインの「答え」

アインシュタインの答えは違いました。

重力(時空の歪み)が伝わる速さは、「光の速さ(秒速約30万km)」と同じ、と考えたんです。

重力とは「時空の歪み」そのものです。もし太陽が消滅したら、太陽が作っていた時空の歪みが「平らに戻る」という変化(情報)が、水面に石を投げた時の波紋のように、宇宙空間を伝わっていきます。これが「重力波」と呼ばれるものです。

その「重力波」が地球に届くのは、太陽の光と同じで約8分後。だから、もし太陽が消えても、地球は8分間、何も知らずに太陽(があった場所)の周りを公転し続ける…というわけです。

重力波は本当に見つかった!

この「重力波」という時空のさざ波は、アインシュタインが予言してから約100年後の2015年に、アメリカの「LIGO(ライゴ)」という観測施設などで、実際に初めて直接観測されました。遠く離れた宇宙で2つのブラックホールが合体した時に出た、時空の揺れを捉えたんです。

これは本当にノーベル賞級の大発見で、アインシュタインの理論がいかに正しかったかを証明する、強力な証拠となりました。

重力はどこまで届く?無限なの?

地球儀を手に宇宙の星空を見上げ重力がどこまで届くかを考える中学生
【HIH】ヒカリネット・イメージ

これもよくある疑問ですね。「重力(引力)って、どこまで届くの?」と。

結論から言うと、ニュートンの理論でもアインシュタインの理論でも、重力が届く範囲は「無限遠方」とされています。

「え、無限!?」と驚くかもしれませんが、もちろん、その力は距離が離れれば離れるほど、急激に弱くなっていきます。ニュートンの法則では「距離の2乗に反比例」($1/r^2$)します。

距離が2倍になれば力は$1/4$に、距離が10倍になれば力は$1/100$に…と、どんどん弱くはなりますが、数学上はゼロになることはありません。

宇宙の果てまで届く力

例えば、私(福島にいます)と、何億光年もかなたにあるアンドロメダ銀河との間にも、計算上はゼロではない、ものすごーーーーーく微弱な引力が働いている、ということになります。何だかロマンがありますよね。

私たちが今こうして銀河系の中にいられるのも、宇宙全体がバラバラにならずに構造(銀河団など)を作っていられるのも、この途方もなく弱いけれど無限に届く「重力」のおかげなんです。

引力や重力がなぜ発生するか、さらに深掘り

図書館で宇宙や重力の本を読み深く学ぶ中学生の実写風シーン
【HIH】ヒカリネット・イメージ

アインシュタインの「時空の歪み」という考え方で、重力の正体が少し見えてきたかもしれませんね。ここからは、重力にまつわる、さらに不思議で面白い現象や、現代科学でもまだ解けていない「究極のナゾ」について、もう少し深掘りしてみます。

重力が強いと時間は遅れる?

地球模型と時計を見比べ重力と時間の関係を学ぶ中学生の実写風画像
【HIH】ヒカリネット・イメージ

アインシュタインの一般相対性理論が導き出した、一番びっくりする現象がこれかもしれません。

それは、「重力が強い場所(時空の歪みが大きい場所)ほど、時間の流れが物理的に遅くなる」というものです。

SF映画の話(インターステラーとか!)みたいですが、これは本当に起きている現象なんです。

アインシュタインによれば、重力は「時空」の歪み。つまり、空間だけが歪むのではなく、「時間」もまた歪みの影響を受けます。重力が強い場所、例えば地球の表面(重力源に近い)は、重力が弱い宇宙空間(重力源から遠い)よりも、時空が深く歪んでいます。その「時間の歪み」の結果として、時間の進み方そのものが物理的に遅くなる、というんですね。

極端な話、ブラックホールのすぐそば(超重力が強い場所)と、地球とでは、時間の流れ方が全く違ってしまうわけです。

GPSは毎日「時間のズレ」を直してる!

この「時間の遅れ」、実は私たちの生活に欠かせない「GPS」で毎日、その正しさが実証されています。

GPS衛星は、地上約2万kmという宇宙空間(地表より重力がかなり弱い場所)を、猛スピードで飛んでいます。ここで、アインシュタインの理論が2つ関係してきます。

  1. 一般相対性理論の効果(重力) 衛星は重力が弱い場所にいるので、地上の私たちより時間が「速く」進みます。(1日に約45マイクロ秒 ※)
  2. 特殊相対性理論の効果(速度) 衛星は高速で移動しているので、地上の私たちより時間が「遅く」進みます。(1日に約7マイクロ秒 ※)

(※マイクロ秒 = 100万分の1秒)

差し引きすると、衛星の時計は地上よりも1日に約38マイクロ秒(45 – 7 = 38)も「速く」進んでしまうんです。もしこの「相対論的な時間のズレ」を計算に入れて補正しなければ、GPSの位置情報は、わずか数分で使い物にならなくなるほど(1日で10km以上も!)狂ってしまうそうです。

私たちは毎日、アインシュタインの理論の恩恵を受けてスマホで地図を見ていたんですね。(出典:JAXAと時間

無重力と無重量の違いを分かりやすく

ジャンプして宙に浮く瞬間の中学生で無重量の状態を表した実写風構図
【HIH】ヒカリネット・イメージ

宇宙ステーション(ISS)で宇宙飛行士がフワフワ浮いている映像、よく見ますよね。あの状態を「無重力」って言いがちですけど、厳密に言うとちょっと違います。この二つの言葉は、似ていますが意味が全然違うんです。

無重力 (Zero Gravity)

これは、文字通り「重力(=引力)がゼロ」の状態のことです。地球や太陽など、あらゆる質量の天体から無限に遠く離れた、理想的な宇宙空間の性質を指します。

宇宙ステーション(ISS)が飛んでいる高度400kmくらいだと、地球の引力は地上の約90%もあります。だから、決して「無重力」じゃないんです。もしISSがその場で止まったら、地上の90%の力でまっすぐ地球に落ちてきます。

無重量 (Weightlessness)

こちらは、「重さ(=重量)がゼロ」の状態、すなわち「重さが観測されない(感じられない)」状態です。重さとは、物体が床を押す力や、バネばかりを引く力のことですね。

ISSや宇宙飛行士が体験しているのは、こちらの「無重量」状態です。

じゃあ、なぜ引力があるのに「無重量」なのか?

その答えは、「ISSと宇宙飛行士が、地球の重力(引力)に引かれるがまま、ずーっと『自由落下』し続けているから」です。

「え、落ちてるの!?」と思いますよね。そうなんです。

落ち続ける軌道運動(等価原理)

ISSは、地球に引かれて常に地表に向かって「落ちて」います。でも、同時に時速約28,000km(秒速約8km!)という猛スピードで「横」にも移動しているんです。だから、落ちるそばから地球の丸みに沿って「向こう側」に行っちゃうので、永遠に地表にぶつからずに「落ち続ける」ことができます。これが「軌道(きどう)運動」の正体です。

ワイヤーが切れて自由落下するエレベーターの中では、箱も、中のあなたも、体重計も、すべて一緒に落下するため、あなたは床を押すことができず、体重計の目盛りはゼロを指します。これが「無重量」です。ISSの中は、あれが永遠に続いている状態なんです。

アインシュタインは、この「自由落下中は重力が消える(ように見える)」ことと、「ロケットが加速する時に感じる力」が、局所的には区別できないという「等価原理」に着目しました。これこそが、重力を「時空の歪み」として捉え直す、一般相対性理論の出発点となったのです。

謎の粒子?重力子(グラビトン)とは

手のひらに光る球体を乗せ重力子の概念をイメージする実写風サイエンス写真
【HIH】ヒカリネット・イメージ

さて、アインシュタインは「質量が時空を歪ませる」ことで重力を説明しました。これは、星や銀河といった「マクロ(大きい)な世界」では完璧に機能します。

でも、科学者たちはさらにミクロ(小さい)な世界、つまり原子や素粒子の世界も研究しています。そちらの世界は「量子力学」という、まったく別のルールで動いています。

現代の素粒子物理学では、「自然界の基本的な力」は、粒子(ゲージ粒子)をキャッチボールのように交換することによって伝わると理解されています。

4つの基本的な力力を伝える粒子強さ(強い力を1)力が届く距離
強い力グルーオン1原子核サイズ
電磁気力光子(フォトン)約 $1/137$無限
弱い力W粒子, Z粒子約 $10^{-6}$ (100万分の1)原子核より狭い
重力重力子(グラビトン)?約 $10^{-38}$ (!!)無限

この表のように、電磁気力は「光子」、強い力は「グルーオン」…といった粒子が発見されています。じゃあ、残る一つの「重力」は?

もし重力も他の力と同様に、ミクロなレベルでは粒子によって媒介されていると仮定するならば、その力を媒介する仮説上の素粒子が存在するはずです。それが「重力子(じゅうりょくし、グラビトン)」です。

まだ「仮説」であり「未発見」です

しかし、上の表を見ても分かる通り、重力は他の力に比べて桁外れに($10^{-38}$とかいうレベルで)弱いです。だから、もし重力子が存在したとしても、それを検出することは現在の技術では極めて困難です。

2025年の時点でも、重力子は未発見の仮説上の粒子です。

そして、アインシュタインの「滑らかで連続的な時空の歪み」という一般相対性理論と、量子力学の「離散的で確率的な粒子の世界」は、ブラックホールの中心や宇宙の始まりのような極端な状態を計算しようとすると、根本的に矛盾して破綻してしまいます。この二大理論を統合する「量子重力理論」の構築こそが、現代物理学の最大の目標であり、重力子のナゾもそこに繋がっているんですね。

重力はなぜ他の力より弱いのか

磁石でクリップを持ち上げ重力より電磁気力が強いことを示す実写風画像
【HIH】ヒカリネット・イメージ

これが、重力に関する最大のナゾであり、現代物理学が直面する最も不可解な問題の一つです。専門用語で「階層性(かいそうせい)問題」と呼ばれています。

先ほどの表でも見た通り、宇宙の4つの基本的な力を比較すると、重力だけが桁外れに、不自然なほど「弱い」んです。

どれくらい弱いかというと、先ほどの例ですが、小さな文房具の磁石(電磁気力)が、地球という惑星まるごと全体(重力)に打ち勝って、クリップを簡単に持ち上げてしまいます。

私たちの手のひらにある小さな磁石が、地球全体の重力に勝てる。これは、電磁気力がいかに重力より強いかを如実に示しています。

もし重力が、電磁気力と同じくらい強かったら…

私たちの体は、自分の体の原子同士が引き合う重力で一瞬でペシャンコにつぶれてしまいますし、星は形成されると同時にブラックホールになってしまい、太陽が輝くことも、生命が誕生することもなかった、と言われています。

「なぜ、重力はこんなにも都合よく弱いのか?」 「なぜ、他の3つの力と重力との間に、これほど絶望的な力の差(階層)があるのか?」

このナゾは、まだ誰も満足のいく答えを持っていません。もしかしたら、私たちがいる宇宙(3次元空間+時間)とは別の「隠れた次元(余剰次元)」があって、重力の力のほとんどがそっちの次元に漏れ出しているんじゃないか…なんていう、SFみたいな理論を本気で研究している科学者もいるくらい、大きなナゾなんです。

(コラム)ニュートンとアインシュタイン

黒板の前で重力の歴史を学ぶ中学生と抽象的な偉人シルエットの実写風構図
【HIH】ヒカリネット・イメージ

最後に、重力の話には欠かせない、この二人の天才の関係を整理しておきましょう。

「どう作用するか」を計算したニュートン

ニュートンは、「万有引力の法則」という計算式($F = G \frac{m_1 m_2}{r^2}$)を発見しました。これにより、人類は惑星の軌道を正確に計算し、月食や日食を予測し、ロケットを月へ飛ばすことさえ可能になりました。「どう動くか」を記述した、まさに「古典力学の父」です。

「なぜそうなるか」を説明したアインシュタイン

アインシュタインは、ニュートンが答えなかった「なぜ引力は発生するのか?」という根本的な問いに、「それは時空が歪んでいるからだ」という、まったく新しい宇宙観(一般相対性理論)で答えました。

「否定」ではなく「拡張」

ここで大事なのは、「アインシュタインはニュートンを否定した(間違っていると言った)」と誤解されがちですが、そうじゃないんですね。

私たちが地球の上で生活したり、ビルを建てたり、ロケットを飛ばしたりする範囲では、ニュートンの計算式(古典力学)で十分すぎるほど正確です。今でも、ロケットの軌道計算はニュートンの法則が基本です。

しかし、水星の軌道のわずかなズレや、ブラックホール、宇宙全体の膨張といった「ものすごく重力が強い」場所や「宇宙規模」の話、あるいは「GPSの超精密な時間」を扱う場合には、ニュートン理論では説明がつかなくなり、アインシュタインの理論(一般相対性理論)が必要になる、という関係なんです。

アインシュタインの理論は、ニュートンの理論を「より広い範囲(強い重力や高速な世界)でも使えるように拡張した、より根本的な理論」というイメージが近いかもしれませんね。

まとめ:引力や重力がなぜ発生するかの答え

丘の上で地球儀を抱え重力の理解を振り返る中学生の温かい実写風イメージ
【HIH】ヒカリネット・イメージ

いやー、引力や重力がなぜ発生するのか、というナゾ、本当に奥が深いですね。

中学生にも分かるように、と思って書き始めましたが、私自身も改めて勉強になり、宇宙の壮大さに圧倒されてしまいました。

最後に、今回の「なぜ」に対する答えを、科学の進歩に合わせて階層的にまとめてみます。

【レベル1:定義】私たちが感じる「重力」はなぜ発生する?

地球が私たちを引っ張る「引力(万有引力)」と、地球の自転による「遠心力」が合わさった「合力」として発生します。赤道で一番軽く、北極・南極で一番重くなります。

【レベル2:ニュートン】「引力」は「どう」作用する?

「質量に比例し、距離の2乗に反比例する」という法則で計算できます。しかし、これが「なぜ」なのかは説明しませんでした。

【レベル3:アインシュタイン】「引力(重力)」は「なぜ」発生するか?

「力」ではなく、「質量(やエネルギー)が存在すること」が引き起こす「時空の歪み」そのものです。リンゴが落ちるのも、地球が回るのも、その歪んだ時空の中で最も自然な経路(まっすぐな経路)を進んでいるに過ぎません。これが、現代物理学における標準的な回答です。p>

【レベル4:現代物理学】究極の「なぜ」は?

「では、なぜ質量は時空を歪ませるのか?」「なぜ重力は他の力に比べてこれほど弱いのか?」—この問いに対する答えは、まだ見つかっていません。その答えは、「重力子」という素粒子や「量子重力理論」の構築、あるいは「余剰次元」といった、物理学の最前線で今も探求され続けています。

防災士として、地震(プレートが重力で動く)、津波(水が重力で低い方へ流れる)、土砂崩れ(土砂が重力で崩れる)といった自然の力を考えるとき、その大元にある「重力」という不思議な仕組みに思いを馳せると、なんだか自然に対する見方、そして「備え」の重要性が、より深く理解できるような気がします。

宇宙のナゾを解明しようとする科学の探求って、本当にワクワクしますね!そして、その法則の上で暮らす私たちは、その法則(重力)が引き起こす災害に対しても、しっかり備えていかなければなりません。

この機会に、ご自宅の防災対策もぜひ見直してみてください。

防災士の経験から生まれた、信頼できる備え。
経験が語るHIHの「本当に必要な防災セット」。

この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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