地球の自転速度、なぜ感じない?時速1700kmって本当?その理由とは

中学生が地球の自転速度 がなぜ感じないかを勉強しているところ

地球の自転速度、なぜ感じない?時速1700kmって本当?その理由とは

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。

地球の自転速度は、赤道だと時速約1700kmにもなるそうですね。とんでもないスピードです。音速(時速約1200km)をはるかに超えています。それなのに、私たちはその速さを日常生活で全く感じません。これって、考えてみるとすごく不思議じゃないですか?

「なぜ感じないんだろう?」「このスピードでなぜ私たちは吹き飛ばされないの?」「もし急に止まったらどうなるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。この疑問は、実は物理学の基本的なルール、例えば「慣性の法則」や、私たちがどうやって動きを感じるかという「加速度」の仕組みと深く関係しているんです。

この記事では、「地球の自転速度、なぜ感じない」という根本的な疑問について、乗り物の例えなども使いながら、できるだけ分かりやすく、防災士の視点も交えて解説してみたいと思います。物理は苦手かも…という方も安心してくださいね。

  • なぜ猛スピードを感じないのか、その最大の理由
  • 「慣性の法則」と「加速度」の簡単な仕組み
  • 新幹線や飛行機を使った分かりやすい例え
  • 地球の自転がもたらす意外な影響
地球の自転を感じない理由を図解|時速1700kmの超高速スピンと慣性の法則
目次

地球の自転速度、なぜ感じない?物理と慣性の法則

地球の自転をイメージした地球の回転と朝日 実写風イメージ
【HIH】ヒカリネット・イメージ

まず、私たちが猛スピードを感じない「根本的な理由」から見ていきましょう。答えは物理の基本的なルール、「慣性の法則(かんせいのほうそく)」に隠されています。難しく聞こえるかもしれませんが、実はとってもシンプルで、私たちの日常生活にも深く関わっているルールなんですよ。

慣性の法則とは?中学生でもわかる解説

慣性の法則を理解する中学生の実験シーン ボールの動きを観察
【HIH】ヒカリネット・イメージ

「慣性の法則」って、聞いたことはあるけど…という方も多いかもしれませんね。これは、かの有名なニュートンが見つけた運動の第一法則とも呼ばれています。

すごく簡単に言うと、「止まっているモノは、止まり続けようとする」「動いているモノは、そのまま同じ速さでまっすぐ動き続けようとする」という、物体が持つ「現状維持」の性質のことです。

例えば、電車が一定の速度で走っている時、車内でジャンプしても、ちゃんと元の場所に着地できますよね。もし慣性がなければ、ジャンプした瞬間に自分だけその場に取り残され、電車の後ろの壁に叩きつけられてしまいます。

でも実際は、ジャンプした自分も、電車と同じ速度で(慣性で)動き続けているから、元の場所に着地できるわけです。

地球もこれとまったく同じです。私たちは、地球という巨大な「乗り物」に乗っています。そして、私たち人間だけでなく、家も、ビルも、私たちが吸っている「空気(大気)」も、そして広大な「海水」も、地球上のほぼ全てが「一体」となって、同じ時速1700km(赤道の場合)で東に向かって動いているんです。

自分も、周りのものも、全部が同じ速度で動いているので、「動きの差(相対速度)」がゼロ。だから、私たちはその猛スピードを感じない、というわけなんですね。

慣性の法則のポイント

  • 動いている物体は、そのまま「同じ速度で」「同じ方向に」動き続けようとする力。
  • 地球も、私たちも、周りの空気も海も、全部「一緒に」動いている。
  • お互いの「速度の差(相対速度)」がゼロだから、速さを感じない。

時速1700kmでも平気な理由:乗り物の例え

飛行機の中で静かに飛ぶ様子 慣性の働きを説明する例え
【HIH】ヒカリネット・イメージ

「慣性」と言われてもピンと来ない方は、新幹線や飛行機を想像してみると、もっと分かりやすいかもしれません。

飛行機は時速800kmから900kmという猛スピードで飛んでいます。でも、一度上空で速度が安定して、シートベルト着用サインが消えたらどうでしょう?

機内はとても静かで、私たちは席を立って歩いたり、コップに注がれた水を飲んだりできますよね。時速800kmで「風」が吹いているわけでもありません。

これは、機内の「空気」も、私たち乗客も、コップの水も、飛行機と「まったく同じ速度で」一緒に動いている(慣性が働いている)からです。

地球もこれとまったく同じで、「大気(空気)」も地球と一緒に回転しているので、時速1700kmの風(もはや暴風!)が吹くことはないんです。私たちは、地球という乗り物の「車内」に、空気とともども乗っている状態なんですね。

私たちが「動き」を感じるのは、あくまで自分と「周りのもの」との間に速度の差が生まれた時だけ、というわけです。

人が感じるのは「加速度」だけ

車の加速で体が押し付けられる様子 加速度を感じる瞬間
【HIH】ヒカリネット・イメージ

もう一つの大事なポイントは、私たち人間の「感覚」の仕組み、特に平衡感覚にあります。

実は、人間の体(特に耳の奥にある「三半規管(さんはんきかん)」)は、「一定の速度(等速直線運動)」を感じることはできないようにできています。その代わりに、「速度の変化(=加速度)」にはすごく敏感なんです。

例えば、こんな経験ありませんか?

  • (加速)車が急発進した時:体がグッとシートに押し付けられる感覚。
  • (減速)急ブレーキを踏んだ時:体が前のめりになる感覚。
  • (向きの変化)新幹線がカーブする時:外側に引っ張られる感じがする感覚。

これらはすべて「速度の変化(加速度)」です。私たちの感覚器は、生存戦略上、速度そのものよりも「転ぶ」「ぶつかる」「落ちる」といった「変化」を危険信号として素早く察知する必要があったため、加速度に特化して進化したと考えられています。

地球の自転は、46億年前に地球が誕生した時の「惰性(慣性)」で続いており、加速も減速もほとんどない、ものすごーく滑らかな「ほぼ一定の速度」での運動(厳密には等速円運動)です。だから、私たちの敏感な感覚センサーは「異常なし!」と判断して、その動きをスルーしてしまうんですね。

自転速度と緯度の違い、東京は時速何km?

緯度によって異なる地球の自転速度のイメージ 東京や札幌の比較
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ところで、「時速1700km」というのは、地球上で一番スピードが出ている「赤道」での話です。地球の円周(約40,000km)を24時間で割ると、大体1667km/hになります。

地球はコマと同じで、軸(北極点と南極点を結ぶ線)を中心に回っています。そのため、回転軸から一番距離が遠い「赤道」が、一番速くなるんです。

じゃあ、緯度が上がる(北極や南極に近づく)と、どうなるでしょうか?回転する円周が小さくなるので、速度は遅くなります。

じゃあ、日本(例えば東京)は時速何kmくらいだと思いますか?

緯度(場所)による自転速度の比較

東京(北緯約35度)の自転速度は、計算してみると時速約1,370kmくらいだそうです。赤道よりは遅いですが、それでもとんでもないスピードですよね。

他の場所とも比較してみましょう。

場所(緯度)自転速度 (時速)自転速度 (秒速)
赤道(0°)約 1,667 km/h約 463 m/s
沖縄・那覇(約26°)約 1,500 km/h約 417 m/s
東京(約35°)約 1,367 km/h約 380 m/s
北海道・札幌(約43°)約 1,217 km/h約 338 m/s
北極点・南極点(90°)0 km/h0 m/s

※秒速338m/sは、ほぼ音速と同じくらいです。札幌の人も音速で移動しているんですね…。
※北極点や南極点は、回転軸そのものなので、その場で1日1回転するだけで速度はゼロになります。

地球の公転速度も感じないのはなぜ?

地球が太陽の周りを回る公転のイメージ 宇宙から見た地球
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自転の話が出ると、気になるのが「公転」ですよね。地球は自転しながら、同時に太陽の周りも回っています。

この公転速度、なんと時速約10万km(秒速約30km)だそうです…!自転とは比較にならない、とてつもない速さですね。

もちろん、この公転速度も、私たちは全く感じません。

理由は自転とまったく同じです。太陽系という広大な空間を、地球という乗り物が、ほぼ一定の速度で(慣性で)動き続けているからです。私たちも地球と一緒に動いているので、その速さを感じることはないんですね。(厳密には太陽の重力で常に軌道が曲げられている円運動ですが、その軌道があまりに巨大なため、短時間では一定速度とほぼ変わらないんです)

地球の自転速度、なぜ感じない?影響と証拠

地球の自転を観察する子ども 夜空を見上げるシーン
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私たちは自転の速さを「直接」感じることはありません。でも、「間接的」には、地球が回っていることの影響を地球上のあらゆる場所で受けているんです。ここでは、私たちが「感じない」自転が引き起こす現象や、地球が回っている証拠、そして防災にも関わる「もしも」の話について見ていきましょう。

自転の影響:遠心力と体重の関係

地球の自転による遠心力のイメージ 赤道で体重が軽くなる例え
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地球が回っている影響、一つ目は「遠心力(えんしんりょく)」です。バケツに水を入れてぐるぐる回すと、水がこぼれない、あれですね。回転運動には必ず外側へ引っ張られる力が働きます。

地球が自転することで、私たちは常に、宇宙に向かって(外側に)ほんの少しだけ引っ張られています。この遠心力は、地球の引力(重力)を打ち消す方向に働きます。

遠心力は、スピードが速い「赤道」で一番強くなります。その結果、どうなるかというと…。

同じ人間(同じ質量)でも、北極で体重を測るより、赤道で測ったほうが「体重が軽く」なるそうです。

その差は、北極と赤道とで比較した場合、約0.5%にもなります。例えば、北極で体重(質量)50kgの人は、赤道では49.75kgと表示される計算です。この差は、主に2つの理由によるものだそうです。

  • 自転による遠心力の影響(約0.35%):赤道で遠心力が最大になり、重力が打ち消されるため。
  • 地球の形状の影響(約0.15%):地球は自転の遠心力で、赤道付近が少し膨らんだ「みかん」のような形(扁球)をしています。そのため、赤道では地球の中心から遠くなり、引力そのものが少し弱まるため。

この「場所による重力の違い」は、精密な測定には欠かせない要素です。日本では計量法に基づき、使用する地域(北海道と沖縄など)に応じて「はかり」の重力補正が行われています。(出典:国土地理院「日本の重力」

台風の渦は自転のせい?コリオリの力

台風の渦と地球の自転の関係を表す衛星写真風イメージ
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自転の最大の影響といえば、天気予報でおなじみの「台風の渦」です。

台風がなぜ「反時計回り(北半球の場合)」に渦を巻くのか。これも地球の自転が原因で生じる「コリオリの力(ちから)」という、見かけ上の力によるものだそうです。

コリオリの力(転向力)とは?

すごく簡単に言うと、回転する地球の上でモノ(空気や水)が動くと、その進路が曲げられるように見える力のことです。

  • 北半球では、進行方向に対して「右向き」に曲がる。
  • 南半球では、「左向き」に曲がる。
  • 赤道上では、この力は「ゼロ」になる。

台風の中心(低気圧)に向かって、周囲の空気(高気圧)が流れ込もうとします。もし地球が自転していなければ、空気はまっすぐ中心に向かうだけです。

しかし、地球は自転しているため、北半球では中心に向かう空気がコリオリの力を受けて、進行方向の「右」へと曲げられます。中心に向かおうとするすべての空気が「右へ、右へ」と曲げられ続けた結果、あのお馴染みの巨大な「反時計回り」の渦が形成されるのです。

赤道付近で台風(熱帯低気圧)が発生しにくいのは、赤道では渦を巻かせる「コリオリの力」がゼロになるからなんですね。

もしもの備えとして、台風の情報や、台風が来る前の準備リストも、ぜひ確認しておいてくださいね。

地球が回る証拠:フーコーの振り子

フーコーの振り子実験のイメージ 地球の自転を示す科学展示
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「本当に地球って回ってるの?」と疑問に思った昔の科学者が、それを証明するために行った有名な実験が「フーコーの振り子」です。1851年にフランスの物理学者レオン・フーコーがパリで公開実験を行いました。

これは、長ーいワイヤー(数十メートル!)で重いオモリを吊るして、体育館みたいな広い場所で振らす実験です。

原理はこうです。

  1. 振り子そのものは、「慣性の法則」に従い、一度揺れ始めると、宇宙空間に対して「同じ方向」に揺れ続けようとします。
  2. しかし、その振り子を吊るしている建物、実験を見ている私たち、そして足元の地球全体は、自転によってゆっくりと回転しています。

結果として、私たち(地球)から見ると、振動面を保ち続ける振り子の方が、あたかもゆっくりと「回転」しているように見えるんです。

この振り子の「見かけの回転」の速さは、緯度によって変わります。北極点なら24時間で1周しますが、赤道では全く回転しません。この実験によって、私たちは実験室にいながらにして「地球が回っていること」を視覚的に確認できるようになったんですね。

もし自転が急に止まったらどうなる?

地球の自転が止まった場合のイメージ 慣性で動く空気と海
【HIH】ヒカリネット・イメージ

ここからは「もしも」の話です。防災士として、これは非常に興味深い思考実験でもあります。

私たちが自転を感じないのは「慣性で一緒に動いている」からでした。では、もし何らかの理由で地球の「地面だけ」が急ブレーキを踏み、ピタッと停止したら…?

想像してみてください。時速1700kmで走る車が急ブレーキを踏んだら、車内のものはどうなるでしょうか。

そうです。固定されていない私たち人間や建物、そして「海水」や「空気」は、慣性の法則に従って、元の自転速度(赤道で時速約1700km)を保ったまま、東に向かって運動を続けようとします。

自転が急停止した場合の被害想定

これはSF映画の世界ですが、物理法則に従うとこうなると言われています。

  • 超音速の暴風:地表は時速1700km(音速超え!)の暴風に襲われ、すべての建物が瞬時に粉砕されます。
  • 超巨大津波:海水も同じ速度で移動を続け、大陸全土を洗い流す、高さ数百kmにも達する超巨大津波が発生すると言われています。
  • 地殻変動:地表と内部の運動エネルギーの差により、壊滅的な地震や火山噴火が誘発されると考えられます。

皮肉なことに、私たちが「自転を感じない理由(慣性で一体化している)」と、「自転が止まると破滅する理由(慣性で分離される)」は、どちらも同じ「慣性の法則」によって説明されるのです。

もちろん、これは極端な思考実験です。現実には、月の引力が引き起こす潮汐力(ちょうせきりょく)という「ブレーキ」によって、「5万年で1秒」くらい、とてつもなくゆっくりと自転は遅くなっているそうなので、ご安心ください。

とはいえ、自転が止まらなくても、津波は地震によって発生します。地震や津波への備えは、日頃からしっかり確認しておきましょう。

地球の自転速度、なぜ感じないかを知る意義

空を見上げて地球の不思議を感じる子ども 科学への興味を表現
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さて、今回は「地球の自転速度、なぜ感じない?」というテーマでお話ししてきました。

私たちが猛スピードを感じないのは、

  1. 私たちも地球も大気も「みんな一緒」に動いているから(慣性の法則)
  2. 人間の感覚は「一定の速度」ではなく「速度の変化(加速度)」しか感じ取れないから

という2つが大きな理由でした。

普段、地球が回っていることなんて意識しませんが、台風の渦や、もし止まったら…という想像をしてみると、私たちはとてつもない自然のルール(物理法則)の上で、奇跡的なバランスで生かされているんだなと、改めて実感する気がします。

日常では「当たり前」すぎて感じないことも、その仕組みを知ることで、自然への理解が深まり、結果として防災への意識にも繋がるかもしれませんね。

「当たり前」を疑う視点は、防災において「まさか」を想像する力にも通じるかな、と私は思います。

この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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