揺れたのに地震情報がないのはなぜ?原因と確かめ方を防災士が解説

揺れたのに地震情報がないのはなぜ?原因と確かめ方を防災士が解説
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
ついさっきのことですが、部屋にいて「ガタガタッ」と揺れた気がして、慌ててテレビをつけたりスマホの通知を確認したりしたものの、地震速報も震度情報も全く出てこなくて不思議に思ったことはありませんか。「あれ?今の揺れは夢だったのかな?」と自分だけが感じているのかと不安になったり、あるいは「もしかして、自分だけめまいを起こしているのでは?」と体調不良を疑ってしまったりすることもあるかもしれません。
実はこの「揺れたのに情報がない」という現象は、決して珍しいことではなく、防災の現場でもよく質問をいただくテーマの一つです。これには、震度1未満の微震や遠くで起きた深発地震の影響、あるいはトラックの通行や工事による振動、さらにはエコキュートなどの機器が発する低周波音など、物理的な理由が数多く存在します。また、近年の災害の多さからくるストレスや、「地震酔い」という身体的なケースも少なくありません。
ツイッターなどのSNSで必死に検索しても情報がなく、モヤモヤとした気持ちを抱えている方のために、その「正体不明の揺れ」のメカニズムと、誰でもすぐに実践できる対処法について、防災士の視点から詳しくお話しします。
- 地震情報として発表されない「震度0」という概念や観測システムの仕組み
- 建物や周辺環境による物理的な「揺れ」と、身体的な感覚の違いを見分けるポイント
- 揺れたと感じた瞬間に、それが地震かどうかを事実確認するための便利なツールやアプリ
- 正体不明の揺れに対する不安を解消し、万が一の災害に備えるための具体的な心構え

揺れたのに地震情報がない主な原因

「確かに揺れたはずなのに、何も情報が出ない…」。この感覚は、決してあなたの気のせいとは限りません。実は、日本の地震観測システム上の厳密なルールや、特殊な物理現象、そして私たち人間の身体のメカニズムなど、そこには論理的な理由が必ず存在します。まずは、なぜ情報が出ないのか、その代表的な原因を一つずつ紐解いていきましょう。
震度1未満の微震と計測震度の仕組み

私たちが普段テレビやスマホの通知で目にしている「震度」ですが、実は「震度1」からしか発表されないというルールをご存知でしょうか。これは、日本の地震情報における非常に重要なポイントです。
気象庁が発表する地震情報は、原則として震度1以上が観測された場合に速報されます。かつて震度は人間の体感で決められていましたが、現在はすべて機械(計測震度計)が計測した「計測震度」という数値によって厳密に計算されています。
計測震度の「切り捨て」ルール
具体的には、計測された震度が「0.5以上」になると「震度1」と判定されます。逆に言えば、0.5未満の揺れはすべて「震度0」として扱われるのです。
ここがポイント:敏感な人は「震度0」を感じ取る
例えば、計測震度が「0.49」だった場合、数値上は「震度0」として処理され、速報やテロップの対象外となります。しかし、0.49という数値は、限りなく震度1に近い揺れです。
静かな部屋でじっとしていたり、就寝前で感覚が鋭敏になっていたりする状態では、この「震度0」の揺れを人間は十分に感じ取ることができます。
つまり、「揺れた(体感あり)」のに「情報がない(震度0処理)」という現象は、システムの仕組み上、日常的に頻繁に起こり得るものなのです。「私の感覚がおかしいのかな?」と不安になる必要はありません。機械の基準よりも、あなたの感覚の方が繊細だったというだけの話なのです。
(出典:気象庁『震度について』)
遠くの深発地震による異常震域

「揺れたのに、地元の情報が全く出ない」「震源を確認したら、遠すぎて自分には関係ないと思った」というケースでよくあるのが、「異常震域」と呼ばれる現象です。これは、地震波の伝わり方の不思議な性質によって引き起こされます。
プレートが伝える「遠くの揺れ」
通常、地震の揺れは震源から同心円状に広がり、距離が離れるほど弱くなります。しかし、震源が地下深く(数百キロメートル)にある「深発地震」の場合、事情が異なります。
地下深くには、太平洋プレートなどの硬い岩盤が沈み込んでいます。この硬いプレートは、地震の揺れをあまり弱めずに遠くまで伝える「高速道路」のような役割を果たします。その結果、震源の真上(震央)には揺れが伝わらず、プレートが地上近くに顔を出している遠く離れた場所(主に関東や東北の太平洋側など)で強い揺れを感じることがあるのです。
よくあるパターン
オホーツク海や三重県南東沖の深い場所で地震が起き、東京や東北で「震度2〜3」の揺れを感じるといったケースです。
スマホで検索して「オホーツク海」と表示されると、直感的に「こんな遠くの地震が揺れるわけない、これは違う」と思ってしまいがちですが、実はそれが原因だったということがよくあります。
高層階で感じる長周期地震動

マンションの高層階や、都心の高いオフィスビルにお勤めの方に特に多いのが、このパターンです。地上の震度計とは異なる、高層階特有の揺れ方が関係しています。
ゆっくりとした大きな揺れ
遠くで規模の大きな地震が発生した際、高い建物は「長周期地震動」と呼ばれる、ゆっくりとした周期の長い揺れと共振しやすい性質があります。
地上の震度計は、一般的な木造家屋などが被害を受けやすい「周期1秒以下」の細かい揺れに敏感に反応するように作られています。そのため、地上では「震度1」と判定されても、高層階では振幅が増幅され、「震度2〜3」相当の大きな揺れになっていることがあるのです。
「ガタガタ」という衝撃ではなく、「ユラーッ、ユラーッ」と船に乗っているような揺れを感じたら、長周期地震動の可能性が高いです。この場合、テレビの震度表示と自分の体感(恐怖感)が一致しないことが多々あり、それがさらなる不安を招く原因にもなります。
トラックや工事現場等の環境振動

地震ではなく、私たちの生活環境の中に物理的な振動源がある場合も、明確に「揺れた」と感じます。
特に、埋立地などの地盤が比較的軟弱な場所や、幹線道路沿いの家屋では、大型トラックやバスが通過する際の振動を建物が拾いやすくなります。これを「交通振動」と呼びます。
また、近隣で行われている解体工事や道路工事、地下鉄の走行音なども要因となります。
空からの衝撃「ソニックブーム」
稀なケースですが、「ドン!」という爆発音と共に一度だけ強く揺れた場合、「ソニックブーム(空振)」の可能性があります。これは、隕石(火球)の落下や、航空機などが音速を超えた際に発生する衝撃波が空気を伝わって建物を揺らす現象です。この場合、地面は揺れていないため地震計には反応しませんが、窓ガラスや壁が大きく揺れるため、体感としては完全に地震と同じになります。
自身の体調とめまいや地震酔い

ここまでは物理的な揺れの話でしたが、実際には全く揺れていないのに、脳が「揺れている」と錯覚してしまうケースも非常に増えています。これを一般的に「地震酔い」と呼ぶことがあります。
脳の「予測機能」の誤作動
大きな地震を経験した後や、余震が続いている時期は、人間の脳は常に身を守るために「次にいつ揺れるか」を予測する警戒モードに入っています。
この状態では、自分の心臓の鼓動によるわずかな振動や、スマホの画面をスクロールする視覚情報の動きを、脳が誤って「地震の揺れ」として解釈してしまうことがあります。いわば、脳内の「揺れセンサー」の感度がMAXになってしまっている状態です。
また、寝不足や過度なストレス、貧血、あるいは三半規管の不調(メニエール病など)が原因で、フワフワとした浮動性のめまいを感じ、それを地震だと思ってしまうこともあります。これは身体からの「休息が必要」というサインかもしれません。
揺れたのに地震情報がない時の対処法

情報がないからといって、ただ「気のせいかな…」と不安なまま過ごすのは、精神衛生上よくありませんよね。ここからは、揺れを感じた時に「それが何だったのか」を突き止め、論理的に安心するための具体的なアクションをご紹介します。
X (旧ツイッター検索)でリアルタイム確認

私が真っ先におすすめするのは、X(旧ツイッター)でのリアルタイム検索です。これは現代において非常に優秀な「ソーシャルセンサー」として機能します。
検索窓に単に「揺れた」と入れるだけでなく、「揺れた 地域名」「揺れた ドン」のように、具体的な場所や擬音語を組み合わせて検索してみてください。
| 検索結果の傾向 | 考えられる原因 |
|---|---|
| 広範囲で多数の投稿がある | 地震の可能性大。 震源が深い、または解析に時間がかかっており、速報が出るまで数分のタイムラグがある状態です。 |
| 特定の地域だけ集中している | 環境振動の可能性。 近くの工事、爆発事故、あるいは隕石やソニックブームなどの局地的な現象が疑われます。 |
| 自分以外の投稿が全くない | 自宅固有の振動 または めまい。 自宅の前をトラックが通ったか、あるいは自身の体調不良の可能性が高まります。 |
強震モニタアプリで揺れを可視化

「気象庁の発表が出るまで待てない!」「今すぐ揺れているか知りたい!」という方は、防災科学技術研究所が運用している「強震モニタ」のデータを閲覧できるアプリ(「強震モニタビューワー」など)をスマホに入れておくのが一番の解決策です。
これは、テレビで速報される「震度情報」として加工される前の、全国の観測点の「生の揺れデータ」をリアルタイムで地図上に色で表示してくれるものです。震度0未満の人には感じない微弱な揺れでも、地図上の点が青や緑にピカピカと反応します。
色の見方(目安)
【青・濃い緑】:人には感じない微弱な揺れ(震度0相当)。
【黄緑・黄色】:敏感な人が揺れを感じる可能性があるレベル。
【橙・赤】:強い揺れ。直ちに身を守る必要があります。
これを見れば、「あ、やっぱり地図上の点が動いているから、今の揺れは気のせいじゃなかったんだ(でも規模は小さいな)」と事実確認ができたり、逆に「全国どこも全く反応していないから、これは私のめまいかもしれない」と冷静に判断できたりします。これだけで、「わけのわからない恐怖」は解消され、心理的な負担は劇的に軽くなります。
エコキュート等の低周波音を確認

「ブーン」「ごーっ」という唸るような音と共に微振動を感じる場合、近隣の家庭用給湯器(エコキュート)やエネファームの室外機から発生する「低周波音」が原因かもしれません。
低周波音は空気の振動ですが、窓ガラスや雨戸などの建具を共振させ、「ガタガタ」「ミシミシ」という音を発生させることがあります。これが、地震の初期微動(P波)の音と非常によく似ているのです。特に冬場など、給湯器の稼働時間が長い時期に多く発生します。
もし特定の時間帯(夜間やお湯を使う時間)に頻繁に揺れを感じるようであれば、スマホの「低周波音測定アプリ」などを使って簡易的に周波数をチェックしてみるのも一つの手です。原因が地震ではないと分かるだけで、対策の打ちようが出てきます。
症状が続くなら耳鼻科を受診する

強震モニタも反応しておらず、周りの家族も「揺れてないよ」と言っているのに、自分だけ頻繁に揺れや浮遊感を感じる…。そんな状態が長く続く場合は、身体からのSOSかもしれません。
「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」や「メニエール病」などの耳の病気が隠れていることもありますし、自律神経の乱れや「心因性めまい」が原因の場合もあります。「地震のせいだ」「自分が敏感なだけだ」と思い込まず、一度耳鼻咽喉科を受診してみることを強くおすすめします。検査をして原因がわかれば、薬やリハビリで治ることも多いのです。
揺れたのに地震情報がない時の備え

最後に、防災士としてどうしてもお伝えしたいことがあります。
揺れたのに情報がないと、「なんだ、地震じゃなかったのか」と安心してしまいがちですが、「情報がない=安全」というわけではありません。
それがこれから来るかもしれない巨大地震の「前震」である可能性もゼロではありませんし、いつ本当に大きな揺れが来るかは現代の科学でも完全には予測できません。「揺れた気がする」と思ったその瞬間こそが、今の備えを見直すベストなタイミングです。
今すぐできる「3秒」チェックリスト
- スマホの充電:バッテリー残量は十分ですか?モバイルバッテリーは常に持ち歩いていますか?
- 寝室の安全:寝ている場所に家具が倒れてくる配置になっていませんか?
- 明かりの確保:もし今この瞬間に停電したら、手元にライトはありますか?
「原因不明の揺れ」をただ怖がるのではなく、「防災スイッチを入れるきっかけ」にしてしまいましょう。「水も食料もトイレも、最低限の準備はできている」という物理的な備え(モノの準備)ができていると、不思議と「揺れ」に対する精神的な不安も軽くなるものです。
正体不明の揺れに遭遇したら、まずは身の安全を確保し、それから冷静に「検証」する。このサイクルを身につけて、不確実な災害の時代を賢く生き抜いていきましょう。
※本記事の情報は一般的な目安です。体調不良が続く場合は専門医にご相談ください。
