停電はなぜ起きる?台風・地震の仕組みと対策

台風や地震による停電の可能性に備えている家族

停電はなぜ起きる?台風・地震の仕組みと対策

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。

突然の停電、本当に不安になりますよね。特に大きな台風や地震が来たとき、「停電はなぜ起きるんだろう?」と疑問に思ったことはないでしょうか。「うちは大丈夫かな?」「いつ復旧するんだろう?」と心配になるかもしれません。

停電の原因は、実は災害によって全然違います。台風による物理的なダメージや、沿岸部特有の「塩害」という現象。地震の際は、電線が切れるだけでなく、電力の「需給バランス」という大きな仕組みが崩れて広範囲で停電が起きます。他にも夏の落雷や冬の大雪、カラスの巣が原因になることもあるんです。

この記事では、停電が起きる様々な原因と仕組みを、できるだけ分かりやすく解説します。さらに、停電時に最も怖い「通電火災」の予防策や、安全なブレーカーの操作方法、スマホのバッテリー対策、冷蔵庫の中身を守る方法など、いざという時に役立つ「備え」について、防災士の視点からお伝えしていきますね。

  • 停電が起きる主な原因(台風・地震・落雷など)
  • 命を守るために最も重要な「通電火災」の防ぎ方
  • 停電時に役立つスマホや冷蔵庫の対処法
  • 停電の長期化に備えるための必須備蓄品
目次

停電がなぜ起きるか解説!台風と地震の仕組み

停電が起きる仕組みを示す台風と地震の対比イメージ|停電の原因を理解するための説明画像
【HIH】ヒカリネット・イメージ

まず、停電がどうして起きるのか、その「仕組み」から見ていきましょう。ひとくちに停電といっても、台風が原因の場合と地震が原因の場合では、起こり方がまったく違うんです。

すごく簡単に言うと、台風の停電は「物理的に電線や電柱が壊れる」ことが主で、地震の停電は「電力システム全体がバランスを崩して止まる」ことが主な原因だったりします。もちろん両方の要素が絡むんですが、この違いを知っておくだけでも、いざという時の心構えが変わってくるかなと思います。

台風:飛来物や倒木による断線

台風で倒木や飛来物が電線に接触し断線する様子|風災による停電原因のイメージ
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台風による停電で一番イメージしやすいのが、この「物理的なダメージ」ですね。

台風のものすごい強風は、私たちが思っている以上に強力です。街中の看板や、工事現場の足場、お家のトタン屋根、さらには農地のビニールハウスまで吹き飛ばします。そういった「飛来物」が電線に直撃して、電線をブチッと切断(断線)させたり、複数の電線が触れ合って火花が散る状態(ショート・短絡)を引き起こしたりします。

また、強風だけでなく「大雨」の影響も深刻です。大量の雨によって地盤が緩むと、山や崖が崩れて(土砂崩れ)、電柱そのものをなぎ倒してしまうケースもあります。

それから、非常に多いのが「倒木」です。強風で木が倒れたり、大きな枝が折れたりして電線にもたれかかると、その重みで電線が切れたり、ショートしたりします。これも停電の非常に多い原因の一つです。

台風:沿岸部で多発する「塩害」

海風に含まれる塩分が碍子に付着して停電を引き起こす塩害の仕組み|沿岸部特有の停電原因
【HIH】ヒカリネット・イメージ

あまり聞き慣れないかもしれませんが、特に海沿いの地域で広範囲の停電を引き起こす、厄介な原因がこの「塩害(えんがい)」です。

電柱の上を見ると、電線を支えている白いお皿のような部品がありますよね。あれは「碍子(がいし)」といって、電気が電柱や支持物に漏れないようにするための、セラミック製(陶磁器)の絶縁部品です。普段は電気を通しません。

しかし、台風が襲来すると、強風が海水を激しく巻き上げ、塩分を含んだ霧や飛沫(しぶき)が内陸部まで運ばれてきます。この塩分が、碍子の表面にベットリと付着してしまうんです。

【深掘り】塩害停電のメカニズム

  1. 台風の強風が塩水を運び、碍子(がいし)の表面に塩分が付着します。
  2. 付着した塩分が、台風がもたらす高い湿度や霧、小雨によって湿気を帯び、電気を通しやすい状態(導電性)に変化します。
  3. 碍子表面の絶縁性能がガクッと落ち、本来流れるべきではない電気が、碍子の表面を伝って大地へと逃げ出します。これが「漏れ電流」です。
  4. この漏れ電流が一定以上になると、最終的にショート(短絡)を引き起こし、電力システムの保護装置が作動して送電をストップ(=停電)させます。

この塩害の怖いところは、必ずしも「雨風が強いほど被害が大きくなる」とは限らない点です。

平成17年の台風では、「風が強く大量の塩分を運んだのに、洗い流すほどの豪雨を伴わなかった」ために、碍子に付着した塩分が洗い流されず、かえって広範囲にわたる長時間の停電事故につながった事例が報告されています。

つまり、「塩水を運ぶ強風」と「洗い流さない程度の雨」という組み合わせは、塩害による広域停電のリスクを非常に高める、危険なパターンなんです。

地震:発電停止と需給バランスの崩壊

地震で需要と供給のバランスが崩れ広域停電につながる仕組み|系統崩壊のイメージ図
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次に、地震による停電です。台風の停電が「徐々に被害が拡大していく」のとは対照的に、地震の停電は「揺れとほぼ同時に、被害がない地域まで含めて広範囲で瞬時に起きる」のが最大の特徴です。

これには、大きく分けて二つの理由があります。

1. 送電・配電設備の「直接的損傷」

まず、台風と同じく、地震の揺れそのものが電力インフラを物理的に破壊するケースです。地盤の液状化や地割れで電柱が倒壊したり、地下に埋まっている電力ケーブルが断線したりします。また、変電所にある変圧器などの重要機器が、強い揺れによって破損し、送電機能が停止することもあります。

2. 電力の「需給バランス崩壊」(広域停電の主因)

物理的な被害が起きていない地域まで含めて、なぜ地震発生と同時に広範囲で停電するのか。その最大の理由は、電力システム全体の崩壊を防ぐための「防御反応」にあります。

ちょっと難しく聞こえるかもしれませんが、電力システムというのは、発電所が生み出す「供給(Supply)」と、私たち家庭や工場が消費する「需要(Demand)」が、常にミリ秒単位で「$Supply = Demand$」の完璧なバランスを保つことで成り立っています。

しかし、大規模な地震が発生すると、このバランスが劇的に崩れます。

地震で広域停電が起きる流れ

  1. 大きな揺れを感知し、各地の火力発電所や原子力発電所が、設備の安全確保のために自動的に運転を「緊急停止」します。
  2. これにより、電力の「供給力(Supply)」が瞬時に、かつ大幅に減少します。
  3. 一方で、家庭や工場の電力「需要(Demand)」は(停電するまでは)変わらず存在し続けます。
  4. 結果、「$Supply \ll Demand$(供給が需要を大幅に下回る)」という極端なアンバランス状態が発生します。

この状態が続くと、電力の品質(周波数や電圧)が維持できなくなり、電力網全体が連鎖的に停止する「系統崩壊(ブラックアウト)」に至ります。これを防ぐため、あるいは系統崩壊が実際に発生した結果として、広範囲で一斉に停電が発生するんです。

これは「故障」というよりも、発電機の焼損など、より深刻なインフラの物理的破壊からシステム全体を守るための、積極的な「防御反応」なんですね。

夏の「落雷」と冬の「大雪」

落雷と大雪が電線や設備に影響し停電を引き起こす季節特有の原因イメージ
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台風や地震以外にも、特定の季節に多発する停電原因があります。それが「落雷」と「大雪」です。

夏の「落雷」による停電

夏の雷は、停電の主要な原因の一つです。雷による停電は、「直撃」と「誘導」の2パターンに分けられます。

  • 直撃雷: その名の通り、送電線や変電設備、電柱などに、1億ボルトにも達すると言われる雷が直接落ちることです。この凄まじいエネルギーが設備を物理的に破壊・損傷させ、停電を引き起こします。
  • 誘導雷(雷サージ): これが、たとえ遠くで雷が鳴っていても停電や家電故障を引き起こす、より厄介な現象です。電線や電柱の「近く」に落雷すると、その強力な電磁界の変化によって、電線上に瞬間的な高電圧・大電流(=雷サージ)が発生します。この雷サージが電線を伝って家庭やオフィスに侵入し、分電盤のブレーカーを作動させて停電を引き起こすだけでなく、コンセントに接続されたPC、テレビ、ルーターなどの精密機器を内部から破壊する可能性があります。

冬の「大雪」による停電

大雪による停電は、単なる「雪の重み」だけが原因ではありません。

  • 樹木の倒壊: 雪の重みによって樹木がしなり、電線に触れたり、倒木となって電線を切断したりします。
  • ギャロッピング現象: これは、特定の条件下で電線が「踊る」ように激しく振動する現象です。電線に雪や氷が「翼」のようないびつな(非対称な)断面形状で付着し、そこに一定の強さの風が吹き付けると、揚力(飛行機が飛ぶのと同じ力)が発生します。これにより、電線が上下に大きく「ギャロップ(疾走)」するように振動し始め、本来は離れているはずの電線同士が接触し、ショート(短絡)して停電を引き起こします。

カラスの巣やクレーン車も原因に

カラスの巣やクレーン車の接触が停電を招く人為・動物起因のトラブルイメージ
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実は、自然災害だけでなく、私たちの身近なところにも停電の原因は潜んでいます。

樹木・鳥獣の接触

これは、特に春・夏(動植物の活動期)に多発する停電原因です。ご自宅の庭木や山林の樹木が成長し、電線に触れることでショート(地絡)を引き起こします。

また、鳥や獣が原因になることもあります。特にカラスは、巣の材料として針金製のハンガーなどを運ぶことがあり、これが電線や変圧器に触れると深刻な停電事故の原因となります。

人為的ミス・事故

建設現場や道路工事などにおける人為的なミスも停電を引き起こします。代表的な例が、クレーン車のアームや吊り上げた資材が、誤って高圧送電線に接触する事故です。

送電線は高電圧であるため、わずかな接触でも大規模な停電につながります。過去の事例では、クレーン車の接触事故一つで約28,000世帯が停電するなど、その影響は甚大です。

停電はなぜ起きる?台風・地震の必須対策

台風や地震の停電に備えるための防災グッズと対策イメージ|停電対策の基本
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停電が起きる様々な原因、なんとなくイメージしていただけたでしょうか。原因が「物理的な破壊」であれ、「システム的な防御反応」であれ、私たちにとって「電気が使えない」という事実は同じです。

ここからは、その原因を知ったからこそできる、「じゃあ、私たちは何をすべきか」という具体的な対策を見ていきましょう。停電が起きた時、そして停電から復旧する時に、命と財産を守るために本当に重要な行動があります。

最も危険な「通電火災」を防ぐ

停電復旧時の通電火災を防ぐためにブレーカーを操作する様子|通電火災の予防イメージ
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私が防災士として、停電時に最も警戒してほしいと伝えているのが、この「通電火災(つうでんかさい)」です。

これは、地震や水害による停電が復旧し、電気が再び流れ始めた(通電した)タイミングで発生する火災のことです。阪神・淡路大震災や東日本大震災では、原因が特定された火災の多くが、この通電火災(あるいは電気系統の火災)であったと指摘されています。

なぜそんなことが起きるのか? 主に以下の2つのパターンがあります。

通電火災の主な発生パターン

  1. 転倒・散乱した電化製品への再通電 地震の揺れにより、電気ストーブ、アイロン、照明器具、水槽用ヒーターなどが転倒し、カーテン、布団、散乱した書類などの可燃物に接触した状態になります。停電中は電源が切れていますが、住民が避N難した後、電力が復旧すると、これらの機器の電源が自動的に「入」の状態となり、接触していた可燃物に着火します。
  2. 損傷した配線・機器からの発火 地震で家具が転倒し、その下敷きになった電源コードが損傷(被覆が破れる)したり、水害(浸水・雨漏り)でコンセントや電化製品の内部基板が濡れたりすることがあります。その損傷や浸水に気づかないまま電気が復旧すると、損傷箇所でショートして火花が発生したり、濡れたコンセント部で発火したりします。

通電火災の最大の脅威は、「住民が避難した後、無人の建物から発生する」点にあります。火災に気づく人がいないため初期消火が不可能であり、発見が遅れ、周囲の建物に延焼しやすいという極めて危険な特性を持っています。

こうした危険性については、公的な機関も強く注意を呼びかけています。(出典:東京消防庁『出火防止対策』

避難前に必須!ブレーカーの操作

避難前にメインブレーカーを切る防災行動のイメージ|停電時の安全対策として重要な操作
【HIH】ヒカリネット・イメージ

では、その恐ろしい「通電火災」をどう防ぐか。最も確実で、誰でもできる予防策があります。それは「停電時に家を離れるなら、ブレーカーを落とす」という行動です。

1. 電化製品のプラグを抜く

まず、停電が発生したら、家の中にいる場合でも、発熱する機器(電気ストーブ、アイロン、ドライヤー、トースター、水槽用ヒーターなど)や、損傷の恐れがある機器の電源プラグをコンセントから抜く習慣をつけましょう。

2. 避難時は「メインブレーカー」を落とす

これが最も確実な予防策です。家を離れて避難所などへ移動する場合は、必ず玄関先などにある分電盤の「メインブレーカー(漏電遮断器またはアンペアブレーカー)」を「切」(OFF)にしてください。

これにより、もし自分がいない間に電気が復旧しても、家の中に電気が流れることはなくなり、通電火災のリスクをゼロにできます。

【補足】自宅だけ停電? 漏電遮断器の安全な復旧手順

「近隣は電気がついているのに、自宅だけが停電している」という場合、電力網ではなく、自宅の分電盤(ブレーカー)が作動している可能性があります。特に「漏電遮断器(一番大きいスイッチ)」が落ちている場合は、家の中のどこかで漏電(電気が漏れている)が発生している危険なサインです。

安全に確認・復旧するため、以下の手順を実行してください。

【安全な復旧手順】漏電遮断器が作動した場合

これは、自宅内の「漏電(不良回路)」を安全に特定するための診断手順です。

  1. まず、分電盤内にある全ての安全ブレーカー(小さいスイッチ群)を「切」(下)にします。
  2. 漏電遮断器(一番大きいスイッチ)を「入」(上)にします。
  3. 安全ブレーカーを、1つずつ、ゆっくりと「入」(上)にしていきます。
  4. ある安全ブレーカー(例:「台所」)を「入」にした瞬間に、再び漏電遮断器が「切」になったら、その「台所」の回路が漏電またはショートの原因です。
  5. 原因と特定された安全ブレーカー(「台所」)を「切」にしたまま、再度、漏電遮断器を「入」にし、残りの安全ブレーカーを「入」にします。

<結果> これにより、不良回路(例:浸水したエアコン、故障した電子レンジ)を切り離したまま、安全な回路(例:リビングの照明)だけを復旧させることができます。

※原因となった回路や家電製品は、漏電や火災の危険があるため、必ず電気工事業者など専門家による点検・修理が完了するまで使用しないでください。これはあくまで応急処置です。

スマホのバッテリー節約術4選

停電時にスマホのバッテリーを節約するための設定と対策イメージ|停電中の連絡手段確保
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停電時、スマートフォンは情報収集や家族との連絡に欠かせない生命線です。でも、バッテリーが尽きれば何の役にも立ちませんよね。いざという時にバッテリーを最大限長持ちさせる、本当に効果のあるテクニックを紹介します。

停電時のスマホ延命テクニック4選

  1. 画面の明るさを「最低」に スマートフォンで最もバッテリーを消費するのは、実は「ディスプレイ(画面)」です。設定メニューから、またはコントロールセンターで、手動で輝度(明るさ)を最低レベルまで下げてください。これだけでも効果は絶大です。
  2. 「低電力モード」や「非常用節電機能」をオンに iPhoneでもAndroidでも、この設定をオンにするだけで、バックグラウンドでのアプリ更新やメール受信、視覚効果などが自動的に制限され、バッテリー消費を大幅に抑えてくれます。
  3. 使わない通信(Wi-Fi, Bluetooth, GPS)をオフに Wi-FiやBluetooth、GPS(位置情報サービス)は、使っていなくても常に電波や信号を探し続けており、じわじわとバッテリーを消費します。これらを使わない時は、こまめにオフにしましょう。
  4. 【最重要テクニック】「機内モード」の活用 災害時は携帯電話の基地局も停電したり、アクセスが集中(輻輳)したりして、「圏外」や「電波が弱い」状態になることが多くあります。スマートフォンは「圏外」の状態だと、「電波はどこだ!?」と必死に電波を探し回る「サーチ動作」を自動的かつ継続的に行うため、通常使用時よりもはるかに速いスピードでバッテリーを消耗します。 情報を確認する必要がない時(例えば就寝時や、家族と会話している時)は、端末を「機内モード」に設定し、このサーチ動作を強制的に停止させることが、バッテリーを長持ちさせる最も重要なテクニックです。

もちろん、こうした節約術とあわせて、大容量のモバイルバッテリーを備えておくことが大前提です。スマホの電源確保がなぜ重要かについては、基地局の問題も含めて防災ラジオの必要性を解説した記事でも触れています。

さらに根本的な電源対策として、カセットボンベで発電できる機器や、ソーラーパネル付きの「ポータブル電源の選び方と活用法」についても知っておくと、より安心かなと思います。

冷蔵庫の食品を守る保冷テク

停電中に冷蔵庫の保冷時間を延ばすための工夫を示したイメージ|食品を守る停電対策
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停電により、家庭で最も大きな影響を受けるのが冷蔵庫ですよね。中身の食品をいつまで安全に保てるのか、その目安を知っておきましょう。

一般的に、ドアの開閉を最小限にした場合、保冷時間は以下の通りとされています。

  • 冷蔵室: 約 2〜3時間 (夏場で室温が高いと、さらに短くなる可能性があります)
  • 冷凍室: 約 8〜12時間 (※これは冷凍庫内が食品で詰まっている場合。空きスペースが多いと、保冷時間はさらに短くなります)

この時間を少しでも延ばすために、私たちができることがあります。

冷蔵庫を延命させるコツ

1. 【厳守】ドアの開閉を「最小限」に

これが一番重要です。庫内の様子が気になっても、開けるたびに貴重な冷気が外に逃げ、暖かい空気が入り込み、庫内温度が上昇します。停電したら、中身を取り出す時以外は、絶対に開けないと決めてください。

2. 【平時からの備え】冷凍庫は「隙間なく」詰めておく

これは平時からの備えですが、冷凍庫内は、普段から「隙間なく詰めておく」ことが推奨されます。凍った食品同士が互いに保冷剤の役割を果たし(熱容量が大きくなる)、保冷効果が格段に長持ちします。スペースが空いていたら、水を入れたペットボトルを凍らせておくだけでも効果があります。

3. 【停電時の対策】保冷剤を「冷蔵室の上段」へ

冷凍庫に保冷剤や凍らせたペットボトルがある場合、それらを「冷蔵室の上段」に移動させましょう。冷たい空気は上から下に対流するため、冷蔵室の上段に置くことで、庫内全体を効率よく冷やし続けることができます。

停電長期化への「備え」と備蓄品

停電が長期化した場合に必要な備蓄品の例をまとめたイメージ|停電・災害への備え
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停電が数時間ではなく、数日間にわたって続く可能性も想定しなければなりません。特に大規模災害時は、インフラの復旧に時間がかかります。生活を維持するための「長期化」に備えた、必須の備蓄品をリストアップします。

カテゴリ必須アイテム備考(必要性の解説)
食料・水3日分(推奨1週間)の非常食、飲料水、カセットコンロとボンベ飲料水は「1人1日3L」が目安。停電は断水(給水ポンプ停止)を伴うことが多いため、水は最重要です。カセットコンロは調理とお湯沸かしに必須。
照明懐中電灯、LEDランタン(複数)火災リスク(通電火災、余震)のためロウソクは非推奨。枕元とリビング、トイレなど各所に。
電源モバイルバッテリー、乾電池(各種)スマホ充電、ラジオ、照明用に必須。ソーラー充電式やポータブル電源が理想。
情報携帯ラジオ(手回し充電式など)スマホが圏外・バッテリー切れでも、災害情報を得るための生命線。
衛生簡易トイレ、携帯トイレマンションなどでは停電・断水でトイレが使えなくなります。これは最も深刻な問題の一つです。必ず備蓄してください。
除菌スプレー、ウェットティッシュ断水時に水が使えないため、衛生管理(手指、食器)に必須です。
季節(夏)塩飴、扇子、電池式扇風機エアコン停止による熱中症対策。特に高齢者や乳幼児がいる家庭は重要。
季節(冬)使い捨てカイロ、毛布、断熱シート、カセット式ストーブ暖房停止による低体温症対策。カセットコンロは暖房代わりにもなります(換気注意)。
その他現金(特に小銭)キャッシュレス決済、ATMが全て停止するため。公衆電話や自販機にも小銭が必要。

これらの備蓄品をどう準備すればいいか、より具体的な中身については、「非常持ち出し袋 経験者が考える本当に必要なもの」の記事で、持ち出すリュックの中身について詳しく解説しています。

また、食料に関しては、ただ備蓄するだけでなく「どう美味しく食べるか」も重要です。以下の記事なども参考に、ご自身の家庭に合った備えを進めてみてください。

【備えに関するご注意】

ここで紹介した備蓄品のリストや数量は、あくまで一般的な目安です。ご家族の構成(乳幼児、高齢者、ペットの有無)や、お住まいの地域(都市部、郊外、マンション、一戸建て)、持病の有無などによって、本当に必要なものは大きく変わってきます。

リストを参考にしつつ、ぜひ「ご自身の家庭では何が一番必要か」「何が足りないか」を具体的に想像しながら、オリジナルの備えを準備してみてください。

停電がなぜ起きるかを知り台風や地震に備えよう

家族が停電の仕組みを学び災害に備えている様子のイメージ|停電対策の理解と準備
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今回は、「停電はなぜ起きるのか」という疑問について、台風、地震、その他の災害や事故に至るまで、その工学的な発生メカニズムをできるだけ分かりやすく解説してきました。

停電のメカニズムを知ることは、単なる知識の獲得に留まらない、と私は思っています。

「通電火災」のメカニズムを知ることは、「避難時にブレーカーを落とす」という最も重要な安全行動の強い動機付けになります。 「圏外時のバッテリー消耗」の仕組みを知ることは、「機内モードを活用する」という具体的な延命テクニックにつながりますよね。

気候変動の影響により、私たちが直面する自然災害は確実に激甚化しています。電力会社の方々も懸命に復旧作業にあたってくださいますが、その作業には危険が伴い、限界もあります。もはや「電力は常に安定供給されて当たり前」という前提は、成り立たない時代に入っているのかもしれません。

停電のメカニズムを正しく理解し、それに基づいた具体的な「事前の備え」(備蓄、知識、行動計画)を行うこと。それこそが、予測不可能な災害がもたらす停電というリスクに対する、最も確実な防御策となります。

この記事が、皆さんの「いざ」という時の不安を少しでも減らし、具体的な行動のきっかけになれば、防災士としてこれほど嬉しいことはありません。

この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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