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台風の目に入るとどうなる?青空の罠と吹き返しの恐怖

台風の目について話している中学生

台風の目に入るとどうなる?青空の罠と吹き返しの恐怖

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。

猛烈な雨風が突然ピタリと止んで、空には青空が見える。まるで台風が過ぎ去ったかのような静けさ。でも、スマホのニュース速報では「現在、台風の目の中にいます」と報じられている…。そんな不思議で、どこか不気味な体験をしたことはありませんか?あるいは、映画やドラマのワンシーンで見たことがあるかもしれませんね。

「台風の目に入るとどうなるの?」という疑問、これは単なる自然現象への好奇心だけではありません。実はこの現象の裏側には、私たちの命に関わる重大な「生存の罠」が隠されているんです。この静けさを「台風が去った」と勘違いして外に出てしまい、その後の急激な変化に巻き込まれてしまう事故が、過去の災害でも後を絶ちません。

今回は、台風の目の正体から、その中に入ったときに私たちがとるべき行動、そして絶対にやってはいけないNG行動まで、防災士の視点で徹底的にわかりやすくお話しします。「知っている」というだけで、あなたとあなたの大切な家族を守れる確率がグンと上がりますよ。

この記事でわかること

  • 台風の目で青空が見えたり風が止んだりする科学的な理由
  • 急激な気圧変化が引き起こす頭痛や耳の不調などの「気象病」
  • 台風の目が過ぎた直後に襲ってくる「吹き返し」の本当の恐ろしさ
  • 目の中にいる短い時間を活用して生存率を上げるための具体的な行動
台風の目に入るとどうなる?青空の罠と吹き返しの恐怖

台風の最中に風がピタッと止まり、青空が見える現象「台風の目」。 「もう通り過ぎたから大丈夫」と外に出てしまうと、命に関わる危険があります。 この動画では、台風の目のメカニズムと、その後に訪れる「吹き返し」の恐怖について解説します。

▶️ 動画を見る

台風の目で油断すると危険な理由と吹き返しの仕組みを説明する防災漫画

台風の目に入って一時的に静かになっても、吹き返しの強風が来ることを解説した防災マンガ
目次

台風の目に入るとどうなる?気圧と天気の真実

台風の中心部だけ雲が切れ、周囲を厚い雨雲に囲まれた静かな空間が見える様子

まずは、台風の目に入るとどうなるのか、その不思議な現象の裏側にある科学的なメカニズムについてお話しします。なぜ、あれほど激しい嵐の中心に、ぽっかりと静かな空間ができるのでしょうか?そこには、地球規模の物理の力が働いています。

台風の目で青空が見える下降気流の仕組み

台風の目の中で雲が少なくなり、下降気流によって青空が広がっている空の様子

台風の目に入ると、それまでの暴風雨が嘘のように止み、雲の切れ間から青空や星空が見えることがあります。これは「下降気流」という空気の流れが大きく関係しているんです。

台風の本体は、反時計回りに吹き込む湿った空気が上昇してできる巨大な積乱雲の塊です。特に目の周囲にある「壁雲(アイウォール)」では、ものすごい勢いで空気が空高く駆け上がっています。しかし、その反動のような形で、台風の「中心部だけ」は、上空から地面に向かってゆっくりと空気が降りてくる「下降気流」が発生しているのです。

空気というのは、上空から地面に向かって下降すると、気圧が高くなるにつれて圧縮され、その熱エネルギーで温度が上がる性質があります(これを断熱圧縮と言います)。ドライヤーの温風をイメージしてください。この温かく乾いた空気が降りてくることで、そこにあった雲の粒が蒸発して消えてしまい、結果として「晴れ間」が現れるわけですね。

つまり、台風の目は、激しい嵐の中に物理的に作られた「雲のないドライヤーのような空間」と言えるかもしれません。この気圧と天気の仕組みについては、高気圧が晴れる理由とも似ているので、興味がある方は以下の記事も参考にしてみてください。

低気圧と高気圧、なぜできる?見分け方を解説

急激な気圧低下で頭痛が起きるメカニズム

台風通過中の気圧低下で体調不良を感じ、頭を押さえて休んでいる室内の様子

「台風の目に入るとどうなるか」という問いに対して、体調の変化を挙げる方も非常に多いですね。最も典型的な症状が「激しい頭痛」です。これは、台風の中心が周囲に比べて極端に気圧が低いことが直接的な原因です。

私たちの体は、普段1気圧(約1013hPa)という圧力で外側からギュッと押されています。しかし、強い台風の中心付近では、これが950hPaや、時には920hPaくらいまで急激に下がります。これはエレベーターで一気に高層階へ上がるのとは比較にならないほどの変化です。

外から押す力が弱まると、相対的に体の中からの圧力が強くなり、体内の血管が膨張してしまいます。特に脳の血管が広がって周囲の三叉神経などを圧迫・刺激することで、ズキズキとした拍動性の頭痛(片頭痛)が引き起こされると考えられています。「気圧の谷」なんて言葉がありますが、台風の目はまさに「気圧の深淵」なんです。

耳の閉塞感など体調不良への対処法

台風時の気圧変化による耳の違和感に対し、家族が室内で落ち着いて対応している様子

気圧の急低下は、耳にも顕著な影響を与えます。飛行機に乗った時やトンネルに入った時のような「耳がツーンとする」あの不快感です。これは、鼓膜の内側にある「中耳」の空気の圧力が、急激に下がった外の気圧よりも高くなってしまい、鼓膜が外側に向かってパンパンに押し出されてしまうために起こります。

この状態が続くと、耳鳴りやめまい、強い不安感を覚えることもあります。特に小さなお子さんは、耳の痛みをうまく言葉にできず泣き出してしまうこともありますので、大人がケアしてあげることが大切です。

【防災士のワンポイント】耳抜きテクニック 耳の詰まりを感じたら、無理に我慢せず早めに「耳抜き」を試してください。

  • 唾(つば)を飲み込む(何度もゴクリとする)
  • 大きなあくびをする(顎を動かすのがコツ)
  • 飴やガムを噛む(顎の動きで耳管が開きやすくなります)

これらを行うことで、耳と鼻をつなぐ「耳管」が開き、鼓膜の内外の圧力が調整されて楽になります。

もし頭痛やめまいがひどくて動けない場合は、無理をせず部屋を暗くして横になりましょう。これは医学的にも「気象病」や「天気痛」と呼ばれる反応であり、決して「気のせい」ではありません。台風が過ぎれば自然と治まりますので、まずは安静が第一です。

突然静かになる無風状態とスタジアム効果

台風の目の中で周囲を高い雲に囲まれ、中央だけ空が開いたスタジアム状の空の景色

台風の目の内部に入ると、周囲を見渡した際に「スタジアム効果(Stadium Effect)」と呼ばれる、世にも奇妙で幻想的な光景に出会うことがあります。

これは、周囲360度を「アイウォール」と呼ばれる数千メートルから1万メートル以上の高さの分厚い積乱雲の壁に囲まれ、自分たちがまるで巨大な円形スタジアム(競技場)の底、あるいは深い井戸の底に立っているかのように見える現象です。台風の強い遠心力によって、雲の壁が上に行くほど外側に広がっているため、このような「すり鉢状」の景色が生まれるんですね。

雲の切れ間から太陽の光(薄明光線)が差し込み、荒れ狂う海面や濡れた地面を照らす様子は、神々しくもあります。しかし、その壁の向こう側数キロ先では、家を吹き飛ばすような暴風が吹き荒れているのです。この「スタジアム」は、自然界で最も危険な場所の一つであることを忘れてはいけません。

目の形状や大きさでわかる台風の勢力

上空から見た台風の雲で、中心にくっきりとした目が形成されている様子

テレビのニュースや気象庁のサイトで、台風の衛星画像を見る機会があると思います。その際、「目」の形や大きさに注目してみてください。実は、目の形を見るだけで、その台風がどれだけ危険な状態なのか、ある程度判断することができるんです。

目の特徴推定される状況とリスク
くっきりとした円形【非常に危険】 台風の構造が安定し、猛烈な勢力を維持しています。遠心力が強く働いており、破壊力が最大化している状態です。
ピンホール(極小の目)【爆発的な危険】 目が針の穴のように小さい場合、中心付近の風速が異常に加速していることを示します。急激に発達している最中で、猛烈な暴風を伴います。
ぼやけて不明瞭【やや衰退傾向?】 勢力が衰え始めている、または上陸後の摩擦で構造が崩れかけているサインです。ただし、雨の脅威は依然として高いので油断は禁物です。

一般的に、日本列島に上陸すると、地面との摩擦や水蒸気の供給が減ることで、台風の目は急速に崩れて不明瞭になります。しかし、上陸してもなお「くっきりとした目」が維持されている場合は、過去に甚大な被害をもたらした伊勢湾台風や室戸台風クラスの勢力である可能性があります。この場合は、迷わず最高レベルの警戒をしてください。

防災士解説!台風の目に入るとどうなるか知る

台風の目に入った際、家族が室内で状況を確認しながら落ち着いて行動している様子

さて、ここからが本題です。もし実際に、あなたの住む地域が台風の目に入ってしまったらどうすればいいのでしょうか? 防災の観点から言えば、この数十分から数時間の過ごし方が、その後の生存率を大きく左右します。ここからは、命を守るための具体的なアクションプランをお話しします。

目が通過した直後の吹き返しと風向逆転

台風の目の通過後、風向きが変わり街路樹や物が逆方向に揺れ始めている様子

台風の目に入るとどうなるかを知る上で、最も恐ろしく、そして最も重要なのが「吹き返し(返し風)」の存在です。台風の目はあくまで通過点に過ぎません。目が通り過ぎると、再びアイウォールがかかり、猛烈な暴風が襲いかかります。

ここで絶対に覚えておいてほしいのは、「風向きが180度逆転する」という事実です。 台風は反時計回りの渦です。例えば、目の前まで「南東の風」が吹いていて、家の南側の窓ガラスがガタガタと音を立てていたとします。しかし、目が通過した直後、今度は正反対の「北西の風」が、いきなり最大風速で叩きつけてくるのです。

これまで風に耐えていた建物や街路樹も、逆方向から揺さぶられることでダメージが蓄積し(金属疲労のようなイメージです)、一気に倒壊や破損に至るケースが非常に多いのです。また、避難のつもりで建物の「風裏(風が当たらない側)」に移動していた人が、風向きが変わった瞬間に「風表」になってしまい、飛来物の直撃を受ける事故も多発しています。

「雨が止んだからもう大丈夫」と思って外に出た瞬間、逆方向からの突風に襲われる。 これが台風の目における典型的な被災パターンです。風の強さと被害の目安については、気象庁の資料などが参考になりますが、以下の記事でも詳しく解説しています。

風速はどれくらいから強い?目安と危険度を防災士が解説

通過中の静寂な時間の正しい過ごし方

台風の目で一時的に静かになった時間に、室内で備えを整えている家族の様子

もし運良く(あるいは運悪く?)台風の目に入り、一時的に風雨が収まったとしたら、その時間を「ただの休憩」にしてはいけません。その時間は、神様がくれた「後半戦への準備タイム(ハーフタイム)」だと捉えてください。

具体的には、以下のToDoリストを実践することをお勧めします。

台風の目の中にいる間の【生存ToDoリスト】

  • 詳細な情報収集: 雨雲レーダーや台風情報を確認し、「目の大きさ」と「移動速度」から、あと何分くらいで吹き返しが始まるかを予測します。
  • トイレと食事を済ませる: 暴風が再開すると、家の中でも移動が困難になります。また、停電や断水に備え、静かなうちにトイレを済ませ、軽い食事や水分補給をしておきましょう。
  • 「逆側」への備え: 次に来る風は逆向きです。これまで風が当たっていなかった側の雨戸や窓の鍵を再確認し、カーテンをしっかり閉めてください。
  • 避難スペースの移動: 窓ガラスが割れることを想定し、家の中心部や、窓のない廊下・トイレなどに避難スペース(布団や懐中電灯を持ち込む)を確保してください。
  • メンタルケア: 異常な気圧変化や不安で、子供やペットがパニックになっているかもしれません。優しく声をかけ、落ち着かせてあげてください。

屋外への偵察などやってはいけないNG行動

台風の目で雨が止んでも屋外に出ず、家の中で安全を優先している住宅の様子

逆に、台風の目に入っている最中に「絶対にやってはいけないこと」があります。それは「屋外に出ること」です。これに尽きます。

「田んぼの様子が気になるからちょっと見てくる」「川の水位が心配だから見に行く」「屋根の瓦がズレた音がしたから修理しなきゃ」。 これらは、残念ながら過去の災害で多くの命を奪ってきた行動パターンです。台風の目は動いています。静寂はいつ破られるかわかりません。屋根に登っている最中に突然の吹き返しが来たら、身を隠す場所もなく、風速40m/s以上の風に煽られて転落してしまいます。

また、最近では「青空が見えた!映える写真が撮れる!」と、SNS投稿のために外に出る人も見受けられますが、これも極めて危険です。風が弱まっているとはいえ、上空にはまだ飛散物が舞っている可能性がありますし、突風は前触れなく発生します。「家の中でじっとしていること」。これが、台風の目における最強かつ唯一の正解行動なんです。

水没したHVやEV車に潜む感電火災リスク

台風による冠水で水に浸かった車が駐車場に止まっている様子

台風の通過中、あるいは通過直後に、冠水した道路を車で移動しようとするのも避けてください。特に、近年普及しているハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)にお乗りの方は、特段の注意が必要です。

これらの車両は、走行用の大容量・高電圧バッテリーを搭載しています。もちろんメーカー側で厳重な防水対策は施されていますが、台風による高潮や、海水を含んだ泥水に長時間浸かってしまった場合、内部の配線やバッテリー端子が腐食し、ショート(短絡)を起こして火災が発生するリスクがあります。

もし自宅の駐車場で愛車が浸水してしまっても、水が引いたからといっていきなりエンジン(システム)を始動させないでください。 その瞬間に発火する恐れがあります。自分で動かそうとせず、必ずロードサービスや販売店に連絡し、レッカー移動を依頼するのが鉄則です。この点については、国土交通省も水没車両の取り扱いについて強く注意喚起を行っています。

(出典:国土交通省『水没した車両のユーザーの皆様へ~感電・火災等に注意してください~』)

通過後の猛暑や時間差洪水への警戒

台風通過後に晴れていても水位が高く流れの速い川の様子

台風が完全に過ぎ去った後も、まだ「安全」とは言い切れません。「台風一過」という言葉には爽やかなイメージがありますが、実際には過酷な環境が待っていることが多いのです。

一つは「猛暑」です。台風が熱帯の空気を持ち込み、さらにフェーン現象が重なることで、通過直後は気温が35度以上に跳ね上がることがあります。もし停電でエアコンが使えない状況だと、室内でも熱中症になるリスクが非常に高くなります。

もう一つは「時間差洪水」です。雨が止んで青空が広がってから数時間後、あるいは半日後に、川の水位が最高値に達して氾濫することがあります。これは、山間部などの上流で降った大量の雨水が、時間をかけて下流に流れてくるためです。「晴れたから川の様子を見に行く」という行動が、実は一番危険なタイミングであることも少なくないのです。

まとめ:台風の目に入るとどうなるかの総括

台風が過ぎ去った後、穏やかな光が街に差し込み静けさが戻った風景

台風の目に入るとどうなるか、それは「自然が仕掛けた一時的な静寂の罠」の中に身を置くということです。青空が見え、風が止むその不思議な空間は、私たちに「もう終わったんだ」という油断を誘います。

しかし、この記事を最後まで読んでくださった皆さんは、もう大丈夫ですよね。その静けさの裏には、急激な気圧低下による体への負担があり、その先には前半戦以上の破壊力を持った「吹き返し」が待ち構えています。 「静かになった=安全」ではなく、「静かになった=逆襲(吹き返し)の準備」と捉え、家の中でしっかりと身を守る体制を整えてください。

自然の力は強大で、時には人間の想定を遥かに超えてきます。ですが、「目に入った時に何が起き、次に何が来るか」という知識を持っていれば、パニックを防ぎ、生存確率を最大化する行動を選ぶことは可能です。 次の台風シーズンに備えて、ぜひこの知識を家族や大切な人にもシェアしてあげてくださいね。あなたのその一言が、誰かの命を救うことになるかもしれません。

この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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