南海トラフとはどこ?小学生向けに簡単に解説

南海トラフについて中学生が話し合っている様子

南海トラフとはどこ?小学生向けに簡単に解説

「南海トラフって、ニュースでよく聞くけど何のこと?」
「南海トラフとは、どこにあるのか小学生向けに簡単に知りたい!」

最近、地震のニュースが増えるたびに「南海トラフ」という言葉を耳にするかもしれません。これが一体何なのか、日本のどこにあるのか、なぜこれほど注目されているのか、気になっている方も多いでしょう。

この記事では、防災士の視点から、南海トラフとは何か、そして日本のどこにあるのかを、小学生向けに分かりやすく簡単に解説します。地震が起こる仕組みについても触れていきます。

まず、南海トラフはどこにあるのか地図で見てみると、日本の南側の海の底、太平洋側に沿って長く伸びていることが分かります。そして、海の中にある「トラフ」ってどういう場所なのかというと、実はとても深いくぼみ(溝)のことなのです。

日本列島の近くには、地球の表面をおおう大きな板のようなもの(地殻変動をもたらす「プレート」)がぶつかるところにある南海トラフが存在しています。では、どうして南海トラフが注目されているのでしょうか?

それは、南海トラフに近い地域では、過去には地球の動きで大きな地震も起きた歴史があり、次の大きな地震が近づいていると考えられているからです。いつか起こるかもしれない地震に備えるためにも、まずは南海トラフや地球の活動について知ることが大切です。この記事を読んで、南海トラフ地震に備えようという意識を持つきっかけにしてください。

  • 南海トラフが日本のどの場所にあるかが分かる
  • 「トラフ」や「プレート」という言葉の意味が分かる
  • なぜ南海トラフで地震が起こるのか、その仕組みが分かる
  • 過去の地震の歴史と、なぜ今注目されているかが分かる
目次

南海トラフとはどこ?小学生向けに簡単に解説

海を見ながら南の沖合を指さす親子の様子。日本の南側に広がる海を学ぶイメージ
【HIH】ヒカリネット・イメージ
  • 海の中にある「トラフ」ってどういう場所?
  • 南海トラフはどこにある?地図で見てみよう
  • 南海トラフに近い地域は?
  • 地球をおおう「プレート」って何?
  • プレートがぶつかるところにある南海トラフ

海の中にある「トラフ」ってどういう場所?

【HIH】ヒカリネット・イメージ

「南海トラフ」という言葉を聞いたとき、まず「トラフ」とは何かが気になりますよね。

トラフ(trough)とは、海の底にある、細長くて深いくぼみ(溝)のことを指します。その形が、昔の舟や、家畜のエサを入れる「飼い葉おけ(かいばおけ)」に似ていることから、日本語では「舟状海盆(しゅうじょうかいぼん)」と呼ばれることもあります。

この深いくぼみは、地球の表面をおおう「プレート」が別のプレートの下に沈み込むときに、その境目にできる地形です。

海の底には、トラフよりもさらに深いくぼみもあり、そちらは「海溝(かいこう)」と呼ばれます。

トラフと海溝(かいこう)の違い

トラフと海溝は、どちらもプレートが沈み込む場所にできる海の底の深いくぼみですが、その深さによって呼び方が使い分けられています。

  • トラフ(舟状海盆):水深が6,000メートルよりも浅いもの。
  • 海溝(トレンチ):水深が6,000メートルよりも深いもの。(例:日本の東側にある日本海溝、世界で一番深いマリアナ海溝など)

南海トラフの一番深いところでも、水深は約4,900メートル(4.9km)ほどです。これは6,000メートルよりは浅いため、「海溝」ではなく「トラフ」と呼ばれています。

つまり、南海トラフとは、「日本の南の海(太平洋側)にある、巨大な溝」だとイメージすると分かりやすいでしょう。

南海トラフはどこにある?地図で見てみよう

日本の南側の海底に長く続く溝を模型で示したイメージ写真。海の下の地形の学習
【HIH】ヒカリネット・イメージ

では、その「南海トラフ」という大きな溝は、日本のどこにあるのでしょうか。

南海トラフは、静岡県の駿河湾(するがわん)の沖合から始まり、愛知県、三重県、和歌山県の紀伊半島、四国(高知県など)の南側を通って、九州の宮崎県の東の沖合(日向灘)まで続いています。

その長さは、なんと約700キロメートルにも及び、幅は約100キロメートルもある、非常に広大な範囲にわたる海底の地形です。気象庁のウェブサイトでも、その詳しい位置が地図で示されています。(参照:気象庁「南海トラフ地震について」

この場所は、ちょうど2つの大きな「プレート」がぶつかり合っている境目にあたります。次の見出しで、この「プレート」について詳しく見ていきましょう。

南海トラフに近い地域は?

日本の広い沿岸部が南海トラフに近いことを示す、複数の海辺の風景写真
【HIH】ヒカリネット・イメージ

南海トラフが静岡県沖から宮崎県沖までの太平洋沿岸に続いているということは、その近くにある地域はどこでしょうか。

具体的には、関東地方の一部(神奈川県など)から、東海地方(静岡県、愛知県、三重県)、近畿地方(和歌山県、大阪府、兵庫県など)、四国地方(徳島県、香川県、愛媛県、高知県)、そして九州地方(大分県、宮崎県、鹿児島県の一部)まで、非常に広い範囲が南海トラフに近い地域と言えます。

政府は、この南海トラフで巨大地震が発生した場合に「著しい地震災害が生ずるおそれがある」地域を「南海トラフ地震防災対策推進地域」として指定しています。(参照:内閣府(防災担当)「南海トラフ地震対策」

南海トラフ地震防災対策推進地域

2024年現在、以下の1都2府26県にまたがる707市町村が指定されています。

対象地域:
東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、静岡県、愛知県、三重県、岐阜県、長野県、山梨県、大阪府、京都府、兵庫県、和歌山県、奈良県、滋賀県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、大分県、宮崎県、鹿児島県

(※内閣府の指定に基づく)

このように、太平洋側だけでなく、瀬戸内海に面した地域や一部の内陸県も含まれています。この地域に住んでいる人たちはもちろん、旅行などで訪れる可能性のある人も、南海トラフがどこにあるのかを知っておくことは非常に大切です。

地球をおおう「プレート」って何?

地球の表面が複数の大きな板「プレート」でできていることを示す模型を持つ子どもの手元
【HIH】ヒカリネット・イメージ

南海トラフと地震の仕組みを理解するために、絶対に欠かせない大切な言葉が「プレート」です。

地球の表面は、ゆで卵の殻や、ジグソーパズルのピースのように、十数枚の「プレート」と呼ばれる厚さ約100キロメートルほどの硬い岩盤(がんばん)で覆われています。このプレートが、地球内部の柔らかいマントルの流れに乗って、非常にゆっくりと動いています。

日本列島は、このプレートが世界で最も多く集まり、複雑にぶつかり合っている場所の一つなのです。

日本周辺にある4つのプレート

日本の周りには、主に4つの大きなプレートが集まっています。

  1. 陸のプレート(大陸プレートとも呼ばれ、比較的軽い)
    • 北アメリカプレート(北海道や東北地方、関東地方の多くが乗っている)
    • ユーラシアプレート(西日本や中部地方の一部が乗っている)
  2. 海のプレート(海洋プレートとも呼ばれ、陸のプレートより重い)
    • 太平洋プレート(日本の東側、日本海溝で沈み込んでいる)
    • フィリピン海プレート(日本の南側、南海トラフや相模トラフで沈み込んでいる)

これらのプレートは、1年間に数センチメートルという、私たちの爪が伸びるくらいのゆっくりしたスピードで、それぞれ違う方向に動いています。この動きが、地震や火山の活動を引き起こす原因となっています。

プレートがぶつかるところにある南海トラフ

プレート同士がぶつかり一方が沈み込む様子を粘土ブロックで示したイメージ写真
【HIH】ヒカリネット・イメージ

南海トラフは、まさしくこのプレートとプレートがぶつかり合っている「境目」にあります。

具体的には、海のプレートである「フィリピン海プレート」が、陸のプレートである「ユーラシアプレート」の下に、南東の方向から1年間に数センチメートルの速さで沈み込んでいる場所なのです。

海のプレートは重いため、陸のプレートの下にスムーズに沈み込んでいきますが、その境目の一部(固着域)はくっついたまま、なかなか滑りません。

海のプレートは沈み込みを続けるため、くっついた部分に引きずり込まれる形で、陸のプレートの先端部分も一緒に曲げられていきます。陸のプレートは引きずり込まれながら、だんだんとゴムのように曲げられていき、元に戻ろうとする大きな力(これを「ひずみ」と言います)がたまっていきます。

そして、長い年月をかけてたまったその力に陸のプレートが耐えられなくなると、くっついていた境目が一気に剥がれ、バネが跳ね返るように元の形に戻ろうとします。

このときに発生するのが、「海溝型地震」と呼ばれる大きな地震です。南海トラフ地震は、この仕組みによって起こると考えられています。

南海トラフとは何か、小学生向けに簡単に学ぶ

親子が南の海底の溝を模型で学んでいる様子。南海トラフを知る学習イメージ
【HIH】ヒカリネット・イメージ
  • 過去には地球の動きで大きな地震も起きた
  • どうして南海トラフが注目されているの?
  • 南海トラフ地震に備えよう
  • 地球の活動について知ることが大切
  • 南海トラフとはどこか小学生向けに簡単に知ろう

過去には地球の動きで大きな地震も起きた

年輪に入ったひびで地震の繰り返しをイメージした木の断面の写真
【HIH】ヒカリネット・イメージ

南海トラフでは、前述のプレートの動き(ひずみの蓄積と解放)によって、過去にも大きな地震が繰り返し起きてきた歴史があります。

古い文献などの記録によると、南海トラフでは約100年から150年の周期(間隔)で、マグニチュード8クラスの巨大な地震が繰り返し発生していると考えられています。

私たちが知ることができる、比較的最近の大きな地震だけでも、これだけあります。

発生した年地震の名前特徴
1707年宝永地震(ほうえいじしん)南海トラフ全体(駿河湾~四国沖)が一度に動いたとされる最大級の地震。富士山の噴火も誘発したと言われる。
1854年安政東海地震(あんせいとうかいじしん)東側(東海地方沖)で発生。約30時間後に次の地震が発生した。
1854年安政南海地震(あんせいなんかいじしん)西側(四国沖)で発生。時間差(連動)して起きた。
1944年昭和東南海地震(しょうわとうなんかいじしん)東側(紀伊半島沖)で発生。
1946年昭和南海地震(しょうわなんかいじしん)西側(四国沖)で発生。1944年の地震から約2年後に発生した。

このように、南海トラフの地震は、宝永地震のように一度に全体が動く場合もあれば、安政地震や昭和地震のように、東側と西側が時間差で動く(「半割れ」や「一部割れ」などと呼ばれます)場合もあり、その起こり方には多様性があることが分かっています。

どうして南海トラフが注目されているの?

双眼鏡で海のはるか沖を観察する子どもの姿。南海トラフへの関心を表現
【HIH】ヒカリネット・イメージ

過去の地震が約100年〜150年ごとに起きているのに、なぜ今、こんなにも南海トラフが注目されているのでしょうか。

その最大の理由は、「次の地震が起こる時期が近づいている可能性が高い」と考えられているからです。

一番最近の南海トラフでの大きな地震は、1944年の昭和東南海地震と1946年の昭和南海地震でした。2025年現在、1946年からすでに約80年が経過しています。

過去の発生周期(平均すると約100年〜150年)を考えると、次の巨大地震がいつ起きてもおかしくない時期に入っていると、多くの専門家が指摘しています。これが、ニュースなどで「南海トラフ地震の切迫性(せっぱくせい)が高い」と言われる理由です。

地震の発生確率について

地震の発生確率について(最新)

政府の地震調査研究推進本部は、2025年9月26日公表の「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版一部改訂)」で、南海トラフで想定されるM8~M9クラスの地震の今後30年以内の発生確率を、計算手法の違いにより次のように併記しています。

  • すべり量依存BPTモデル:60~90%程度以上
  • BPTモデル:20~50%

いずれの場合も、地震本部の確率ランクでは最上位の「IIIランク(高い)」に該当します。詳細は地震本部の解説ページと公表資料をご確認ください(解説ページ公表PDF)。

なお、2025年1月時点の年次更新では「80%程度」とされていましたが、秋の見直しで上記のように表記が更新されています(大阪管区気象台「地震一口メモ No.236」)。

これは、日本の他の主要な海溝型地震(例:千島海溝沿いの地震)と比べても、非常に高い数値です。

ただし、これはあくまで確率の話であり、「30年以内に必ず来る」という意味でも、「30年経つまで来ない」という意味でもありません。明日、起こる可能性もゼロではないのです。

南海トラフ地震に備えよう

家族が玄関で防災リュックや備蓄品を確認する様子。地震への備えのイメージ
【HIH】ヒカリネット・イメージ

南海トラフ地震がいつ、どこで、どれくらいの大きさで起こるかを正確に予測することは、現在の科学技術でも非常に難しいとされています。

だからこそ、地震が「いつか来る」のではなく、「いつ来てもおかしくない」と考えて、日頃から準備をしておくことが何よりも大切です。

この記事のテーマは「南海トラフのメカニズムを知ること」でしたが、知るだけで終わらせず、ぜひ家族と一緒に「備え」につなげてください。

防災士から一言

地震の備えというと難しく感じるかもしれませんが、まずは「自分や家族がいる場所が安全か」を確認することから始めましょう。

  • 自分の家は地震で倒れないか?(耐震診断、補強)
  • 家の中で、タンスや本棚、テレビなどが倒れてこないか?(家具の固定)
  • 水や食べ物の備蓄はあるか?(最低3日分、できれば1週間の準備を)
  • 停電したときのライトや、ケガをしたときの救急箱はあるか?
  • 家族とどこに逃げるか、どうやって連絡を取り合うか話し合っているか?(避難場所、連絡方法の確認)

できることから一つずつ確認し、準備しておくことが、命を守る行動につながります。

地球の活動について知ることが大切

星空を見上げる親子の写真。地球の活動を学ぶ大切さを表すイメージ
【HIH】ヒカリネット・イメージ

地震は、私たち人間にとっては非常に怖い災害ですが、これは地球が生きている証拠とも言える「地球の活動」の一部です。

日本列島が、複数のプレートがぶつかり合う複雑な場所に位置している以上、私たちは地震や火山といった自然現象と無関係でいることはできません。

怖いからと目をそむけるのではなく、なぜ地震が起こるのか、自分の住んでいる場所はどのような特徴があるのかを正しく知ること。それが、いざというときに慌てず、適切な行動をとり、自分や大切な人の命を守るための「防災意識」の第一歩となります。

今回、南海トラフがどこにあって、どのような仕組みで地震が起こるのかを知ったことも、防災の準備を進めるための、とても立派な活動の一つです。

南海トラフとはどこか小学生向けに簡単に知ろう

海底の溝を示したミニ模型を指さして学ぶ子ども。まとめ学習のイメージ
【HIH】ヒカリネット・イメージ

この記事では、「南海トラフとはどこか」を小学生向けに簡単に解説しました。最後に、記事の要点をまとめます。

  • 南海トラフとは日本の南の海にある深いくぼみ(溝)のこと
  • 「トラフ」は水深6,000mより浅い溝を指す
  • 「海溝」は水深6,000mより深い溝を指す
  • 南海トラフは静岡県の駿河湾から宮崎県の沖合まで続いている
  • その長さは約700kmにもなる
  • 地球の表面は「プレート」という硬い岩盤で覆われている
  • 日本は4つのプレートが集まる場所にある
  • 南海トラフは「フィリピン海プレート(海)」が「ユーラシアプレート(陸)」に沈み込む場所
  • 陸のプレートが引きずり込まれ、元に戻ろうと跳ね返る時に地震が起こる
  • この仕組みの地震を「海溝型地震」と呼ぶ
  • 南海トラフでは過去にも大きな地震が起きてきた
  • 地震の発生周期は約100年〜150年と考えられている
  • 主な過去の地震に宝永地震や安政東海・南海地震がある
  • 一番最近の地震は1944年・1946年の昭和東南海・南海地震
  • 前回から約80年が経過し、次の地震が近づいているとされる
  • 30年以内の発生確率は70~80%と非常に高い
  • 地震がいつ来るか正確な予測は難しい
  • だからこそ家具の固定や備蓄など日頃からの備えが大切
  • 地球の活動を知ることが防災の第一歩になる

この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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