月のクレーターのでき方を簡単解説!地球との違いも

月のクレーターのでき方を簡単解説!地球との違いも
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
防災士として、普段は地震や台風など、地球の活動についてお話しすることが多い私ですが、ふと夜空を見上げると、月がとても気になります。特に、月の表面にある「あばた」のような模様、クレーターですね。
この記事にたどり着いたあなたも、「月のクレーターのでき方」って、そもそもどうなっているんだろう?と疑問に思ったのかなと思います。クレーターが「いつできた」のか、何か「種類」はあるのか、望これらを望鏡で見ると「中央に山」があるクレーターがあるけど、あれは「なぜ」だろう? さらに「大きさ」や「数」はどれくらいあるのか。「光条(レイ)」と呼ばれる放射状の模様や、「月の海」とクレーターの「関係」も気になるところです。
そして、防災士として私が一番気になるのは、「なぜ地球はクレーターが少ない」のか、その「地球との違い」です。これは、地球が「生きている星」であることの証でもあり、地球の「生と死」にも関わる、とても興味深いテーマだと思います。
この記事では、そんな月のクレーターに関するたくさんのナゾについて、中学生にもわかるように、私と一緒に見ていけたらなと思います。科学の世界は奥深いですが、できるだけ専門用語をかみ砕いて解説していきますね。
- 月のクレーターができる基本的な仕組み
- クレーターの種類と特徴(中央の山など)
- 「月の海」や「光条」の正体
- 月と地球でクレーターの数が違う理由
月のクレーターのでき方 基本のキ

まずは「月のクレーターがどうやってできたのか?」という、一番のギモンについて、基本的なところを見ていきましょう。その答えは、私たちが想像するよりも、はるかにダイナミックなものでした。
クレーターはいつできた?

月のクレーターの「でき方」を語る上で欠かせないのが、「いつできたか?」という時間のお話です。
もちろん、今この瞬間も小さな隕石(宇宙を漂うチリや小石)が衝突しているので、クレーターはでき続けてはいます。ですが、私たちが夜空の月を見て「クレーターだ」と認識できるような、無数のクレーターの「ほとんど」は、今から約40億年前に、非常に短い期間に集中して作られたと考えられています。
この時代は「後期重爆撃期(こうきじゅうばくげきき)」と呼ばれています。当時の太陽系は、今のように安定しておらず、惑星になりきれなかった「微惑星(びわくせい)」と呼ばれる小さな天体や、小惑星、彗星などが無数に飛び交っていました。
科学者たちの間では、この時期に木星や土星といった巨大な惑星の軌道が現在のような位置に移動する、大規模な変動があったと考えられています。その影響で、周辺にあった小天体の軌道が大きく乱され、太陽系の内側、つまり地球や月がある領域になだれ込むように衝突したのです。まさに「雨あられ」と降り注いだ、激動の時代だったんですね。
豆知識:今もクレーターはできている
後期重爆撃期のような激しい時代は終わりましたが、クレーターは今も新しく作られています。NASA(アメリカ航空宇宙局)の月周回探査機「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」は、過去の探査機が撮影した写真と比較することで、ここ数年〜数十年の単位で新しく形成された、直径数メートルから数十メートルの小規模なクレーターをいくつも特定しているんですよ。
クレーターのでき方の種類

月面を望遠鏡などで詳しく見ると、クレーターにはいくつかの「でき方」の種類があることに気づきます。これは主に衝突のエネルギー(規模)によって分類されます。
1. 単純クレーター (Simple Crater) 比較的小さな衝突でできる、シンプルなお椀型(ボウル型)のクレーターです。衝突のエネルギーが比較的小さいため、掘削された穴のフチが小規模に崩れ落ち、その破片(角礫:ブレッチャ)が底に溜まるだけで、比較的単純な形で安定します。
2. 複雑クレーター (Complex Crater) より大きな衝突でできるクレーターです。お椀型ではなく、中央に「中央丘(ちゅうおうきゅう)」と呼ばれる山があったり、内側の壁が大規模な地すべりを起こして「段丘(だんきゅう)」という階段状になっていたりします。月面では、だいたい直径15km〜20kmあたりを境に、単純クレーターから複雑クレーターへと姿が変わっていくようです。
3. 盆地 (Basin) または 巨大衝突盆地 (Impact Basin) 直径300kmを超える、最大級の衝突地形です。衝突のエネルギーがあまりにも巨大なため、地殻全体が大規模に変形します。中央丘の代わりに、複数の同心円状のリング(多重リング)構造を持つこともあります。重要なのは、この「巨大衝突盆地」こそが、後で説明する「月の海」が形成される「器」となったことです。
月のクレーター形態の比較
| 形態(タイプ) | 主な特徴 | 月面での代表的な直径 | 形成メカニズム(「でき方」の違い) |
|---|---|---|---|
| 単純クレーター | お椀型、滑らかな内壁 | 〜約15km | 掘削後、小規模な重力崩壊によって安定化する。 |
| 複雑クレーター | 中央丘、段丘状の内壁 | 約15km 〜 300km | 大規模な重力崩壊と、中央部の圧縮反発(リバウンド)による中央丘の形成。 |
| 盆地(Basin) | 多重リング構造 | 300km以上 | 最大規模の衝突による地殻全体の大規模な変形とリバウンド。 |
中央に山があるのはなぜ?

では、なぜ大きな衝突(複雑クレーター)だと、中央にポツンと山ができるのでしょうか?
これは、衝突のエネルギーがあまりにも大きいため、衝突した場所の岩盤が、固い岩石であるにもかかわらず、まるで「流体」のように振る舞うからです。
イメージとして最も分かりやすいのが、「水面に石を落とした瞬間」です。石が水面に当たると、水は一瞬へこみますが、その直後、中央から水柱が「リバウンド」してピョコンと跳ね上がりますよね。
月のクレーターもこれと非常によく似た原理です。超高速の隕石が激突すると、地下深部の岩盤が瞬間的に極度に圧縮されます。その直後、掘削によって上からの圧力が解放されると、圧縮された岩盤が重力に逆らって「リバウンド(反発)」します。この反発した岩盤が、まるで水柱のように盛り上がった瞬間に、そのままの形で冷えて固まったもの。これが「中央丘」の正体なんです。
衝突の3ステップを簡単に解説

月のクレーターのでき方は、地面にスコップで穴を掘るような単純なものではなく、超高速の衝突によって引き起こされる「爆発」現象そのものです。隕石は時速数万キロメートル(秒速10km以上)という、ライフル弾の数十倍もの速度で月面に激突します。
この超高速衝突によるクレーター形成プロセスは、物理学的に大きく3つの段階に分けられます。
クレーターができるまでの3ステップ(0.1秒の世界も)
- 第1段階:接触・圧縮段階 隕石が月面に接触した瞬間、衝突点にはすさまじい圧力が生じます。この圧力は「衝撃波(ショックウェーブ)」となって、隕石自体と月面の岩盤の両方に伝わります。隕石はその膨大な運動エネルギーを熱と圧力のエネルギーに変えながら、瞬時に圧縮され、接触した箇所の月面物質とともに一瞬で「蒸発・融解」します。これが「爆発」のエネルギー源となります。
- 第2段階:掘削段階 衝撃波は、衝突点を中心に半球状に地中を伝播しながら、月面の物質を爆発的に「掘削」していきます。同時に、地表に到達した衝撃波は上向きの「希薄波」に変わり、地表の物質を高速で宇宙空間に「放出(Ejection)」させます。これがクレーターの周囲に降り積もる「噴出物(Ejecta)」や、後述する「光条(レイ)」の材料となります。この掘削プロセスによって、最終的なクレーターよりも大きく不安定な「一時クレーター(Transient Crater)」が一瞬にして形成されます。
- 第3段階:変形・安定化段階 掘られた直後の「一時クレーター」は、そのフチが非常に急峻であるため、重力の影響下で極めて不安定です。そこで、形成直後から瞬時に「変形」と「安定化」のプロセスが始まります。
- 小規模な衝突(単純クレーター)の場合: 壁が小規模に崩壊し、その破片(角礫)が底に溜まり、お椀型で安定します。
- 大規模な衝突(複雑クレーター)の場合: 壁が大規模な地すべり(段丘)を起こしながら崩れ落ち、同時に中央部がリバウンドして「中央丘」を形成し、安定します。
この全プロセスが、衝突の規模にもよりますが、非常に短時間(小規模なら数十秒、大規模でも数分程度)で完了してしまうというから、天体衝突のエネルギーがいかに凄まじいかがわかりますね。
クレーターの大きさは?

クレーターの大きさは、本当にさまざまです。ピンからキリまで、という表現がぴったりかもしれません。
私たちが肉眼で「月の模様」としてなんとなく認識できる「月の海」の原型となった「盆地」には、直径200kmをこえる巨大なもの(例えば、直径約2,500kmの南極エイトケン盆地など)も存在します。
一方で、天体望遠鏡でやっと見えるような直径数km以下のもの、さらには探査機が月面に着陸して初めて確認できるような、直径数メートル、あるいは数センチといったごくごく小さなクレーター(マイクロクレーター)も、月面には無数に存在しています。
これらは、大気に守られていない月面に、宇宙空間を漂う微小なチリ(流星物質)が絶え間なく衝突し続けることで、今も生まれ続けています。
月のクレーターのでき方とナゾ

クレーターのでき方の基本がわかったところで、次は「月の海」や「光条」といった、月面に見られる特徴的な地形のナゾと、クレーターのでき方の関係について、さらに深く掘り下げて見ていきましょう。
月の海にクレーターが少ない理由

月を眺めると、白く明るく見える「高地」と、黒く暗く見える「海」があるのがわかります。そして、望遠鏡で見なくても明らかなように、「海」の部分は「高地」に比べて、明らかにクレーターの数が少なくなっています。
まず大前提として、「月の海」は水がある海ではなく、「月の内部から噴き出した玄武岩(げんぶがん)の溶岩」が冷えて固まった、広大な平野です。私たちがよく知るハワイのキラウエア火山などから噴き出す溶岩と、似たような成分ですね。この玄武岩が黒っぽいため、暗く見えるのです。
では、なぜ「海」にはクレーターが少ないのか? それは、「できた順番」に明確な理由があります。
「月の海」形成の4ステップ
- ステップ1(器の形成): まず、月が誕生した頃(約40億年前の後期重爆撃期)に、超巨大な天体が衝突し、巨大なクレーター、すなわち「巨大衝突盆地」が形成されました。これが、将来の「海」の”器”となります。この時点では、高地も盆地の底も、無数のクレーターで覆われていました。
- ステップ2(マグマの発生): その後、月が誕生してから数億年が経過(今から約38億年〜30億年前ごろ)すると、月の内部で放射性元素が崩壊する熱などによってマントルが融解し、マグマが発生しました。
- ステップ3(充填と消去): このマグマが、ステップ1の巨大衝突でできた地殻の”割れ目”を通って地表に噴出し、巨大な盆地(器)の底を「満たし」ました。
- ステップ4(リセット): 盆地を埋め尽くした高温の溶岩は、その底にあった古いクレーターをすべて「消去」(溶かして埋めて)しまいました。そして、溶岩はゆっくりと冷えて固まり、平らで黒い「玄武岩」の平野(=月の海)となったのです。
結論として、「高地」は40億年前の激しい衝突の記録がそのまま残っている「古い地表」であるのに対し、「海」は溶岩によって一度リセットされた「新しい地表」なんです。したがって、「海」に現在見られるクレーターは、その溶岩が固まった後(約30億年前以降)に、新しく衝突してできたものだけ、ということになります。だからこそ、「海」の部分のクレーターは数が圧倒的に少ないんですね。
光条(レイ)って何?

天体望遠鏡で月を見ると、コペルニクス・クレーターやティコ・クレーターのように、比較的新しいクレーターから、放射状に「明るいスジ」が四方八方に伸びているのが見えます。これが「光条(レイ)」です。
この正体は、クレーターができる瞬間の「爆発」(第2段階:掘削段階)で、高速で「噴射物が飛び散った跡」です。
衝突によって、月面の風化していない(=長期間、太陽風や宇宙線にさらされていない)「新しい物質」が地下から掘り起こされ、それがクレーターの周囲に薄く飛び散ったため、その部分が周囲の風化した古い地表よりも明るく見えているんですね。光条が目立つクレーターは、地質学的に「新しい」(と言っても数億年〜10億年単位ですが)クレーターである証拠とされています。
豆知識:「かぐや」が解明した光条の謎
この光条、ただ均一にスプレーのように飛び散っているのではなく、よく見ると「不均一」で「網の目状」に分布することが知られていましたが、その詳細なメカニズムは謎でした。
この謎の解明に大きく貢献したのが、日本の月周回衛星「かぐや(SELENE)」の研究成果です。研究チームは、「かぐや」の地形カメラによる詳細な観測データと、地上の「衝突実験」、そしてシミュレーション計算を組み合わせました。
その結果、この「網の目状」のパターンは、噴出物の「粒子の物性」に強く影響され、特に「粒子間の反発係数が小さい状態」でできやすいことがわかりました。これは、月の表面を覆う砂(レゴリス)のような、あまり弾 Faculdade(反発係数が小さい)粒子が、超高速の衝突で放出される際に、独特の「網の目状」のパターンを形成するという「粒状体物理学」の現象であることを示しています。
(出典:JAXAプレスリリース 月周回衛星「かぐや」の観測データと衝突実験・シミュレーション計算の連携により、月の光条の形成過程を解明)
光条のでき方とは、単なる「飛び散り」ではなく、物質の物理的特性が支配する複雑なパターン形成プロセスだったのですね。
クレーターの数は?最新研究

月のクレーターは、いったい全部でいくつあるのでしょうか?
従来、望遠鏡や探査機の目視による観測で識別できるクレーターの数は、月全体で「数万個」にのぼるとされてきました。
ところが、近年の研究技術の進歩、特にAI(人工知能)技術の導入は、この常識を覆しつつあります。2020年に発表された中国の研究チームによる研究では、AI技術の一種である「転移学習(transfer learning)」を用いた「ディープニューラルネットワーク(DNN)」という手法を採用しました。
研究チームは、まず過去に特定されていたクレーターや年代が判明しているクレーターのデータをAIに学習させました。そして、中国の月探査機「嫦娥(じょうが)1号」と「嫦娥2号」が取得した詳細な月面のデータを、このAIに解析させたのです。
その結果、従来の目視や単純な自動検出では見逃されてきた、長年の微小隕石の衝突などによって風化し、輪郭が不明瞭になった「劣化したクレーター」や「不規則な形状のクレーター」を、AIが精密に識別することに成功。なんと、新たに10万9,956個のクレーターを特定したと報告されました。
これは、月の中低緯度地域における既知のクレーター数の数十倍にも相当する大発見です。AIの力によって、月の衝突史の解明がさらに進むと期待されています。
地球にクレーターが少ないのはなぜ?

さて、ここが防災士として一番興味深いテーマかもしれません。
月と同じ太陽系に浮かび、同じ「後期重爆撃期」の激しい衝突にさらされたはずの私たちの地球。それなのに、なぜ地球の表面には、アリゾナのバリンジャー・クレーターなど、ごく一部(現在確認されているのは約200個程度)を除いて、クレーターがほとんどないのでしょうか?
月よりも体が大きい分、重力も強く、むしろ月より多くの隕石を引き寄せたはずなのに、不思議ですよね。
その答えは、地球にはクレーターを「消去」する、2つの強力なメカニズムが存在する一方で、月にはそれが存在しないからです。
1. 大気による防御
地球は、厚い「大気圏」というバリアに守られています。宇宙から飛来する小さな隕石(流星物質)は、大気圏に突入すると、猛烈な「空力加熱(断熱圧縮)」によって数千度に加熱され、地表に到達する前に燃え尽き、消滅してしまいます。私たちが「流れ星」として目にするのが、まさにこれですね。
一方、月には大気がほぼ存在しません。そのため、小さなチリのような隕石も減速・燃焼することなく、宇宙空間の速度そのまま(時速数万km)で月面に衝突し、無数の小さなクレーターを作り続けます。
2. 活発な地質活動(水の浸食とプレートテクトニクス)
もし、大気を突き抜けるほど巨大な隕石が衝突し、地球に巨大なクレーターが形成されたとしても、その「傷跡」は長期間保存されません。
・浸食(しんしょく): 地球には「水(雨、川、海、氷河)」と「風」があります。これらの働き(浸食や風化作用)が、何十万年、何百万年という長い時間をかけて、クレーターの険しい地形を削り取り、土砂で埋め立て、平らにしてしまいます。
・地殻変動(ちかくへんどう): そして何より、地球は「生きている星」だということです。地球の表面は「プレート」と呼ばれる複数の巨大な岩盤で覆われており、これらが常にゆっくりと動いています(プレートテクトニクス)。
たとえ浸食を免れたクレーター(特に海底にできたもの)があったとしても、古いクレーターは、プレートの移動によってやがて海溝に引きずり込まれて地球の内部に「沈み込み」消滅したり、あるいは火山活動による新しい溶岩に覆い隠されたり、大陸同士の衝突による「造山運動」で変形してしまったり…。地質学的な時間スケールで見れば、地球の表面は常に「更新」され続けているのです。
地球が今も活発に動いている何よりの証拠が、「地震」や「火山」です。
私たち防災士が日々備えを呼びかけているのも、この地球のダイナミックな活動と無関係ではありません。地球内部のプレートがどのように動いて、巨大な地震を引き起こすのか、そのメカニズムを知ることは防災の第一歩です。
地球のプレート活動と地震の仕組みについては、こちらの記事でも詳しく解説していますので、よければご覧ください。

一方、月は地質学的に「ほぼ死んだ」天体です。水も風も、プレートテクトニクスもありません。だからこそ、40億年以上前の激しい衝突の「でき方」の記録 1 を、消去することなく、そのまま「タイムカプセル」のように保存してきたのです。
クレーターの名前は誰が決める?

月のクレーターには「コペルニクス」「ティコ」「アルキメデス」など、多くの有名な科学者や哲学者の名前が付けられています。これらの名前は、一体誰がどのようにして決めているのでしょうか?
こうした天体の地形名(クレーター、山、谷など)は、発見者が勝手に付けて良いわけではありません。すべて「IAU(国際天文学連合)」という世界的な学術機関が、唯一の命名機関として一元管理し、承認しています。
もし世界中の誰もが「私が決めたクレーターの名前」「おれが決めた山の名前」などと自由に名前を付け始めたら、科学的な研究やコミュニケーションにおいて、どれが公式な名称か分からなくなり、大混乱が起きてしまうからですね。
IAUによる命名プロセス
IAU内部には「惑星システム命名ワーキンググループ」という専門の部署があり、実際の審査を行っています。
命名には統一性を持たせるための厳格な「カテゴリー」が決められており、例えば「月のクレーターには、すでに亡くなった著名な科学者の名前をつける」「金星の山脈には、神話に登場する空の女神の名前をつける」「火星の大きな谷には、いろいろな言語で『火星』を意味する言葉をつける」といったルールがあります。
名前を提案する権利を持つのは、原則として「その天体や地形を詳細に観測・発見した人(または機関)」です。例えば、NASAやJAXAなどの宇宙機関が探査機によって新しい地形を発見した場合、その機関がIAUに名前を提案します。IAUがこれを承認して初めて、その名前が「公式」となります。
注意:「命名権」は購入できません
時折、「星の命名権」を販売するビジネス(「あなたの大切な人の名前を星に付けませんか?」といったもの)が存在しますが、IAUはクレーターを含む天体の「公式な命名権」を販売することを一切認めていません。
過去に、民間企業が火星のクレーターの命名権を販売しようとした事例がありますが、これに対しIAUは強く抗議しています。IAUの原則は、命名は科学的貢献に基づき「free (無料)」で行われるべきであり、「自由で平等なアクセス」の精神に基づくとしています。
IAUは、「お金をとって命名されたいかなる地名についても、公式の地名として採用することは全くない」と強調しています。したがって、月やその他の天体のクレーターの「公式な命名権」を購入することはできませんので、注意が必要ですね。
月のクレーターのでき方 まとめ

今回は、「月のクレーターのでき方」というテーマで、私と一緒にそのナゾをじっくりと見てきました。最後に、重要なポイントをもう一度おさらいしましょう。
月のクレーターのでき方の根本は、微惑星や隕石の「天体衝突」であり、その多くは月が誕生して間もない約40億年前の「後期重爆撃期」という激動の時代に集中してできたことがわかりましたね。
また、衝突の規模と重力による変形(リバウンド)の違いが、お椀型の「単純クレーター」と、中央に山がある「複雑クレーター」という「でき方」の違いを生み出すこと。
「月の海」は、巨大なクレーター(盆地)に溶岩が流れ込み、そこにあった古いクレーターをすべて消去した「新しい地表」であるため、クレーターの数が少なくなっていること。
そして、月がクレーターだらけなのは、地球と違って大気や活発な地殻変動による「消去メカニズム」がなく、太古の太陽系の記録がそのまま保存されている、貴重な「タイムカプセル」だから、ということも分かりました。
防災士の視点から見ると、地球にクレーターが少ないのは、まさに地球が「生きている」証拠であり、その活動(地震や火山)と私たちは常に向き合い、賢く備えていかなければならない、ということを改めて強く感じます。
月が「失われた過去の記録」を静かに保存するタイムカプセルなら、地球は「常に地表を更新し続ける、ダイナミックで活発な星」と言えるかもしれませんね。夜空の月を見上げるとき、そんな地球と月の違いに思いを馳せてみるのも、面白いかなと思います。
