洪水はなぜ起こる?原因を簡単に解説!中学生も分かる仕組み

中学生が洪水について話している様子

洪水はなぜ起こる?原因を簡単に解説!中学生も分かる仕組み

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。最近、ニュースで大雨や水害の話題を目にすることが本当に増えましたね。洪水がなぜ起こるのか不思議に思ったり、その原因を簡単に知りたいと検索された方も多いのではないでしょうか。実は、単に雨がたくさん降ったからというだけでなく、地形や私たちの住む街の環境など、さまざまな条件が重なって発生するものなのです。この記事では、中学生の皆さんにも分かるように、洪水の仕組みや種類についてやさしく解説していきます。

  • 洪水が発生する基本的なメカニズム
  • 地球温暖化や日本の地形が関係する理由
  • 外水氾濫と内水氾濫という2つの種類
  • 身を守るために知っておきたい避難のポイント

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洪水がなぜ起こるのかその原因を簡単に解説

大雨で川の水位が上昇し、住宅地へ水が広がり始める様子を俯瞰で捉えた実写風イメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

まずはじめに、洪水がなぜ起こるのか、その根本的な原因を簡単に紐解いていきましょう。「雨が降る」という自然現象と、私たちが暮らす環境には密接な関係があります。

中学生にも仕組みをわかりやすく説明

浴槽の水があふれそうになる様子で洪水の仕組みを比喩的に表現した実写風イメージ
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洪水が起こる仕組みは、お風呂の浴槽や洗面器をイメージすると非常に分かりやすいです。蛇口から出る水が「雨」、排水溝から流れていく水が「川や地面への浸水能力」だと考えてみてください。

普段の雨なら、蛇口から出る水(雨量)よりも、排水溝から流れる量(川が流せる量)の方がバランスが取れているので、水はあふれません。スムーズに流れていきますよね。しかし、台風やゲリラ豪雨の時は状況が一変します。

蛇口を全開にして一気に大量の水を入れたり、排水溝にゴミが詰まって流れにくくなったりすると、どうなるでしょうか? 水はあっという間に浴槽の縁を超えて、洗い場にあふれ出しますよね。これが、街や川で起きている洪水の正体です。

洪水とは、降ってくる雨の量(入力)が、川や地面が処理できる量(能力)を圧倒的に超えてしまった瞬間に発生する「水のあふれ出し」なのです。

つまり、単に「雨が多い」だけでなく、「川が流しきれない」「地面が吸い込みきれない」という限界を超えた時に、私たちの生活空間に水が押し寄せてくるのです。

地球温暖化による降水量増加の影響

水蒸気を多く含んだ暖かい空気と積乱雲が発達する様子を科学的に表現した実写風イメージ
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近年、「昔はこんなに激しい雨は降らなかったのに」と感じることはありませんか?実はその感覚、データでも裏付けられているんです。これには地球温暖化が大きく関係しています。

空気が暖かいほど、たくさんの水分(水蒸気)を含むことができるという性質があります。科学的には、気温が1℃上がると、空気が持てる水蒸気の量は約7%も増えると言われています。温暖化で気温が上昇すると、空はまるで「巨大な給水タンク」のように大量の水分を抱え込むことになります。

このたっぷりと水分を含んだ空気が、台風や積乱雲として雨を降らせるため、一度に降る雨の量が劇的に増えてしまっているのです。

実際に気象庁のデータを見ると、災害級の猛烈な雨(1時間80mm以上)の発生頻度は、統計開始当初(1976~1985年)と直近の10年間(2015~2024年)を比較すると、約1.7倍にも増加しています。
(出典:気象庁『大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化』

線状降水帯とバックビルディング現象

帯状に連なる積乱雲が同じ地域に次々発生している様子を抽象化した実写風イメージ
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最近の天気予報でよく耳にする「線状降水帯」。これも洪水を引き起こす大きな原因の一つです。これは、単なる広い範囲の雨雲ではなく、まるでベルトコンベアのように、同じ場所に次々と雨雲が供給され続ける恐ろしい現象です。

その仕組みには「バックビルディング現象」というプロセスが関わっています。

  1. 風上で新しい積乱雲(入道雲)が発生する。
  2. その雲が風に流されて移動し、雨を降らせる。
  3. すると、最初の雲ができた場所(風上)に、また新しい雲が発生する。

このように、ビルの後ろに次々と新しいビルが建つように積乱雲が列をなし、同じ場所を通過し続けることで、特定の狭い範囲だけに、数時間にわたって猛烈な雨が降り続きます。これが川の水を急激に増やし、予測が難しい突発的な洪水を引き起こすのです。

日本の急な地形と川の特徴

急峻な山から海へ向かって勢いよく流れ下る川の特徴を示した実写風の自然風景イメージ
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日本の川は、世界的に見ても非常に「流れが急」であるという特徴があります。明治時代に日本の川を見たオランダ人技師が、あまりの急流ぶりに「これは川ではない、滝だ」と驚いたという有名な逸話があるほどです。

大陸のゆったりとした川とは違い、日本の川は高い山から海までの距離が短く、勾配がきついため、山に降った雨が一気に平地まで滑り台のように駆け下りてきます。

逃げる時間が短い日本の洪水

この地形の特徴は、私たちに「時間の猶予」を与えてくれません。山で大雨が降ると、あっという間に下流の市街地に水が到達します。雨が降ってから洪水になるまでの時間が極めて短いため、「まだ大丈夫」と思っているうちに水位が上がり、避難路が断たれてしまうことが多いのです。

土地利用の変化などの人為的要因

雨水が舗装された都市の地面を流れ、浸透しにくい環境を象徴的に表現した実写風イメージ
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自然の力だけでなく、私たち人間が街を変えてしまったことも原因の一つです。昔の日本には、田んぼや森林がたくさんあり、それらがスポンジのように雨水を一時的に貯めてくれる「自然のダム」の役割を果たしていました。

しかし、都市化が進んで地面がコンクリートやアスファルトで覆われると、雨水は地面に染み込むことができません。その結果、降った雨がそのまま側溝や川へ一気に流れ込むようになります。これを「流出係数の増大」と言いますが、簡単に言えば「街が水を弾いてしまうため、全ての雨水が川に集中してしまう」状態です。これにより、少しの雨でも水かさが増えやすい環境を、私たち自身が作ってしまっている側面もあるのです。

洪水がなぜ起こる?原因を簡単に学ぶ氾濫の種類

川の増水による外水氾濫と都市部の冠水による内水氾濫を対比的に示す実写風イメージ
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一口に「洪水」と言っても、実は大きく分けて2つの種類があることをご存知でしょうか?ここでは、それぞれの特徴と危険性について解説します。

外水氾濫と内水氾濫の違いとは

堤防付近の濁流と都市の道路冠水を左右に並べて比較した実写風イメージ
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洪水には、川の水があふれる「外水氾濫(がいすいはんらん)」と、街の中に水がたまる「内水氾濫(ないすいはんらん)」の2種類があります。

種類外水氾濫(がいすいはんらん)内水氾濫(ないすいはんらん)
原因川の水位上昇・堤防決壊排水溝や下水道の能力不足
場所河川の近く川から遠い市街地でも発生
水の特徴土砂を多く含んだ茶色い泥水下水を含む汚水が混ざる場合がある

多くの人がイメージする「堤防が切れて家が流される」ような災害は外水氾濫です。しかし、実は都市部では、川から遠く離れた場所でも浸水する内水氾濫が非常に多く発生しています。自分の家が川から遠いからといって、安心はできないのです。

堤防決壊やバックウォーター現象

本流の水位上昇で支流の水が流れにくくなるバックウォーター現象を示す実写風イメージ
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外水氾濫の中でも特に恐ろしいのが、堤防の決壊(破堤)です。水が堤防を越えてあふれる「越水」だけでなく、激しい水の流れが堤防を削り取ったり、水圧で土の中に水が染み込んで崩れたりすることがあります。一度堤防が切れると、巨大なエネルギーを持った濁流が一気に街を飲み込みます。

また、「バックウォーター現象」にも注意が必要です。これは、大きな川(本流)の水位が上がると、そこに合流しようとする小さな川(支流)の水が「水門を閉められた」ような状態になり、流れ込めなくなる現象です。

支流であふれる危険性
行き場を失った支流の水は、逆流するようにあふれ出します。「自分の家の近くは小さな川だから大丈夫」と思っていても、下流の大きな川の影響で突然氾濫することがあるため、本流の水位情報もチェックする必要があります。

都市部で発生する排水能力の限界

激しい雨で排水口やマンホールから水があふれ出しそうになっている都市冠水の実写風イメージ
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内水氾濫は、下水道や排水路の能力を超えた大雨が降った時に起こります。一般的に、都市の排水機能は「1時間に50mm」程度の雨までは処理できるように設計されています。

しかし、近年のゲリラ豪雨では、1時間に100mm近い雨が降ることも珍しくありません。これは設計の限界を遥かに超えています。排水能力の限界を超えた雨水は、行き場をなくしてマンホールから逆流したり、道路にあふれ出したりします。

特に、アンダーパス(道路が低くなっている場所)や地下室などは、あっという間に水が溜まり、逃げ遅れると命に関わる危険な場所になります。また、トイレや台所の排水口から下水が逆流してくることもあるため、水のう(水を入れたビニール袋)などで塞ぐ対策も知っておくと良いでしょう。

避難に役立つ災害の危険な前兆

川の急な水位変化や地面の異変など、災害の前兆を抽象的に捉えた実写風イメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

洪水やそれに伴う土砂災害には、発生直前にいくつかの「前兆」が現れることがあります。これらを五感で感じ取ることができれば、一刻も早い避難につながります。

こんな現象があったら直ちに避難を!

  • におい(嗅覚):腐った土のようなにおいや、生臭い泥のにおいがする。
  • 音(聴覚):「ゴォーッ」という地鳴りや、山の方から木が裂けるような音が聞こえる。
  • 川の異変(視覚):雨が降り続いているのに、急に川の水位が下がった。
    (※これは上流で土砂崩れなどが起きて川がせき止められている可能性があり、決壊すると鉄砲水になる極めて危険なサインです。)

まとめ:洪水がなぜ起こるか原因を簡単に

災害後の回復や備えを連想させる穏やかな川と住宅地の実写風イメージ
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洪水がなぜ起こるのか、その原因を簡単に解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。洪水は、雨という自然の力に加え、日本の急峻な地形や、私たちが作り上げた都市の構造など、さまざまな要因が複雑に絡み合って発生します。

「原因」を知ることは、ただの知識ではなく「対策」への第一歩です。自分の住んでいる地域がどのようなリスクを持っているのか、一度ハザードマップを確認してみてください。そして、万が一浸水して孤立してしまった時に備えて、防災セットや非常食などの備えを準備しておくことを強くおすすめします。

正しい知識を持って、もしもの時に大切な命を守れるよう、今日からできる備えを始めてみましょう。

この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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