地球の内部構造なぜわかる?地震波と掘削の科学を防災士が解説

地球の内部構造なぜわかる?地震波と掘削の科学を防災士が解説
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
私たちが毎日歩いているこの地面の下、ずっと深く掘り進めていくと一体どうなっているのでしょうか。「地球の内部構造 なぜわかる」という疑問は、地震のニュースを見たり、理科の授業で地球の断面図を見たりした時に、誰もが一度は抱く素朴な問いかもしれません。
宇宙の彼方、数億光年先にある銀河の姿は望遠鏡ではっきり見えるのに、私たちの足元のことは意外と知らないことが多いですよね。実は、人類が直接掘って到達できた深さは、地球の半径(約6,400km)に対してほんの皮一枚、12km程度に過ぎません。それなのに、なぜ教科書にはマントルや外核、内核といった層構造が詳しく描かれ、その成分までわかっているのでしょうか。
今回は、そんな地球科学の最大のミステリーである「見えない地球の中身」を、防災士の視点からわかりやすく紐解いていきます。私たちが地震に備える上でも、足元の構造を知ることはとても大切なんですよ。
- 地震波の「伝わり方」の違いが地球内部を透視するカギであることを理解できます
- 地球の裏側に地震波が届かない「シャドーゾーン」の謎と発見の歴史がわかります
- 人類が実際にどこまで地面を掘り進めることができたのか、その挑戦の歴史を知れます
- マグマや岩石の分析が、直接見えない地下深くの情報をどう補完しているか学べます
地球の中は直接見られない?地震波で分かる地球内部のひみつ

地球の内部構造はなぜわかる?地震波の解析

私たちが体の内側を調べる時に、お腹を切らずにレントゲンやCTスキャンを使うのと同じように、地球科学者は「地震波」という振動を使って地球の内部を健康診断のようにスキャンしています。「地球の内部構造 なぜわかる」という問いへの答え、その最大の功労者は間違いなく地震学です。
地震波のP波とS波の性質

地震が発生すると、震源からは四方八方に波が広がっていきます。この時、私たちの足元を揺らす波には、性質の異なる2つの主要な波が存在します。それが、最初に来るP波(プライマリー波)と、後から来るS波(セカンダリー波)です。
P波とS波の決定的な違い
P波は「縦波(疎密波)」とも呼ばれ、バネを押し縮めた時のように、進行方向と同じ向きに振動が伝わります。これは音波と同じ性質を持っていて、固い岩石だけでなく、ドロドロの液体や気体の中であっても伝わることができます。
一方、S波は「横波(ねじれ波)」で、ロープを上下に振った時のように、進行方向に対して垂直に揺れながら進みます。ここが地球の謎を解く上で非常に重要なポイントなのですが、S波は「固体」の中しか伝わることができず、液体の中に入ろうとするとエネルギーが吸収されて消えてしまいます。
| 波の種類 | 揺れ方(イメージ) | 伝わる物質 | 速度 |
|---|---|---|---|
| P波 | 縦波(進行方向へ押す・引く) | 固体・液体・気体 | 速い(約5~7km/秒 ※地殻内) |
| S波 | 横波(進行方向と直角に揺れる) | 固体のみ | 遅い(約3~4km/秒 ※地殻内) |
この「S波は液体を通れない」という性質の違いこそが、地球の中に「液体の層」が存在することを突き止める決定的な証拠となりました。
地震波の基本的な性質については、P波とS波の速度差や伝わり方について詳しく解説している記事でも紹介していますので、あわせてご覧ください。
シャドーゾーンと液体の外核

20世紀初頭、世界中に高性能な地震計が設置されるようになると、科学者たちはある奇妙な現象に気づきました。地球のどこかで大きな地震が起きると、その波は地球全体に広がるはずですが、なぜか地球の裏側の特定のエリアには地震波が届かない、あるいは届きにくい「空白地帯」があったのです。
地震波が消える「影」の正体
この地震波が届かない領域を「シャドーゾーン(影の領域)」と呼びます。具体的には、震源から地球の中心を通る角度で測って、103度から143度の範囲には、直接波がほとんど届きません。
特に衝撃的だったのは、103度を超えた場所(地球の裏側付近)には、S波が全く到達しないということでした。先ほどお話しした通り、S波は液体を通れません。このことから、「地球の地下深く(約2,900km以深)には、S波を遮断する巨大な液体の層がある」という結論が導き出されました。これが、現在私たちが「外核」と呼んでいる部分の発見です。
レーマン不連続面と固体の内核

外核が液体であることがわかった後、長らく「地球の中心核(コア)はすべてドロドロの液体である」と考えられていました。しかし、観測技術がさらに向上すると、本来なら波が届かないはずのシャドーゾーンの真ん中(143度より遠い場所)に、非常に微弱ながらP波が「反射」して届いていることが確認されました。
常識を覆したインゲ・レーマンの発見
この不可解な現象を解明したのが、デンマークの女性地震学者インゲ・レーマンです。彼女は1936年、「液体の外核の中に、さらに別の境界があり、そこに硬い芯のようなものがあるから波が反射・屈折して届くのではないか」という画期的な仮説を発表しました。
ここがポイント
レーマンのこの発見により、地球の中心(内核)は液体ではなく、超高圧で押し固められた「固体の鉄の塊」であることが判明しました。
この、外核(液体)と内核(固体)の境界は、彼女の功績を称えて現在「レーマン不連続面」と呼ばれています。
震源からの角距離と波の屈折

地球内部を調べる上で、「角距離」という考え方が重要になります。これは、地球の中心から見て、震源と観測地点がどのくらいの角度離れているかを示すものです。地震波は、地球内部をまっすぐ進むわけではありません。
スネルの法則と地球内部のカーブ
地球は深くなるほど圧力で物質の密度が高くなり、波の伝わる速度が速くなります。波には「速度の遅い層から速い層へ進むとき、屈折して進む」という性質(スネルの法則)があります。光が水に入るときに折れ曲がるのと同じ原理ですね。
そのため、地震波は地球内部でカーブを描くように屈折して進みます。世界中で観測された波の到達時間とこの屈折の角度を精密に計算(逆解析)することで、「どの深さで急激に物質が変わっているか」や「どこが柔らかくてどこが硬いか」を、あたかもCTスキャンのように立体的に推定できるようになったのです。
物理的推論による層構造の決定

「波の伝わり方で、液体か固体かはわかるけど、なんで中身が『鉄』だとわかるの?」と思いますよね。ここで登場するのが物理学的な推論です。
重さと隕石からのヒント
地球全体の重さ(質量)は、地球の重力や公転の動きから計算できます。その結果、地球全体の平均密度は、地表にある岩石の密度よりもずっと重いことがわかりました。「表面が軽い岩石なら、中心部はもっと重い金属でできていないと計算が合わない」のです。
さらに、宇宙から落ちてくる「隕石」もヒントになりました。隕石には「石の隕石」と「鉄の隕石」があります。これらは、大昔に破壊された惑星の「マントル(石)」と「核(鉄)」の破片だと考えられています。地球も同じようにできた惑星なら、中心には鉄があるはずです。
これらの証拠をパズルのように組み合わせることで、マントルはケイ酸塩岩石、核は鉄とニッケルの合金という現在のモデルが完成しました。
地球全体の構造やプレートの動きについては、世界の地震とプレートの仕組みをわかりやすく解説した記事も参考にしてください。

直接探査で地球の内部構造がなぜわかるか検証

地震波による解析、いわば「透視」技術は素晴らしいものですが、科学者としてはやはり「実物」を手に取って確かめたいというのが本音です。しかし、地球内部への直接探査は、実は宇宙に行くよりも過酷で難しいと言われています。
モホール計画とマントルへの憧れ

人類が本気で「マントルまで掘ろう」と動き出したのは、1960年代のことです。アメリカで始まった「モホール計画」という壮大なプロジェクトがその先駆けでした。
この計画の目的は、地殻とマントルの境界線である「モホロビチッチ不連続面(モホ面)」までドリルで穴を掘り、マントルの岩石を直接採取することでした。大陸の地殻は分厚い(30〜40km)ため、地殻が薄い(6km程度)海底からの掘削が選ばれました。
残念ながら、当時の技術力や資金不足、政治的な理由でマントル到達には至らず計画は中断されました。しかし、海の上から船の位置を固定して掘削するという技術は、現在の石油掘削や科学掘削の基礎となり、大きな遺産を残しました。
コラ半島超深度掘削坑の教訓

人類が「とにかく深く」を目指して掘った世界記録の一つに、旧ソ連(現ロシア)が行った「コラ半島超深度掘削坑」があります。彼らは1970年から約20年かけて、なんと深さ12,262メートルまで掘り進めました。エベレストの高さよりも深く掘ったのですから驚きです。
立ちはだかった「180℃」の壁
予期せぬ壁:地底の熱
当初の科学的予想では、地下10km付近の温度は100℃程度と考えられていました。しかし実際には、地下12km地点で温度は既に180℃にも達していました。
この予想外の高温により、硬いはずの岩石はまるでプラスチックや飴のように柔らかく変形する性質(塑性)を持つようになり、掘った穴がすぐに塞がろうとしてしまいました。ドリルなどの機材も熱で故障が相次ぎ、これ以上の掘削は不可能と判断されました。このプロジェクトは、「地球の深部は予想以上に熱く、流動的である」という現実を私たちに教えてくれました。
地球深部探査船ちきゅうの成果

現在、マントル到達の夢を引き継ぎ、世界最先端を走っているのが日本の地球深部探査船「ちきゅう」です。「ちきゅう」は、科学探査のために作られた巨大な船で、海底からさらに7,000メートル以上掘り進む能力を持っています。
南海トラフの謎に迫る
「ちきゅう」は特に、巨大地震の発生源である「南海トラフ」などのプレート境界断層の調査で大きな成果を上げています。地震を起こす断層の岩石を直接採取したり、穴の中に観測機器を設置したりして、地震発生のメカニズム解明に貢献しています。
(出典:JAMSTEC 国立研究開発法人海洋研究開発機構『地球深部探査船「ちきゅう」』)
マグマと捕獲岩からの物質分析

人間が必死に掘らなくても、地球が自ら内部のサンプルを宅配便のように届けてくれることもあります。それが火山活動です。
地下深くから上昇してくるマグマは、ものすごい勢いで上がってくる途中で、通り道にあるマントルなどの岩石を砕いて取り込み、そのまま地表まで運んでくることがあります。これを「捕獲岩(ゼノリス)」と呼びます。
例えば、宝石の王様であるダイヤモンド。あれは実は、地下150km以深という超高圧の場所でしか作られません。それが「キンバーライト」という特殊なマグマに乗って、エレベーターのように一気に地上まで上がってくることで、私たちの手元に届くのです。こうした石を調べることで、本来行けない深さの成分や状態を化学的に分析できるのです。
マントル到達を目指す技術的挑戦

「地球の内部構造 なぜわかる」の最終的な答え合わせは、やはり人類の手でマントルを直接採取することです。現在は、コラ半島での教訓を活かし、より高温(250℃以上)に耐えられる掘削ビットやセンサーの開発、穴が崩れないようにする泥水の循環技術などの研究が進められています。
地震波で見ている「影」の実体を掴むため、研究者たちの挑戦は今も続いています。もしマントルまで掘り抜くことができれば、それは月面着陸に匹敵する科学的偉業となるでしょう。
結論:地球の内部構造はなぜわかるのか

ここまで見てきたように、私たちが地球の内部構造を知ることができるのは、たった一つの方法によるものではなく、複数の科学的アプローチを統合しているからです。
結論:3つのアプローチの統合
- 聴く(地震学):地震波の解析で、地球内部の「骨組み(層構造)」や「状態(固体か液体か)」を見る。
- 拾う(岩石学):火山や隕石の分析で、各層を構成している「素材(元素や鉱物)」を知る。
- 挑む(掘削科学):掘削技術で直接「実物」に近づき、理論が正しいか検証する。
この3つの歯車が噛み合うことで、目に見えない地下6,400kmの暗闇の世界が、まるで手に取るように「わかる」ようになってきたのです。
防災士としても、この足元の構造を知ることは、地震のメカニズムを正しく恐れ、備えるための第一歩だと感じています。私たちが住む地球は、今も活動を続ける「生きている惑星」なんですね。
地震がなぜ起こるのか、その根本的な仕組みについては地震の仕組みをわかりやすく解説した記事でも触れていますので、ぜひ知識を深めてみてください。
