オーロラがなぜできるか中学生にも簡単に解説!

中学生がオーロラがなぜできるか勉強している様子

オーロラがなぜできるか中学生にも簡単に解説!

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。

「オーロラがなぜできるか」気になりますよね。テレビや写真で見ると本当に美しくて、一度は本物を見てみたいと思う方も多いと思います。でも、その仕組みは中学生には少し難しいかもしれません。オーロラの色が変わる理由は何なのか、日本でも見える可能性はあるのか、そして実はオーロラには危険性があり停電と関係しているというのは本当なのか…。知りたいことはたくさんあると思います。この記事では、オーロラ発生の仕組みをできるだけ簡単に解説しつつ、防災士の視点から「もしもの備え」についても触れていきますね。

  • オーロラがなぜできるかの簡単な仕組み
  • オーロラの色が変わる理由
  • オーロラが見える場所と予報の見方
  • オーロラがもたらす停電などの危険性
目次

オーロラがなぜできるか、簡単に解説!

オーロラがなぜできるかを見上げる日本人中学生と夜空の光
【HIH】ヒカリネット・イメージ

まずは、オーロラが発生する基本的な仕組みについて、できるだけ分かりやすく解説していきますね。夜空を彩る宇宙の壮大なショーが、どのようなプロセスで生まれるのか、その裏側を一緒に見ていきましょう。

オーロラの仕組みと太陽風の関係

太陽風が地球に届きオーロラができる仕組みのイメージ図 実写風
【HIH】ヒカリネット・イメージ

オーロラがなぜできるか、そのおおもとの原因は、私たちの生活に欠かせない「太陽」にあります。

太陽の表面は非常に高温で、そこからは電気を帯びた粒(主に電子や陽子といった「プラズマ」と呼ばれるものです)が、秒速数百kmというものすごい速さで、常に宇宙空間全体に放出されています。これを「太陽風(たいようふう)」と呼ぶんですね。地球で感じる風とは全く違う、まさに宇宙の嵐のようなものです。

この強力な太陽風が、約1億5000万km離れた地球にまで到達し、勢いよく吹き付けてくること。これが、オーロラが光り輝くためのすべての始まりになります。

中学生にもわかる地球のバリア

地球を守る磁場と太陽風の関係を示す実写風イメージ
【HIH】ヒカリネット・イメージ

これほど強力な太陽風が、もしそのまま地球にぶつかったら、地上の生命はひとたまりもありません。ですが、地球には強力な「磁場(じば)」という目に見えないバリアがあります。理科の実験で使った磁石と同じように、地球も北極(S極)と南極(N極)を持つ、巨大な磁石なんです。

この磁場のバリアは「磁気圏(じきけん)」と呼ばれ、太陽風のプラズマ粒子のほとんどを、宇宙空間へとうまくそらしてくれています。この磁気圏は、太陽風の圧力を受けて、太陽側(昼側)は押しつぶされ、反対側(夜側)は彗星の尾のように長ーく伸びた、いびつな形をしています。

しかし、このバリアは完璧ではありません。一部のプラズマ粒子は、このバリアのすき間(特に夜側)から地球の磁気圏内部に入り込んできます。

入り込んできたプラズマ粒子は、地球の磁力線(磁石の力が働く通り道のようなもの)に捉えられ、それに沿って北極や南極の近く(磁極)へと引き寄せられます。そして、地球の大気(空気)がある層、上空約100km〜500kmの高さに、高速で突入してくるんです。

オーロラの色がなぜ変わるかの理由

オーロラの色の違いと高度の関係を表現した実写風の空
【HIH】ヒカリネット・イメージ

オーロラの正体は、「地球の大気が光っている」現象です。ネオンサインが光る仕組みと少し似ているかもしれません。

宇宙から高速で突入してきた太陽風のプラズマ粒子(主に電子)が、地球の高層大気を構成する「酸素原子」「窒素分子」と激しく衝突します。この衝突のエネルギーによって、大気の原子や分子が刺激され、非常に不安定な状態(励起状態といいます)になります。

でも、不安定な状態は長くは続かず、すぐに元の安定した状態に戻ろうとします。その際、余ったエネルギーを「光」として放出するんです。これが、地上から見えるオーロラの美しい輝きの正体なんですね。

では、なぜオーロラの色は緑や赤、ピンクなど、色が変わるのでしょうか?それは、「衝突する大気の種類」と、「衝突する場所の高さ(高度)」によって、放出される光の波長(色)が決まるからです。

発生高度(目安)衝突する大気特徴
緑色約100km 〜 200km酸素原子 (O)最もよく見られる色。大気の密度が比較的高い場所で、酸素原子と強く衝突して光ります。
赤色約200km 〜 500km酸素原子 (O)大気が非常に薄い(低密度な)場所で、酸素原子がゆっくりと時間をかけて光るため赤色に見えます。
ピンク・紫・青色約100km 以下窒素分子 ($N_2$)非常にエネルギーの強い粒子が、低い高度の窒素分子と衝突すると発生します。オーロラの下端に見えることが多いです。

豆知識:色の違いは「大気の密度」と「光るまでの時間」がカギ

同じ「酸素原子」なのに、高さによって緑と赤に変わるのは不思議ですよね。これは量子力学という難しい話も絡むのですが、中学生にも分かりやすく言うとこうなります。

  1. 赤色(高高度):大気が薄すぎて、酸素原子が刺激されても、次に別の粒子とぶつかるまでに時間がかかります(数分かかることも)。そのため、ゆっくりとエネルギーを放出して「赤色」の光になります。
  2. 緑色(中高度):大気が比較的濃いため、酸素原子が刺激されてから「赤色」の光を出す前に、別の粒子と衝突して邪魔されてしまいます(クエンチングと言います)。でも、「緑色」の光は約1秒と比較的すぐに(赤色よりずっと早く)出せるので、邪魔される前に光ることができます。

つまり、大気が薄い場所では酸素がゆっくり赤く光れ、大気が濃い場所では赤く光る前に邪魔されるので、代わりに緑色に光る、というイメージですね。

オーロラが見える場所とオーロラベルト

オーロラベルト付近で強く光るオーロラの俯瞰イメージ 実写風
【HIH】ヒカリネット・イメージ

オーロラは、北極や南極の周辺で見ることができます。これは、プラズマ粒子が地球の磁力線に沿って「磁極(磁石の極)」周辺に集中的に降り注ぐからですね。

オーロラが統計的に最もよく出現する地帯のことを「オーロラベルト」と呼びます。これは、磁気緯度(地球の磁場を基準にした緯度)でだいたい60度から70度くらいのドーナツ状のエリアを指します。

ここで大事なのは、地球の「自転軸(地理的な北極点)」と「磁軸(磁石としての北極点)」は、実は少しズレていることです。そのため、カナダのイエローナイフや、フィンランド・ノルウェーなどの北欧は、地理的な緯度のわりには磁気緯度が高く、オーロラベルトの真下に位置しているため、観測地として非常に有名です。

残念ながら、日本(特に福島など)は磁気緯度でいうともっと南の「中緯度」に位置するため、オーロラベルトから遠く離れており、普段オーロラを見ることはできません。

オーロラ予報とKp指数とは?

オーロラ予報をチェックする日本人観測者と夜空の光
【HIH】ヒカリネット・イメージ

オーロラには「予報」があるのをご存知でしたか?オーロラは常に出ているわけではなく、その活動は太陽風の強さによって大きく変わります。太陽風が強いほど、オーロラも強く、広い範囲で光ります。

この地球の地磁気がどれくらい乱れているか、つまりオーロラ活動がどれくらい活発かを示す世界共通の指標として「Kp指数(ケーピーしすう)」というものが使われます。これは、過去3時間の地磁気活動の強度を0から9までの10段階の数値で示したものです。

  • Kp値が0~3:地磁気は穏やか。オーロラ活動も静かです。
  • Kp値が4~5:地磁気が活発。オーロラが出やすくなり、オーロラオーバル(今まさに出現している範囲)も少し南に広がります。
  • Kp値が6以上:非常に活発。「磁気嵐」と呼ばれる状態です。

このKp値が大きくなるほど、オーロラ活動は激しくなり、オーロラオーバルはもっと南の地域(低緯度側)へと大きく広がってきます。旅行などでオーロラを見に行く際は、このKp指数をチェックするのが一般的ですね。

こうした予報は、専門の研究機関によって常時監視されています。(出典:情報通信研究機構(NICT) 宇宙天気予報センター

防災士が語る、オーロラがなぜできると危険か

オーロラ活動が強まると危険になる理由を象徴する激しい光
【HIH】ヒカリネット・イメージ

ここからは防災士としての視点でお話しします。美しいオーロラですが、実はその活動が活発になる(オーロラがなぜできるか、という原因が強まる)時、私たちの現代社会のインフラに深刻な影響が出る可能性があるんです。その「危険性」について、詳しく解説します。

オーロラの危険性と磁気嵐の影響

強い磁気嵐によるオーロラと地球の磁場の乱れを示す実写風
【HIH】ヒカリネット・イメージ

オーロラがなぜできるか、その大元の原因は「太陽風」だとお話ししました。この太陽風が、通常よりも遥かに強力になることがあります。それは、太陽の表面で「太陽フレア」(大規模な爆発)や「コロナ質量放出(CME)」(プラズマの巨大な塊の放出)が起きた時です。

特にCMEによって放出された膨大なプラズマの塊が、1日~数日かけて地球に直撃すると、地球の磁場のバリア(磁気圏)が激しくかき乱されます。これを「磁気嵐(じきあらし)」と呼びます。

オーロラがいつもより活発で、色が鮮やかで、動きが激しくなり、もしかしたら日本のような低緯度地域でも見えるかもしれない、という時は、まさにこの「磁気嵐」が発生している強力なサインなんです。そして、この磁気嵐こそが、オーロラの「危険性」の正体です。

停電?私たちの生活への影響

磁気嵐による停電リスクを連想させる暗い住宅街とオーロラ
【HIH】ヒカリネット・イメージ

磁気嵐が非常に強くなると、地球の磁場が短時間で急激に大きく変動します。すると、「電磁誘導」という理科で習う現象(コイルの近くで磁石を動かすと電気が流れるアレです)によって、地上の長い導体、特に「送電網(電力網)」に、本来流れるはずのない異常な電流(地磁気誘導電流:GIC)が発生してしまうことがあります。

この想定外の大電流が送電網の心臓部である「変圧器」に流れ込むと、変圧器が異常に過熱して「磁気飽和」という状態になり、最悪の場合、故障や破壊につながる可能性があります。

もし主要な変圧器が壊れてしまうと、その復旧には数ヶ月から数年かかるとも言われており、広範囲で長期間にわたる大規模停電が発生する危険性があるんです。

注意:停電は社会インフラ全体を麻痺させる

これは遠い国の話だけではありません。私たちの生活は電気に完全に依存しています。もし大規模な停電が長期間続けば、どうなるでしょうか。

  • 通信(スマホ、ネット)が使えない
  • 水道(ポンプ停止)やガスが止まる
  • 交通(信号、電車)が麻痺する
  • 医療(病院の機器)が停止する
  • 金融(ATM、キャッシュレス決済)が使えない

これは、地震や台風による停電と同じか、復旧までの期間を考えると、それ以上に深刻な事態かもしれません。災害時の電源確保は、あらゆる防災の基本中の基本なんですね。

GPSや通信障害のリスク

磁気嵐でGPS誤差や通信障害が起きる可能性を示す夜空の光
【HIH】ヒカリネット・イメージ

磁気嵐の影響は停電だけではありません。磁気嵐は、オーロラが光る高度(上空約100km以上)にある「電離圏」という層も激しく乱します。

この電離圏は、地球と人工衛星の間で電波がやり取りされる際や、遠くへ電波を飛ばす短波通信(飛行機や船舶の無線など)が利用する重要な層です。ここが磁気嵐で乱れる(プラズマの密度が急激に変わる)と、電波の通り道に異常が発生します。

  • GPSの誤差増大: 衛星からの電波が電離圏を通る時間がズレるため、カーナビやスマートフォンの地図(位置情報)に大きな誤差が出たり、最悪の場合、測位不能になったりします。
  • 無線通信の障害: 短波通信が電離圏で反射しなくなり、遠くまで届かなくなる(デリンジャー現象)など、航空管制や船舶の運航、防災無線などに影響が出る可能性があります。
  • 人工衛星の故障: 強いプラズマ粒子が人工衛星の電子機器に衝突して故障させたり、大気が膨張して衛星の軌道がズレたりする原因にもなります。

過去の大きな太陽嵐と被害

過去の太陽嵐で世界に影響が出たことを象徴する強いオーロラ
【HIH】ヒカリネット・イメージ

こうした被害は、決して「仮定の話」や「SFの世界」ではありません。過去には実際に、磁気嵐によって大きな被害が記録されています。

  • 1989年(カナダ・ケベック州): 大規模な磁気嵐が発生し、地磁気誘導電流によって送電システムがダウン。約600万人が9時間以上にわたる大停電の影響を受けました。
  • 1859年(キャリントン・イベント): 観測史上最大とされる歴史的な太陽嵐が発生しました。当時はまだ電気が普及していませんでしたが、世界中の「電信(電報)」システムが停止し、通信線から火花が出て電信局が火事になったという記録が残っています。この時は、赤道付近のキューバなどでもオーロラが観測されたそうです。

もし現代に「1859年クラス」の太陽嵐が来たら…

もし1859年と同じ規模の磁気嵐が、電力網と通信網に高度に依存する現代社会を直撃した場合、その被害は計り知れないと言われています。世界中で同時に大規模停電が発生し、復旧に数ヶ月から数年かかる可能性も指摘されています。これは、世界的な大災害となる最大級のリスクの一つとして、各国政府や機関が真剣に対策を検討している課題なんです。

オーロラが日本で見える可能性

日本で見える低緯度オーロラの夜景と観望者の実写風イメージ
【HIH】ヒカリネット・イメージ

では、日本でオーロラが見える可能性はあるのでしょうか?

答えは「可能性はゼロではない」です。

Kp指数が非常に高くなる(Kp8~9レベルの)巨大な磁気嵐が発生すると、オーロラオーバルが日本の上空近くまで南下することがあります。実際に、過去にも北海道や、ごく稀に本州(福島県でも記録があるようです)でオーロラが観測されたことがあります。

ただし、日本のような中緯度で見えるオーロラは、北欧などで見られるカーテンのような緑色のオーロラとは少し違います。多くの場合、空全体がぼんやりと赤く染まる「低緯度オーロラ」と呼ばれる現象です。これは、非常に高い高度(H3-3の表で見た、赤色が発生する高度)で光る酸素原子の光を、地平線の向こうから見ている状態なんですね。

もし日本でオーロラが見えたら、それは「ラッキー!」と思うと同時に、「今、地球は非常に強力な磁気嵐に見舞われており、インフラ障害のリスクが高まっているんだ」と、防災の視点を持つことも大切かもしれません。

まとめ:オーロラがなぜできるかを知り備えよう

防災備蓄とオーロラの光を組み合わせた電源備えのイメージ
【HIH】ヒカリネット・イメージ

今回は、「オーロラがなぜできるか」という仕組みから、防災士の視点でその危険性までを詳しく解説しました。

オーロラがなぜできるかを理解することは、単なる科学の知識に留まりません。それは、「宇宙天気」という地球規模の自然現象が、私たちの生活や社会インフラに直接的な影響(リスク)を及ぼすことを知ることにつながります。

磁気嵐による大規模停電は、地震や台風と違って、いつ起こるか予測が非常に難しい災害の一つです。太陽の活動は約11年周期で活発になったり穏やかになったりしますが、巨大な太陽嵐は周期に関わらず突然発生することもあります。

しかし、備えることはできます。地震や台風への備えと同様に、日頃から「もし電気が止まったら」を想定しておくことは、どんな災害に対しても必ず役立ちます。

「宇宙天気予報」もチェックしてみよう

先ほども紹介しましたが、国立研究開発法人「情報通信研究機構(NICT)」などが、日々の太陽活動やKp指数などを含む「宇宙天気予報」を一般向けに発表しています。興味がある方は、ぜひ一度チェックしてみてください。

もちろん、こうした情報はあくまで予報であり、その影響を100%正確に予測することは困難です。最終的な備えや判断は、ご自身の責任において行ってくださいね。

美しいオーロラの裏にある宇宙の厳しさと、私たちの社会の脆弱性を知り、この機会に、ご家庭の防災備蓄品、特にポータブル電源や乾電池、手回し充電ラジオなどの「電源の備え」を再点検してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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