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キラーパルスと共振現象とは?木造住宅を守る仕組みと対策

地震の破壊的な揺れ(キラーパルス)を表す赤い波から、耐震・制震対策を表す青いエネルギーシールドによって守られている建設中の木造住宅のイメージ画像。

キラーパルスと共振現象とは?木造住宅を守る仕組みと対策

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。

最近の地震報道でよく耳にするようになった「キラーパルス」や「共振現象」という言葉。言葉の響きだけでも恐ろしいですが、実際に「なぜ同じ震度7でも、倒壊する家と無傷の家があるのか?」という疑問への答えがここにあります。

実は、建物の揺れやすさには地震の「周期(リズム)」が大きく関係しており、特に木造住宅や低層マンションにお住まいの方にとっては、家族の命に関わる極めて重要なテーマです。専門的な物理の話になりがちですが、ここでは専門用語をできるだけ噛み砕き、私たちが今すぐできる具体的な対策について一緒に考えていきましょう。

  • キラーパルスがなぜ「住宅への殺人波」と呼ばれるのかその物理的理由
  • 共振現象によって木造住宅が徐々に破壊され倒壊に至るプロセス
  • 震度7でも倒壊しない家と倒壊してしまう家の決定的な構造的違い
  • 耐震等級や制震ダンパーなど、命と財産を守るための具体的な対策手法
目次

キラーパルスが起こす共振現象の正体

キラーパルスと共振現象をブランコの揺れでイメージする親子の実写風写真
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

「キラーパルス」という言葉を聞くと、何か特別な、恐ろしい未知の力のように感じるかもしれません。しかし、これは物理的な現象であり、その正体を知ることで、私たちは正しく恐れ、正しく備えることができます。まずは、地震の「揺れ」の正体について紐解いていきましょう。

キラーパルスのわかりやすい意味

地震の周期を振り子のおもちゃで学ぶ日本人親子の実写風イメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

地震の揺れは、小刻みな揺れやゆったりとした揺れなど、様々な波が複雑に混ざり合ってできています。この波が1回行って帰ってくるまでの時間を「周期」と呼びます。

キラーパルスとは、この周期が「1秒から2秒」の範囲にある地震の揺れのことを指します。専門的には「やや短周期地震動」とも呼ばれる領域です。

なぜ「キラー(殺人)」なのか?

なぜこの1〜2秒の周期が物騒な名前で呼ばれるのでしょうか。それは、日本の伝統的な木造住宅や、一般的な2階建て住宅が持つ「もっとも揺れやすいリズム(固有周期)」と、この地震波が合致しやすいからです。

ブランコの原理でイメージしよう

ブランコを漕ぐとき、デタラメなタイミングで背中を押しても揺れは大きくなりません。しかし、ブランコが戻ってくるタイミングに合わせて背中を押すと、小さな力でも揺れはどんどん大きくなりますよね?

これが「共振(きょうしん)」です。キラーパルスは、木造住宅というブランコを、一番大きく揺らすタイミングで正確に押し続ける、最悪の地震波なのです。

地震の周期1秒台が持つ破壊力

周期1秒台の揺れの大きさを積み木で体験する親子の実写風写真
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

地震の揺れにはいくつかのタイプがあります。ガタガタと小刻みに揺れる「極短周期」や、高層ビルをゆっくり揺らす「長周期」などです。その中で、周期1秒〜2秒のキラーパルスは、木造住宅に対して「建物が壊れるほどの大きな変形」を強いるという際立った特徴があります。

加速度(ガル)と速度(カイン)の違い

ニュースでよく「最大加速度◯◯ガル」という言葉を聞きますが、実は加速度だけでは建物の倒壊は説明できません。

  • 極短周期(0.5秒以下): 加速度は大きいですが、揺れが一瞬で戻ってしまうため、建物を大きく歪ませるパワーが続きません。「ガタガタ」と怖い音はしますが、建物自体は耐えられることが多いです。
  • キラーパルス(1〜2秒): 加速度に加えて、揺れの速度(カイン)と変位(移動距離)が大きくなります。柱や壁を「ググッ」と大きく持ち上げてねじ曲げるようなエネルギーを持っています。

破壊力の正体

車で例えるなら、極短周期は「小石に乗り上げた衝撃(ガツン)」ですが、キラーパルスは「猛スピードでの衝突(ドカン)」に近いエネルギーを持っています。建物にかかる負荷が段違いなのです。

木造住宅が倒壊するメカニズム

木造住宅が損傷して揺れが大きくなる仕組みを模型で観察する実写風イメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

ここが少し専門的になりますが、非常に重要なポイントです。実は、新築の丈夫な木造住宅の揺れのリズム(固有周期)は、0.1秒〜0.5秒程度で、本来はキラーパルス(1〜2秒)とは一致しません。

「じゃあ共振しないから大丈夫では?」と思うかもしれません。しかし、ここに「剛性低下(ごうせいていか)」という落とし穴があります。

死の共振へのカウントダウン

  1. 初期段階: 地震が始まった直後、家は硬く、周期は0.3秒程度です。
  2. 損傷の開始: 大きな揺れを受けると、柱と梁をつなぐ釘が少し浮いたり、木材がめり込んだりして、接合部が緩みます。
  3. 周期のスライド: 接合部が緩んで家が「柔らかく」なると、揺れのリズム(固有周期)が0.5秒、0.8秒、1.0秒……と徐々にゆっくりになって(伸びて)いきます。
  4. 共振と倒壊: 建物の周期が伸びて1秒台に達したその瞬間、地震波に含まれるキラーパルスと完全に同期し、「共振」が発生します。揺れ幅が限界を超え、1階部分が押し潰されて倒壊します。

つまり、最初から共振するのではなく、「壊れながら揺れのリズムが変わり、最後にキラーパルスに捕まってトドメを刺される」のが真の倒壊メカニズムなのです。

能登半島地震と過去の被害事例

木造住宅が損傷して揺れが大きくなる仕組みを模型で観察する実写風イメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

過去の巨大地震でも、このキラーパルスが多くの命を奪ってきました。被害の歴史を振り返ることは、次の対策を考える上で避けて通れません。

  • 1995年 阪神・淡路大震災:
    まさにキラーパルスの脅威が世界に知られた災害です。「震災の帯」と呼ばれる地域に、周期1秒〜1.5秒の強烈なパルスが集中し、古い木造住宅の多くが1階から押し潰されるように倒壊しました。
  • 2016年 熊本地震:
    震度7が2回続くという過酷な状況でした。一度目の地震でダメージを受けて周期が伸びた住宅が、二度目の本震(キラーパルスを含む)で共振し、倒壊に至ったケースが多数確認されました。
  • 2024年 能登半島地震:
    珠洲市などで観測された記録には、明確に周期1〜2秒のキラーパルスが含まれていました。また、3年以上続いていた「群発地震」ですでに家の接合部が緩み、周期が伸びていた(疲労していた)ことも、被害を拡大させた要因と考えられます。

特に熊本地震における被害分析では、新しい基準で建てられた家であっても、接合部の仕様が不十分なものは被害が大きかったことが報告されています。これは、基準を満たすだけでなく、より高い安全性能が必要であることを示唆しています。

(出典:国土交通省『熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 報告書』

震度やマグニチュードとの違い

震度と揺れ方の違いを水面の波でイメージする親子の実写風写真
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

よく「マグニチュードが大きいから危ない」「震度7だから倒壊する」と思われがちですが、キラーパルスの視点で見ると少し違います。

例えば、2011年の東日本大震災はマグニチュード9.0、最大震度7を記録しましたが、揺れによる木造住宅の倒壊率は、阪神・淡路大震災に比べて低かったと言われています。これは、東日本大震災の地震波が「極短周期(ガタガタ揺れ)」主体で、家を倒す「キラーパルス成分」が比較的少なかったためです。

震度の大きさだけでなく、「どんな揺れ方か」を知ることが大切です。震度については以下の記事でも詳しく解説しています。

用語意味木造住宅への影響
マグニチュード地震そのもののエネルギーの大きさ規模が大きくても、震源が遠ければ影響は小さい場合があります。
震度(計測震度)ある地点での揺れの強さの指標震度が大きくても、周期が0.5秒以下なら「家具は飛ぶが家は倒れない」ことがあります。
キラーパルス周期1〜2秒の地震波成分震度以上に倒壊リスクと直結します。建物に変形を強いる最も危険な成分です。

キラーパルスと共振現象への対策法

家を守る地震対策を家族で考える安心感のある実写風イメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

敵の正体が「損傷による周期の一致(共振)」であるならば、対策の基本は「損傷させない」「共振させない」ことに尽きます。これから家を建てる方、今お住まいの家を守りたい方に向けて、具体的な対策を見ていきましょう。

耐震等級3は倒壊を防げるか

耐震等級の違いを住宅模型で比べて学ぶ親子の実写風イメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

現在、最も有効な対策のベースとなるのが「耐震等級3」の取得です。建築基準法ギリギリの「耐震等級1」に比べて、1.5倍の壁量や強さを持っています。

耐震等級3の家は非常に「硬い」ため、固有周期が短く(0.2秒〜0.3秒程度)、地震を受けても損傷しにくいのが特徴です。損傷しなければ周期が伸びないため、キラーパルス(1〜2秒)の領域まで周期がスライドせず、共振を回避できる可能性が極めて高いのです。

熊本地震での実績

震度7が2回襲った益城町の悉皆(しっかい)調査では、耐震等級3の住宅は16棟中14棟が無被害、残り2棟も軽微な損傷に留まり、倒壊・大破した建物はゼロでした。これは「硬さ」がキラーパルスに打ち勝った証拠と言えます。

制震ダンパーの導入効果と費用

制震ダンパーの揺れ吸収を模型でイメージする実写風写真
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耐震等級3で「硬く」することに加え、私が強くおすすめしたいのが「制震ダンパー」による「粘り」の付加です。

制震ダンパーは、壁の中に設置する特殊な装置(ゴムやオイル、金属など)で、地震のエネルギーを熱に変えて吸収してくれます。これにより、建物の変形を半分程度に抑え、釘や金具が緩むのを防ぐ効果があります。

制震ダンパーの2つのメリット

  • 繰り返しの地震に強い: 一度目の地震で耐えても、見えないダメージが蓄積すれば次は危ないかもしれません。ダンパーはダメージの蓄積を最小限に抑えます。
  • 共振を防ぐ: 建物の損傷を抑えることで、固有周期が伸びるのを防ぎ、キラーパルスとの「握手(共振)」を阻止します。

費用はメーカーや本数によりますが、新築時であれば一棟あたり50万円〜100万円程度で導入できる場合が多いです。家が全壊して建て直す数千万円のリスクを考えれば、非常にコストパフォーマンスの高い「構造への保険」と言えるでしょう。

マンションへの影響と耐震性

マンションの揺れやすさを学ぶ親子の実写風アウトドア写真
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「マンションなら鉄筋コンクリートだから安心」と思われがちですが、木造とは少し事情が異なります。鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションは木造よりも硬く重いため、階数によって固有周期が変わります。

  • 低層〜中層マンション(10階建前後): 固有周期が0.5秒〜1.0秒程度になることがあり、キラーパルスの影響を受ける可能性があります。ただし、木造のように「接合部が外れて一気にぺしゃんこ」という壊れ方はしにくい構造です。壁にひびが入るなどの被害は想定されます。
  • 超高層マンション(タワマン): 固有周期が2秒〜数秒と長いため、キラーパルス(1〜2秒)よりも、もっと周期の長い「長周期地震動」に注意が必要です。ゆっくりとした大きな揺れが数分間続き、船酔いのような状態になったり、家具が動き回ったりする「長周期共振」が課題となります。

Wallstatによる倒壊解析

住宅の揺れをシミュレーションで確認する親子の実写風イメージ
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「自分の家がキラーパルスでどうなるか、数字だけでなく目で見たい」という方には、最新のシミュレーション技術があります。京都大学の研究者らが開発した木造住宅倒壊解析ソフトウェア「wallstat(ウォールスタット)」です。

設計図のデータを入力し、パソコン上で「阪神・淡路大震災(JMA神戸)」や「熊本地震(益城町)」の実際の地震波を再現できます。「耐震等級1だと倒壊するが、等級3+制震ダンパーなら無傷」といった違いが動画でリアルに確認できるため、これから家づくりをする方は、工務店や設計士に「wallstatでのシミュレーションは可能ですか?」と聞いてみることを強くおすすめします。

防災アプリで直前予測を活用

防災アプリで地震前の行動を確認する家族の実写風イメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

ハード面の対策と同時に、ソフト面の対策も忘れずに。「特務機関NERV防災」などの高度な防災アプリをぜひスマホに入れておきましょう。

地震波には、最初に届く小さな揺れ(P波)と、遅れて届く大きな揺れ(S波=キラーパルスを含む)があります。気象庁のデータを活用したアプリは、このわずかな時間差を利用して「あと何秒で強い揺れが来るか」をカウントダウンで教えてくれます。

たとえ数秒〜十数秒でも、猶予があれば「火を消す」よりも「机の下に隠れる」「玄関を開ける」といった、命を守るための最善の行動(ダンゴムシのポーズなど)をとることができます。この数秒が、生存率を大きく分けるのです。

キラーパルスと共振現象のまとめ

キラーパルス対策を家族で点検するポジティブな実写風イメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

キラーパルスは、木造住宅の弱点を突いてくる恐ろしい波ですが、そのメカニズムさえわかっていれば、決して防げないものではありません。

  • キラーパルスは周期1〜2秒の「木造住宅を狙い撃ちし、共振させる」地震波です。
  • 家が損傷して接合部が緩み、周期が伸びることで「共振」し、倒壊に至ります。
  • 「耐震等級3(硬さ)」で周期を伸ばさず、「制震ダンパー(粘り)」で揺れを吸収するのが、現在考えられる最強の組み合わせです。
  • 古い家にお住まいの方は、まずは自治体の制度を使った耐震診断を行い、補強や制震改修を検討してください。

「あの時やっておけばよかった」と後悔しないために、まずはご自宅の「建築年」と「耐震性能(等級)」を確認することから始めてみてくださいね。

※本記事の情報は執筆時点の一般的な知見に基づいています。個別の建物の安全性については、必ず建築士などの専門家にご相談ください。

この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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