地震の備えは小学生向けにどうする?防災士が教えるランドセル活用術

地震の備えは小学生向けにどうする?防災士が教えるランドセル活用術
こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。
「子供が学校に行っている間や、一人で登下校(とうげこう)している最中に大地震が起きたらどうしよう……」
そんな不安に胸を締め付けられることはありませんか?小学生になると、保育園や幼稚園の頃とは違い、大人の目が届かない場所での行動範囲がぐっと広がります。塾への移動や放課後の遊びなど、子供が「一人きり」になる瞬間こそが、防災における最大のリスクポイントなのです。
ランドセルに防災ポーチを入れておけば安心なのか、女の子にはどんな特別なケアが必要なのか、親としての悩みは尽きないものですね。この記事では、検索キーワード「地震 備え 小学生向け」で調べているお父さんお母さんのために、子供の命と心を守るための具体的な対策を、プロの視点からわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- ランドセルに常備すべき「0次の備え」である防災ポーチの最適な中身
- 100均グッズを活用した、手軽で負担の少ない防災アイテムの作り方
- 低学年と高学年、それぞれの発達段階(はったつだんかい)に合わせた適切な避難行動
- 災害用伝言ダイヤルの使い方や、被災後の心のケアなど、ソフト面の対策
そなぷーが教える!避難所で役立つコンパクト寝袋|HIH防災リュックにすっぽり入る安心アイテム

小学生向けの地震の備えと防災ポーチ

小学生の防災対策で最も重要なのは、高価なグッズを持たせることではなく、「大人がそばにいない時でも、自分の命を自分で守れる判断力を養うこと」です。ここでは、通学路でのリスク管理から、毎日無理なく持ち歩ける防災グッズの選び方まで、子供の日常に自然と溶け込む「備え」について詳しく解説していきます。
登下校の安全とランドセルの活用

登下校中(とうげこうちゅう)は、子供が最も無防備になる「防災の空白地帯」と言えます。まずは、毎日背負っているランドセルが、いざという時に身を守る最強の盾(たて)になることを教えてあげてください。
地震(じしん)の揺(ゆ)れを感じたら、反射的にランドセルのフラップ(蓋)部分を頭の上に持ってきて、「ダンゴムシのポーズ」をとるように指導しましょう。ランドセルは厚みがありクッション性も高いため、落下物から脳や首の重要(じゅうよう)な血管を守るのに非常に有効です。
さらに、通学路に潜む危険箇所(きけんかしょ)を具体的に認識させておく必要があります。
通学路のチェックポイントと回避行動(かいひこうどう)
- ブロック塀(べい):過去の震災でも多くの倒壊事故(とうかいじこ)が起きています。「揺れたら塀から離れて道路の真ん中へ」を鉄則にしましょう。
- 自動販売機(じどうはんばいき):固定されていない自販機は凶器になります。そばを通る時は常に注意が必要です。
- 古い看板(かんばん)やガラス窓:繁華街(はんかがい)や商店街では、頭上からの落下物が致命傷になります。カバンで頭を守りながら、建物の直下から離れるよう教えましょう。
休日に親子で一緒に通学路を歩き、「ここはブロック塀が高いから危ないね」「もしここで地震が起きたら、あの公園に逃げ込もう」とシミュレーションしながら歩く「防災散歩(ぼうさいさんぽ)」をぜひ実施してください。ハザードマップを見るだけでは気づかないリアルな危険が、実際の現場にはたくさん隠れています。
また、地震がなぜ起こるのか、その仕組みを子供たちに正しく知ってもらうことも、過度な恐怖心を減らし、冷静な行動につなげる第一歩です。地震の仕組みについて、お子様と一緒に読めるようわかりやすく解説した記事もありますので、ぜひ参考にしてください。
毎日持ち歩く防災ポーチの中身

「0次の備え」という言葉をご存じですか?これは、自宅での備蓄(1次・2次)とは異なり、外出時を含め常に携帯する最低限の備えのことです。小学生にとっての0次の備えは、ランドセルのポケットに入れておく「防災ポーチ」になります。
ランドセルは教科書やタブレットでただでさえ重いため、防災ポーチはあまり重くなりすぎないよう、すべて合わせても数百グラム程度に収めるのが継続のポイントです。ポーチ自体も、中身が見えるメッシュタイプや、子供が好きなキャラクターのものを選ぶと、抵抗感なく持ってくれますよ。
| アイテム名 | 役割・選定のポイント |
|---|---|
| ホイッスル(笛) | 建物や瓦礫(がれき)の下に閉じ込められた時、大声を出さずに助けを呼ぶため。ランドセルの肩ベルトなど、すぐに口にできる場所に装着しましょう。 |
| 緊急連絡先カード | 親の電話番号、避難場所、血液型などを書いたメモ。雨や汗で文字が滲(にじ)まないよう、ラミネート加工するかテープで補強すると安心です。 |
| 公衆電話用のお金 | 10円玉5枚、100円玉2枚程度。災害時は携帯電話回線がパンクしやすいため、優先的につながる公衆電話が命綱になります。 |
| 簡易(かんい)トイレ | 子供にとってトイレの我慢は最大のストレスであり、パニックの原因になります。1回分でも持っているだけで、「いざとなればこれがある」という安心感が違います。 |
| お菓子(行動食) | アメ、ラムネ、チョコレートなど、溶けにくくカロリーが取れるもの。低血糖を防ぐだけでなく、不安な時の心の安定剤(コンフォートフード)にもなります。 |
これらのアイテムをひとまとめにしておけば、登下校中だけでなく、放課後の遊びや塾へ行く際にもカバンを替えるだけで対応できます。大人向けのポーチの中身について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてくださいね。
100均で揃う手作り防災グッズ

防災グッズと聞くと「専門店で高価なセットを買わなきゃいけない」と思いがちですが、実は100円ショップで十分優秀なアイテムが揃(そろ)います。子供と一緒に100均へ行き、「これ使えるかな?」「こっちの方が軽そうだよ」と選びながら買い物をするプロセス自体が、素晴らしい防災教育になります。
特におすすめなのが以下のアイテムです。
- アルミブランケット:体温保持に必須です。カシャカシャ音が少ない「静音タイプ」があればベスト。寒さ対策だけでなく、避難所での着替えや授乳時の目隠しにもなります。
- 小型LEDライト:冬場の日没(にちぼつ)は早いため、下校中の停電に備えて必須です。電池のサイズも確認し、予備電池も1つ入れておきましょう。
- レインコート:傘は片手が塞(ふさ)がるため避難には不向きです。両手が空き、リュックの上から着られるポンチョタイプが最適です。
- 除菌(じょきん)ウェットシート:断水して水が使えない時の手洗いや、怪我(けが)をした時の汚れ落としに使えます。ノンアルコールタイプなら肌が弱い子でも安心です。
防災士のワンポイント
買ったものをそのままポーチに詰めるのではなく、一度パッケージから出して、使い方の練習をしましょう。特にアルミブランケットは、一度広げると元通りに畳(たた)むのが大変なので、一度広げてみて大きさや暖かさを体感させ、「本番では使い捨てにする」と割り切るのも賢い選択です。
災害用伝言ダイヤルと公衆電話

今の小学生(デジタルネイティブ世代)は、スマホやタブレットのフリック入力は得意でも、アナログな「公衆電話(こうしゅうでんわ)」の使い方を全く知らない子がほとんどです。しかし、大地震が起きて携帯電話の回線が輻輳(ふくそう:パンク状態)した時、最後に頼りになるのは公衆電話と「災害用伝言ダイヤル(171)」です。
いざという時にパニックにならないよう、散歩のついでに近所の公衆電話(緑やグレーの電話機)を探し、受話器を持って硬貨を入れる練習をさせてあげてください。テレホンカードは対応していない機種もあるため、10円玉と100円玉を持たせるのが確実です。
災害用伝言ダイヤル(171)の使い方ステップ
- 「171」に電話をかける。(料金はかかりません)
- ガイダンスに従って「1(録音)」を押す。
- 「自宅の電話番号(市外局番から)」を押す。
- 「〇〇です。××小学校にいます。怪我はありません。これから避難所へ向かいます」と30秒以内でメッセージを入れる。
毎月1日と15日、正月三が日などは体験利用が可能です。この機会に、家族でゲーム感覚でメッセージを吹き込み、再生する練習をしてみましょう。詳しくはNTT東日本の公式サイトなどでも確認できます。
低学年と高学年で異なる行動指針

一口に小学生といっても、1年生と6年生では体力も判断能力も全く違います。学年の発達段階(はったつだんかい)に応じたリスク管理と伝え方が必要です。
低学年(1〜3年生)の場合
視野が狭く、突発的な出来事に弱い傾向があります。恐怖でその場に立ち尽くしてしまう「凍結反応(とうけつはんのう)」を起こしやすいのも特徴です。「状況を見て判断してね」という曖昧(あいまい)な指示ではなく、「グラッときたらダンゴムシ!」「揺れが止まったら先生の言うことを聞く!」といった、短くて具体的なアクションプランを刷り込んでおくことが大切です。
高学年(4〜6年生)の場合
行動範囲が広がり、電車やバスを使って一人で遠出することも増えます。ここでは「自助(じじょ:自分の命は自分で守る)」の精神をしっかり伝えましょう。「あなたが無事でいてくれることが、パパとママにとって一番の助けになるんだよ」と伝えることで、責任感と生存本能を引き出します。また、スマホを持つ子も増えますが、SNSのデマ情報に流されないよう、ラジオや信頼できるニュースアプリから情報を得るリテラシー教育も必須です。
防災リュック等の本格的な小学生向けの地震の備え

ここからは、自宅が被災して住めなくなった場合など、避難所へ移動する際(1次の備え)に必要な本格的な装備や、避難生活での子供の心を守るためのケアについてお話しします。子供専用の防災リュックは、単に大人用を小さくしただけでは不十分です。
避難時に必要な防災リュックのリスト

子供が背負う防災リュックの重さは、一般的に体重の10〜15%程度(体重20kgなら2〜3kg、30kgなら3〜4.5kg)が限界の目安とされています。あまり重すぎると避難行動そのものが遅れ、転倒のリスクも高まります。「あれもこれも」と詰め込みすぎず、本当に必要なものに厳選しましょう。
| カテゴリー | 必須アイテム・詳細 |
|---|---|
| 水・食料 | 500mlペットボトル2本。非常食は、食べ慣れたお菓子やアルファ米。子供が試食して「美味しい」と言ったものを入れるのが鉄則です(ローリングストック)。 |
| 照明器具 | ヘッドライトが推奨です。懐中電灯(かいちゅうでんとう)だと片手が塞がってしまい、転んだ時に危険です。 |
| 衣類 | 雨具(ポンチョ)、着替え、下着。濡れた服は低体温症(ていたいおんしょう)の原因になります。成長に合わせて半年に1回はサイズ確認を。 |
| 安全装備 | 折りたたみヘルメットや防災頭巾。軍手は必ず子供サイズで滑り止め付きのものを選んでください。 |
| 衛生用品 | 歯ブラシ(口腔ケアは病気予防に重要)、マスク、除菌シート、タオル。 |
これらに加えて、トランプ、折り紙、小さなお気に入りの人形などの「遊び道具」を一つ入れておくことを強くおすすめします。避難所での長い待機時間は、子供にとって退屈である以上に、精神的に過酷な時間です。遊びは子供にとって、不安を紛らわせるための「心の安定剤」になります。
女の子に必要な生理用品と防犯対策
高学年の女の子がいるご家庭では、さらにデリケートな配慮が必要です。避難所では物資が不足しがちで、生理用品の配布が遅れたり、男性スタッフから受け取りにくかったりする状況が想定されます。
普段使い慣れている生理用ナプキン(昼用・夜用)を、中身が透けないポーチに入れて多めに持たせてあげてください。使用済みのものを処理するための黒いビニール袋(防臭機能付きだとなお良し)もセットにしておくことで、心理的な負担を減らせます。
避難所での防犯対策も忘れずに
悲しいことですが、混乱した被災地や避難所では、性犯罪のリスクも高まります。トイレや着替えの際に体を隠せる「目隠しポンチョ」を用意し、防犯ブザーは避難所内でも肌身離さず携帯させましょう。そして、「もし嫌なことをされたり、怖い思いをしたりしたら、すぐに言ってね。絶対に守るから」と日頃から伝え、何でも話せる信頼関係を築いておくことが、最大の防犯対策になります。
親子で学ぶ防災アプリや本

「勉強しなさい!」と言っても子供がなかなか動かないように、「防災について学びなさい!」と正論をぶつけても、子供の心には響きにくいものです。そこで活用したいのが、楽しみながら自然と知識が身につくアプリやゲームです。
- 防災ダック:カードゲーム形式で、「地震!」と言われたらポーズをとるなど、身体を動かしながら直感的に学べます。未就学児〜低学年の子にもピッタリです。
- Yahoo!防災速報 / NHK ニュース・防災:スマホを持っているお子さんなら、保護者と一緒にインストールしておきましょう。プッシュ通知が来た時にどう行動するか、実際の画面を見ながらシミュレーションできます。
- 防災クイズ:自治体のサイトなどにあるクイズを親子で解いてみましょう。正解数に応じてご褒美(ほーび)を用意するのも効果的です。
また、紙のハザードマップを一緒に見る時は、「ここが赤くなってるね」という確認だけでなく、「もしここが水没したら、どこの道を通って学校まで行く?」とクイズ形式にするなど、子供が「自分事(じぶんごと)」として捉えられるような工夫をしてみてください。
被災後のストレスと心のケア

地震の揺れが収まり、身体の安全が確保された後も、子供の心には見えない大きな傷(トラウマ)が残ることがあります。特に言葉でうまく不安を表現できない子供は、さまざまな「行動」によってSOSを発することが多いです。
子供に見られるストレス反応(サイン)
- 退行現象(赤ちゃん返り):指しゃぶり、夜尿(おねしょ)、親にべったり甘える、一人でトイレに行けなくなる。
- 再現遊び:地震ごっこや、積み木をわざと崩す遊びを繰り返す(心の整理をしようとする無意識の行動です)。
- 過敏・攻撃性:小さな物音に過剰に驚く、理由もなくイライラして怒りっぽくなる、無表情になる。
これらはすべて、異常な事態に対する正常な反応です。「もう高学年なんだから泣かないの!」「我慢しなさい」と突き放すのはNGワードです。
「怖かったよね」「泣いてもいいんだよ」と、まずはその気持ちを丸ごと受け止めて(受容して)あげてください。手を繋ぐ、抱きしめる、背中をさするといったスキンシップは、子供の不安を和らげる何よりの特効薬になります。
また、余震(よしん)や被害状況を伝えるテレビの衝撃的なニュース映像を長時間見せ続けるのも避けましょう。できるだけ早く、普段通りの生活リズム(決まった時間の食事や睡眠)に戻すことが、心の回復を早める鍵となります。
まとめ:小学生向けの地震の備え

小学生向けの地震の備えは、単に便利な道具を揃えるだけでなく、子供自身の「生き抜く力」を育むプロセスそのものです。
記事のまとめ
- ランドセルには数百グラム程度の「防災ポーチ(0次の備え)」を常備し、登下校中のリスクに備える。
- 通学路の危険箇所(ブロック塀など)を親子で歩いて確認し、具体的な回避行動を共有する。
- 防災リュックは子供の体格に合わせた重さに調整し、心の安定剤となる「遊び道具」も忘れずに入れる。
- 女の子には生理用品や目隠しポンチョなど、プライバシーと尊厳を守るための配慮を行う。
- 最も大切なのは、日頃から「何かあってもパパやママが必ず守るから大丈夫」と言葉で伝え、安心感の土台を作っておくこと。
防災対策に「これで完璧」というゴールはありません。お子さんの身長が伸びるように、備えるべきアイテムも、理解できる言葉も日々変化していきます。季節の変わり目や誕生日に、リュックの中身も、話し合う内容もアップデートしていってくださいね。
まずは今週末、お子さんと一緒に100円ショップへ行って、お気に入りのポーチを選ぶところから始めてみてはいかがでしょうか。
