火山活動による大地の変化とは?仕組みや事例を防災士が解説

火山について勉強する学生

火山活動による大地の変化とは?仕組みや事例を防災士が解説

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。中学生の理科の授業やニュースなどで「火山活動による大地の変化」という言葉を聞いて、具体的にどういうことだろうと疑問に思ったことはありませんか。地面の下でマグマがどのように動いて山や島を作ったり、時には災害を引き起こしたりするのか、その仕組みや事例を知ることはとても大切です。また、火山活動による大地の変化は私たちに危険をもたらすだけでなく、温泉や豊かな土壌といった大きな恩恵も与えてくれます。この記事では、理科の実験のような視点も交えながら、私たちの暮らす大地がどのように形作られてきたのかをわかりやすくお話しします。

  • マグマが地表に噴き出して山や島ができる基本的な仕組み
  • 桜島や西之島、カルデラ湖などの具体的な地形変化の事例
  • 火山がもたらす災害リスクとハザードマップの活用方法
  • 温泉や地熱発電、農業など火山活動による大地の変化が与える恩恵

そなぷーの火山灰対策4コマ|正しい掃除方法で家と身体を守ろう!

そなぷーが火山灰の危険性と正しい掃除方法を解説する4コマ漫画。乾いたまま掃くと有害で、水で湿らせてから安全装備をして集める必要があることを学び、最後に正しい知識で家を守ろうと呼びかけている。
目次

火山活動による大地の変化の仕組みや地形の事例

火山活動で変化する大地のイメージ。火山の山並み、海岸線、カルデラ湖、地下のマグマを重ねた実写風景画像
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

地球の表面は決して静止したままではなく、火山活動によってダイナミックに変化し続けています。まるで生きているかのように動く大地。ここでは、教科書に出てくるような基本的な仕組みから、実際に日本で起きた劇的な地形の変化まで、具体的な事例を交えて少し詳しく解説していきます。

マグマが作る仕組みと溶岩

火山の噴火口から赤い溶岩が流れ出す様子を表現した実写風のイメージ画像
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

火山活動による大地の変化の主役は、なんといってもマグマです。地球の深いところ、マントルや地殻の下部で岩石がドロドロに溶けたものをマグマと呼びますが、これは周囲の固い岩石よりも密度が小さく軽いために、浮力を得てゆっくりと上昇を始めます。そして地表に顔を出すことで「噴火」が起こるわけですね。

溶岩の「粘り気」が山の形を決める

マグマが地表に流れ出たものを「溶岩」と呼びますが、この溶岩の性質、特に「粘り気(粘性)」によって、できあがる山の形が全く違ってくるのをご存じでしょうか。料理で例えるなら、水っぽいスープと、ドロっとしたシチューの違いのようなものです。

マグマの粘り気噴火の様子できる火山の形代表的な例
弱い(サラサラ)穏やかに流れ出る傾斜が緩やかな「盾状火山」マウナロア(ハワイ)、三宅島
中程度爆発的な噴火と溶岩流出を繰り返す円錐形の美しい「成層火山」富士山、桜島、浅間山
強い(ネバネバ)爆発的になりやすい、溶岩が盛り上がるこんもりとした「溶岩ドーム」昭和新山、雲仙普賢岳

ポイント

マグマの「粘り気(粘性)」が、山の形や噴火の激しさを決める大きな要因です。理科の授業でもテストに出やすい重要なポイントですね。

理科の実験で学ぶ地層

透明容器の地層モデルにマグマ役の液体が入り込む様子を観察する子どもの実写風写真
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

学校の理科の授業では、火山活動による大地の変化を理解するために、モデル実験を行うことがあります。地層に見立てた透明な寒天やゼリーの中に、マグマに見立てた色のついた液体(油やシロップ、着色した石膏など)を下から注射器などで注入する実験です。

この実験を観察すると、マグマが地面の割れ目を力ずくで押し広げながら上昇し、地層の隙間に入り込んでいく様子がよくわかります。地層を垂直に突き抜けて上昇する通り道を「岩脈(がんみゃく)」、地層の間に水平に広がったものを「岩床(がんしょう)」と呼びます。

普段、私たちが何気なく歩いている地面の下でも、過去にこのようなドラマチックな活動が起き、冷え固まったマグマが眠っていることがあります。崖などで縞模様の地層を見たとき、「ここは昔、火山灰が降り積もったのかな? それともマグマが割り込んだのかな?」と想像してみると面白いですよ。

火山灰や軽石が降り積もってできる地層の特徴については、こちらの記事(火山による地層)で写真付きで詳しく解説されていますので、興味がある方はぜひ参考にしてみてください。

桜島や西之島などの事例

噴煙を上げる火山島と溶岩で広がる新たな陸地を俯瞰した実写風の火山島イメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

「火山活動による大地の変化」といっても、数万年前の昔話だけではありません。私たちの生きているこの時代にも、地図が書き換わるほどの劇的な変化が起きています。ここでは日本の代表的な事例を紹介しましょう。

海を埋め尽くした桜島の大正噴火

鹿児島県のシンボルである桜島。実は、1914年(大正3年)までは完全な「島」でした。しかし、この年に発生した大正噴火によって、東側の火口から流出した大量の溶岩が海峡を埋め尽くし、対岸の大隅半島と陸続きになってしまったのです。

幅400メートル、深さ70メートル以上もあった海峡が、わずか数週間で溶岩によって埋め立てられました。かつて海だった場所が、今では道路が通り、車で渡れる陸地になっているのですから、自然のエネルギーの凄まじさには驚かされます。また、このとき沖合にあった「烏島(からすじま)」という小さな島も溶岩に飲み込まれ、完全に埋没してしまいました。

地図を広げ続ける西之島

小笠原諸島の西之島も、現在進行形で「大地が生まれる現場」を見せてくれています。1973年の噴火以降、断続的に活動を続け、特に2013年からの活発な噴火活動によって新たな陸地が次々と形成されました。

流れ出た溶岩は元の島を飲み込みながら海へと広がり、島の面積は噴火前の約10倍以上にまで拡大しています。これにより、日本の領海や排他的経済水域(EEZ)が広がるという、国家レベルの影響も出ています。植物が全くない真っ黒な溶岩の大地に、海鳥たちが戻り、少しずつ生態系が作られていく様子は、地球の創成期を見ているかのようです。

カルデラの形成と湖

外輪山に囲まれた大きなカルデラ湖を上空から見た実写風の風景画像
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

火山活動は、山を高く積み上げるだけではありません。時には山を消滅させたり、巨大な窪地を作ったりすることもあります。その代表例がカルデラです。

「カルデラ」とはスペイン語で「大鍋」を意味します。大規模な噴火によって地下のマグマ溜まりから大量のマグマが一気に放出されると、地下に巨大な空洞ができます。すると、天井の岩盤がその重さに耐えきれなくなり、ドスンと大規模に陥没してしまうのです。こうしてできた直径数キロメートルから数十キロメートルにも及ぶ巨大な窪地がカルデラです。

日本の主なカルデラ湖

窪地に水が溜まると美しい湖になります。観光地としても有名ですね。

  • 北海道:洞爺湖、支笏湖、屈斜路湖
  • 東北:十和田湖、田沢湖
  • 九州:池田湖

また、九州の阿蘇カルデラのように、窪地の中に水が溜まらず、そこに街や鉄道があり、たくさんの人々が生活している世界的にも珍しい場所もあります。阿蘇に行くと、外輪山(カルデラの縁)から見下ろす広大な盆地の風景に圧倒されますが、あれも火山活動による大地の変化の結果なのです。

小学6年生で習うポイント

小学生がタブレットや模型を使って火山と土地の変化を学ぶ実写風の学習シーン
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

小学校6年生の理科「土地のつくりと変化」の単元でも、火山活動について学習します。お子さんがいらっしゃる方は、一緒に教科書を見てみるのも良い復習になるかもしれません。

ここで押さえておきたい重要ポイントは以下の2点です。

  1. 時間的スケール:大地は、私たちが感じる時間よりもはるかに長い時間をかけて変化し続けていること。
  2. 建設と破壊:火山活動には、溶岩や火山灰を積み上げて山を作る「建設」の側面と、爆発や陥没によって山を崩す「破壊」の側面の両方があること。

学習のヒント

流れる水の働き(浸食・運搬・堆積)だけでなく、火山の力もまた、地面を盛り上げたり、埋めたり、凹ませたりして地形を変える大きな要因であることを理解しておきましょう。

火山活動による大地の変化と防災や恩恵の関係

火山のリスクと温泉・農地などの恵みを対比させた実写風のコラージュ風景
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

火山活動は私たちに恐ろしい災害をもたらす一方で、生活を豊かにする資源も与えてくれます。「正しく恐れ、賢く利用する」。防災士の視点から、災害への備えと火山がもたらす恵みの両面についてお話しします。

災害への備えとハザードマップ

家族がカラーパターンの防災地図を囲んで避難計画を話し合う実写風の防災シーン
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

ひとくちに火山災害といっても、その種類は様々です。

  • 大きな噴石:火口から弾道を描いて飛んでくる岩石。当たれば致命的です。
  • 火砕流:高温のガスと岩石が混ざり合い、時速100km以上の猛スピードで斜面を駆け下ります。最も恐ろしい現象の一つです。
  • 溶岩流:建物や道路を焼き尽くしながらゆっくりと流れます。
  • 火山泥流・融雪型火山泥流:噴火の熱で雪が一気に溶け、土砂を巻き込んで泥流となり、遠くの街まで襲います。
  • 火山灰:広範囲に降り注ぎ、健康被害や交通機関のマヒ、農作物への被害を引き起こします。

これらの被害から身を守るために必ず確認してほしいのが、各自治体が作成しているハザードマップ(火山防災マップ)です。過去の噴火履歴や地形データに基づき、「どの範囲に」「どのような現象が」「どれくらいの速さで」到達する可能性があるかが地図上に色分けされています。

2000年の北海道・有珠山噴火では、事前にハザードマップが整備され、住民への周知が行き届いていたこと、そして異変を感じてから素早く避難指示が出されたことにより、1万人以上の住民が避難し、一人の犠牲者も出さずに済みました。これは「有珠山の奇跡」とも呼ばれていますが、奇跡ではなく日頃の備えの結果です。

避難計画と噴火警戒レベル

日本人家族が玄関で避難準備を行い、警戒レベルの抽象アイコンを確認する実写風の構図
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

気象庁は、全国の活火山の活動状況を24時間体制で監視しており、「噴火警戒レベル」という5段階の指標で情報を発表しています。自分が登山をする山や、住んでいる地域の火山のレベルが現在どうなっているかを知ることは、命を守る基本です。

レベル名称具体的な状況と行動の目安
5避難居住地域に重大な被害が及ぶ噴火が発生、または切迫している状態。
危険な地域から直ちに避難してください。
4高齢者等避難居住地域に重大な被害が及ぶ可能性が高まっています。
要配慮者(高齢者など)は避難を開始。他の方も避難の準備を。
3入山規制火口周辺だけでなく、居住地域の近くまで影響が及ぶ可能性があります。
登山禁止や入山規制が行われます。
2火口周辺規制火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生、または予兆があります。
火口には絶対に近づかないでください。
1活火山であることに留意火山活動は静穏ですが、活火山であることを忘れずに。
突発的な現象に注意して活動しましょう。

(出典:気象庁『噴火警戒レベルの説明』

レベルが上がってから慌てるのではなく、平時から避難場所や避難経路を家族で話し合っておくことが重要です。また、いざという時のために、非常持ち出し袋の準備も忘れずに。HIHの防災セットのように、必要なものがひとまとめになっていると、避難時の負担がぐっと減りますね。

温泉や地熱エネルギーの恩恵

山あいの露天風呂と地熱発電設備を組み合わせた、火山の恵みを表す実写風の風景画像
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

日本は世界有数の火山国ですが、それは同時に「地熱」という巨大なエネルギー資源の宝庫の上に住んでいることも意味します。火山活動による大地の変化がもたらす最大の恵みの一つが、皆さん大好きな温泉です。

地下深くにしみ込んだ雨水が、マグマの熱で温められ、岩石のミネラル分を溶かし込んで地表に湧き出してくる。これが温泉です。疲労回復や美肌効果など、古くから日本人の心と体を癒やし続けてきた温泉文化は、火山活動のおかげで成り立っています。

また、この熱エネルギーを「発電」に利用する技術も進んでいます。地熱発電は、地下から取り出した高温の蒸気でタービンを回して電気を作ります。天候に左右されずに24時間発電でき、二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しないクリーンな純国産エネルギーとして、脱炭素社会の切り札としても期待されています。

農業に適した黒ボク土壌

黒ボク土を手にすくう農家と、火山のふもとに広がる野菜畑の実写風イメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

火山灰が降り積もってできた土壌は、その黒い色から「黒ボク土(くろぼくど)」と呼ばれます。実はこの土、かつては農業にとって非常に扱いにくい「不毛の土」とされていました。火山灰に含まれる成分が、植物の成長に必要なリン酸と強く結びついてしまい、作物が栄養を吸収できなくなってしまうからです。

しかし、先人たちの長年にわたる土壌改良の努力と、リン酸肥料をうまく使う技術の確立によって、状況は一変しました。黒ボク土はもともと「水はけが良い」「空気をよく含む」「土が柔らかい」という長所を持っています。この特性を活かし、現在では高原野菜などの素晴らしい産地へと生まれ変わっています。

群馬県の嬬恋村(つまごいむら)をご存じでしょうか。日本一のキャベツ産地として有名ですが、この地域も浅間山の火山灰土壌(黒ボク土)が広がっています。かつて不毛と呼ばれた大地が、人間の知恵と努力、そして火山灰土壌特有の水はけの良さによって、食卓を支える宝の山に変わったのです。

ジオパークと観光資源

火山地形を観察しながら遊歩道を歩く親子・学生の実写風ジオパーク観光シーン
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

最近では、火山活動による大地の変化そのものを観光資源や教育の場として活用する「ジオパーク(大地の公園)」の取り組みが全国で進んでいます。

例えば「洞爺湖有珠山ジオパーク」では、過去の噴火で崩壊した橋や道路、隆起した地面などを修理せずにそのまま保存し、「震災遺構(しんさいいこう)」として見学できるようにしています。これは、火山の破壊的な力を忘れないためのモニュメントであると同時に、地球のダイナミズムを肌で感じられる貴重な教材でもあります。

雄大なカルデラの景色、美しい成層火山のシルエット、そして湯量豊富な温泉街。これらは多くの観光客を惹きつけ、地域の経済を潤しています。火山の恐ろしさを正しく学びながら、その圧倒的な景観美を楽しむことができるのも、火山国日本ならではの魅力といえるでしょう。

火山活動による大地の変化のまとめ

火山の断面図イメージと火山地形・温泉・農地・防災シーンをまとめた実写風コラージュ画像
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット・イメージ

今回は「火山活動による大地の変化」について、マグマが作り出す地形の仕組みから、命を守る防災の知識、そして私たちの生活を支える恩恵まで、幅広く解説してきました。

地球の内側から湧き上がるマグマのエネルギーは、時に桜島のように海を埋めて新しい土地を作り、時にカルデラのような巨大な凹地を形成します。これらの変化は、決して遠い世界の話ではなく、今この瞬間も私たちの足元で進行している壮大なドラマなのです。

記事のまとめ

  • 火山活動は「建設(隆起・堆積)」と「破壊(陥没・崩壊)」の両面で大地を変化させる力を持つ。
  • マグマの「粘り気」の違いが、火山の形や噴火の様式を大きく左右する。
  • 西之島や桜島の事例は、地図が変わるほどの地形変化が現実に起こることを示している。
  • ハザードマップや噴火警戒レベルを正しく理解しておくことが、自分と家族の命を守る第一歩。
  • 温泉、地熱発電、豊かな農地など、火山は私たちに多くの恵みも与えている。

私たちは、この変動する大地の上で暮らしています。火山活動を単に恐れるだけでなく、正しく理解して備えること。そして、火山がもたらしてくれる豊かな恵みにも感謝しながら、上手に共生していくことが大切ではないでしょうか。

※この記事の内容は一般的な情報に基づいています。最新の火山活動や規制情報については、気象庁や各自治体の公式サイトを必ずご確認ください。

この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

目次