地震と断層。その「でき方」を簡単に解説

断層のでき方について学んでいる中学生

地震と断層。その「でき方」を簡単に解説

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。

地震のニュースなどで「断層」という言葉をよく耳にしますよね。テレビや新聞でも「この地震は断層が動いたことによるものです」なんて解説されたりします。でも、その断層がそもそも何なのか、そして「断層のでき方」について、はっきりと説明できる人は少ないかもしれません。

「断層 種類」にはどんなものがあるの? 「断層の仕組み」って、地学の授業で習ったような気もするけど…? 「断層と地震の関係」は? そして、防災で一番気になる「活断層とは」何が違うの?

こうした疑問は、地震大国である日本で暮らす私たちにとって、防災を考える上でとても大切な知識だと思います。この記事では、そんな断層のでき方について、中学生にもわかるように、できるだけ簡単に、でも防災士として知っておいてほしいポイントをしっかり押さえて解説していきますね。

  • 断層が「できる」基本的な仕組み
  • 力の向きで決まる断層の3つの種類
  • 断層のでき方と地震発生の関係
  • 防災上知っておきたい「活断層」とは何か
HIHそなぷー 断層の仕組み
目次

地面がずれる?断層のでき方

地面がずれてできる断層のイメージ写真|断層形成の仕組みをわかりやすく示した実写風画像
【HIH】ヒカリネット・イメージ

まずは、断層の基本的なお話から始めましょう。「断層」と聞くと、なんだか難しそうな地学の話かな?と身構えてしまうかもですが、根本的な原理はとてもシンプルなんです。私たちの足元の地面の下で、いったい何が起きて「ずれ」が生まれるのか、その仕組みから一緒に見ていきましょう。

断層とは?ただの割れ目?

割れ目と断層の違いを示す岩場の写真|ずれを伴う断層の特徴を理解できる実写風イメージ
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よく「断層」というと、単に地面の「割れ目」や「亀裂」のことだと思っている方もいるかもしれませんね。もちろん、間違いではないのですが、地質学の世界では、「割れ目」と「断層」ははっきり区別されています。

決定的な違い、そのポイントは、「ずれ(変位)」があるかどうかです。

断層とは、地下の岩盤(地層)に巨大な力が加わって破壊され、その割れ目を境にして、両側の岩盤がお互いに「ずれ動いた」証拠があるものを指します。

一方で、ただ「パカッ」と割れているだけで、両側の岩盤がずれていないものは「節理(せつり)」と呼ばれ、断層とは区別されます。例えば、岩場で柱状のきれいな割れ目が見られることがありますが、あれは節理の一種ですね。

断層 = 割れ目 + ずれ(変位)

この「ずれ」こそが、私たちが住む地表に大きな影響を与える、地震の原因になったり、山や盆地といった地形を作ったりする、地球の活動の主役の一つなんです。

断層を動かす地球の力(プレート)

プレート運動をイメージした地球儀と抽象表現の実写風画像|断層を動かす地球の力の説明用
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では、その分厚くて硬い岩盤を「ずらす」ほどの巨大な力は、いったいどこから来るんでしょうか?

その答えは、地球の表面を覆っている「プレート」という、パズルのピースのような十数枚の硬い岩盤にあります。この地球規模の運動理論を「プレートテクトニクス」と言います。

このプレート、実はじっとしていなくて、私たちの爪が伸びるのと同じくらいのスピード、年間数cmくらいのゆっくりした速度で、それぞれ違う方向に絶えず動いているんです。

年間数cmと聞くと「それだけ?」と思うかもしれません。でも、この動きが100万年、1000万年と続くとどうなるでしょう?とてつもない距離を動き、とてつもないエネルギーが蓄積されることになります。

断層ができる主な現場は、このプレート同士が接する「境界」です。プレートの動き方には、大きく分けて3つのパターンがあります。

プレート境界の3つのタイプ

  1. 離れる境界(発散型): プレート同士がお互いに離れていく場所。大陸の下で起これば大地が裂け(アフリカの地溝帯など)、海の下で起これば新しい海底が生まれます(大西洋中央海嶺など)。ここでは地殻に「引っ張る力」が働きます。
  2. ぶつかる境界(収束型): プレート同士がお互いに近づいて衝突する場所。日本列島がまさにこれですね。海のプレートが陸のプレートの下に沈み込む「海溝」(日本海溝や南海トラフ)や、大陸同士がぶつかって巨大な山脈(ヒマラヤ山脈など)を作る場所がこれにあたります。ここでは「押す力」が働きます。
  3. すれ違う境界(トランスフォーム): プレート同士が互いに水平方向にすれ違う場所。アメリカのサンアンドレアス断層などが有名です。ここでは「水平にずらす力」が働きます。

このプレート同士の「押し合い」「引っ張り合い」「すれ違い」こそが、断層を形成し、動かす力の根本的な源なんですね。

岩盤が壊れる仕組み(応力とひずみ)

岩盤に蓄積する応力とひずみの仕組みを表す実写風イメージ|地震発生前のエネルギー蓄積を示す図
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プレート運動によって巨大な力がかかっても、岩盤はすぐには「バキッ」と割れません。岩盤も、わずかですが弾力(弾性)を持っています。

力が加わると、岩盤はまずゴムを伸ばすように、あるいは硬い下敷きをしならせるように、じわーっと変形していきます。この、物質の内部に発生する力のことを「応力(おうりょく)」、それによって変形することを「ひずみ」と呼びます。

岩盤は、この「ひずみ」の形で、プレート運動によるエネルギーをどんどん内部に溜め込んでいきます。

しかし、その変形にも限界があります。下敷きも、曲げすぎるとある瞬間に「バキッ!」と折れてしまいますよね。

岩盤が耐えられる限界(破壊強度)を超えた瞬間、ついに「破壊」されます。

そして、この破壊とほぼ同時に、それまで「ひずみ」として溜め込んでいた莫大なエネルギーが一気に解放され、破壊された面(=断層面)を境にして急激な「ずれ(滑り)」が発生します。

この「ひずみの蓄積」から「破壊とずれによるエネルギーの解放」までの一連のプロセスが、断層ができる瞬間の物理現象であり、これが第3部で解説する地震発生のメカニズム(弾性反発説)そのものなんです。

断層の種類は3パターン

正断層・逆断層・横ずれ断層の違いがわかる実写風のイメージ画像|断層の基本3種類の説明に使用
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断層は、そこにかかる「力の種類(応力の状態)」と、それによって生じる「ずれの向き」によって、主に3つの基本パターンに分類されます。これは、地球のどの場所でどんな力が働いているかを知る手がかりにもなります。

この分類を理解するために、ちょっとだけ地学の専門用語を紹介しますね。断層面が水平ではなく傾いている場合、この断層面を境にして、岩盤は上下2つのブロックに分けられます。

  • 上盤(うわばん): 断層面の上に位置する(乗っかっている)側の岩盤ブロック。
  • 下盤(かばん): 断層面の下に位置する側の岩盤ブロック。

これは、昔の鉱山労働者が断層に沿って坑道を掘る際、自分の頭上(Hanging Wall)にある側を「上盤」、足元(Footwall)にある側を「下盤」と呼んだことに由来するとされています。この「上盤」が「下盤」に対して、相対的にどちらの方向に動いたかに基づいて、断層は分類されます。

断層の3つの基本パターン

  1. 正断層(せいだんそう):引っ張る力でできる(上盤が下にずれる)
  2. 逆断層(ぎゃくだんそう):押す力でできる(上盤が上にずれる)
  3. 横ずれ断層(よこずれだんそう):すれ違う力でできる(水平にずれる)

それぞれの「でき方」と特徴を、順番にもう少し詳しく見ていきましょう。

引っ張られてできる正断層

引っ張る力で上盤が下がる正断層のイメージ写真|伸張場で形成される正断層の解説用画像
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「正断層」は、地殻が水平方向に「引っ張られる力(張力)」が卓越する環境で形成されます。

これは、先ほどのプレートの話でいうと、「離れる境界(発散型境界)」や、大陸が引き裂かれ始めている場所(リフトゾーン)で典型的に見られますね。

引っ張られると、岩盤は裂けて薄くなり、重力に従って落ち込みやすくなります。その結果、断層面を境にして、「上盤」が「下盤」に対して、相対的に「滑り落ちる(下がる)」形でずれます。

正断層が多数発達すると、地殻は水平方向に引き伸ばされ(伸張)、地表が沈降して「盆地」や、溝状の地形である「地溝帯(リフトバレー)」を形成します。九州中央部を横断する「別府-島原地溝帯」は、南北に引っ張られる力によって正断層型の地震が多発する地域として知られていますし、日本海ができたプロセス(約2000万年前に大陸の縁が強く引っ張られた)でも、多くの正断層が形成されたと考えられています。

押されてできる逆断層

圧縮されて上盤が乗り上がる逆断層の実写風イメージ|山地形成にも関わる逆断層の特徴説明画像
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「逆断層」は、その名の通り、正断層とは逆の力がかかってできます。つまり、地殻が水平方向に「押される力(圧縮力)」が卓越する環境で形成されます。

これは、プレートが「ぶつかる境界(収束型境界)」、まさに現在の日本列島が置かれている環境で典型的に見られる断層です。太平洋プレートやフィリピン海プレートによって、列島は東西・南北からぎゅーっと強く押されています。

強い力で押されると、岩盤は行き場を失って短くなろうとし、「上盤」が「下盤」に対して相対的に「乗り上げる(上がる)」形でずれます。

逆断層が活動すると、地殻は水平方向に押し縮められ(短縮)、地表が隆起して山地や丘陵を形成します。日本の内陸部にある活断層は、この逆断層タイプが非常に多く、地震のたびに土地が少しずつ隆起して、現在の山々が作られてきたと考えられます。

豆知識:衝上断層(しょうじょうだんそう)

逆断層の中でも、特に断層面の傾斜が緩い(低角度、一般に45度以下や30度以下)ものを、特別に「衝上断層(スラスト)」と呼ぶことがあります。

傾斜が緩いため、上盤側の岩盤ブロックが、下盤側のブロックの上に非常に広範囲にわたって「衝上(つきあげ)」ます。これにより、本来は地下深くにあり、より古い時代の地層が、地表近くのより新しい地層の上に大きく乗り上げる(地層の順序が逆転する)という、大規模な地殻変動の証拠が形成されることがあります。これはプレートの沈み込み帯(付加体)や大陸衝突帯など、極めて強力な圧縮場で特徴的に見られる現象です。

種類別、断層のでき方と地震の関係

断層の種類と地震発生の関係を示す実写風イメージ|断層運動と地震メカニズムの理解に役立つ画像
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断層のでき方には、主に3つのパターンがあることが分かりましたね。ここでは最後のパターン「横ずれ断層」と、そして防災士として一番お伝えしたい、「断層のでき方」と「地震の起き方」の密接な関係について、もう少し詳しく解説していきます。ここが防災を考える上で最も重要なポイントになります。

水平にすれ違う横ずれ断層

地面が左右にずれる横ずれ断層のイメージ写真|水平変位で起きる横ずれ断層の説明用画像
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3つ目の基本パターンは「横ずれ断層」です。これは、正断層や逆断層のように上下にずれるのではなく、両側の岩盤ブロックが互いに水平方向に「すれ違う」力(せん断応力)によって形成されます。

これは、プレートが「すれ違う境界(トランスフォーム断層)」で典型的に見られますね。変位が主に水平方向であるため、上盤・下盤による分類は本質的ではありません。

代わりに、横ずれ断層は、断層線を挟んで、向かい側のブロックがどちらに動いたかに基づいて、以下の2種類に分類されます。

  • 右横ずれ断層: 断層をまたいで向かい側を見たとき、相手側のブロックが「右」にずれているもの。
  • 左横ずれ断層: 同様に、相手側のブロックが「左」にずれているもの。

世界的に最も有名なのは、北米プレートと太平洋プレートの境界をなす、米国の「サンアンドレアス断層」で、これは代表的な「右横ずれ断層」です。日本でも、関東から九州まで続く日本最長の断層帯である「中央構造線断層帯」は、活動区間によっては(例:松本-小淵沢間)左横ずれの成分が卓越しているとされています。

断層ができると地震が起きる関係

断層のずれが地震を引き起こす仕組みを示した実写風イメージ|弾性反発説を理解できる説明画像
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さて、ここまで「断層のでき方」の3パターンを見てきましたが、これが「地震の起き方」とどう関係するのでしょうか。

実は、「岩盤が壊れる仕組み」で説明した、「断層ができる(=ずれる)瞬間」こそが、まさに「地震が発生する瞬間」なんです。

この地震発生のメカニズムは、「弾性反発説(Elastic Rebound Theory)」によって最もよく説明されます。これは、防災を考える上での基本中の基本となる理論です。

地震発生の3ステップ(弾性反発説)

  1. ひずみの蓄積: プレート運動などによって、断層面を挟んだ両側の岩盤に継続的に力が加わります。しかし、断層面は普段、強い摩擦や固着(「アスペリティ」と呼ばれる特に固着の強い領域)によって滑らないようにロックされています。そのため、岩盤はすぐにはずれ動かず、加えられた力によってバネのように弾性的に変形し、「ひずみエネルギー」として膨大なエネルギーを内部に蓄積していきます。
  2. 破壊と滑り(断層運動): ひずみの蓄積が続き、応力が岩石の耐えうる強度(破壊強度)の限界を超えると、それまで固着していた断層面が瞬時に「破壊」されます。
  3. 地震波の発生(地震): 破壊によって断層がずれ動くと、それまで岩盤に「ひずみ」として蓄積されていたエネルギーが一瞬にして解放されます。この解放されたエネルギーが「地震波」として地中を四方八方に伝播し、地表に到達して「揺れ」を引き起こします。これが地震の正体です。

つまり、地震は「断層がずれ動いた結果」として発生する現象なんですね。そして、その地震を引き起こした地下の断層そのものを「震源断層」と呼びます。

もし地震が起きたらどう行動すべきか、その基本をまとめた記事もありますので、ぜひ一度、目を通しておいてくださいね。

海溝型地震と内陸型地震の違い

海溝型地震と内陸型地震の発生場所の違いを示す実写風イメージ|プレート境界と活断層の比較画像
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地震は、その「でき方」すなわち「断層の発生場所」によって、大きく2つのタイプに分類されます。どちらも断層運動によって引き起こされる点は同じですが、その規模、特徴、発生間隔が異なります。これは防災対策を考える上で非常に重要です。

タイプ海溝型地震(プレート境界型)断層型地震(内陸型・直下型)
でき方(場所)海のプレートと陸のプレートの「境界」そのものがずれる
陸のプレート「内部」に存在する「活断層」がずれる
断層の規模非常に広大(数百km四方にも)海溝型に比べると限定的(数十km程度)
地震の規模(M)Mw 8~9クラスの「巨大地震」になり得るMw 7~8クラスの「大地震」が中心
揺れの特徴広範囲で強い揺れが長く続く震源直上では局所的に激甚な揺れ(震度7など)
津波の有無海底で大規模な地殻変動が起きるため、巨大な津波を引き起こす原則として津波は発生しない(※海底の活断層や地滑りを除く)
発生間隔比較的短い(数十年~数百年)非常に長い(数百年~数万年以上)

海溝型地震(プレート境界型地震)

これは、海のプレートと陸のプレートの「境界」そのもの(海溝やトラフ)にある巨大な断層がずれることで発生する地震です。日本で言えば、南海トラフ巨大地震や、かつての東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)がこれにあたります。

震源断層の面積が内陸の活断層とは比較にならないほど広大であるため、地震の規模(マグニチュード)も Mw 8~9クラスの巨大地震となり得ます。広範囲に強震動をもたらし、断層運動が海底で大規模に生じるため、しばしば破壊的な「津波」を引き起こします。プレート運動によって直接的にひずみが蓄積されるため、発生間隔は数十年から数百年と、内陸の活断層に比べて比較的短くなります。

断層型地震(内陸型地震・直下型地震)

こちらは、陸のプレート「内部」に存在する「活断層」(次のセクションで詳述)がずれることによって発生する地震です。阪神・淡路大震災や熊本地震などがこれにあたります。

震源が地表に近い(浅い)ことが多く、都市の直下などで発生すると、地震の規模(マグニチュード)自体は海溝型より小さくても、局所的に非常に激しい揺れ(震度7など)をもたらし、甚大な建物被害を引き起こします。断層にかかる力の伝達が間接的であるため、ひずみの蓄積に時間がかかり、発生間隔は数百年から数千年、時には数万年以上と非常に長くなります。

どちらのタイプの地震も、私たちの生活に甚大な被害をもたらす可能性があります。特に福島県は、東日本大震災のような海溝型地震の(震源域から比較的近い)影響も受けますし、県内や周辺には「福島盆地西縁断層帯」や「会津盆地西縁断層帯」といった内陸の活断層も存在します。

両方の地震リスクを常に意識し、それぞれの特性(津波、局所的な激震)に応じた備えが必要なんですね。

これから動く?活断層とは

活断層の位置をイメージした地形写真|将来活動する可能性のある活断層の理解に役立つ画像
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最後に、防災を考える上で絶対に欠かせない「活断層」についてです。断層の「でき方」を考える上で、過去の形成プロセスだけでなく、「将来どのようにできるか(=動くか)」という視点が重要になります。

「活断層(Active Fault)」とは、地質学的には「最近の地質時代に繰り返し活動し、将来も活動することが推定される断層」と定義されます。(出典:地震調査研究推進本部「活断層とは何か」

「最近の地質時代」とはどのくらいかというと、研究者の間でも様々な見解がありますが、日本の代表的な活断層データベースでは、「第四紀(約200万年前から現在まで)」に動いたとみなされる断層を活断層と定義していることが多いです。

活断層の定義で最も重要な点は、単に「動く可能性がある」ということではなく、「過去に繰り返し活動した」という地質学的な証拠(実績)がある点です。

過去に何度も動いたという事実は、その断層が現在の地球の力の場(応力場)において活動的であり、ひずみが集中しやすい「弱点」であることを示しています。したがって「将来も同様に活動する(=地震を引き起こす)」と強く推定されるわけです。

活断層の活動度による分類(A級・B級・C級)

活断層は、その活動の活発さの度合い(活動度)によって分類されます。この活動度を定量的に示す尺度が「平均変位速度」です。これは、断層の長期的な平均のずれの速度を示したもので、通常「1000年あたりのずれの量」で表されます。

活動度分類1000年あたりの平均変位速度(定義)主な活断層の例(※一部)
A級活断層1m 以上 10m 未満跡津川断層、根尾谷断層、丹那断層、中央構造線断層帯(四国など)
B級活断層0.1m(10cm)以上 1m 未満山崎断層、立川断層、福島盆地西縁断層帯、有馬-高槻断層帯
C級活断層0.01m(1cm)以上 0.1m(10cm)未満深溝断層、郷村断層、鳥取断層、己斐断層

この活動度分類は、断層の「でき方」の速度を定量的に示したものです。例えば、A級活断層はC級活断層に比べて10倍から100倍の速度でずれ(ひずみ)が蓄積していることを意味し、それだけ次の活動(地震)までの間隔が短い(発生頻度が高い)可能性を示唆しています。

ただし、「C級だから安全」「A級だから明日動く」と単純に判断することはできません。C級であっても数万年に一度の活動期が目前に迫っていれば、それは非常に切迫した脅威となります。あくまで長期的な平均速度としての目安なんですね。

活断層に関する詳細な情報や、地震が発生した場合の揺れの予測(震度分布)は、国の地震調査研究推進本部(地震本部)のウェブサイトや、お住まいの自治体が公表している「ハザードマップ」などで確認することができます。

ただし、これらの情報は一般的な目安であり、常に最新の科学的知見に基づいて更新される可能性があります。正確なリスク評価や具体的な防災対策(耐震補強、家具の固定など)については、必ず最新の公的情報を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

ハザードマップは、こうした地震のリスクだけでなく、洪水や土砂災害のリスクも示されています。その具体的な見方や活用法については、こちらの記事でも詳しく解説していますので、ぜひこの機会にご自宅のリスクを確認してみてください。

防災士と学ぶ、断層のでき方

防災士が断層のでき方を説明する実写風イメージ|防災学習や地震対策に役立つ教育用画像
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今回は、断層のでき方について、その基本的な仕組みから種類、そして地震との関係、さらには活断層についてまで、少し詳しく解説してきました。

ちょっと地学の授業のようになってしまったかもしれませんが、防災士としてお伝えしたかったポイントを最後にまとめると、以下のようになります。

  • 断層は単なる割れ目ではなく、岩盤が力に耐えきれずに「ずれた」もの。
  • その巨大な力の源は、地球の表面を覆う「プレート運動」にある。
  • 力の向き(引っ張る、押す、すれ違う)で「正断層」「逆断層」「横ずれ断層」の3タイプに分かれる。
  • 断層が「ずれる」瞬間に、蓄積されたエネルギーが解放され、「地震」となる。
  • 「活断層」は、過去に繰り返し活動し、将来も地震を起こす可能性が高い、私たちが特に注意すべき断層である。

私たちが住む日本は、まさに「プレートの境界」に位置していて、断層活動が非常に活発な場所です。これは、温泉や豊かな自然という恵みをもたらしてくれる一方で、地震や火山噴火という避けられないリスクと隣り合わせであることを意味します。

断層のでき方を知ることは、私たちがどのような場所で暮らしているのか、そしてどのようなリスク(地震動、津波、地盤のずれ)に備えるべきなのかを具体的に理解することに直結します。

「正しく知って、正しく備える」ことが、防災の何よりの基本かなと思います。この記事が、皆さんの防災意識を高め、ご家庭での備えを見直すきっかけになれば、防災士としてこれほど嬉しいことはありません。

この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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