防災士と学ぶ!花崗岩のでき方と特徴

花崗岩のでき方を学ぶ中学生

防災士と学ぶ!花崗岩のでき方と特徴

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。

「花崗岩」と聞くと、お墓の石やビルの壁に使われる、硬くて立派な石をイメージしますよね。でも、その花崗岩がどうやってできるのか、と聞かれると、意外と知らないことが多いかもしれません。「花崗岩のでき方を簡単に知りたい」「子どもに説明したいから中学生にもわかるレベルで」「御影石との違いって何?」「花崗岩が風化するとどうなるの?」…そんな疑問を持っている方もいるかなと思います。

実は、この花崗岩のでき方や特徴って、私たちの安全、特に防災ともちょっと関係があるんです。石材として私たちの生活を支えてくれる一方で、それが風化してできた土壌(まさ土)は、大雨の際に土砂災害の原因にもなり得ますからね。この記事では、花崗岩が何でできているのか、その特徴や種類といった基本から、防災士の視点で知っておきたい「まさ土」との関係まで、掘り下げてわかりやすく解説していきますね。

  • 花崗岩が「地下深く」で「ゆっくり」できる理由
  • 花崗岩を構成する主な鉱物(成分)と色の違い
  • 「御影石(みかげいし)」と花崗岩の関係
  • 花崗岩の風化によってできる「まさ土」と防災の視点
目次

防災士と学ぶ!花崗岩のでき方

地下深くでマグマがゆっくり冷えてできる花崗岩の成り立ちを示す実写風イメージ。地層の断面とマグマの層を表現。
【HIH】ヒカリネット・イメージ

まずは、花崗岩そのものがどんな石で、どうやって作られるのか、基本的な「でき方」を見ていきましょう。この「でき方」こそが、花崗岩のすべての特徴、つまり硬さや見た目、そして風化した後の性質までを決めているんです。

花崗岩ってどんな石?特徴を解説

白やピンクの粒と黒い斑点が混ざる花崗岩の表面を拡大した実写風画像。火成岩の特徴がわかる自然石の質感。
【HIH】ヒカリネット・イメージ

花崗岩は、地球の岩石を「でき方(成因)」で分類したとき、「火成岩(かせいがん)」というグループに入ります。「火成岩」というのは、字の通り「火」が「成」す岩。つまり、地下の高温によってドロドロに溶けた岩石の液体、「マグマ」が冷えて固まってできた岩石の総称ですね。

そして、この火成岩は、マグマが固まった「場所」と「冷え方」によって、さらに2つのグループに分けられます。

深成岩(しんせいがん)と火山岩(かざんがん)

マグマが地表や地表近くで、空気や水に触れて「急速に」冷え固まったものを「火山岩(かざんがん)」と呼びます。火山の噴火で流れ出る溶岩(マグマが地表に出たもの)からできる安山岩(あんざんがん)や玄武岩(げんぶがん)がこれにあたります。

一方、マグマが地表までたどり着けず、地下の「深い」場所で「ゆっくり」と冷え固まったものを「深成岩(しんせいがん)」と呼びます。

花崗岩は、この「深成岩」の代表選手なんです。だから「花こう“岩”」という名前なんですね。

見た目の最大の特徴は、白やピンク、灰色っぽいベース(長石や石英)の中に、黒いゴマのような粒々(黒雲母など)がはっきりと見えること。この、肉眼でも個々の結晶が識別できるような粗い粒の組織を「粗粒(そりゅう)」または「等粒状組織(とうりゅうじょうそしき)」と呼びます。この見た目こそが、この岩石が「地下深くでゆっくり冷えた」という「でき方」の動かぬ証拠になっています。

できる場所は地下深く?

地表の下でマグマが固まり花崗岩ができる場所をイメージした地下断面の実写風構図。地層とマグマの関係を示す。
【HIH】ヒカリネット・イメージ

その通りなんです。花崗岩ができるのは、私たちが立っている地表ではなく、はるか地下深くです。

なぜかというと、花崗岩のもとになるマグマは、化学成分として二酸化ケイ素(SiO2)を非常に多く含んでいるため、とてもネバネバしている(粘性が高い)という性質があるから。サラサラしたマグマ(玄武岩マグマなど)は地表に噴出しやすいのですが、花崗岩マグマは冷えた水飴やハチミツのようにネバネバが強すぎて、地殻の割れ目を上昇する抵抗が大きく、地表まで噴出することが物理的に困難なんです。

結果として、地表にたどり着く前に力尽き、例えば地下10km~15kmといった非常に深い場所で、周囲の地層(母岩)を押し広げるように入り込み(これを「貫入(かんしゅう)」と言います)、巨大なマグマだまり(バソリスとも呼ばれます)を形成して固まることになります。

マグマのゆっくりした冷え方がカギ

マグマがゆっくり冷えることで花崗岩ができる過程を示す抽象的な実写風イメージ。赤から黒への温度変化を表現
【HIH】ヒカリネット・イメージ

ここが「でき方」の最大のポイントであり、花崗岩の特徴を決定づける核心部分です。

地下10kmもの深部は、周りの岩石もまだ数百℃という高温が保たれています。そんな高温の環境に貫入したマグマ(700℃~950℃程度)は、厚い地殻に「断熱」されたような状態になります。例えるなら、熱々のおでんを、発泡スチロールの箱に入れて分厚い毛布で包んだような状態でしょうか。

そのため、熱が逃げるスピードが極めて遅くなり、マグマが完全に固結するまでに、マグマだまりの規模によっては数万年、数十万年、あるいは数百万年という、とてつもなく長い地質学的時間をかけて「ゆっくり」と冷えて固まっていくんです。

この「ゆっくり冷える」という途方もない時間のおかげで、マグマの中に溶けていた様々な化学成分が、それぞれ固有の鉱物の「結晶」を形成し、大きく成長するための「十分な時間」を持つことができます。

これが、花崗岩の粒々(鉱物)が肉眼でもはっきり見える「粗粒」な組織になる理由なんですね。

【豆知識】冷え方と結晶の大きさ

マグマの冷え方と結晶の大きさの関係は、岩石のでき方を知る上でとても重要です。

分類代表的な岩石冷える場所冷却速度結晶の大きさ(組織)
深成岩花崗岩、斑れい岩地下深く非常に遅い(数万年~)粗粒(結晶が大きい)
火山岩流紋岩、玄武岩地表または地表近く非常に速い(数日~)細粒(結晶が小さい)/ ガラス質

花崗岩とまったく同じ化学組成のマグマが、もし地表に噴出して急冷されたら、「流紋岩(りゅうもんがん)」という火山岩になります。これは結晶が育つ時間がなかったため、粒が非常に細かいか、時にはガラス質(黒曜石など)になります。同じ材料でも「でき方(冷え方)」が違うと、まったく別の岩石になるんですね。

主な成分や鉱物を紹介

花崗岩を構成する石英・長石・黒雲母・角閃石を並べた実写風写真。鉱物の色と質感を比較できる教育的イメージ。
【HIH】ヒカリネット・イメージ

では、あのキラキラ、あるいはゴマ塩模様の粒々の正体は一体何なのでしょうか。花崗岩を「何でできてるか」という成分(鉱物)で見ると、主に以下の4つの鉱物(または鉱物グループ)で構成されています。

鉱物名色・見た目花崗岩での役割
石英(せきえい)無色透明、または灰色二酸化ケイ素(SiO2)そのもの。ガラス光沢があり、不規則な形で他の鉱物の隙間を埋めるように入っています。岩石に硬さをもたらします。
長石(ちょうせき)白色、ピンク色、赤色など岩石の主成分(半分以上を占めることも)。不透明で白っぽいかピンクっぽい粒です。花崗岩の全体の色を決定づける重要な鉱物です。
黒雲母(くろうんも)黒色黒くてキラキラ光る薄い板状の鉱物。「ゴマ塩」のゴマの部分の正体です。
角閃石(かくせんせき)暗緑色、黒色黒雲母と似ていますが、輝きがやや鈍く、柱状の形をしていることが多いです。これも黒い斑点として含まれます。

これら硬さの異なる鉱物が、パズルのピースのようにガッチリと、隙間なく組み合わさって(等粒状組織)、硬くて緻密な花崗岩ができているんですね。

ピンクや白など色の違いはなぜ?

ピンク色や白色など異なる種類の花崗岩サンプルを並べた実写風画像。長石の色の違いによる岩石の色変化を解説。
【HIH】ヒカリネット・イメージ

花崗岩には、桜色のようなピンク色(桜御影)のものもあれば、茨城県の稲田石のように真っ白に近いもの、全体的に灰色っぽいものまで、いろいろな色がありますよね。

この色の違いは、ズバリ、主成分である「長石」の種類の違いと、その色によるものがほとんどです。

長石にはいくつか種類があるのですが、その中でも「カリ長石(アルカリ長石)」というカリウムを多く含む長石が、特徴的なピンク色や赤色をしていると、岩石全体もピンクっぽく見えます。

逆に、含まれるカリ長石や「斜長石(しゃちょうせき)」といった長石類が白色であれば、岩石全体も白っぽくなります。これに、無色〜灰色の「石英」と、黒い「黒雲母・角閃石」が混ざるわけです。

つまり、

  • ピンクの花崗岩 = ピンク色のカリ長石 + 白い斜長石 + 灰色の石英 + 黒い粒
  • 白い花崗岩 = 白色のカリ長石 + 白い斜長石 + 灰色の石英 + 黒い粒

ということですね。黒い粒々(黒雲母など)の量によっても、全体の色の濃淡(ゴマ塩の振り加減)が変わってきます。

御影石との関係は?

御影石の灯籠や石垣を撮影した実写風画像。花崗岩との違いと建材としての利用例を示す教育向け写真。
【HIH】ヒカリネット・イメージ

「花崗岩」と「御影石(みかげいし)」、この2つは非常によく似た意味で使われますが、厳密には少し意味合いが違います。

「花崗岩(Granite)」は、ここまで説明してきたように、石英や長石を主成分とする、マグマのでき方や鉱物組成に基づく「岩石学的な正式名称」です。

「御影石(Mikage-ishi)」は、石材(建材や墓石)としての「商品名・通称」のようなものです。もともとは、現在の兵庫県神戸市東灘区にある「御影(みかげ)」という地区で良質な花崗岩が採掘され、それが全国的に有名になったことに由来します。

現在では、そこ(御影)で採れた石でなくても、「花崗岩や、それに似た硬くて粗粒な深成岩(例:花崗閃緑岩、閃緑岩など)」全般を指す、石材業界の言葉として広く使われています。

ですから、私たちが墓石やビルの外壁で見かける「御影石」の多くは、岩石学的には厳密に「花崗岩」である場合もあれば、花崗岩によく似た兄弟分である「花崗閃緑岩(かこうせんりょくがん)」である場合も多いです。日常生活では、ほぼ同じもの(=硬くて粒々が見える立派な石)と考えても差し支えないかなと思います。

知っておきたい花崗岩のでき方と防災

防災士が地図を見ながら地盤を調べている実写風シーン。花崗岩の地質と防災リスクを関連付けた教育的イメージ。
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さて、ここまでは花崗岩そのものについて見てきました。地下深くで、非常に長い時間をかけて「できた」石だということが分かりましたね。ここからは防災士として、この花崗岩のでき方や性質が、どう私たちの安全や防災に関わってくるのか、という視点でお話ししたいと思います。

花崗岩の風化とまさ土(真砂土)

花崗岩が風化してまさ土に変化する過程を表現した実写風画像。岩から砂へ変化する自然のプロセスを描写。
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地下深くで、あれだけ硬く緻密に固まった花崗岩。それが地殻変動によって隆起し、上の地層が侵食されて地表に現れると、今度は「風化(ふうか)」というプロセスが始まります。地表で雨や風、気温の変化、植物の根などに、何万年、何十万年とさらされ続けるわけですね。

ここで重要なのが、花崗岩を構成する鉱物たちの「風化への強さ」がバラバラだということです。

  • 石英(せきえい):化学的に極めて安定しており、非常に風化に強い
  • 長石(ちょうせき):化学的に不安定で、水(特に酸性の雨水)と反応して分解されやすく、粘土鉱物などに変化しやすい。
  • 黒雲母(くろうんも):長石と同様に風化に弱い

長い年月をかけて風化が進むと、結束を固めていた長石や雲母がボロボロに分解されて粘土になったり、雨水で流されたりしてしまいます。その結果、風化に強い「石英」の砂粒と、風化しかけの長石の粒が主体となって残り、鉱物同士の結合が失われた砂状の土壌が形成されます。

これが、「まさ土(真砂土)」と呼ばれる、花崗岩が風化してできた特徴的な砂状の土壌です。「まさ土」は「まさど」とも「まさつち」とも呼ばれ、地域や業界(土木系か園芸系か)によっても呼び方が違うようですね。

まさ土の分布と土砂災害の関係

雨で湿ったまさ土の斜面を安全な距離から撮影した実写風写真。土砂災害の危険性と防災意識を促すイメージ。
【HIH】ヒカリネット・イメージ

この「まさ土」は、花崗岩が広く分布する地域の地盤(山や丘)を覆っています。私たち福島県の阿武隈高地や、西日本の中国山地、六甲山地などが有名です。そして、このまさ土の性質こそが、防災上とても重要なんです。

まさ土は、もともとが石英の砂粒なので、粒子の隙間が大きく、水はけ(排水性)はとても良いんです。しかしその反面、水を保っておく力(保水性)は低く、そして何より粒同士のくっつく力(粘着力)が極めて弱いという、脆い(もろい)特徴があります。

大雨による土砂災害に注意

普段は水はけが良いまさ土ですが、一度に想定を超えるような大雨(ゲリラ豪雨や台風など)が降ると、その弱い結束力が一気に失われます。

まさ土の隙間が水で満たされると、粒同士の摩擦力が低下し、土全体の重量は増します。そして、ある限界を超えると、まさ土は一気に液状化するように崩れ出し、土石流やがけ崩れ(表層崩壊)といった深刻な土砂災害を引き起こす危険性が高くなります。

特に、花崗岩が風化してできた「まさ土」が厚く堆積している斜面や、谷筋は、土砂災害のリスクが比較的高い場所とされています。自分の住む地域が「まさ土」の多い場所かどうかを知っておくことは、防災の第一歩ですね。

土砂災害のリスクについては、国やお住まいの自治体が公開しているハザードマップで確認することができます。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」などもぜひ活用してみてください。

日本での主な分布はどこ?

花崗岩の分布地域(阿武隈高地・中国山地など)を示した日本列島の地図風イメージ。地質と地域防災を学ぶ教材向け。
【HIH】ヒカリネット・イメージ

では、この花崗岩(まさ土)が多い地域は、日本のどこなのでしょうか。

日本では、中生代白亜紀(約1億年前~7000万年前)に大規模なマグマ活動があったとされており、その時に貫入した花崗岩類が広く分布しています。

特に「西南日本内帯(ちゅうごく・しこく・きんきのうちがわ)」と呼ばれる地域、具体的には中国地方の山陽側(広島県、岡山県など)や近畿地方(六甲山地など)、また瀬戸内海周辺に、この花崗岩類が非常に広く分布しています。これらの地域で土砂災害が多い一因ともなっています。

また、関東では茨城県(稲田石や真壁石といった石材産地として有名ですね)や、私たち福島県の中通りを縦断する「阿武隈(あぶくま)高地」も、その大部分が古い時代の花崗岩類で構成されている、日本有数の花崗岩地帯です。

身近な場所での利用法

御影石のカウンターや庭の石畳など、花崗岩が使われる日常シーンの実写風画像。素材の特徴と利用例を紹介。
【HIH】ヒカリネット・イメージ

花崗岩は、その「でき方」がもたらす性質によって、大きく2つの形(岩石として、土として)で私たちの生活に役立っています。

  1. 石材としての利用(御影石)
    地下深くでゆっくり冷えたおかげで、硬い鉱物が緻密に組み合わさり、非常に硬く、耐久性・耐候性に優れ、見た目も美しいという、石材として理想的な性質を持っています。
    そのため、古くから墓石や灯篭(とうろう)、城の石垣、そして現代ではビルの外壁や床材、キッチンの天板、さらには精密機械の精度を保つための土台(定盤:じょうばん)など、その堅牢さを活かして幅広く利用されています。
  2. 土としての利用(まさ土)
    一方、風化してできた「まさ土」は、その水はけの良さという性質が注目されます。
    園芸用の土(赤玉土などと混ぜて排水性を高めるため)や、学校のグラウンド、公園の園路(水たまりができにくい)、あるいはセメントなどで固めて舗装材(固まる土)としても利用されています。
  3. 花崗岩は、地下深くでマグマが「ゆっくり冷える」ことでできる「深成岩」。
  4. ゆっくり冷えるため、石英や長石などの結晶が大きく成長し、肉眼でも見える粗粒な見た目になる。
  5. 石材としては「御影石」と呼ばれ、その硬さと美しさから墓石や建築石材に広く使われる。
  6. 花崗岩が地表で風化すると「まさ土」という、水はけは良いが脆い(もろい)砂状の土になる。
  7. まさ土が分布する地域(福島県の阿武隈高地や西日本など)は、大雨の際に土砂災害のリスクがあるため、ハザードマップでの確認が重要。

この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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