地球の中心はなぜ熱い?6000度の理由を防災士が解説

中学生が地球の内部について話し合っている様子

地球の中心はなぜ熱い?6000度の理由を防災士が解説

こんにちは。「ふくしまの防災 HIH ヒカリネット」防災士の後藤です。

皆さんは地面のずっと深い場所、地球の中心について考えたことはあるでしょうか。温泉に行くと温かいお湯が湧き出ているので、なんとなく「地面の下は熱そうだ」と感じることはあるかもしれません。しかし、なぜ太陽の光が全く届かない真っ暗な地球の中心が、太陽の表面温度と同じくらい熱いのか、不思議に思ったことはありませんか?

「昔、理科で習ったような気もするけど忘れてしまった」という方も多いかもしれませんね。実はこれ、単なる自然現象というだけでなく、私たちが地球で生きていくために欠かせない「ある重要な機能」と深く関わっているのです。この熱がなければ、私たちは今こうして暮らしていなかったかもしれません。

この記事では、専門的な物理や地学の知識がなくてもスッと理解できるように、地球の熱の秘密を防災士の視点を交えてわかりやすくお話しします。

この記事でわかること

  • 地球の中心が6000度もの高温を保ち続けている2つの主な理由
  • 「地下はマグマでいっぱい」という誤解とマントルの本当の姿
  • もし地球が冷えてしまったら、私たちの環境はどう変わるのか
  • 地震や火山活動を引き起こす巨大な熱エネルギーの正体
地球の熱の秘密:生命を守り災害も起こす6000℃のエネルギー源。地球の内部構造(地殻・マントル・外核・内核)と温度分布の図解。中心が熱い2つの理由(誕生時の衝突熱と放射性物質の熱)や、その熱が磁場を作って生命を守る一方、地震や火山活動の原因にもなる仕組みを解説。冷えて磁場を失った火星との比較も掲載。
目次

6000度の謎!地球の中心がなぜ熱いのか

地球の中心が6000度の高温になっている様子を表したイメージ図
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット

地球の中心部(核)の温度はおよそ6000℃と推定されています。これは、ギラギラと燃える太陽の表面温度に匹敵する凄まじい熱さです。46億年も前に誕生した地球が、なぜ宇宙の冷たい空間の中でこれほど熱いままなのか、その科学的な理由を紐解いていきましょう。

地球の内部構造と温度はどうなっている?

地殻・マントル・外核・内核が色分けされた地球断面のイメージ
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット

私たちが暮らしている地面の下がどうなっているか、まずは地球の全体像をイメージしてみましょう。地球の構造は、よく「ゆで卵」に例えられます。それぞれの層で温度や状態が大きく異なります。

以下の表に、地球の深さと温度の関係をまとめました。

層の名称ゆで卵での例え深さ(目安)温度(目安)状態
地殻0〜数10km気温〜数100℃硬い岩石
マントル白身数10〜2900km1000〜3000℃固体の岩石
外核黄身の外側2900〜5100km4000〜5000℃液体の鉄
内核黄身の中心5100〜6400km約6000℃固体の鉄

このように、地下深くに行けば行くほど温度は急激に上昇します。特に中心部分である「核(コア)」は鉄やニッケルといった金属でできており、想像を絶する高温高圧の世界が広がっています。

マグマとマントルの違いをわかりやすく解説

固体のマントル内部を抽象的に表現した地下構造のイラスト風説明画像
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット

「地球の中はドロドロのマグマで満たされている」と思っている方も多いのではないでしょうか。実はこれ、非常によくある誤解なんです。

地球の体積の8割以上を占める「マントル」は、基本的にはカチカチの固体の岩石(カンラン岩など)でできています。決して液体のマグマの海ではありません。

岩石なのに動く?「マントル対流」の不思議

「固体なら動かないじゃないか」と思われるかもしれませんが、マントルは数万年、数億年という非常に長い時間をかけると、水あめのようにゆっくりと動く性質(流動性)を持っています。これを「マントル対流」と呼びます。

この分厚いマントルは、地球の中心からの熱を逃がさないための優れた「断熱材」の役割も果たしています。温かい紅茶が冷めないように被せる「ティーコージー(保温カバー)」や、冬場の「羽毛布団」をイメージしてください。この岩石の厚い布団が掛かっているおかげで、地球内部の熱は46億年経っても宇宙空間へ逃げずに保存されているのです。

誕生時の余熱と重力が熱源となる仕組み

岩石が地球に衝突し熱が生まれる様子を示す想像図
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット

では、そもそもその熱はどこから来たのでしょうか。理由の1つ目は、地球が誕生した46億年前の記憶、「始原的熱(しげんてきねつ)」です。これは大きく分けて2つのプロセスで生まれました。

1. 衝突による熱(降着加熱)

46億年前、生まれたばかりの太陽の周りには、無数の塵や岩石(微惑星)が漂っていました。これらが猛烈なスピードで衝突・合体を繰り返して地球が大きくなっていきました。

物理の法則として「物がぶつかると運動エネルギーが熱に変わる」というものがあります。手を強く叩くとジーンと熱くなるのと同じ原理です。秒速数キロメートルという猛スピードで岩石が降り注いだため、その衝撃で地表はドロドロに溶け、「マグマオーシャン」と呼ばれる灼熱の海になりました。

2. 鉄が沈む時の熱(重力分化)

地球全体が溶けた状態で、重たい「鉄」は地球の中心へ、軽い「岩石」は表面へと分かれ始めました。これを「分化」と呼びます。重い鉄がズブズブと数千キロメートルも沈み込んでいく際、その勢い(重力ポテンシャルエネルギー)が摩擦熱などの熱エネルギーに変換されました。

この地球形成時に蓄えられた莫大なエネルギーが、今も「残り火」として地球の奥底に閉じ込められているのです。

放射性物質の崩壊熱が冷めない理由

放射性物質が崩壊して熱を生み出すイメージをマクロ撮影風に表現
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット

しかし、いくら断熱材があるといっても、「残り火」だけなら46億年も経てば地球はもっと冷え切っているはずです(昔の学者はそう計算しました)。今も熱い理由の2つ目は、地球の内部で現在進行形で熱が作られているからです。これを「放射性熱(ほうしゃせいねつ)」と呼びます。

地球のマントルや地殻の岩石には、以下のような「放射性物質」が微量に含まれています。

  • ウラン(Uranium)
  • トリウム(Thorium)
  • カリウム(Potassium)

これらの元素は不安定で、非常に長い時間をかけて別の安定した物質に変化(崩壊)していきます。その変化する瞬間に、熱エネルギーを放出するのです。

天然のカイロのような仕組み

イメージとしては、地球の岩石の中に、目に見えないほどの小さな「発熱カイロ」や「電気ヒーター」が無数に埋め込まれているような状態です。一つ一つの熱はわずかですが、地球全体となると膨大な熱量になります。

最新の科学研究(ニュートリノ観測など)によると、地球が宇宙に放出している熱の約半分は、この放射性物質が出す熱によるものだと考えられています。地球は過去の熱を魔法瓶のように保っているだけでなく、自ら熱を生み出し続けている「生きている惑星」なのです。

圧力だけで温度が上がるわけではない真実

地球中心の強い圧力を光と歪みで表現した図
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット

よくある質問に「中心は圧力がものすごいから、押しつぶされて熱くなっているのでは?」というものがあります。確かに地球の中心は300万気圧以上という想像を絶する圧力ですが、これは半分正解で半分間違いです。

気体を自転車の空気入れでギュッと圧縮した瞬間に熱くなる(断熱圧縮)のは事実ですが、「圧力をかけ続けているだけで、永遠に温度が上がり続ける」わけではありません。

もし圧力だけで熱が出るなら、深海の底の水も沸騰しているはずですが、実際は冷たいですよね。地球の中心が高温なのは、あくまで「過去の衝突エネルギー」と「放射性物質の熱」が主因です。

ただし、この超高圧環境は非常に重要です。圧力のおかげで、内核の鉄は6000℃でも溶けずに「固体」でいられます。圧力が物質の状態(固体か液体か)を決めているのです。

地球の中心がなぜ熱いかを知る防災の視点

日本人の子どもが地球の内部の熱に興味を持って観察している様子
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット

ここまでは理科(地学)の話でしたが、ここからは私の専門である「防災士」としての視点でお話しします。一見、防災と関係なさそうな「地球の熱」ですが、実は私たちの命や生活環境を守る、非常に重要な役割を担っています。

太陽の表面温度と比較しても負けない熱さ

地球の中心と太陽の熱を光の強さで対比したイラスト風画像
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先ほど触れた通り、地球の中心温度は約6000℃。私たちの足元、地球の半径約6400kmの深部には、小さな太陽があるようなものです。

この膨大な熱エネルギーがあるからこそ、地球は静止した冷たい岩の塊ではなく、常に内部が動き続けるダイナミックな惑星でいられるのです。この「動き」こそが、惑星としての寿命を決定づけます。

もし地球が冷えたら磁場はどうなるのか

地球周囲の磁場が失われ危険にさらされる様子を警告的に表現した図
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット

もし地球の中心が冷えてしまったら、何が起きるでしょうか。最も恐ろしいシナリオは、地球を守る最強のバリアである「磁場(地磁気)」が消滅してしまうことです。

地球の内部には、液体の鉄でできた「外核」があります。このサラサラした液体の鉄は、地球の熱による対流と自転の影響で、激しく渦を巻くように流れています。鉄(電気を通す物質)が動くことで電流が発生し、それが地球全体を覆う巨大な磁石の力、つまり「磁場」を作っています(ダイナモ理論)。

磁場という「見えない盾」

この磁場は、方位磁針を北に向けるだけでなく、太陽から絶えず吹き付けてくる有害な粒子(太陽風)や宇宙放射線を弾き飛ばす「バリア」の役割を果たしています。もし地球の中心が冷えて外核が固まってしまうと、この発電機が止まり、バリアが消失します。そうなれば、強力な放射線が地表に降り注ぎ、生命が住めない環境になってしまうでしょう。

死んだ惑星と呼ばれる火星との決定的な差

地球は青い生命の星、火星は乾いた死の星として比較したイメージ画像
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット

「地球の中心が冷えた未来の姿」と言われているのが、お隣の惑星、火星です。火星は地球の約半分(質量は約10分の1)ほどのサイズしかありません。

体が小さい子供がすぐに湯冷めしてしまうのと同じで、火星はサイズが小さかったため、地球よりもずっと早くに内部の熱を失ってしまいました。その結果、以下のことが起きたと考えられています。

  1. 核が冷えて固まった(または対流が弱まった)
  2. 磁場のバリアが消滅した
  3. 太陽風の直撃を受け、大気や海が宇宙へ吹き飛ばされた

かつては水があったかもしれない火星が、現在のような赤く乾いた不毛の大地になったのは、星の「熱」が失われたからなのです。私たちが呼吸でき、海が存在できるのは、地球の中心がまだ熱く、磁場を作り続けてくれているおかげなのです。

地震や火山活動を生む熱エネルギーの正体

地球内部から上昇する熱が火山や地震を引き起こす様子を示す想像図
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット

一方で、地球の熱は私たち人間に厳しい試練も与えます。それが「地震」や「火山噴火」といった自然災害です。

地球内部の熱は、出口を求めてマントルを動かします(対流)。そのマントルの流れに乗って、地表の「プレート」も年間数センチずつ動いています。このプレート同士がぶつかったり、沈み込んだりする場所で歪みがたまり、限界に達したときに巨大な地震が発生します。

地震の詳しい発生メカニズムについては、地震の仕組みをわかりやすく解説したこちらの記事や、日本周辺のプレートの動きについて解説した記事でも詳しく触れていますので、ぜひあわせてご覧ください。

防災士からのメッセージ

「地震なんてなくなればいいのに」と思うのは当然の感情です。しかし、地震や火山は、地球が内部の熱を外に逃がし、循環させるための「呼吸」のようなものです。この活動が止まるということは、地球が火星のように死んでしまうことを意味します。

熱があるからこそ大地が動き、災害も起きますが、同時に大気や水、生命を守る環境も作られている。私たちはこの「動いている地球」の上で暮らしていることを理解し、正しく備える必要があるのです。
(出典:気象庁『地震発生のしくみ』)

地球の中心がなぜ熱いかの知識をまとめ

地球中心の熱が環境の恵みとして広がる様子を抽象的に示した画像
ふくしまの防災 HIH ヒカリネット

今回の話をまとめてみましょう。

  • 地球の中心が熱いのは、46億年前の衝突エネルギーの「残り火」と、放射性物質による「新たな発熱」があるから。
  • マントルという岩石の布団が、熱を逃がさないように保温している。
  • その6000度の熱が「磁場」を作り、有害な宇宙線から私たちを守ってくれている。

地面の下の熱さは、地震などの災害を引き起こす一方で、私たちが宇宙空間で生きていくために不可欠な守り神でもあります。「なぜ熱いの?」という素朴な疑問から、地球という惑星の奇跡を感じていただけたでしょうか。

この熱く活動的な地球の上で安全に暮らすために、家具の固定や備蓄の確認など、日頃の防災対策も忘れずに行っていきましょう。

この記事を書いた人

後藤 秀和(ごとう ひでかず)|防災士・株式会社ヒカリネット 代表
福島県で東日本大震災を経験したことをきっかけに、防災士の資格を取得。
被災経験と専門知識をもとに、本当に役立つ防災用品の企画・販売を行っています。
運営するブランド「HIH」は、個人家庭だけでなく企業・団体・学校にも多数導入され、全国の防災力向上に貢献しています。
被災経験者としてのリアルな視点と防災士としての専門性を活かし、安心・安全な備えを提案しています。

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